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Posted by ブクログ
著者自身の言葉として、「非現実に対するわたしの不安はこの作品から始まっている。」と解説の最後に引用されています。つまり、後の作品群のいわゆる”ディック感覚”と呼ばれる最初の作品ということができるでしょう。
とはいえ、今まで読んだディック作品の中では、わかりやすくてとても面白かったです。仮想現実や多元世界に興味がある人にはツボでしょうね。ラストも、考え方によってはループ物を想起させますが、いい終わり方でした。
内容に少し触れると、人それぞれが思い描く世界観がリアルに体現できたら…ということですが、それが自分の世界観ではなく、誰かのものだとしたら…という感じ。例えるなら、読書嫌いな人の思考にとらえられ、レイ・ブラッドベリ『華氏451度』のような世界に放り込まれたら、ここの人たちは発狂ものですよね?しかもそこから別の世界に行けば、そこはそこで別の他人にとって心地よい世界だなんて悪夢ですね。それにしても、よくこんなストーリーを思いつくものだと感心したのでした。
あらすじ:
ジャックは、妻と楽しみにしていた陽子ビーム加速器の見学会に行く予定でした。しかし、直前に上司から呼び出され、妻が共産主義者であると嫌疑をかけられ、会社をクビになります。情報の出所は、同僚で会社の保安係のマクフィーフ。彼は罪滅ぼしに、二人を見学会に車で送ってゆき、自身も見学することに。しかし、そこに居合わせた他の見学者とあわせた8人が、陽子ビームの放射事故に巻き込まれてしまいます。そして、ジャックが病院で目覚めたとき、そこは彼の知っている世界とは何かが違っているのでした……。
注意:猫好きな人へ。一部残酷なシーンあり。
Posted by ブクログ
意外にも良心的な結末にちょっとビックリ(…ハッピーエンドですよね?)。
先日読んだ「発狂した宇宙」と並び多元宇宙の金字塔と評される本書です。どちらも現実と異なる世界に迷い込み、四苦八苦するという点では同じですが、「発狂した宇宙」における多元宇宙が無限にある宇宙のひとつだとすると、こちらは極端な考え方をする誰かの意識(しかも複数)に迷い込みます。また、「発狂した宇宙」で訪れる宇宙がSFオタクの空想ものだとすると、こちらは現実の主義主張の地続きの異世界が舞台。だから甲乙つくわけではありませんが、楽観的に読み進められた発狂した宇宙に対し、不安と疑心がつきまとう本書でした。
読み終わって改めて思うことは、ディックの作品ってやっかいだなぁということ。大雑把に物語を掴むことはできるのですが、細かなところで「なんでこんな展開?」と思うことが多くて、腑に落ちない。表面の物語に隠れたメッセージの存在を察知するのですが、どうも要領を得ない。まぁ単に読解力がないと言われればそこまでですが、やっかいだなぁと思うことしばしば。短編は解りやすいんですけどね。とはいえ、こんな悶々とすることも含めて、ディックの作品に漂う魅力は間違いなくて、だから周期的に彼の作品を読みたくなるんですねぇ。
Posted by ブクログ
ディックの小説の中でも好きな作品になった。
時に難解な(というか破綻している(そしてそれが魅力だったりする))他作品とは一線を画し、物語は分かりやすく、SFとしての魅力も十二分な世界観である。
事故にあった人々の理想世界に転移していくのだが、それぞれが思う理想郷がいかに他者にとってのディストピアとなるのか、そこに宗教や共産主義、はたまた人種差別などの要素をシニカルに描くあたりがディックらしい。
最後は後日譚の様相であるが、果たして現実に戻ったのか。よほど大きな事故にあったであろう当事者たちが元の元気な姿になるとは思えない。やはりこの世界は誰かの夢の中?
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