あらすじ
第二次世界大戦が枢軸国側の勝利に終わってから十五年、世界はいまだに日独二国の支配下にあった。日本が支配するアメリカ西海岸では連合国側の勝利を描く書物が密かに読まれていた……現実と虚構との間の微妙なバランスを、緻密な構成と迫真の筆致で描いた、P・K・ディックの最高傑作!
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Posted by ブクログ
もしもドイツと日本が、第二次世界大戦の戦勝国だったら……(; ・`д・´)
非常に興味深く面白い作品!!
ドイツの第三帝国(ナチスドイツ)に至るまでの大まかな歴史と、ヒトラーの周囲を固める親衛隊SS達(ヒムラー、ゲーリング、ゲッベルス、ハイドリヒ等)を知識として知っていると、理解がしやすいと思いました。
この小説の冒頭に参考文献としてウィリアム・シャイラー著『第三帝国の興亡』が挙げられていました。
この本、1から5巻まであるのですが、たまたま私、1巻だけ既読で………
なんで全部読まなかったんだぁ〜と後悔(^^;;
一巻はですね、第一次大戦後のハイパーインフレで国が混乱している中、ドイツ社会民主党を抑え、ナチ党が誕生するまで。
独裁国家の始まりまででしたが、読み応えたっぷりでした…(~_~;)ブアツイ…
私が、以前読んで非常に参考になったと思った文献は風刺画集でした。
『風刺画とジョークが描いたヒトラーの帝国』
プロパガンダで使われた風刺画がジョークも交えとても分かりやすく、読みやすかったです。
さて『高い塔の男』の感想に戻ります(^^;;
戦勝国はドイツ帝国、イタリア、日本。
アメリカには、日本やドイツの占領地区があり、ユダヤ人はドイツ領に送還されてしまう世の中。
ドイツの科学技術で月へ、火星へと進歩していますが、日本は技術的にはいまいち…笑
アーリア人が最高種族であり、人種差別が凄い…。
故に、登場人物のアメリカ人達は(敗戦国だからと)卑屈な気持ちで生きています。
と、まぁ、予測出来るような世界になる訳ですが、この小説の面白い所はそこだけじゃありません!
登場人物の日本人はものごとを選択する際『易経』を使用します。
日本のイメージよ…σ^_^;
日本が戦勝国である為、一部のアメリカ国民にも易経が普及。
自然に取り入れられているのが不思議ですが、信じる人は当たり前のように占います。
この易が占う結果と『パルプ・フィクション』のように繋がっていく登場人物達が見どころ(〃´-`〃)
もうひとつあります!
ホーソーン・アベンゼンなる作家の『イナゴ身重く横たわる』というベストセラー本が出てきます。
この本が「もしもドイツと日本が戦争に負けていたら」というテーマで書かれているんです。
この作中作の仕組み、大好きでして(๑¯ㅁ¯๑)♡
そうきたか!
リアルの今と違うんか?
と、興奮してしまいました笑(º﹃º )ヨミタイ…。
登場人物達の心理描写も細かくて、反発や揺れ動く気持ちは何とも言えずリアルな感じ…。
難しかった…という感想が多いように感じ、⭐︎評価がいまいちですが、私はすんごくすんごく面白かったです!!
『アンドロイド〜』『ユービック』と共に同じくらい好きな作品になりました(ღ*ˇ ˇ*)。o♡
おすすめですよ!!!
