フィリップ・K・ディックのレビュー一覧
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いやいや、表題作「変種第二号」が傑作過ぎ。久々にやられましたわ。これだからディック読みはやめられないのよ。
「戦争」をテーマとした作品をまとめた、日本オリジナル短編集。戦争テーマと言ってもかなり広義に捉えられていて、収録作はそれなりにバリエーションがあって読み応えがあります。(ただし、本邦初訳らしい「戦利船」だけは取扱注意!ディックにしては珍しい、超絶バカSFです(笑))
数多くの短編を書き残したディック作品の中でも屈指の傑作と言っても良い「変種第二号」は、ディックが永遠のテーマとしていた「人間と人間じゃないものの境界は何か?」という問題意識をストレートに表現しつつ、サスペンスフルな一級のエンターテインメント作品としても仕上がっています。他にも、主人公が最後に迫られた選択の残酷さが戦争の無意味さに直結する「たそがれの朝食」、人間の愚かさを端的に描き出してあまりある「ゴールデン・マン」など、グッとくる佳作が目白押し。ディック初心者にもオススメだと思います。 -
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本書はフィリップ・K・ディック短編傑作集ですが、有名なところではトータル・リコール、そしてマイノリティ・レポートが掲載されています。もちろんこれらの有名な話も面白いですが、私はむしろそれ以外の短編を堪能しました。
ネタバレになりますので深く書きませんが、「地球防衛軍」「訪問者」は立場の逆転という視点を、「世界をわが手に」はいまでいうシミュレーション仮説につながる話です。「ミスター・スペースシップ」はBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)、「フード・メーカー」は、デジタル監視社会といった形で、むしろ2023年に読むほうが、リアリティを増しているという作品もあると思います。私は個人的に「世界をわが手に」が特に印象に残りました。この短編の中で、世界球という玩具を作っている会社の社長が、「人々は倫理観だけでは動かないんだよ、そうではなく・・・・」というシーンがあり、これは現代のSDGsへの大いなる警句だと思いました。つまり「サステナブル」「持続可能な社会」と倫理だけに訴えていても、一部の人は従うがマジョリティは動かないだろう、ということを想起させるわけです。SFのストーリー展開が卓越しているだけでなく人間心理を深くついた作品集だと思います。 -
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もしもドイツと日本が、第二次世界大戦の戦勝国だったら……(; ・`д・´)
非常に興味深く面白い作品!!
ドイツの第三帝国(ナチスドイツ)に至るまでの大まかな歴史と、ヒトラーの周囲を固める親衛隊SS達(ヒムラー、ゲーリング、ゲッベルス、ハイドリヒ等)を知識として知っていると、理解がしやすいと思いました。
この小説の冒頭に参考文献としてウィリアム・シャイラー著『第三帝国の興亡』が挙げられていました。
この本、1から5巻まであるのですが、たまたま私、1巻だけ既読で………
なんで全部読まなかったんだぁ〜と後悔(^^;;
一巻はですね、第一次大戦後のハイパーインフレで国が混乱している中、ドイツ社会民主党を抑え、ナチ党が誕生するまで。
独裁国家の始まりまででしたが、読み応えたっぷりでした…(~_~;)ブアツイ…
私が、以前読んで非常に参考になったと思った文献は風刺画集でした。
『風刺画とジョークが描いたヒトラーの帝国』
プロパガンダで使われた風刺画がジョークも交えとても分かりやすく、読みやすかったです。
さて『高い塔の男』の感想に戻ります(^^;;
戦勝国はドイツ帝国、イタリア、日本。
アメリカには、日本やドイツの占領地区があり、ユダヤ人はドイツ領に送還されてしまう世の中。
ドイツの科学技術で月へ、火星へと進歩していますが、日本は技術的にはいまいち…笑
アーリア人が最高種族であり、人種差別が凄い…。
故に、登場人物のアメリカ人達は(敗戦国だからと)卑屈な気持ちで生きています。
と、まぁ、予測出来るような世界になる訳ですが、この小説の面白い所はそこだけじゃありません!
