津村記久子のレビュー一覧
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5つの仕事の中で路地を訪ねる仕事は『さびしくない』とこちらの攻防がとても楽しかった。おかきの袋の仕事では人間の方のふじこさんにこう言う無邪気に侵食してくる人っているよなあとイライラしたり『私』に感情移入して読めました。
仕事と自分自身の適切な距離感ってなんだろう。
職を変えようと思うたびにたしかに適切な距離感ではなかったと思う。そのバランスが取れているのが1番いい状態なんだよな。会社と愛憎関係になってはいけないという言葉が心に響きました。愛憎関係になると過度に期待したりされたり心がどんどん消耗していく気がする。
たくさんの仕事を経て最後『私』が出した結論を応援したい気持ちになりました。
ふぅ、 -
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津村記久子さんの小説は読んだことがなかったが、本書の文体のとにかく飾らない、フラットな感じが好き。おやつのうまい棒やプライベートブランドの話、みたいな超卑近な話をさらりとしたりとか、こうすべきである、という偉ぶった感じが全くない感じとか。文体について、ある人のものを真似ている、と本文中にあったが、誰のものなのか、気になるなあ。
「作文」に対してのスタンスも、ものすごくあっさり淡々としている。芥川賞作家が「書きたいとも思わない」とさらりと言ってのける、意外な感じ。純文学の作家は、何かを書くこと、物語を書くことへのオブセッションのようなものがあるのではと勝手に思っていたけれど、そうでもないのか。ま -
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会社にはいろいろなタイプの人間がいるものだ。この小説に登場する人物たちは、ほんとに『こういう人いるなあ』と思えた。
『職場の作法』という短編には、社内で仕事を受ける立場の女性社員と依頼する側とのやり取りが面白い、また誰も興味がない自慢話を延々と話し続ける上司がいる。人の文房具を黙ってパクリ、それを忘れてしまう人、インフルエンザで職場が閉鎖の危機になる際の立ち回り方の個人差があること…思い当たる節があるようなことが多く、非常に面白かった。
そして表題の『とにかく家にかえります』は、豪雨で帰宅困難な最悪な日に会社から帰る際に起こる予想外なアクシデントの数々。バスが来ない…道路は浸水して通行不可 -
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嫌な感じで頼まれた仕事は先延ばしにするとか、取引先のFAX番号が分からずオフィスを大捜索するとか、マイナーなフィギュアスケート選手を応援するとか、ものすごくささいな日常の出来事が大切に描写される短編集。
こういう小さなことの積み重ねでできている日々の、ちょっとした面白い出来事やひっかかりを楽しみながら生きていくのっていいよなあと、自分の生活が少し愛おしくなる。津村さんどんどん好きになってきたな、もっといろいろ読みたい。
必ず何かはっとさせられる文章がある津村作品、今回の心に残る一文は、田上さんがノートに書いていた仕事への心構えである「どんな扱いを受けても自尊心は失わないこと。またそれを保ってる -
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誰かのSNSの投稿で見かけて購入した本です。このエッセイはまるで肩の力を抜いてリラックスするような感覚を与えてくれる一冊ですね。津村記久子さんが芥川賞を受賞した作家であることは知りませんでしたが、この本をきっかけにこの方の本を読もうかとも思いました。30代独身で、その時期に書かれたエッセイで、親近感があり、ユーモアもあって、そのゆるやかな文体や冷静でありながらどこか温かい微笑みが心地よいです。「まあ、明日も頑張ってみようかな」と思わせてくれます。好きな場所から読み始められるので、疲れた時や重厚なテーマの本の合間に息抜きとして手に取って読みたくなるエッセイでした。
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111108さんにおすすめしていただいて。いつも素敵な作品を教えていただきありがとうございます。
どの小説の人物の日常も地味でうだつが上がらないのだけど、その中のほんのわずかな転機や喜びが描かれていて、なんだか読んでいて励まされるような気持ちになった。適度な距離感で幸運を祈ってくれるような1冊。