Posted by ブクログ
枢軸国と連合国の勝利逆転if小説ですが、架空戦記ではなく人間関係や各各々の国の人間性を詳しく描かれ、敗戦国から全てを取る戦勝国などが詳しく描かれていてとても面白かった。恐らく史実のアメリカが史実の日本にソ連がドイツに置き換わっているのでしょう。
Posted by ブクログ
メタフィクションの構造と、あくまで読んでる側の世界が真実である結末、そして悪の存在を認めながら複数の世界線を選び進んでいくことを勇気つけるような内容が素晴らしかった
Posted by ブクログ
ディックの作品は「アンドロイドは〜」以来なのですが、作品設定として仮定した社会の描写力がすごい。この物語では「連合国が敗北した社会」でのアメリカの精神がどうなるか、人々がどのような生活を送っているかの描写が群像劇の中でリアリティを持って描かれています。
個人的にドキッとさせられたのはラストの易経「米国が勝ったのが真実である」でしょうか。今までフィクションとして読んでいた物語からこちらからを見る眼差しがある、ということに新鮮味を感じました。何度でも読み直す価値がある作品です
Posted by ブクログ
【高い城の男】 フィリップ・K・ディック 著
第二次世界大戦は、日本・ドイツの枢軸国が勝利。日本が統治する米国カリフォルニア州での生活風景を描きながら、「第二次世界大戦は米英が勝った」というSF小説を書く「高い城」に住む男の物語も書き綴るというSF小説(ややこしい)。「現実と虚構との微妙なバランスを緻密な構成と迫真の筆致で書きあげた、1963年度ヒューゴー賞受賞の最高傑作」という売り文句にやられて読破しました。
少々ネタバレになりますが、ヒトラーはその後、精神疾患となりボルマン党官房長官が後を継ぐも、その後亡くなり、「え~!」と思う人物がドイツ首相に就任。これによって、「え~!」と思うような日本への影響もあり…の場面は面白かったのですが、総じて日常風景が描かれ、「これが何故に『三体』と同じヒューゴー賞?」という感じでした。書評などを読むと、熱心なディック氏ファンにとっては「最高傑作!」で、SFファンには「たまるか~!」もののようです。もし読まれた方がいらっしゃれば、読後感をいただきたい一冊です。
Posted by ブクログ
初めてフィリップ・K・ディックの作品を読んだ。ストーリーははっきりしている。登場人物の関係性もわかる。緊張感をはらんだシーンも続いて飽きることなく読み進むことができる。度々現れる卦の部分も物語を進める装置としてうまく働いている。ではこの小説全体としてどういう意味なのか?と問われると、うまく答えられる自信はない。
歴史の逆転する仮説そのものを細かく書き出すことには、例えそれが一つの重要な要素であるとしても、最も大きな意味があるということではないだろう。その小説の中で、その小説のなかの現実とは逆の世界を描いた小説、つまり本当の歴史に近いものが登場人物によって書かれて、読まれているというのはさらに大きな意味はあるのだろうけどそれ自体は小説の構造を成しているという意味で重要であるが、描かれた世界の持つ意味はなんだろう?
「イナゴ」を書いたアベンゼンの空虚さはどう理解すれば良いのか。バイネスと矢田部の意味のありそうで空虚な会談は田上の心を揺らすための仕掛けなのか。最後まで会うことのないフリンク夫妻が混沌とした世界の良心のように見えるけど、結局のところ易経に依存して生きているようにも見える。とはいえフランクフリンクとチルダンはアメリカ人としての良心のようなものを自分たちが作り出して世の中に出していくアクセサリーの中に見出しているように感じられて、それがこの世界の希望のようにも見える。
高い城は結局現れず、そこには底の知れない空虚さが口を開けている。わずかながらの良心のようなものが風に吹かれて偶然のように過ぎ去っていく。
理解を超えた部分で心に残る作品。
Posted by ブクログ
原題 The Man in the High Castle
”かかる人々は高き者を恐る畏しき者多く途にあり 巴旦杏は花咲くまた蝗もその身に重くその嗜欲は廢る”
すべては虚しく、
それでも生きる。
グランド・ホテル形式で織りなす、
枢軸国が連合国に勝利した世界の、
意味の中に無意味な真実を見出す、
救われないようで救われた人たち。
…かな?
