フィリップ・K・ディックのレビュー一覧
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電気羊に次ぐ2作目。電気羊が人間か、アンドロイドか?の曖昧な境界を攻めた作品とするとユービックは現実か、虚構か?という非常に入り乱れた不思議ワールドで、展開で魅せる作品です。
あらすじのとおり、敵となる予知能力者狩りを行うべく、精鋭の能力者11人を集めて、いざ決戦の地、月面へ!という、まさかのヒーローSFものが序盤で展開されますが、ほぼ戦うことなく(笑)、気づいたら時間が逆戻りする訳の分からない世界の話に急展開されます。
一体この世界は何なんですか?と戸惑いながらも、気づいたら不思議ワールドに引きずり込まれ、先が気になって一気読みでした。
あっと驚く伏線回収とか、衝撃のラストとか、そこまでドラマチックな展開はないものの(笑)、現実なのか虚構なのか、なぜこんな事象が起きているのか?、常に頭にハテナが浮かぶような独特な世界観がクセになる感覚がこの作品にはありました。
また、現実世界に加えて半死の世界も存在していて、そうした設定によって奥深さも出ていています。一周読んだだけでは掴みきれない点も多かったですが、非常に考察しがいのある深い内容な気がしました。
万人ウケする作品かと言われると何とも言い難いですが、フィリップKディックのコアな世界観を濃密に味わいたい方にはオススメです。 -
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ネタバレディックの自伝的かつ主流小説。自伝的なのは、カルトとの関わりの部分?それともチャーリー目線でのフェイ(妻)との関わり?
ディックにありがちなキーキー小うるさくて性格は悪いけど、見た目は標準以上でなぜか男を惹きつける女ー主人公ジャックの妹。フェイーと、フェイの夫のチャーリー、フェイの不倫相手そして後々の再婚相手のナット、そして主人公のジャックが主な登場人物。
ナットはなんだかどっちつかずで、優しいけどつまらなさそうな決断力のない男。フェイと別れそうで別れなくて、押されてついていった遊園地で自らの滑稽さに気がつき、人生を諦めるというか、認めるシーンはとても良かった。とても現実的で、そして彼はなんだかんだ言っても、不倫の末嫁に愛想を尽かされて出て行かれて離婚しても、フェイになぜか惹かれてしまう自分に嫌気が差しつつも、前向きで、なんというかおぼっちゃま的というかのんきだ。どう考えても、チャーリーの方が好きだけど。女を殴るのは良くないけどね。
と言いつつ。主人公は、やはりジャック。
終盤、ジャックが自分の信じていたことが違っていた…と気がついてもなお前向きに捉える姿勢は開き直りのようにも思えたけど、盲信から目覚めて、さしたるショックも受けずに順応し、じゃあどうやって生きていこうか?と切り替える、もがき始めると決めるシーンはとても良かった。
かくありたいと思う。
フェイ、チャーリー、ナットは一見社会的に成功していて、あるいは学があって、資産があって。でも、道徳的に正しい行いをし続けたのは(あるいは道を外れなかったのは)ジャックのみ。心の平穏を保ち続けて、人生を諦めていない。高潔さとはこういうことを言うのかな、と思ったりした。
ここまで書いて、人生を諦めるナットと、人生を受け入れるジャックの対比として読むとより面白いかもなと思った。 -
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「私は惑星になるつもりだ」
死ぬまでに一度は言ってみたいセリフ…の一つに仲間入りしました。
最近仕事のことで脳内ごちゃごちゃなのもあり全く読書に身が入らない毎日。
その状況でディックを読み始めるのもどうかと思いながら、序盤頑張って頑張って読み進め、、、
しかし3分の1くらいまでくると、キマシタ。モード入りました。
なんだなんだ??と一文一文に翻弄されているうちに瞬く間にディック感覚に包み込まれ、気がつけば半分を過ぎ、残りの厚みを見て「えええもうすぐ終わっちゃうの?いやだ!!!」
なんて考えていたらあっという間に終わりました。
全部読んだ後の感想としては
いや、なんだこれ。。。
結局どこからどこまでがソノ状態なのか?何度も読み返したいけど、多分これは何度読み返しても正解は分からないと思う。というより、それこそがこの本の真意なのだろう。
インセプションの元ネタってこれだったのかな?と少し感じた。
最近毎年夏の異常な暑さを更新してるけど、この未来はそう遠くはないのかもしれない…と思ってしまう。 -
