津村記久子のレビュー一覧

  • サキの忘れ物(新潮文庫)

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    何だか不思議な短編集です。人生ゲームみたいな短編まで付いてくるし。
    疲れたなと思って、ちょっと積読し、忘れた頃にもう一度、どこまで読んだっけ?とか思いながら、気長に読むと楽しいです。
    一気読みには、頭が追いつきません。

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    2026年10月01日
  • ポトスライムの舟

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    第140回芥川賞受賞作
    貧すれば鈍する、の話ではあるのだけど、惨めな重苦しさは然程無く、むしろ不思議な風通しの良さも感じるのは、どこか淡々とした主人公のキャラクターによるものか、それともやっぱり文章の力なのか

    主人公だけでなく、周囲の誰にとっても人生は険しく、生活は手強い
    その十人十色さを、積乱雲を眺める側と、正にその直下にいる側に例えているのが好きだった

    同収録の「十二月の窓」もそうだったけれど、自分の人生は他の誰とも違う、だからこそ自分だけの逃げ方、闘い方、見守り方があるんだと気付けると、煮詰まった毎日の中でほんの少しだけ一息つける気がした

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    2026年09月30日
  • アレグリアとは仕事はできない

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    どこの職場にもいそうな先輩女性社員の、心の闇を見る話。先輩女性社員の造形が良い。
    コピー機とのディスコミュニケーションがそのまま人間同士のディスコミュニケーションに転写されているというふうに読めた。

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    2026年09月26日
  • 水車小屋のネネ【毎日文庫】

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    ヨウムのネネがめっちゃ賢くて可愛い。
    シリアスな部分もあるけど、自分の居るべき場所で真面目に一生懸命生きる人々が好もしかった。

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    2026年09月24日
  • サキの忘れ物(新潮文庫)

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    短編はあんまり好きじゃないけど、この本は良かった。
    一話一話に丁寧に仕上げた暖かさと深みがあった。

    『行列』と『河川敷のガゼル』が特に良かった。
    『隣のビル』も最後の話にぴったりな、前向きになれる優しいはなしだった。

    全体的に、ほんのり希望を抱ける、じわじわ沁みてくるはなしだった。

    この作者の作品をもっと読んでみたい。

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    2026年09月23日
  • つまらない住宅地のすべての家

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    【効率?タイパ?問題解決?人間ってそんな合理的にできてない】

    この本に出てくる人たちはみんな後ろ向きな充足感に浸りながら、ずるずる日常を過ごしてる。目の前に見えている大きな問題から目を逸らして、仕事や家事などの日常に逃げ込んでいる。それが今回は逃亡犯の見張りというのが奇妙でおもしろい。
    タスクが逃げ道になるというのも変な話だけど、実際そうなんだよね。生活ってだましだましやってるところある。わかるわかる、私も私も。
    登場人物がはつらつ、ポジティブ、前向き!じゃないのがすごくリアルだった。

    「おはようございます」の挨拶にも「今日暑いですね」の世間話にも取り立てて情報はない。意味がない、時間の無駄、と言われればそれまでかもしれないけど、それって「なくてもいい」とイコールではないんだと思う。そうやって誰かを気に掛けたり、かけられたりすることが思わぬ救いになったり、課題解決の糸口になることがあるんだな、と。
    月並みだけど、やっぱり人は人と関わり合って人生やっていくのがいいんだろうな。

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    2026年09月19日
  • ポトスライムの舟

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    すれ違う誰かが、その日どんな一日を過ごしたのかは分からない。想像するしかないけど、なかなか出来るものではないよね。
    世知辛い世の中でみんなが少しの幸せを得られればいいなと思う。

    それにしても、嫌な女を書くのがすごく上手い。くぅー!嫌なやつ!現実に居そうな所がまた憎らしい。

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    2026年09月15日
  • 水車小屋のネネ【毎日文庫】

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    水車小屋のネネと高校生の理沙と小学生の律の姉妹の40年間に渡る物語。周りの人々のあたたかい交流の物語かな。出会うべくして出会う人々、人は支え合い助け合って、誰かの為に少しでも役に立てるといいなと思える作品。

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    2026年09月13日
  • やりなおし世界文学(新潮文庫)

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    名作と言われる作品を、高尚なものだと捉えすぎていたのかもしれない。
    自分たちの延長線上にいるのではなく、なんだかもっと、後世の人たちが言動を一つずつ分析し、意義を見出せるような、自分たちとは違った存在なのだと思いすぎていたんじゃないか。

