【感想・ネタバレ】ザップ・ガンのレビュー

あらすじ

西側陣営の兵器ファッション・デザイナーであるラーズ・パウダードライと、人民東側のリロ・トプチェフは、日々、超次元空間に意識を浮遊させ、独創的で戦慄すべき殺戮兵器を開発していた。だが、この開発競争は東西両陣営による大嘘であった。新型兵器の殺傷能力はゼロだったのだ! だがある日、エイリアンの衛星群が突如襲来し、地球は絶体絶命の危機に! かくて二人は、協力して本物の究極兵器の開発に着手するが……!?

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Posted by ブクログ

話しの設定は面白いのですが、構成に難ありといった感じ。そのあたりのことは、あとがきに著者の言葉が掲載されていますが、個人的には充分楽しめました。

あらすじ:
2004年、世界は東西両陣営に分かれた冷戦下にありました。その両陣営共に、武器開発は超次元空間に意識を浮遊させ、トランス状態になって独創的な殺戮兵器をスケッチすることにより、アイデアを得る方法が取られていた。その職種は、兵器ファッション・デザイナーと言われ、西側はラーズ・パウダードライ、東側はリロ・トプチェフが担っていた。しかし、これらのアイデアを反映した兵器は、新兵器のデモンストレーションと称して、実際のことのようにドラマ仕立ての映像を作り上げて大衆に公開した嘘の情報でした。そんなある日、エイリアンの衛生群が現れますが、撃退しようにも発射された兵器では虚空を相手にしているも同じ。なす術がない人類は、東西の兵器ファッション・デザイナーが協力して、本物の究極兵器”ザップ・ガン”のスケッチを入手するよう要求されますが……。

そもそも、東西は表面上は対立していても、その実馴れ合っているという設定がいい。しかも殺傷能力のない武器開発を、兵器ファッション・デザイナーなんて人が担って、偽物のプロトタイプ作成に寄与しているとかね(トランス状態にあるときのアイデアの入手元には驚きました)。そんな武器開発で、どうやってエイリアンと対峙するのかが読みどころですが、ある意味エイリアンには残酷な仕打ちでしょうね。よくこんなこと思いつくなと思いました。

あと、ラーズの前任者の死因や、会社のミス・ベドウィンの最新のファッションという格好など、ディック流のギャグも健在で面白かったし、未来のアレクサを予見しているような〈オーヴィルくん〉やその他ガジェットの名称なんかを楽しめました。そういえば、直前に読んだシミュラクラの名前やAG製薬の名前が出てきたり、本作にもドイツ語がでてきてニヤニヤしてしまいましたね。

ただ、あとがきを読むと著者は気に入らないようですね。特に前半。用語の説明不足は、他の作品も同様なので、伏線として書いていた人物のことを回収し忘れて、最終章を付け足していることや、前半で語っていた主人公ラーズの愛人の性格の描写が、後半は真逆の行動をとっていたりと、話しが矛盾していることを、著者が怒りに任せて誤魔化しているだけのような気がするのですが……?後半の怒涛の展開が良かっただけに、回収し忘れた伏線のために追加されたであろう最終章が、なんだか取ってつけた感じがして残念でした。

正誤(初版)
P88の8行目:
ミター・ラーズ

ミスター・ラーズ

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2025年05月04日

Posted by ブクログ

マンガ的な雰囲気のB級SF。
トランスで新型兵器のアイディアを手に入れる兵器ファッション・デザイナーが、究極兵器“ザップ・ガン”の開発を目指すというぶっとんだ設定。SFアイディアのてんこ盛り+ディックおなじみのドラッグや社会描写などがあるが、前半部分が読みにくく、全体的にまとまりがない印象。
とはいえ、後半以降はテンポよくストーリーが展開し、美少女ヒロイン&メカもの的な面白さがあってかなり楽しめた。映画化よりもアニメ化してほしい、そんなノリの作品。世界観的にゲーム化もいけそう。シリアスな本編に直接絡まない、明らかにお笑い担当でしかないキャラもいて新鮮。読後感が良い!

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2021年02月09日

Posted by ブクログ

久しぶりのSF小説(といっても1ヶ月ぶりだが…)、そして久しぶりのディック作品(といっても4ヶ月ぶりだが…)ということもあって、期待以上に楽しめた本書は、ディック曰く「クズ」みたいな作品とのこと。「後半はまあまあだけど」とフォローをいれるものの、「前半はまるで読めた代物じゃない」と述べるように、ディックは本書にあまりよい思いを抱いていないようですね。その辺りは、訳者あとがきでの大森氏による推察を参照されたし。ちなみに本書は大森氏が初めて翻訳したディック作品とのことで、なんだか訳者あとがきから、大森氏の本書への愛着が感じられますね。

さて、ディックの長編によく感じる「ちくはぐ感」は本書でも相変わらず。気になったのは、登場人物のひとりのフェブス。最初は自分本位の塊として際立ったキャラであったにもかかわらず、途中から扱いに困ってしまったのでは?と思うぐらい物語からフェードアウト(最後らへんでお情け程度で役目を与えられましたが…)。その他にも「青い頭虫人間」やらヴィンセント(彼は終盤で重要な役割に変貌しましたが)などなど、なんだか、あっちいったりこっちいったりな展開でした。ただ、この展開がダメなのかと問われると決してそうではなくて、このちぐはぐ感こそがディック長編の面白さだったりするんですよね。いつもながら不思議に思うところ。

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2016年08月20日

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