それにしても易経とはね。
決定された未来に一喜一憂し、希望をなんとか(都合よく)読み解こうとするのは、とても人間ぽい。
「イナゴ身重く横たわる(The Grasshopper Lies Heavy)」という作中作が虚偽の虚偽で、じゃ真実かというとそうでもなく、でも真実という卦が出るのも面白いです。
なに言ってるかわかんないですね笑
読めばわかります(たぶん、ですけどー)。
これと同じような和訳があてられているデビュー作「ウーブ身重く横たわる(Beyond Lies the Wub)」も読んでみよっと。
Posted by ブクログ
舞台は、第二次大戦が史実と異なる結果を迎え、ドイツと日本が戦勝国となった世界。敗戦国アメリカの国民は自尊心を失い、両国との狭間で翻弄されていく。
舞台設定的には、ifモノの歴史が好きな層に受けそうだし、それだけでワクワクしてしまうが、本質としてこの物語が訴えたかったことは、「今、生きているこの世界こそが真実であり、懸命に、前を向いて生きていくしかない。」(つまりあの時ああだったら、本当はこんなはずじゃなんて考えたところで無駄。)ということだと思う。
そのメッセージを表現するのに、劇中劇として登場人物たちが虜になる「身重くイナゴ横たわる」という本が大きな役割を果たしている。この本は「もし連合国側が勝っていたら」を描いているが、史実と微妙に異なる内容である(真珠湾攻撃が失敗する、チャーチルが90歳まで首相を務めている等)こと、終盤に主人公の一人であるジュリアナに、この本の世界こそが真実である(つまり劇中の世界は嘘である)とメタフィクションを告げていることから、物語は「結局どの世界が真実かなんて重要じゃない、知ったところでどうなる?」と読者に問いかけている。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦で枢軸国側が勝利した世界に生きる人々の群像劇。
北米は3つに分断され、日本支配地域、ドイツ支配地域、中立地域となっている。
ドイツは水面下で、日本を破壊して世界を征服しようと画策している。(タンポポ作戦)その矢先にボルマン首相が死去。タンポポ作戦の賛成派であるゲッペルスが次の首相として有力視されている。一方、タンポポ作戦反対派のハイドリヒが盛り返しているという話もある。小説で描かれているのはこの辺までで、その後どうなるのかは分からない。
ホーソーン・アベンゼンが書いた「イナゴ身重く横たわる」という歴史改変小説が流行している。この本では(現実の歴史とは詳細が異なるが)連合国が勝利したことになっている。
登場人物の多くが易を行い、自らの行動を決定する。
設定はあくまで設定で、その中での複数の登場人物の行動がそれぞれ独立して描かれているのが面白い。各登場人物の行動は絶妙に交錯している。
ジュリアナの最後の結論「ドイツと日本が負けたのが事実」というのと、田上が見た幻覚がよく分からない。架空の登場人物が動く世界(高い城の男)が虚構で、ジュリアナと田上は現実(高い城の男の読者がいる世界)を一瞬垣間見たということなのか。
Posted by ブクログ
ちょっと難しかった。私にとって、いちばん衝撃的だったのは、中学生の頃に読んだ「ユービック」でした。でも、ディックの作品は気になってしまうので、少しずつ読んでこうと思います。
Posted by ブクログ
あとがきによると、「もし戦争に負けてたらどうなってた?」を描いたフィクションって結構あるみたいですね
日本版だと「もし日露戦争に負けてたら」みたいなのがあるんでしょうか?
登場人物ごとに別々の物語が並行して進むのでちょっとややこしかったけど、書き出して整理しながら読んだら理解できて、読み終わったときはけっこう達成感ありました
Posted by ブクログ
WW2枢軸勝利endの歴史改変SF、という予備知識だけで読んでみたが、人物描写のしっかりしたなんてことはない群像劇だった。
日帝と第三帝国の描き方はしっくりくるところが多く、全体的に読みやすくもあったけれど、ジュリアナと田上のパートではだんだんと頭がおかしくなりそうな感覚もあって少し疲れた。
Posted by ブクログ
初めてディック作品を読んだ。
枢軸国が連合国側に勝った世界という派手な設定の割に、結構地味な話って言う印象。
かなり好きな種類の話のはずだけど、後半はちょっと退屈してしまったw
たぶん読み返してじわじわくる作品なんだろう
Posted by ブクログ
設定は最高。手に取った時ワクワクした。