職場で、自分は便利な駒あるいははけ口にすぎないと感じ、出勤の足が重いなあという時、通勤電車で何度もほのかに気分を上向かせてもらった。
「どこもかしこも居心地が悪いのだとしたら、それは柵や檻の外を選ぶだろう」という文章もすごく好きだった。津村作品はいつも心に響く文章がある。
どの作品も捨て難いけど、「 -
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作文の書き方について「先生からの指導」というより「頼りになる先輩からのアドバイス」という感じで教えてくれる一冊です。
津村さんご自身が、長年ずっと書くことや考えることと真摯に向き合ってきたんだな、というのが文章から滲み出ていると思います。
ただポップなイラストなども所々あるものの、あくまで文章主体の本なので(おそらく一番読んでほしいはずの)読書が苦手な子供が自然に手に取るのは、ちょっと難しいようにも感じました。
「授業で取り上げる」「図書室の目につきやすいところに置いておく」など、この本と子供を結びつける大人のサポートがあるといいんじゃないかなと思います。 -
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「家出ようと思うんだけど、一緒に来る?」
子どもを大切にしてくれない母とその婚約者の元を離れ、姉妹で生きることに決めた理佐と律。8歳の妹を養うという無謀な冒険をする18歳の理佐。なのに悲壮感がない。「マヨネーズを冷やせる冷蔵庫買おうね。」とやり繰りする姉と本好きで賢い妹。そんな二人を周囲の人が親切にする。地域も学校も、静かに彼女達を支えていく。ネネというヨウムの存在にも癒される。「空っぽ」も「六波羅探題」もヨウムの得意な言葉!
ヨウムが好む音楽がずっとBGMとして鳴り続ける。Let it be. ゴールドベルク変奏曲、、音楽もこの物語を潤していく。
親切と優しさの連鎖。感謝と恩返しが人の心を -
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心の底から誰かのことを想うときが、
祈るときなんだと思った。
自分のことではなく、誰かのことを。
とっても不思議だけど、町も神様もどこかに存在するかもしれないと思わせる「サイガサマのウィッカーマン」
読み進める中で登場人物の繋がりやサイガサマのことが分かってゆく気持ちよさ、ラストの清々しさ。
少年が町の大人と出会い変化していく様にニコニコしました。
地震が多いこの国で生きていくことに対して
そっと心が軽くなるメッセージをくれるような
「バイアブランカの地層と少女」
【あなたが不安と共存しながらも幸せに過ごせることを願っています。】という手紙の一文を、
作者から読者へのメッセージだと受け取り -
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これこれ!
私が津村さんに期待する小説はまさにこの本、という感じの短編集だった。
地獄の奇想天外なおもしろさ。
中年のなかよし女性二人が事故に遭い、同時に死ぬ。
小説家だった私は物語地獄に、親友のかよちゃんはおしゃべり地獄に。
地獄では担当の鬼が一人に一人つき、それぞれの業に応じた「地獄タスク」をこなさなければならない。
鬼の方にも配属される地獄に「栄転」「左遷」があり、家庭生活では配偶者の不倫にも悩まされる。
奇想天外なのだか、意外と所帯じみているのかなんだかわからない可笑しさ。
「運命」は構成のたくみさに驚く。
主人公の「運命」とは、最悪の状況なのに、それにまったく気づかない赤の他人に -
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《故人が本当にそうだったのかは、なつみの言葉のみから判断するのは難しいが、今はここで話しているというしがらみがあるぶん、なつみの気持ちを尊重すべきだ、とヨシノは思った》(P40)
《すみませんすみません、この御恩は一生忘れません、と勢いであるにしても大きく出て》(P57)
《うちの子がご迷惑をおかけいたしまして、と特にそういったことはなかったにもかかわらず、常套句として言った》(P76-77)
大変な混乱に巻き込まれているにもかかわらず頭のどこかは冷たく冴え渡っているヨシノの思考の流れが面白すぎて、一行も読み飛ばせない。密度の高い文章。
陣野俊史氏の解説にもある通り、津村作品では登場人