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Posted by ブクログ
この小説の根本となるSF要素が二つある。
まずは人間は死後、冷凍保存の安息所に預けられて「半生者」になり、遺族と脳波と交流できるようになっている。半生者の脳波が消えた時が完全な死になる。
もう一つは、超能力者たち(未来予測者、心を読む)が公に存在していること。企業が超能力者を雇ってライバル会社との競争に使ったりする。そしてそんな超能力に反作用を及ぼす反能力者である「不活性者」もいる。
ジョー・チップは、超能力者たちから企業や人々を守る(個人情報を守るとか、ライバル企業の超能力を無力化するとか)会社の技師だ。ある時社長のグレン・ランシターは、月を舞台にした大きな仕事の依頼を受けて、11人の不活性者とジョーを連れて月に行く。
しかし敵対勢力の攻撃を受け、ランシターは瀕死となる。ジョーたちは安息所にランシターを運んで半生状態にしようとするが、脳波の確認はできても対話はできなかった。彼は「死んだ」のだ。
この物語を進める合間に、「ユービック」という食品の、車の、ひげそりクリームの、コマーシャルが入る。それぞれの商品は「ユービックは説明書をよく守って使えば完璧」を謳う。
そしてジョーや11人の不活性者も、月で攻撃を受けてから身の回りに奇妙な現象が起こるようになる。タバコが萎びれている、飲食物はとっくに消費期限切れ、花が枯れる、動物が老化で死ぬ、という退行現象。そしてコインがずっと昔のものになっていて使えない、エレベーターが昔の上下昇降機に変わるなどの時代逆行が起きるのだ。そしてこの退行は、11人の不活性者にも急速な老化現象として見舞われる。
状況の確認と対策を考えるジョーに、死んだランスターの声が聞こえるようになる。それによると「わたしは生きている。死んだのはお前たちだ。」
ジョーは、ランシターの声が語っていた退行を止める「ユービック」というものを入手しようとする。ここで、小説に差し込まれていたユービックCMは「退行を止めるためにユービックを手に入れよう。しかしここは半生者の世界だから、このようなCMでアピールしている」ということが分かりました(間違っているかもしれない)
だが本当に自分たちは死んでいるのか?やはり自分たちは生きていて死んだのはランスターなのでは?とも疑う。
そうするうちにジョーの周りの物はどんどん古びていく。
===
退行(食べ物がカサカサになる)と時代逆行現象(エレベーターが旧式に変わる)の原因は?
ジョー達の敵は何者なのか?
ジョーが生きているのか、ランスターが生きているのか、それとも両方死んでいるのか。
謎、謎、謎、全てが謎というミステリーとして話を追っていったら、死者と生者の区別や隔たりとは何なのか、脳波だけ活動している死者の感じる世界とはどのようなものなのか、人は世界とどのように繋がるのか、精神での戦いとはどのようなものか…
Posted by ブクログ
フィリップ・K・ディックで一番人気とも言われる本作。まだ全作品を読んでませんが、自分も読んだディック作品の中ではNo.1だと思いました。
あらすじ
1992年、企業が超能力者を雇う一方、その勢力に対抗する不活性者(超能力を無効化する者)を派遣する会社が存在する時代。主人公は、反エスパー派遣会社「ランシター合作会社」の主任測定技師のジョー(ジョーゼフ)・チップ。彼は、社長のグレン・ランシターから、ある企業の月面支社が大規模なエスパー潜入の疑いがあるとの依頼を聞き、社長と選りすぐりの不活性者11人と共に月面に向かいます…とこれ以上書くとネタバレになってしまいますね。
『偶然世界』にも出てきた、人の心を読む”覗き屋(ティープ)”などの超能力者たち。それらに対するアンチテレパスなどの不活性者や、時を逆行して過去を変えれる能力を持った謎の女性。死後まもない冷凍した人体と会話ができる”半生者”。ドアを開けて外出するだけで金がいる世界観などなど…道具立てもさることながら、ストーリーも起伏のあるミステリ仕立てで、とてもワクワクドキドキして面白かったです。
ちなみに、ディックの存命中は、あまり売れていなくて、お金に苦労していたせいか、主人公の名前はチップ。電気羊が『ブレードランナー』として映画が完成したのは、著者の死後ですからね。お金のかかるドアと、時間遡行したときのドアの話しのありように苦笑い。ほんとにお金に困っていたんだなと同情もしました。
ところで、ディックは、人によって合う合わないが激しい作家だと思いますが、シュレーディンガーの猫や量子論、あるいはスピリチュアル系なんかに興味がある人には会うと思います。例えば、映画の『マトリックス』を見て、あーそういう世界、アリかもしれないよね〜と思える人とかね。そういう人には、特におすすめです。
正誤 24刷
P233の16-17行目
“オーディオラ”ラジオに視線を移した。
↓
“オーディオ”ラジオに視線を移した。
Posted by ブクログ
SFの長編小説をがっつり読んだのはたぶん初めてだったけれど、おもしろくてするする読めた。今までちょっと避けがちだったのがもったいないと思ったくらい。
ディックはブレードランナーの原作者として有名だけど(『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』)、このユービックの方がディック初心者向きらしい。
SFってパキっと明るいものだとちょっと思ってたけど(思い込みだらけ。。。)、ディック特有なのかは分からないけれど退廃的な印象も強かった。特に中盤あたりのゆるーい絶望感。それがSFと絡み合うと絶妙なんだということを初めて知った。
物語としては、SFだしきちんと読み進めないと途中で分からなくなる系統だと思うけど、それでも一気に読めてしまうのは、ミステリ系を読んでるときの感覚に似てる。
止まらない時間退行、仲間の死…それを食い止められるのは“ユービック”だけ。しかし“ユービック”の正体とは一体?
SFって文章で読んだ世界が映画みたいに映像として浮かんでくるものなんだ…と目から鱗でした。
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