展開と中身は。。。なんか気が散る文章で生成AIとウィキペディア駆使してなんとか読んだ。
易経が万能すぎる。易経本だこれは。
Posted by ブクログ
日本人独特の、
良く言えば奥ゆかしい
悪く言えばはっきりしない
特有の気質といおうか、国民性をディックはどうやって仕入れたのだろう。
日本人歴の長い生粋の日本人からして「ん?」となる部分もないわけではないが、違いが文化を生むのだから「アメリカ人から見た日本人の描写」というのも面白い。そもそも違う国の人同士が交わる大陸横断型の小説は難易度として高いのではないのか。ドイツ人も出てくるし。
内容自体は「フィリップ・K・ディックの小説!」という意気込みで、SFを期待してたので、肩透かしを食らった感は否めない。
支配者側の田上氏は白人に差別的な意識はあっても人を殺したという人道的な罪悪感に苛まれ、チルダンはフリンクの装飾品によって悟りを開けたという皮肉。
日本人がアメリカ人の面子を潰す、という想像出来ない構図。ディストピア。
Posted by ブクログ
ディックの最高傑作に推す声も多い本作はWW2で枢軸国が勝ちドイツと日本が超大国となっていたら…という歴史改変物。実在の人物についてかなり触れられていたり、改変歴史の中でさらに「連合国がWW2で勝っていた歴史if」を描いた小説が軸に登場するなど虚実を織り交ぜた構成。しかもそうした構成を下敷きにしつつ、主に描かれるのはそれぞれの立場でもがき悩む人たちの内面の葛藤だったり、その悩みの拠り所として易経が重要要素として描かれたりするのでなかなか独特。日本人やドイツ人が読むのと戦勝国側の人が読むのだとそれぞれどんな読後感の違いがあるんだろうと気になります。
Posted by ブクログ
不思議な力強さのある作品でした。
本当にそっくりそのまま世界が反転していのは凄かったです。確かに日本とドイツが世界大戦で勝っていればこんな世界になっていたのだろうと想像ができます。陰鬱で秩序や差別が厳しい世界。
日本タイムズなどは、読んでいて言葉が面白かったです。西海岸は日本が占領しているなど、ありえなさそうで、でも勝利していたらありえそうで、白人が日本人にあんなにオドオドする姿はある意味新鮮でした。アメリカと日本の立場が見事に逆転していていました。
内容はかな。哲学的、人とは何なのか、人種とは何なのかという自問自答が多い。国家とは何なのか、そういった思想に近いモノを一人一人が抱えており、その思想が正しいのかどうか、自分の判断を占う為に、易経という占い(おみくじに近いかな)みたいなモノで、自分の指針を定めるきっかけにしている。そこはかなり古典的で物理的な方法だなと拍子抜けしましたが、日本が勝利し、日本の占い文化が西洋でも根付いた結果、易経が広く浸透していたのかもしれません。
個人的には、ドイツは勝利してもヒトラーがいなければ、ナチスは機能しないと思いました。、ヒトラーがいなくなれば、ナチはうまく機能しないと思っていた。たとえどれだけ優秀な人がいたとしても、内輪揉めで崩壊する、いや、この作品はその崩壊する一歩手前を描いていたのかも知れない。
かなり現実的な作品、というより、登場人物にすごく軍の中枢の人達ではなく(そういう人もいたが)1人の商人やただのお金持ちなどが登場するため、その辺りが自分達とある意味変わらず、心情を理解しやすかったです。
第二次世界大戦後期あたりの知識がないと、世界観をうまく掴めないかも知れないです。特にドイツに関する知識は必要かも。YouTubeの簡単な解説をご覧になってからこの本を読む事をオススメします。
Posted by ブクログ
ユービックを読んで、「うわあああああ好きいいいSF最高……早く次!!!」となった勢いで、内容を全く知らずに読んでしまった。
つまりディックの超SF世界観を求めて読んでしまったので、あまりSF味のない雰囲気に結構な落胆を感じながら頑張って1冊読みました。笑(誰も悪くない)
第二次世界大戦について、恥ずかしながら本当にざっくりしたことしか知らなかったので、
大人になった今、改めてちゃんと学ばないとな…と反省。詳しい事実を知っているほど楽しめる作品。
なんたって子供の頃、歴史が1番嫌いな教科だったからな……(盛大な言い訳)
けれどそういった戦争どうのこうの〜〜だけを伝えたい作品ではなく、もっと抽象的で心理的な訴えを強く感じた作品だった。
5年か10年おきに読んだら、毎回自分の成長まで感じられそうな作品。とりあえず30歳になったらまた読もう。
Posted by ブクログ
リドスコのドラマの方は1話でやめてしまい…
本は読み切ることできてよかった!