    そんな気持ちにさせてくれる、名作たちの書評をまとめた一冊。

    英米文学科を出ていると言いたくなくなるくらい、名作を読んでない。
    専攻は英語学だったんだと言い訳だけさせてほしい。英文学史も米文学史も必修でとったけど、本当に苦行でしかなかった。
    それは翻訳の日本語への苦手意識があるけれども、「こいつなんでこんなことしてるの?」に無駄に意味を見出そうとしすぎていたのかもしれない。

    文学部として学ぼうとするならば、その背景を読み解かないといけないんだろうけれど、最近の小説を読んでいるときみたいに、「こいつクズじゃん」「なんでこんなバカなことしてんの?」「あー…こういう人いるよね」という感想でよかったんだ、と、かつて遠ざけた作品たちがちょっと身近に寄ってきた感じがする。

    本当に本当に、いわゆる名作に関する知識が乏しいので(まじで大学で何を学んだのか)あらすじすらおぼろげで、大前提となる土台がないので、ここで語られる感想も、多分半分くらいしか楽しめてないんじゃないかという気がする。

    短い書評が100近くあって、それぞれ結構な密度のある文章なので、読むのには時間がかかったけれども、時代を経て受け継がれる作品にも、普遍的な要素があるということを、自分として身近に感じられる言葉で書かれているのは、読んでいて、これらの作品を自分のものに落とし込めているような気持ちになる。全然読んでないくせに。

    こう読むと面白いのか―という気づきは多くて、でもそれでも、ここにある作品にはなかなか手が伸びないと思う、自分の残念さが残った気がする。

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    2026年08月27日
  • つまらない住宅地のすべての家

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    よく似た登場人物が多くて、何回も前に載っている住宅地地図を見ながら読まなければならず、ちょっと疲れた。
    結末はあっけなかったかな。3軒分つないで住んでいる長谷川家が怖かった。

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    2026年08月25日
  • この世にたやすい仕事はない

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    お仕事葛藤記かと思いきや日常に隠れるちょっとした時空が歪んだのかな?という不思議感もある小説。確かにお仕事転々とするのでタイトル通りどの仕事もたやすい物なんて1つもない、すごい仕事も楽な仕事もない。全ての仕事にはよしも悪しもあるのは間違いないけどふいに挟まる不可解な謎。私の職場にも触れてはないがその隙間から広がるまだ知らない謎を見てみぬふりしてるのかも?を進んでいく主人公がいるのでちょっとした冒険とも似て非なるもの。どの章も読みやすくてなるほどなるほどとなり、最後の集結もこれまでの事が繋がってたりして一体感が心地よかった。けどそこから得る教訓というものがなかったので、お仕事葛藤記だ!と思い込んでから肩透かしのような気持ちになったので評価は普通。先入観なく読み物として手に取っていたら思わぬ方向で楽しめたのかな

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    2026年08月24日
  • 君は永遠にそいつらより若い

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    薄氷の上を踏むのではなく、薄氷を横から見ているような、氷の薄さを感じながら、それを眺めているような感じのする本だった。主人公のホリガイさんの語りで進んでるんだけど、どこか距離があるのが不思議な感覚。描写が細かすぎて、まるで彼女たちの生活を上から覗いてるような、普段の小説とはまた違った第三者視点がおもしろい。手首の表皮も、ホリガイさんとイノギさんの関係も、ホセキくんの命も、ヤマカワくんの淡い思いも、全てが薄くて、柔くて、儚くて、脆くて、でも薄いからこそ、それが、彼らがしっかりそこにあることを、存在することを感じるような、そんな感じのする本だった。あと、あまりにも唐突に話が始まるものだから、話をつかむまでに時間がかかるのも、そういった親切さ?がない感じも特徴的で、でも気がついたらホリガイさんのボケツッコミのような絶妙なコミカルさのトリコにもなってる、そんな本でした。

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    2026年08月23日
  • 浮遊霊ブラジル

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    帰りの電車で読んだ。
    なんか不思議な世界に連れて言ってくれたような気がする。
    全て短編で、非現実的な世界観である。

    女性だけれども、中年〜高齢男性の思考を理解して書いていることが素晴らしいと思う。経験したことしかわたしは書けないことが多い。いろんな引き出しを持っている方が、小説に深みが出ることを表現していると思う。
    娯楽摂取しすぎで地獄に行った人の話が面白い。そんな時間どこから捻出したんだよとツッコミも入れたくなる。本人がそのくらい娯楽をしているのだろうか。自分への戒めの小説か。笑

