津村記久子のレビュー一覧
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津村記久子さんが対談しているということで手に取ったけど、小説と対談ではまた違うのか、意外と深澤真紀さんの言葉でバシッと決まって響く言葉が多かった。編集者のコピーライター的能力?
津村さんの仕事の様子が読めたのも面白かった。
ただ2人とも全然ダメではない、と本を読んだ限りでは思った。求めるところが高くて、自分たちをダメだと思ってるのか?自分を自分でダメだと思える時点で、ダメじゃないということかも。
以下、心に残った箇所。
・(深澤)男性が仕事で長持ちするのは「いつまでも少年でいることを許されているから」
・(深澤)サブカル男グループって、「中二病」とか「DT(童貞)」とか言って、「男は幼稚であ -
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こども向けに書かれた作文の書き方の本です
実績のある小説家のかたが書かれてます
舐められるのではないかというくらい謙虚な姿勢で述べられています
作家にしては自慢話が一切なく、作文行為のハードルを下げる、スモールステップな案内で書かれています
自身の生活に関わる、本当に取り留めもないことについて書くだけで充分とあり、例文を紹介され、本当に何でもいいんだと思わせるような気分になりました
白眉は「見栄を張らずに、ほんとうのことを書く」というアドバイスでした
ありのままの自分を出す、というと開きなおっているようで受け入れたくないと批判されそうですが、自分が思ったほんとうのことを述べるだけで作文は良 -
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脱獄犯がやってこないか住宅地の住人が交代で見張りをする話というと、津村さんの作品の中では比較的派手な設定ではないかと思われるけど、内容はあくまでも十軒の家+αの事情を丹念に描いたもので、期待通り。さすがの職人芸。
それぞれの家の事情は結構ヘビーで、前半は読んでいて気が滅入るほどだった。ラスト、それぞれの生活に差し込む光はほんのわずかなのだけど、登場人物たちが抱くささやかな希望のいじらしさに、全然御涙頂戴ではないどちらかと言えばドライな筆致にも関わらず、泣きそうになる。
津村作品を読むと、好きでも嫌いでもない関係だからこそ、煮詰まった家族関係の差し水となれる時がある、と思う。ご近所付き合いなんて -
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5つの仕事の中で路地を訪ねる仕事は『さびしくない』とこちらの攻防がとても楽しかった。おかきの袋の仕事では人間の方のふじこさんにこう言う無邪気に侵食してくる人っているよなあとイライラしたり『私』に感情移入して読めました。
仕事と自分自身の適切な距離感ってなんだろう。
職を変えようと思うたびにたしかに適切な距離感ではなかったと思う。そのバランスが取れているのが1番いい状態なんだよな。会社と愛憎関係になってはいけないという言葉が心に響きました。愛憎関係になると過度に期待したりされたり心がどんどん消耗していく気がする。
たくさんの仕事を経て最後『私』が出した結論を応援したい気持ちになりました。
ふぅ、 -
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津村記久子さんの小説は読んだことがなかったが、本書の文体のとにかく飾らない、フラットな感じが好き。おやつのうまい棒やプライベートブランドの話、みたいな超卑近な話をさらりとしたりとか、こうすべきである、という偉ぶった感じが全くない感じとか。文体について、ある人のものを真似ている、と本文中にあったが、誰のものなのか、気になるなあ。
「作文」に対してのスタンスも、ものすごくあっさり淡々としている。芥川賞作家が「書きたいとも思わない」とさらりと言ってのける、意外な感じ。純文学の作家は、何かを書くこと、物語を書くことへのオブセッションのようなものがあるのではと勝手に思っていたけれど、そうでもないのか。ま -
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会社にはいろいろなタイプの人間がいるものだ。この小説に登場する人物たちは、ほんとに『こういう人いるなあ』と思えた。
『職場の作法』という短編には、社内で仕事を受ける立場の女性社員と依頼する側とのやり取りが面白い、また誰も興味がない自慢話を延々と話し続ける上司がいる。人の文房具を黙ってパクリ、それを忘れてしまう人、インフルエンザで職場が閉鎖の危機になる際の立ち回り方の個人差があること…思い当たる節があるようなことが多く、非常に面白かった。
そして表題の『とにかく家にかえります』は、豪雨で帰宅困難な最悪な日に会社から帰る際に起こる予想外なアクシデントの数々。バスが来ない…道路は浸水して通行不可