ちょっと思った内容と違ったけど、、
ドラマでは自由の女神の破壊シーンとかあるのか笑
Posted by ブクログ
1962年、第二次世界大戦に勝利した日本とドイツはアメリカを分割占領され、太平洋側は日本の統治下に置かれた。日本統治の影響で中国由来の『易経』が普及し、日本人アメリカ人を問わず多くの人が易により物事を判断するようになっている。さらには「第二次大戦に連合国側が勝っていたら」という内容の小説が評判を呼んでいた。
アメリカ古美術商のロバート・チルダン、通商代表団の田上信輔、贋作工場で働くフランク・フリンク、フランクの元妻・ジュリアナ、プラスチック産業のビジネスをするバイネス、イタリア人トラック運転手のジョーなど、さまざまな人の物語が交互に進み、そこにドイツ政府の思惑も交錯する。
もし第二次大戦で日独が勝っていたら、という歴史改変モノなのだが、あくまで登場人物の物語が中心で、大戦終結以降の政治や歴史は断片的にしか描かれていないのでその方面を期待しては肩透かしをくらう。また、各登場人物の物語も丁寧に描かれるため、小説全体の進行もゆっくりとしている。
田上や梶浦夫妻などの日本人に対するチルダンの卑屈な心理が描かれているが、これが戦争に負けて占領されることに対する(当時の)アメリカ人の見方なのかもしれない。
Posted by ブクログ
わかったようなわかんないような
不思議な読後感なのですが
読んでいるときは妙におもしろい。
久しぶりに読んだけど
そういえばディックって私にとっては
そういう作家だったっけ。
日本とドイツが第二次大戦に勝った
架空の世界が舞台なのですが
日本人の田上が主要な役どころで
これが今読んでも「あ、なんか日本人」
思考回路とか、ちょっとした行動とか。
すごいな、ディック御大(笑)
敗戦国となったアメリカで
新しい製品作りに取り組むフリンクや
少しずつプライドを取り戻していく
田上御用達の骨董品店長チルダンの姿が
現実日本の戦後復興期に踏ん張った
人々の写し身のように思えた。
Posted by ブクログ
1984.7.31 発売!!
うん!内容が相変わらず難しいです!
カズレーザーが全く話が理解できなかったというエピソードがあって読んだのですが、これは難しい!!
はっきりいって3割も理解できてないんじゃないかな。ディック作品で電気羊がよくわからんくて微妙だったら避けた方がいいかも。
Posted by ブクログ
歴史改変系SF小説。
日本とドイツが戦争に勝ってアメリカを統治している世界、そんな世界で流行っている小説は『イナゴ身重く横たわる』という、連合国側が勝利したらと言う歴史改変小説だったりする。
登場人物が、歴史上の人物だったりオリジナルだったり、国籍人種も多様で何回も読み返さないといけなくて時間がかかってしまった。
真偽
これがテーマなのだと思う。本物と見分けがつかない贋作。歴史という付加価値の曖昧さ。小説と現実。偽名の政治家と暗殺者。
歴史を失った国で生まれた新たな芸術と、歴史ある占い易が、本来あるはずだった歴史を垣間見せるというのが面白い。
一方、読み終わった時に「え、これで終わっちゃうの」とも思った。
Posted by ブクログ
アベンゼンは『易経』を使って小説『イナゴ身重く横たわる』を書いていた。ジュリアナが「なぜその本を書いたか、我々はその本から何を学ぶべきか」という問いを立てて易を行うと、「真実」という回答を得る。ジュリアナは、本に書かれていることが真実であるというメッセージとして受け取る。これが、本作の幕切れ直前、結論のような位置に置かれているシーンだ。
ここから読者は何を読み取ればいいのだろうか?