登場人物の日本人はものごとを選択する際『易経』を使用します。
日本のイメージよ…σ^_^;
日本が戦勝国である為、一部のアメリカ国民にも易経が普及。
自然に取り入れられているのが不思議ですが、信じる人は当たり前のように占います。
この易が占う結果と『パルプ・フィクション』のように繋がっていく登場人物達が見どころ(〃´-`〃)
もうひとつあります!
ホーソーン・アベンゼンなる作家の『イナゴ身重く横たわる』というベストセラー本が出てきます。
この本が「もしもドイツと日本が戦争に負けていたら」というテーマで書かれているんです。
この作中作の仕組み、大好きでして(๑¯ㅁ¯๑)♡
そうきたか!
リアルの今と違うんか?
と、興奮してしまいました笑(º﹃º )ヨミタイ…。
登場人物達の心理描写も細かくて、反発や揺れ動く気持ちは何とも言えずリアルな感じ…。
難しかった…という感想が多いように感じ、⭐︎評価がいまいちですが、私はすんごくすんごく面白かったです!!
『アンドロイド〜』『ユービック』と共に同じくらい好きな作品になりました(ღ*ˇ ˇ*)。o♡
おすすめですよ!!!
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「ティモシー・アーチャーの転生」
ディックのヴァリス3部作の最後。そしてディックの遺作とされている作品。
個人的にはすばらしい作品だと思う。模造品について書いてきたディックが、その一番深いところにたどりついた。
生きるための軸となっていたもの、たとえば信仰が揺さぶられたとき、人はどうなるのだろう。という問い。ヴァリス同様、大量の情報におぼれる人々。今回は情報が大量だからではなく、大量の情報の中から、アイデンティティを崩壊させる「真実」を発見してしまう。自分の存在が否定された人間の物語。
ディックはここまで辿りついたか、という感動を覚えた。純文学の作家を目指していて、でも金のためにSFを書かざるをえなかったディックが、最後は純文学を書いていた。しかもみんなが知っている彼のSF小説を深化させた形で。これがすばらしい。
この偽物だらけの世界で、ディックは本物の作家だったなあ。
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フィリップ・K・ディックは20世紀中盤に活躍したSF作家で、この短編集は、有名な二つの映画化作品をベースに、21世紀に入って日本で再編されたもの。
いずれも切れ味抜群の結末と個性ある世界観で、「傑作短編集」の名に恥じないものばかり。
同じ作家の少し難解な長編「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」に比べて、ずいぶんと解りやすく、読みやすかった。
映画化された「トータル・リコール」「マイノリティ・リポート」はもちろん、他の作品もいずれも印象深い。
「訪問者」は、驕慢であった人類の地球上での最後の姿が垣間見える。
「吊るされたよそ者」のあとは、街中を走り回る自分の姿を夢に見そう。
「フード・メーカー」には、監視社会の問題が漂う。
フレドリック・ブラウンがちょっと不思議系でレイ・ブラッドベリが寓話的であれば、ディックは文字通りSFの王道。
もっと、掘っててみようかな……。 -
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こいつは傑作だ!ガハハハハ!!!