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ネタバレ異星人(リーグ星人/リリスター星人)、人工臓器、時間を移動できる謎のドラッグや、独裁者や…とにかくモチーフが詰め込んであって、読んでいて楽しい。これぞ、ディック作品に求めているものなんだよなーと思う。
ストーリーラインは2つ。
1つは、ディック自身の当時の奥さん(3人目のアン。浪費家だったというけど…圧倒的にディックの方がおかしいし、、)との状況を表していて、つまり、先行きが良くないことが明らかな夫婦関係をどうするのか?という葛藤。
もう1つは、人類が侵略されてしまいそうな状況。
ものすごく個人的なお話と、人類の存亡がかかった大きいお話が並行して進む。
最後、主人公はドラッグで脳がやられてしまって介護が必要な妻…しかも関係は劣悪…に対してどうするべきかをアンドロイド(厳密には自律機構というもので…違うけどまぁ一旦)に尋ねる。機械の答えは、自分なら離婚はしないと。その理由は
人生はそういうふうに構築された現実設定で構成されているから。彼女を見捨てるというのは、そういう現実に耐えられないというに等しいから。独特のもっと優しい条件を与えてもらわないとダメだというに等しいから。
とのこと…
主人公のエリックは、確かにその通り。妻と別れずにいようと思うと答える。機械は、素晴らしいですね。あなたは良い人ですねと返し、エリックはありがとうと答えて妻の元へ向かう。
実際には、主人公は結局どうしたのか、までは描かれてはいない。ちなみに、アンとディックは離婚した。
要は人生をあるがままに受け入れて耐えなさい、良い人でいなさいというド正論をぶつけてくる機械。無性の愛(アガペー)、人生の苦難を受容すること。つまり、キリスト教的な回答に思える。
エリックが無機物から神託を得た…人間性を機械によって与えられた、とまでは読みすぎてるのかな?
怪しいドラッグ、発達した未来の文明、キーキーやかましくて感情をコントロールできない女。翻弄されまくった主人公の決意。意味ありげに出てきた割に特に解説されないあれこれ。ディックらしい内容。だから好き。
まぁ、わたしなら即離婚。 -
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【高い城の男】 フィリップ・K・ディック 著
第二次世界大戦は、日本・ドイツの枢軸国が勝利。日本が統治する米国カリフォルニア州での生活風景を描きながら、「第二次世界大戦は米英が勝った」というSF小説を書く「高い城」に住む男の物語も書き綴るというSF小説(ややこしい)。「現実と虚構との微妙なバランスを緻密な構成と迫真の筆致で書きあげた、1963年度ヒューゴー賞受賞の最高傑作」という売り文句にやられて読破しました。
少々ネタバレになりますが、ヒトラーはその後、精神疾患となりボルマン党官房長官が後を継ぐも、その後亡くなり、「え~!」と思う人物がドイツ首相に就任。これによって、「え~!」と思うような日本への影響もあり…の場面は面白かったのですが、総じて日常風景が描かれ、「これが何故に『三体』と同じヒューゴー賞?」という感じでした。書評などを読むと、熱心なディック氏ファンにとっては「最高傑作!」で、SFファンには「たまるか~!」もののようです。もし読まれた方がいらっしゃれば、読後感をいただきたい一冊です。 -
Posted by ブクログ
「有を名TVのMC・歌手で3000万人の視聴者を持つ男」が目覚めたら薄汚いモーテルにいた。誰も自分を知らず、政府のIDバンクにもデータがない「名無し」になる、というサスペンスフルで思わず読みたくなる導入から始まる。が、そこから主人公と女たちの会話に重点が置かれて愛と別れが語られ文学的な味がする作品となる。後半ではもう一人の主人公である警察署長に視点が移ってしまい当初の緊迫した謎や展開はどこかにいってしまう。
個々のエピソードは素晴らしいが全体としてみると序盤の期待が外れてしまうため残念がところがある。はじめから愛と別れをテーマにした文学作品だと思えばいいのかもしれない。 -
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話しの設定は面白いのですが、構成に難ありといった感じ。そのあたりのことは、あとがきに著者の言葉が掲載されていますが、個人的には充分楽しめました。
あらすじ:
2004年、世界は東西両陣営に分かれた冷戦下にありました。その両陣営共に、武器開発は超次元空間に意識を浮遊させ、トランス状態になって独創的な殺戮兵器をスケッチすることにより、アイデアを得る方法が取られていた。その職種は、兵器ファッション・デザイナーと言われ、西側はラーズ・パウダードライ、東側はリロ・トプチェフが担っていた。しかし、これらのアイデアを反映した兵器は、新兵器のデモンストレーションと称して、実際のことのようにドラマ仕立ての映像を作り上げて大衆に公開した嘘の情報でした。そんなある日、エイリアンの衛生群が現れますが、撃退しようにも発射された兵器では虚空を相手にしているも同じ。なす術がない人類は、東西の兵器ファッション・デザイナーが協力して、本物の究極兵器”ザップ・ガン”のスケッチを入手するよう要求されますが……。
そもそも、東西は表面上は対立していても、その実馴れ合っているという設定がいい。しかも殺傷能力のない武器開発を、兵器ファッション・デザイナーなんて人が担って、偽物のプロトタイプ作成に寄与しているとかね(トランス状態にあるときのアイデアの入手元には驚きました)。そんな武器開発で、どうやってエイリアンと対峙するのかが読みどころですが、ある意味エイリアンには残酷な仕打ちでしょうね。よくこんなこと思いつくなと思いました。
あと、ラーズの前任者の死因や、会社のミス・ベドウィンの最新のファッションという格好など、ディック流のギャグも健在で面白かったし、未来のアレクサを予見しているような〈オーヴィルくん〉やその他ガジェットの名称なんかを楽しめました。そういえば、直前に読んだシミュラクラの名前やAG製薬の名前が出てきたり、本作にもドイツ語がでてきてニヤニヤしてしまいましたね。
ただ、あとがきを読むと著者は気に入らないようですね。特に前半。用語の説明不足は、他の作品も同様なので、伏線として書いていた人物のことを回収し忘れて、最終章を付け足していることや、前半で語っていた主人公ラーズの愛人の性格の描写が、後半は真逆の行動をとっていたりと、話しが矛盾していることを、著者が怒りに任せて誤魔化しているだけのような気がするのですが……?後半の怒涛の展開が良かっただけに、回収し忘れた伏線のために追加されたであろう最終章が、なんだか取ってつけた感じがして残念でした。
正誤(初版)
P88の8行目:
ミター・ラーズ
↓
ミスター・ラーズ -
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ディックらしい虚実を取り混ぜたストーリー展開や、面白くて笑える場面も多々あって、とても楽しめました。
しかしながら、ストーリーにいろんな要素を詰め込み過ぎなため、読み終えた後に、その後が気になる人が何人かいて少しモヤモヤした気分が残りましたけどね。
あらすじ:
21世紀も半ば過ぎ、世界は二極化されていた。その一方であるヨーロッパ・アメリカ合衆国(USEA)では、ファースト・レディの地位が大統領より高い母権制をとっており、彼女(ニコル・ティポドー)は絶大な権力を持っていた。ある日、マクファーソン法が施行され、一人の精神分析医を除いて診断が禁止され、精神疾患はすべて薬剤治療とするように決まってしまいました。それは、念動力でピアノを演奏するリヒャルト・コングロシアンが必ずその精神分析医のエゴン・スパーブを訪れて治療にあたらせるためでした。一方で、その念動力で演奏した音楽を録音するため、ナット・フリーガーは、音楽会社であるEMEの社長命令によって社員を率いて、コングロシアンが夏の避暑地として滞在しているとの情報を得た場所に向かいます。そこは、核戦争の後遺症でネアンデルタール人として退行進化したチュッパーたちの住む、雨林地帯でした。また別の動きとして、政府公認の巨大企業でシミュラクラ製造会社の社員、ヴィンス・ストライクロックと哀れなほどちっぽけなシミュラクラ製造会社に勤める兄のチック(チャールズ)・ストライクロックと弟の妻ジュリーの関係や、ジャグ演奏家のイアン・ダンカンとルーニー・ルーク社長の元で超小型違法宇宙船ジャロピーを販売しているアル・ミラーによるホワイトハウスでの演奏、あるいは、NP長官ワイルダー・ペンブローク、宗教団体〈ヨブの息子たち〉のリーダーであるベルトルト・ゴルツなど様々な思惑が絡み合っていきます。そんな中、ニコルはタイムトラベルが可能なフォン・レッシンガー装置を使い、第三帝国からゲーリングを呼び寄せ、恐ろしい計画を実行しようと動きだしました……。
