あらすじ
ディックの初期長篇、待望の復刊! この町でその男の名を知らぬものはいなかった。レイグル・ガム。新聞の懸賞クイズ〈火星人はどこへ?〉に、2年間ずっと勝ち続けてきた全国チャンピオンだ。だが彼には時折、自分が他人に思えることがあった。ほんとうに自分はいったい誰なのか? ある日、同居する弟夫婦の子供が、近所の廃墟からひろってきた一冊の古雑誌が引き金となって、彼を驚くべき真実へと誘っていく……奇才ディックの名作、待望の復刊!
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Posted by ブクログ
パーマーエルドリッチの次はこちらを。
序盤から引き込まれて一気に読んでしまった。
ディックファンと言いながらまだ数冊しか読めていない新参者の私。
1番好きな作品は変わらずユービックなんだけど、もしSFに慣れていない友人にディック作品をどれか一つ勧めるとしたら、絶対これを選ぶ。
サイエンス感満載な用語は全然出てこないし、日常的な雰囲気の中にディックが紛れ込んでくる感じ、ぜひぜひSF処女たちにおすすめしたい。
それにしてもそう、まさに私が好きな類のお話だよ、こういうお話をもっともっと読みたいんだー!
あと映画好きなら誰もが知るあの映画の発想って、もしかしてこの本から着想を得たのか…?
なんだかんだでまだ観れていないので、これを機にそろそろ観よう。
Posted by ブクログ
「我々が見ているこの世界は、本当に現実なんだろうか?」というテーマを、映画のマトリックスが仮想現実を描いたような表現方法で描いているかと思ったら、1959年に発刊された本書で描いた方法は、正直ぶっ飛んでいて驚きました。また、ジャンルはSFですが、まるで良質なミステリー小説を読んでいるようで、とても楽しむことができました。以下あらすじ。
主人公のレイグル・ガムは、新聞の懸賞クイズ〈火星人はどこへ?〉で2年間勝ち続けているチャンピオン。彼は、他の人が外に働きに出かけているときに、一日中懸賞の研究と回答に費やす日々を送っていました。そのような暮らしを続けているうちに、ときどき自分が見ている世界に違和感を感じたり、自分が自分ではない感覚を覚えるようになります。
ある日、妹夫婦の息子のサミーが、廃墟になっている空き地から古い電話帳と雑誌、紙切れを拾ってきます(このP90のやりとりが面白い)。掲載されている電話番号はどこも繋がらず、雑誌のグラビアは有名女優らしいが名前がわからない。なんとなく既視感があれども、どうしても思い出せない。何か陰謀めいたものを感じた彼は、町を出る決意をしますが、ことごとく失敗します。
そんな時、妹の夫ヴィックと協力して町から出ることに成功しますが、そこで彼らが見た世界とは…というお話し。
覚え書き
車のタッカー(映画『タッカー』で有名)。
小説ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』、ハリエット・ビーチャー・ストウ『アンクル・トムの小屋』、ダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』。女優マリリン・モンロー。
Posted by ブクログ
今目に見えている世界は本当に現実なのか?自分は誰なのか?わずかなきっかけから浮かんだ疑問が次々とピースを呼び寄せ、少しずつ真実が明らかになっていく。ミステリー小説のようなスピード感ある展開にページをめくる手が止まらなかった。これは問答無用に面白い!
あの映画のタイトルを上げてしまうとそれだけでネタバレになってしまうので伏せるが、1959年出版の本作が元ネタなのだろうか?
ラスト付近、特定の年代にノスタルジーを感じる姿には共感してしまった。自分はYouTubeで80年代の映像ばかり見てるので……。
Posted by ブクログ
新聞の懸賞クイズ「火星人はどこに?」に2年連続で勝ち続け、クイズの賞金で生計を立てているレイグル・ガム。片田舎の小さいのどかな町で、妹夫婦と共に穏やかな日々を送っているガムは、しばしば自分を取り囲む現実が「現実ではない」という感覚に囚われていた。ある日、甥っ子が遺棄された空き地から拾ってきた古びた電話帳と古雑誌。電話帳に掲載された電話番号はどこにも繋がらず、雑誌のグラビアでは見知らぬ女優について報道されていた。疑惑を確信に変えたガムは、クイズを始めてから一度も出たことの無い町を出て真相を確認しようとする。彼の動きを監視するかのように振る舞う隣家の夫婦、何かを知っているらしい市民活動家の老婦人・・・自分は騙されているのか、それとも自分が狂っているのか?何度も困難にぶつかりながら真相に近づいて行くガムが、最後に見たものとは?
表紙のアートワークで盛大にネタバレしているのはまぁご愛嬌として(^_^;
いやー、久々にやられました。やっぱりディックは面白い!