傑作という言葉を辞書で引くと、2つの意味があり、この小説には両方の意味で傑作だと拍手喝采を送りたい。
例によって、込み入った世界観を把握するまで序盤はやや読みにくいが、「なにこれどうなってんの!?」というディック節から物語は加速していくのでご安心を。
道徳や倫理が絶対視され、集団相互監視の状態にある息苦しいディストピア。不倫した芸能人を匿名SNSで叩きまくる、昨今の日本を見てきたかのような、先見性あふれる描写に驚かされた(この小説は1956年発表)。その中で、主人公が取る行動によって、痛烈な社会風刺ともいえる、思いがけない結論が導きだされる。序盤の主人公の言動には共感できなかったのだが、少しずつ感情移入が増していく。
過去にSFで多く描かれてきた監視社会に、ますます近づいていく21世紀のリアル。我々はいったいどこにむかっているのだろう?そこに、「いたずら」や「ユーモアのセンス」といったことが一石を投じるストーリーに考え込まずにはいられなかった。
あと、文字通りユーモア全開の終盤の仕掛けには笑わせてもらった。色々な意味で傑作なのだ。 -
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SF要素のない、ディックが自身を投影した準私小説。現代でいう発達障害らしき青年で世間とそりが合わない兄が、わがままだが裕福で世知に長けた妹の不倫に巻き込まれるかたちで物語は進む。序盤から登場人物の言動が強烈でいきなり眼が離せなくなり、徐々に昼ドラ的な愛憎劇に引き込まれていく。世間的には恵まれた存在であるはずの妹夫婦がやがて狂気と化していく中、カルトの終末論に惑わされながらも、純真かつ鋭い洞察力を見せる兄。本当に病んでいるのは誰なのだろう。「彼はある意味で優れた人間なんだ」後にディックは書簡で振り返っている。文学的ともいえるが、サスペンスとしても面白かった傑作。
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温暖化が進み、過酷な環境となった未来世界。火星へ強制移住させられた人々は、ドラッグと模型によって、過去の地球を再現した仮想空間へダイブすることで心を支えている。やがて遥か遠い星系からもたらされた新種ドラッグが現実崩壊の恐怖を引き起こすが……。
現実と幻想の狭間を描く、ディックの真骨頂。今はどっちの世界にいるんだっけ?という感覚を本書でも味わえる。ラスボスのような圧倒的な力を持った存在との対峙。人間くさい登場人物の意外な決断。全編通して読ませる力が強く、面白かった。ラスト付近は意図的にわかりにくくしているのか、読んでいる方も混乱してきて、トリップを疑似体験しているかのようだった。
毎回ディック作品には魅力的な女性が登場するが、今回は特に恋愛や性描写も色濃く、パンクしそうな急展開の連続に華を添えてくれた。
しかしこの作家はドラッグと壺が好きだな。 -
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〈ヴァリス〉三部作の第二弾。
難解な神学談義が続いた前作に比べ、まずSFとしてストーリーを楽しめたのが大きい。辺境惑星、冷凍生命停止、巨大人工知能システム、飛行タクシー、スマホ(のような端末)などが存在する未来世界の中での、『覚醒』をめぐる宗教的・スピリチャル的な物語。難しそうに思えるテーマだが、文章も読みやすく、筋運びそのものが素直に面白かったといえる。その上で、聖書の世界観を通じて語られる「世界」「神」「人」などについての論議は学ぶことが多く、たくさんのメモを取りながら読むことになった。自分はやはり知識が追いつかないところもあったが、聖書に興味がわき読みたくなったことがかえって嬉しい。
さらに良かったのが、巻末の訳者あとがきがとても秀逸なこと。作品の全体像をわかりやすく再確認させてくれる上、これだけでひとつの読み物になっていて面白かった(※ネタバレ全開なので先に読む場合は注意)。
ディック教?における、ある種の到達点といえるだろうか。個人的にかなり収穫のあった一冊。 -
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「地図にない町」を含むファンタジー色の少し強い短編集。ファンタジー色が強いとは言っても、日常に感じた違和感に対して自分が狂っているのでは?と疑問を抱かせる描き方はディックそのものです。足元から揺らいでしまう不安感がたまらないです。
風変わりなところでは「妖精の王」、「欠陥ビーバー」(冴えないビーバーが主人公の寓話なのです!)。印象的なのは「宇宙の死者」急速冷凍された遺体が半生者となっているという設定など「ユービック』に通じる不気味なものがあります。子供の教育を扱ったものや、人工妊娠中絶を扱って炎上した表題作など、作品に現代が追いついてきた感がある作品集です。コロナで隔絶された日常をディックが経験したらどんな作品を著したでしょうか?