もう、何がなんだかわからないですよね。それでも、SF的なガジェットや超能力が出てきたり、タイムトラベル装置やパラレルワールドの存在を元にしたストーリーは、ディックらしい笑える場面もあってとても楽しめました(P39のディックの結婚観やP128の女性観など)。しかし、複数の場所で起こるプロットが、ごちゃごちゃと複雑に絡み合って展開されていき、終盤に話しがまとまっていくストーリーは、怒涛のように展開されて読み応えがあっただけに、終わり方が中途半端な感も否めないです。
ディックは自身のドラッグ体験から、虚構と現実の曖昧な世界を描くことが多いですが、本作では模造品(シミュラクラ)として権力者の偽物を登場させ「真実とは何か」を問いかけることにより、情報操作される社会の危険性を描こうとしたストーリーは、よく考えられているなと感心しましたが、もう少しスッキリさせて欲しかったですね。例えば、ヘルマン・ゲーリングの話しは必要だったのかとか。ドイツ語がたくさんでてくるので、最初から必然事項だったのかもしれないけど。
あと、固有名詞の人物がやたら多く登場するのが、複雑なプロットに輪をかけてわかりづらくしています。黒いポジトロンの裏表紙に登場人物が書かれているのは『宇宙の眼』と本作のみですからね。その『宇宙の眼』は12人ですが、本作は26人(実際は54人+名無し数人)。その多さがわかろうというものです。
名無しといえば“隣の家族“の会話が面白かったです。
正誤(初版)
P6の13行目:
デリカドに火をつけると
↓
デルガドに火をつけると
※葉巻のブランド。 -
Posted by ブクログ
“父親は壺なおし(ポット・ヒーラー)だった。そして彼も、壺なおしを仕事にしている。”と、印象的な書き出しではじまる原題もそのままズバリ『Galactic Pot-Healer』。
映画スターウォーズ顔負けの多種多様な宇宙人がでてくる、彼独特の虚構世界を描いたSF小説でしたが、タイトル同様にディック特有の笑える箇所も多くて読みやすい作品。ディック好きなら読んで損はないと思います。
あらすじ:
腕利きの陶器修復職人であるジョー・ファーンライトは、荒廃した管理社会と化した地球で7か月も仕事の依頼がない失業状態にありました。陶器はプラスチック製に取って代わられ、父から受け継いだ職人技を振うこともできず、妻には離婚され自ら命をたつことを考える毎日。救いは仲間とする、東京や神戸のコンピュータに接続して興じる言葉遊びのゲームでしたが、それすら虚しく感じ、将来に何の目的も希望も持てなくなってしまいました。
そんなある日、”壺なおし求む。謝礼保証”という仕事のオファーが届きます。メッセージの発信主は、シリウス星系のグリマングという謎の人物。依頼内容は、海底に水没した大聖堂の引き揚げに伴う遺物の修復でした。ジョーは半信半疑ながらも地球を離れ、シリウス星系に旅立ちます。そこでは、さまざまな種族や異なる技能を持つ宇宙人たちが招かれており、恋仲になったマリ・ヨヘスらと共に大聖堂の引き揚げに取り組みます……。
感想としては、笑える箇所が多々ありますが、9章がいいですね。失敗を恐れる集められた仲間たちを、グリマングが教え諭す場面や、他の恒星系の宇宙人が、ゲーテ『ファウスト』を論じている場面、江戸っ子言葉を喋る自律ロボットのウィリスの登場などがあり、これ以降で物語が本格的に動き出します。物語の終盤では、大聖堂引き揚げの成否より、ジョーが自分が自分であることの意味を知り、自らの再生への第一歩を踏み出していく様子がいいなと思いました。そのラストですが、恋仲になった女性の行動を含めて、仲間達の選択には「えっ?」となりましたが、さらに最後の一行には驚きましたね。宇宙一の壺なおしの鑑定眼から見ると当然の結末だと思いましたが、解説の旧訳サンリオ版との訳の違いに感心しました。新訳の方が正解でしょうね。
その解説では、アーシュラ・K・ル・グィンが気に入ってくれたとか、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアが、冒頭の書き出しから数ページ読んだところで、このままでは自分の原稿の締め切りに間に合わなくなると、自分宛に郵便物として出して手元から遠ざけた話しや、ロジャー・ゼラズニイがディック長篇ベスト3に数えていることなど書かれていて興味深かったです。
正誤(初版)
P15の3行目およびP286の8行目
『陽はまた昇る』→『日はまた昇る』
※ヘミングウェイの小説タイトル。”新潮も岩波も集英社も”日”ですし、何より同じ出版社のハヤカワepi文庫が”日”なので。
P106の1行目
まずまず現代的な都市の輪郭が
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まず現代的な都市の輪郭が