この作品がSFだという予備知識なしに読み始めると、前半で描かれる米国地方都市の日常の風景、その中でこじんまりと展開される市井の人々の日常が実に「普通」で、本当は主流文学を目指していたディックの筆力を感じさせます。お隣同士の交流とちょっとした確執とか、ちょっとしたアバンチュールとか、そんな本当に「普通」の風景の中から薄皮をはがすように立ち現れてくる「非現実」。この過程の背筋が薄ら寒くなる怖さは、前半の日常風景の丁寧な描き方があってこそ。
少しずつ少しずつ、足元の現実が崩れ落ちて行き、それに追われるように真実へと突き進んで行きつつも実は自分が狂っているだけとの考えからも抜けきれないガムの焦燥感は、読んでいるこちらも本当にヒリヒリするほどサスペンスフル。ガムを取り囲む謎めいた登場人物達もキャラが立っており、物語にメリハリを付けています。
物語全体のスケール感は他のディック作品と比べるとかなりこじんまりしており、SFのアイディアとしてもそれほど特筆すべきものはないのですが、無駄の無いストーリー展開で一気読み必至!の洗練された作品ですね。
Posted by ブクログ
SFマガジンのPKD特集に再度刺激され、ディック祭り継続中。
57年の「虚空の目」と62年の「高い城の男」の間に位置する作品。何かが違っているように見えるのは自分が狂い始めているのか世界が本物なのか?普通小説にしか見えない出だしから、徐々に不安感が高まって・・・100ページ以内でどちらがおかしいのかがわかってしまうのですが、それは何のため?という謎がじわじわと深まっていくサスペンスは強烈。一気読みです。
PGMにリゲティを流したところ、すがすがしい秋晴れの中で読んでも不安感MAX。実にディックな日となりました。やっぱりディックすげー。
Posted by ブクログ
読んでいて『トゥルーマン・ショー』を彷彿とさせるような面白い作品だなと感じた。ありふれた日常の些細な変化や違和感から「何かが変だ!」と勘繰るのが大好きな人にとってはワクワクするという意味でたまらない作品だと思う。
Posted by ブクログ
いま自分がいるところは、本当に自分の居場所なのだろうか。
このような不安を微かに(しかし確実に)感じながら生きている男の物語。
上記の不安は、作者が以後の作品で反映させていく不安群――たとえば、自分が記憶していることは、本当に自分の記憶なのだろうかという不安――の一つと考えてよいでしょう。
戦後アメリカが舞台ということで、共産圏に対する不安や敵意なども描かれていて、SFという要素以外でも知れるところがあります。
Posted by ブクログ
SFとかミステリーとか全ジャンルを含めて考えても、P.K.ディックは私のなかで特異で特別な作家。
彼の場合は、小説という創作物の「出来が良くない」方が、時として「読者としての満足感が得られる」事が多いという、グラフでイメージすれば反比例の曲線を持つ、珍しい作家。
起承転結がうまくいっている作品とか、終盤の締めが鮮やかな作品は、実は、この作家に期待する「禍々しさ」「絶無のカオス感」に乏しかったりする。失敗作でも(むしろ失敗作こそ)価値を生んでしまう、失敗作の至芸とでも云うべきか。
本作は、うまくいっちゃってるサイドの傑作。普段の生活空間が異世界に傾いていく過程が鮮やかで、P.K.=粗雑で上等、という前提として読むと面食らうかも知れない。
Posted by ブクログ
ハードカバーを見て、表紙のかっこよさで読んでみたいと思った本。
洋物なのに大変読みやすく、内容もすごく面白かった。30年前の本だというのが驚きです。
ただ、後半の急展開になかなか付いていけなかった。終わり方もここで終わり!?て感じで、もう少し先を読みたかった。
Posted by ブクログ
映画ブレードランナーの原作SF作家として有名なヒィリップKディックの作品。初ディック。
新聞の懸賞クイズに2年間勝ち続けている男が、日常の存在感に違和感を感じるところから物語が始まる。最初は古いアメリカンファミリーの日常描写かなと思っていたら、段々とSFになっていくあたりの展開がうまいと思った。映画にもしやすいような展開だ。ソ連やら核戦争のことを起こる可能性が高い前提で書かれているところが時代を感じる。ただし古臭い感じはあまりなく、すっきり読めた。
ブレードランナー原作の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
久しぶりのディック.今は亡きサンリオ文庫から出ていたものらしい.
ディックお得意の「模造記憶」「泥沼化した戦争」「並行世界(ちょっと違うか?)」がキーワードだが,比較的前期の作品であるために,作者自身がパラノイア化したともいえる後期作品とは異なり,短編の延長のようで読みやすい.
「なぜ彼らの側についたんだ?彼らは女性や子どもを殺しているんだ−」
「それは彼らの方が正しいからだ.」
今の世の中でこんな台詞を読むとゾッとしないでもないが,何が「正しい」かは読んでからのお楽しみ.
Posted by ブクログ
初期の作品ではあるがディックのパラノイアの予兆のようなものを感じる。
得意の現実崩壊系の作品で、プロットが面白く・破綻も無くしっかりしていて珍しく綺麗にまとまっている。
良く言えばまとも、悪く言えばディックの良さが足りないかなと言ったところ。
でもこういう話はすごく好きですw