津村記久子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ大阪の亜笠不文律で購入。個人経営の小さな本屋さんで津村記久子さんの本があると、「わかってるなぁ、この本屋好きだわ。」と小さく思って嬉しくなる。
本好きの次男とお邪魔したその日は、未読だったこの本を買って帰った。
津村記久子さんが読んだいろんな本が紹介されている本。
とにかくバラエティに富んでいて、いろんなそして、個性的な本を読むんだなぁ〜と楽しく最後まで読んだ。
特に、ある本の書評が、私が津村さんの小説に対して書いた感想と物凄く似ているところがあり、なんだか気持ちが通じたような、読み方、私間違ってなかったんですね!!というような、そんな気持ちで胸がいっぱいになった。
p46 「生活図鑑」の紹介
生活していることは、こんなにも様々な要素で構成されていて、そして奥深いのだ。そのことを、余計な美化や力みを配して、ただ「人はこういう行為をしえ生きている」と詳細に説明してみせることで気づかせる。そこにはある種の美しさすらある。
もう一つ心に残ったのは暮らしのヒント集という本の紹介で出てきた言葉:
p51
「さみしさや切なさはいいものです。それは向き合ったりたたかうものでなく、抱きしめてあげましょう」。
この文章に、津村さんは「この本の誠実さが集約されている・・・中略・・・抱きしめるといったってどうしたらいいのかはわからないのだが、至らない欠けた自分を、問い詰めるのでも行動せよと煽るのでもなく、肯定せよとこの項目は言っている。大きく「救う」だとか「変える」のではなく、「ましにする」こと。
と書いている。
この人のこういうスタンスが本当に好きで、救われている。しんどいなと思いながらも、静かに受け止める芯の強さというか。その態度からこれでもいいかと思う、悪くないよねと感じる感性をお裾分けしてもらっているような気持ちになる。
読んでみたいな、と思う本が本当にたくさんあった。少しずつ探してみようと思う。
-
Posted by ブクログ
津村さんの発想はいつも面白い。
本作は人が生まれる前〜生きている間〜死後に渡るまでの、あらゆる世界を描いた短編集。
今の私のお気に入りは「運命」。主人公はいつ何時でも場所を訊かれる人。「〇〇ってどこですか?」と、受験の日も、初めて訪れた場所でも、海外でも、あんな時やこんな場所でも…思わず、えぇー!!と驚いてクスッと笑わずにはいられない。
本作には、変わった人も性格が悪い人も愛おしい人も出てくるが、皆がそのまま並列に扱われていることが心地よかった。酷い人だから特別貶めることも、良い人だから特別幸運に恵まれることもない。
これまで読んだ津村作品もそうだった気がする。
わりかし薄い本に七篇が詰め込まれ、それぞれの登場人物も多い。いろんな国籍のいろんな人や人ではないものたちが、出てきては通り過ぎていく。
にも関わらず、読み手がさほど混乱せずに物語にスッと入り込めるのは津村さんのさすがの手腕。
ストーリーを忘れた頃にまた読み返すため、手元に置いておきたい一冊。 -
Posted by ブクログ
短編集。好きだ、この方の、地に足のついたユーモア。淡々とした語り口のまま気づくとふわっとおかしな事が起きている。本作はいずれの話も、ものすごくニッチな設定下での人間の心理を細かく描いていて、それが面白おかしい。
レコーダー定置網漁
まず、帯の情報番組を自動録画するレコーダーを定置網になぞらえて、録画される番組の情報を魚にとらえるところがユニーク。メンタルをやられて家で何をする気も起きない主人公が、毎日ひとつだけ定置網漁にかかる情報を摂取し、やがてその情報に誘発されるように日常の活動ができるようになる話。
台所の停戦
女3代の家の、冷蔵庫でのテリトリー争い。親の悪いところを引き継ぎたくないと、娘だった時分を思い返しながら決心する母親。娘にイライラを小出しにしちゃう母親の心の描写がリアルで面白い。
現代生活手帖
近未来のパラレルワールド的な世界観。星新一のショートショートを彷彿とさせる内容。くすっと面白いし、クリエイティブ。
牢名主
モラハラ・メンヘラ、洗脳者のような人(A群)に付け込まれつきまとわれる関係性にある人(B群)たちのコミュニティ。脱A群を目指すも、A群のつきまといを「ソフトランディング」するすべを教えると言っているリーダーがなんだか胡散臭い。架空の現象?症状?なのだろうけれども人間関係や会話が現実にありえそう。
粗食インスタグラム
全く映えない食事写真をインスタで見ると癒されるという主人公の女。自らの粗食もアップするようになる。発想が面白い。
フェリシティの面接
急にアガサ・クリスティみたいな短編。
メダカと猫と密室
休日出勤したのに身勝手な同僚のせいで3時間の待ち時間が発生した、というシチュエーションで始まる人間ドラマ(?)。シチュエーションコメディとか、コントドラマみたい。登場人物たちの駆け引きが面白い。
イン・ザ・シティ
中学生たちの終わらない日々。どんな青春小説よりも青春ぽい鈍い輝き。けだるさと無気力さ、妙なことにハマってこだわるところ、家族について薄っすら居心地の悪さや許せなさを抱えているところ、近くにいる同級生の大人な面を発見してドッキリするところ、素直な感想を持つところ。中学生だなぁ。「自分たちにはいくらでも時間がある。だからきっと通り過ぎていくものたちのどれかは、手になじんで輝いてくれるだろう」。永遠の未来が目の前にある。
あとがきも解説もなくスパッと終わる気持ちが良い短編集だった。