津村記久子のレビュー一覧
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初読みの津村記久子さん。1981年から10年ごとに物語が進み、40年という長い時間を描く構成に、読み始めから期待が膨らむ。母親とのつらい生活から逃れ、家を出た18歳の理佐と8歳の律。二人がたどり着いたのは、山深い場所にあるそば屋だった。そこで出会うのが、水車小屋で暮らすヨウムの「ネネ」。そば屋の守と浪子、絵描きの杉子など、二人を温かく見守る人たちとの出会いによって、新たな生活が少しずつ形づくられていく。
10年、さらに10年と時が流れ、理佐と律を取り巻く人々も変化していく。幼かった律が大人になり、今度は困難を抱える研司を支える姿が印象に残った。かつて自分が多くの人に助けられたからこそ、今度は自分が誰かを支える。そんな優しさのつながりが、世代を越えて受け継がれていくところにぬくもりを感じる。
人は歳を重ね、仕事や暮らしも変わっていく。それでも、人と人とのつながりや大切にしてきた思いは残っていく。そして、その穏やかな世界の中心には、いつもネネがいる。
40年という時間を登場人物たちと一緒に過ごしたような読後感。日常を描いているのに、どこか特別な世界に触れたようでもある。読み終えたとき、じんわりと幸せな気持ちと充足感が広がった。初読みの津村記久子さん。素敵な作品との出会いになった。 -
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苦しい読書だった。読んでいる間は家族の悪夢を見る程。「まともな家」の子どもではない側の人間なので、登場人物たちの苦しみをダイレクトにくらった。ダメージをくらうということは、この物語には問題のある家庭が抱えた、共通する核心が描かれているのだと思う。楽しくはないが優れた読み物だと感じた。
読み進めていく内に果たして「まともな家」など存在するのか?という疑問が表出してきた。
意識的にか無意識的にか、おかしなことがあっても気付かぬフリをする子どもや親にとっては「まとも」なのかもしれない。でも「まともじゃない」と気付いて確信してしまったら最後。後戻りはできないんだろうと感じた。
思春期特有の、という感想や解説を見るたびに苦しくなる。私もいい大人だが、現在進行形で家族のことで苦しんでいる。ある一定期間の苦しみのように完結させられること自体に、苦い思いが込み上げてくる。
仕事をし社会を知り親も完璧でないことを理解しつつも、鈍麻させた感受性と言葉で縛りつけてくる親の手から逃れる上手い手は未だに見出せない。距離を保とうとしても家族というだけで踏込んでくる。
自分の意志や決断に介入してくる相手から逃れるために、ある種、本を読んでいる節があるのだが、この本は逆に対峙させてくる。
しんどくはあるが、しんどい思いをしているのは自分の家庭だけではないと勇気付けられもする。
しんどさだけに絡めとられず、一見くだらない物事や美味しい食べ物、ささやかな楽しみに気を紛らせながら日々を淡々と生きていきたいと思った。
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こどもにとっての良い大人になりたいと、ずっと思っています。
この物語には、私が憧れる大人がたくさん出てきます。40年の年月を経て、良い大人から、善意を受け取ったこどもたちが、また、成長し、良い大人と育っていく姿がとてもキラキラ見えました。
人生の良い流れをつかんでその流れの中で自分にとっての幸せをつかんでいく姿に、読み手の心も優しくなる気がしました。
そして、物語の癒しである、おしゃべり上手なネネが長生きしてくれて、本当に良かった。ネネを中心にたくさんの素敵な人が集まり、つながりを持って次の世代へと受け継いでいく、今の時代に難しいことを、善意だけの関係で繋いでいく様に心が洗われるような、気持ちになりました。 -
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津村記久子さんの物の見方好きだわあー
相変わらず文章が軽妙でなんとも言えない温度感。これが合わない人もいるだろうなとは思うけど、私は大好き。なんか深夜ラジオのトーク聞いてるみたいで。読みながらクスクス笑っちゃう。
8編ある中で「レコーダー定置網漁」「現代生活手帖」「粗食インスタグラム」がお気に入り。