(a)彼らの世界で起こった出来事は真実ではないということか? それとも、(b)これからドイツ帝国の崩壊や、日本への水爆投下が起こり、プロセスこそ違えど、最終的には本に書かれた世界と同じような結果にたどり着くという予言なのか? あるいは、(c)幾千幾万もの偶然の積み重ねにより、無数の可能世界が生じているという視座を暗示しているのか(この解釈は弱い。もしそうならば、彼らの世界も、本に書かれた世界も同等に「真実」なのだから)。しかし、(d)そもそも『易経』は単なる占いであり、占いは信じなければ無意味だし、信じる人には、曖昧な示唆のレベルで意味を持つものだ。アベンゼンの本が占いの結果の集積であるなら、その本が価値を持つのは、それを真摯に受け止める場合のみである。だから、アベンゼンの本から学ぶべきことは、「戦勝国となった枢軸国がアメリカを支配する現状を宿命と受け止めて、その現状に馴致するような生き方をするな。彼らの勝利は確率的なものでしかないし、彼らは勝ちながらにして実質、負けていることすらあり得る」といったメッセージだ。
本作では、個人がさまざまな選択を迫られ、よくわからないままにどれかを選択しながら生きている様子がしばしば描かれている。田上にしろ、フランクにしろ、ロバートにしろそうだ。その都度選択をし、そして人生が展開していく。そのことを肯定的に書いていると思う。反対に、「あり得たかもしれない世界」「選ばなかった世界」についてあれこれ考えを巡らせることは停滞でしかない。だから、パラレルワールドの存在を示唆しているといった解釈は、本作の場合、そぐわないと思う。ロバートは、日本人たちに表面的に媚びへつらう商売をしながら、やがて西欧文明を受け継ぐものとして自信を取り戻していった。戦争に負けても、そのことを絶対視する必要はなし、ましてや卑屈になる必要はない、という価値観を示すためにロバートというキャラクターは作られたのだと思える。だから、私は解釈(d)こそが一番もっともらしいと思う。
負けは負けとして認める。けれど、そのことを絶対視して卑屈になるべきではない。戦争の話じゃなくて、個人の人生の教訓。
「ディック作品にありがちなプロットの破綻が見られず」(訳者あとがき)という点が高評価(1963年ヒューゴー賞受賞)の一因らしいが、私はプロットが破綻しているディック作品のほうが断然スリリングだと思う。プロットをあまり決めずに書くようになった『OUT』以後の桐野夏生のほうが、彼女の初期作品より素晴らしいように。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦が枢軸国側の勝利で終わったという世界。
日本やドイツに統治されている米国。
ドイツが統治する地域では禁書となっているという小説が、それ以外の地域では話題になってヒットしている。内容は、第二次大戦が連合国側の勝利で終わった世界を描いたもの。
登場人物の多くが自らの進むべき道を「易経」で占っている。
本作は1962年に執筆されているが、この時代には易経が流行っていたのだろうか…。1978年に出版された『宇宙船とカヌー』でも、ジョージ・ダイソンが旅の出立をいつにするか易経で占うべきかなぁ、なんて言うくだりがあった。
この世界で売れているという小説の作者も、ストーリーの展開を易経で占っていたと告白する場面があるが、実はP.K.ディック自身が本作を書く上で実際にそうしたことがあると解説にあった。
作中の小説の内容と、現実の歴史と、登場人物の振る舞いとディック自身の振る舞いと、最後の平行世界的どんでん返しで目くるめく感覚に陥る。
骨董品屋と贋作メーカーとの関係など、本物とレプリカをめぐる物語などもディックの真骨頂と思わせる。
なかなか面白かった。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦で枢軸国側が勝利した世界を舞台にした小説。そしてその小説世界には、もしも連合国側が勝利していたらという世界を描いた「イナゴ身重く横たわる」という珍妙なタイトルの小説がある。そしてどうやらその「イナゴ・・・」の世界は、連合国が勝利しているものの、いまこの「高い城の男」を読んでいる私の住む世界とも少々様子が違うようだ。
もしかしたらこの「イナゴ・・・」の世界には枢軸国勝利の別の小説があり、その世界には連合国勝利の別の小説があり、そんな小説世界が果てしなく続いているのかもしれない。だとすると私が生きているこの世界も小説の一部で、その小説は枢軸国が勝利した世界で読まれており、さらにその世界も連合国勝利世界で読まれる小説世界で、だとしたら私は一介の小説的存在にすぎず、あぁこの私という人間は本当に存在しているのか!?
・・・とまではさすがに思わない。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦にドイツと日本が勝利した世界、だれもが易経の占いで未来を把握し行動する。ドイツの首相逝去に伴う権力者たちの後継者争いを背景に、美術商、アクセサリー製造販売業、日本軍部の代表者たちの関わり。職工の妻が訪れるベストセラー作家。
いつSFになるんだろうと思いつつ読み進めていましたが、この世界構築そのものがSFだったんですね。占いに信頼感のある世界っていうのも面白いかも。
Posted by ブクログ
ディックの作品は少しだけ読んでいるが、中でもこれは難しかった。歴史改変物なので、歴史が苦手な私には辛いものがある。「偽物」と「本物」がテーマになっていることは辛うじて理解した。話としては特に大きな盛り上がりもなく、歴史改変以外にはあまりSFらしいところも見当たらない。ただラストの易経のくだりはなかなか好きだった。色々調べて高く評価されているようだから私の理解が足りないのだろう。詳しい解説が欲しいところだ。