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    2026年08月18日
  • この世にたやすい仕事はない

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    この主人公は30代の女性だが、仕事を辞めてもっと自分に合った所、やりがいのある仕事を求めるのは、どの年代でも考える(実行するかどうかは別として、定期的に辞めたい辞めたいとなる)
    ただ高齢になると選択できる職が少なくなり、雇用条件も悪くなる一方⋯結果 辞められない
    この本に出てくる職は多種多様で面白く、やってみたいと思う職もあった
    2025/1

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    2026年08月16日
  • 水車小屋のネネ

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    理佐が律を連れて、新たな生活を始めたのは18歳の時。そのいきさつから、当然苦難の連続であったはず。周りの人々の支えとヨウムのネネによって、そして姉妹の努力によって、奇跡的に平穏な日々を過ごしてきた。

    出来事や日常は、ぎりぎりまで喜怒哀楽を取り除いて、淡々と描かれている。
    親を除く周りの人々は善意にあふれた人ばかりだ。
    しかし、姉妹の苦悩、怒り、絶望、勇気、努力、希望、喜び、感謝は、いかばかりであったのか。
    読み手は文章の余白に想像力を持つことが求められ、それは経験や知識や感受性などによっても変わってくると思った。

    人の温かさや支え合うことの大切さなど、生きていくことの理想が詰まっている。

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    2026年08月08日
  • この世にたやすい仕事はない

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    『There's No Such Thing as an Easy Job』という題名で英訳されていてさらに柚木麻子の『バター』も翻訳しているPolly Bartonが担当しているので興味が出た。
    主人公は前の職場でうまく行かず、逃げ出すように辞めてハローワークのようなところにお世話になる。
    とにかく楽な仕事をリクエストして紹介される仕事が全てニッチでマイナーだけど主人公はしっかり仕事こなしながら一緒に働いている人を冷静に見て様々な分析をする。
    ・作家を監視する仕事
    ・おかきの袋に記載されているプチ知識を考える仕事
    ・バスのアナウンス原稿を考える仕事
    ・ポスターを貼り替える仕事
    ・公園の管理する仕事
    全てではないが、ほとんどが仕事する前に不思議なリクエストがあったり、曖昧に濁されるので仕事をしながら主人公が謎を紐解いていく。特に最初にやった監視の仕事とポスターの仕事が不気味すぎてファンタジー読んでいるっけ?という気持ちになった。
    名前のない主人公で何歳なのかを徐々に分かるくらい少量の情報しか与えられないのでとてもニュートラルなスタンスで物事が見れる。名のない要素が『コンビニ人間』を連想させられた。

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    2026年07月31日
  • 苦手から始める作文教室 ──文章が書けたらいいことはある?

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    つらつらと日常を書くのは得意なんだが、どうやったら面白い文章が書けるようになるかのプロセスがまとまってておもしろかった

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    2026年07月30日
  • 二度寝とは、遠くにありて想うもの

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    やりたいことは二度寝だけをすっ飛ばしてこちらから読み始めました。
    スポーツに音楽にお仕事に展覧会にとあらゆる文化への造詣が深い
    そして視点が面白い
    布団コールから始まり、最後らへんの素人展覧会巡りの話が特に好き
    神戸市立博物館の展覧会にナガサワ文具センターが張り切って限定のカラーインク売り出すの笑いました。ジュンク堂にくっついて店舗展開されてますよねぇ
    解説も津村さん愛がすごくてよかった
    美術展のチケットのミシン目をつけるお仕事はもしやと思ったら大好きな この世にたやすい仕事はない のシーンで嬉しかった。

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    2026年07月24日
  • ポトスライムの舟

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    薄給で働く日々、人間関係やお金のことで思った通りにいかないけど、なんか前向きにいけそう。
    「十二月の窓辺」が辛すぎる。登場人物の誰が誰なのか、性別もわからなくなる、追い詰められた気持ちになる。

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    2026年07月12日
  • サキの忘れ物(新潮文庫)

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    意趣に富んだ短編集でした。多彩な作品を書かれる方ですが、今作はエンタメよりは純文学よりかと。シックなトーンですが、切実さとユーモアが混在する作品が多く、面白い読書体験でした。

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    2026年07月11日