特に「現代生活手帖」はハイテクなんだかアナログなんだかよくわからない世界観なのに、受け入れてしまう不思議さがあった。
机をこすればスマホ以上になんでもできるのに、宅配便がロバだったり、ご近所とおかずを交換できるサービスがあったり…それを支えてる原理って人情とか思いやりのような、AIやらデジタルと結びつかなさそうなもの。このちぐはくな感じが妙におかしい。
感覚としては明治時代の人が想像する未来、みたいな。
これから津村記久子さんの本、たくさん読んでみたくなった! -
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自分の1年間の労働の対価と世界一周旅行の値段が同じ、という事を、自分の労働の価値に繋げていくのが美しいと思った。意味ではなく、価値。実際に世界旅行に行くわけではない、という事に意味がある話だな、と。世界にバズってる商品の工場で働いているとか、飛行機の部品の工場で働いているとか、そういうことではなく、仕事に世界と繋がる意味を持たせる事に意味がある、みたいな。自分の仕事の意味を、自力で世界に繋げていく。労働を一年分、すなわち世界を見た、と捉える。そういう意味で、薄給のかわり映えのないライン作業の仕事を肯定する。
世界旅行が遠のく事を意識しながらも、りつ子に電車賃を貸して、母にランチをおごって、雨水タンクを買う。でも結局、ボーナスと、りつ子からの借金返済で、183万の目標金額に届く。世界旅行応募のハガキを取りに行きつつ、そのハガキをすぐに丸めて胸ポケットに押し込み、ナガセはというと、岡田さんにスコーンと紅茶を奢ろう、エナにイチゴの苗を買ってやろうと、旅行とは違うお金の使い道について考えている。ナガセが自分の仕事を肯定したので、世界旅行は必要なくなったのでしょう。ポスターの中の、アウトリガーカヌーに乗った男の子がナガセに手を振って(ナガセの心象で)終わるの素敵だな。 -
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ネタバレ18歳の理佐と8歳の律が姉妹ふたりで暮らし始めることとなり、水車小屋に住むヨウムのネネと町の人たちとの交流を40年間にわたって描いた物語となっている。
第一章では、18歳の理佐がどうしようも無い母親の元から妹の律と共に去り、妹を養いながら新たな町で生活していく。まだ学生であったり親の庇護下に置かれているのも一般的である年齢の理佐が、妹の事だけを一心に考えて働き、共に生活しているところに胸をうたれた。理佐にも行きたい学校、やりたい事があったにも関わらず、妹にはやりたい事をさせてあげたいという気持ちを持つことは簡単なことではないだろう。少し大人びた律がやっぱりまだ8歳の可愛い妹なのだと実感するところに何度も涙ぐんでしまった。
第二章、第三章では時が進み、新たな人間関係や時代の変化も描かれている。どうしようも無い人間がいる事も書いているが、暖かな人間模様が続くのは理佐と律が人に親切に接し、また同じように親切を分けて貰ってきた証なのだとしみじみと感じる。
ネネは賢い鳥なのだなという印象だったが、そこからさらに居なくてはならない友達のような家族のような存在となった。
暖かな物語が淡々と綴られていて読みやすく、また何年か後に再読したいと思わせられる本だった。 -
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作者が高校の同窓だと知り、読んでみた。
同窓と言っても、20期も離れているが。。。
短編集で、会話文が少なく、読み始めは、うっ!ガルシア・マルケス再来か!と身構えたが、各編主人公の心情が溢れる文面に、肩の力みを抑え込んでくれる心地よさに惹き込まれた。
力まずに読めた理由は、しばらく読み進めないと主人公が男性なのか女性なのか、はたまた死んだ後の魂なのか、わからないところかな。
地獄というありえないシチュエーションで、作者の頭の中で独り言のように目まぐるしく繰り出される描写、きっと作者は現世では口数が少なくて、そのぶん頭の中はしゃべくりで溢れてるんやろうな、と。。。
あ、まだ生きてる方だった。。失礼。
タイトルになった「浮遊霊ブラジル」、作者のぶっ飛び感覚と浮遊霊に羨ましさを感じながら読んだ。
俺も「身体」が死んだらブラジル人の耳に吸い込まれて4年過ごしたブラジルに連れて行ってもらおかな。。。