フィリップ・K・ディックのレビュー一覧
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ネタバレおもしろかった。ポロコフを処理してからルーバーを処理するまでの疾走感が良かった。vsガードンらへんでお互いの認知が食い違うところが一番良かった。叙述トリックを匂わされる感じ。一つわからないのはガードンはなぜポロコフを鑑識にかけたのか。飽くまでも人間として振る舞ったのだろうか。
ストーリーともう一つの要素として作品を通して語られていたのは“人間性とは”である。ディック曰くそれは優しさであると。人間でもアンドロイドでも優しさを持っていたら人間なんだと。リックはルーバーに優しかった。自分がアンドロイドに優しさを抱くことにその時初めて気づいた。それで残りの3人の処理が怖くなったのだろう。その恐怖を払 -
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フィリップ・ディックはいくつか長編を読んだことありますが短編は初めてです。長編は面白いんだけどよくわからないことも多いのですが、短編では言いたいことが直接的に書かれて分かりやすいです。
なにかの本のあとがきでフィリップ・ディックが小説を書く理由として「この世界では生きられない自分の愛する人たちが生きられる世界を作る。本来なら自分を現実に合わせるが自分はそれができない。それがSFを書くっていうこと」といっていたのと、自身の生活やら小説テーマが社会に抵抗するところもあるので、反抗的な印象があったのですが、この短編を読むと平和や人間の自由をのぞみ、やりすぎた管理を批判する当たり前の感覚でした。。
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ネタバレアンドロイドは電気羊の夢をみるのか?という問いがタイトルで提起されている。
人間が「本物の動物を飼うこと」すら、限られた階級者しか飼育できず、見栄を張ってまで「模造動物」を飼育することの人間社会のヒエラルキーがバックボーンにあり、アンドロイドの抱く「動物(偽物だとしても)を所有する」と言う最低限の人間らしい「ステータス」への一種の憧れが描かれていたように思える。
これは言わば、アンドロイドは電気羊でさえ飼うことのできない、またはそれを理解できない存在だと描かれているようだった。
アンドロイドが人間に限りなく近く生存しようと試みて、社会に溶け込むには、知性を抑えながら振ること。
尚且つ「動物を飼 -
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中盤以降、継ぎ目なくスムーズに描写される、現実と虚構の絡み合う混沌とした世界に目眩がしそうでした。
地球は温暖化が進み、ニューヨークでは摂氏82℃を記録するほどの過酷な環境。地球滅亡に備えるために、人々は国連によって火星などの外惑星に強制移住させられはじめていました。しかし、移住した人々を待っているのは、不毛な土地を開墾する退屈な日々。唯一の楽しみは、ドラック「キャンD」を使ってパーキー・パット人形を介在して体現する幻想世界に溺れることでした。
そんなある日、プロキシマ星系から星間実業家のパーマー・エルドリッチが、新種のドラック「チューZ」を携えて太陽系に帰還します。パーキー・パット人形と -
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フィリップ・K・ディックで一番人気とも言われる本作。まだ全作品を読んでませんが、自分も読んだディック作品の中ではNo.1だと思いました。
あらすじ
1992年、企業が超能力者を雇う一方、その勢力に対抗する不活性者(超能力を無効化する者)を派遣する会社が存在する時代。主人公は、反エスパー派遣会社「ランシター合作会社」の主任測定技師のジョー(ジョーゼフ)・チップ。彼は、社長のグレン・ランシターから、ある企業の月面支社が大規模なエスパー潜入の疑いがあるとの依頼を聞き、社長と選りすぐりの不活性者11人と共に月面に向かいます…とこれ以上書くとネタバレになってしまいますね。
『偶然世界』にも出てきた、 -
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火星から逃亡してきた8人のアンドロイドを賞金稼ぎが追う、というプロットも、物語を通じて提示する哲学的な問いもあまりにも世に知られすぎているために、本作を読んでも大きな感動は無いのかもしれない、と思ったが、そのようなことは無かった。アンドロイドたちを「処理」しながらも、「彼ら」との交流を通じて、「彼ら」は本当に「人間」ではないのか?自分は本当に「人間」なのか?と迷い、苦悩する主人公リックの心の「揺れ」が驚くほどリアルに伝わってきて、強く物語の中に引き込まれるのである。作者の巧みな筆致がなせる業だろう。
作者は「人間」と「非人間」とを自然や人工といった基準で区分しておらず、「人間性」を判定する基 -
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クローズドサークル・ミステリというと、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を思い出しますが、それをディックがSFでやっているのが面白かったです。
あらすじ:
目的を告げられずに、未開の辺境惑星デルマク・Oに集められた14名の男女(男8女5+遅れて男1が参加)。その使命を伝えるはずのテープを再生すると、テープは勝手に消去されてしまいます。そして、誰もが着陸後は二度と飛び立てないノーザーという乗り物できていたことが判明。通信手段も持ち合わせていないことがわかるにいたり、機械とも生物とも分からない生物がいるこの奇妙な惑星に、完全に孤立してしまったことに気付きます。
そんな状況の中、集め -
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著者自身の言葉として、「非現実に対するわたしの不安はこの作品から始まっている。」と解説の最後に引用されています。つまり、後の作品群のいわゆる”ディック感覚”と呼ばれる最初の作品ということができるでしょう。
とはいえ、今まで読んだディック作品の中では、わかりやすくてとても面白かったです。仮想現実や多元世界に興味がある人にはツボでしょうね。ラストも、考え方によってはループ物を想起させますが、いい終わり方でした。
内容に少し触れると、人それぞれが思い描く世界観がリアルに体現できたら…ということですが、それが自分の世界観ではなく、誰かのものだとしたら…という感じ。例えるなら、読書嫌いな人の思考にと -
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ネタバレ非常に読みやすい!
ディック長編の入門書としてもおすすめかもしれない作品。
実は「逆まわりの世界」を読み始めたんだけど、
内容は絶対好きなやつなのに、2〜3日経っても全然読み進められず、、
それでそちらを諦めて、次に本棚から手に取ったのがこちら。
とっても読みやすくてあっという間に読んでしまった。
面白いのが、読み手のドキドキの対象(語彙力ほしい…)がある時点でガラリと変わること。
最初、パラレルワールド的な展開に直面して「やっほー私の大好物!!」となったと思いきや、
なんとその真相は非常にアッサリと解決されてしまう。笑
でもそこで何故か全然落胆(期待外れ感)はなくて、
その後は凄いス -
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「我々が見ているこの世界は、本当に現実なんだろうか?」というテーマを、映画のマトリックスが仮想現実を描いたような表現方法で描いているかと思ったら、1959年に発刊された本書で描いた方法は、正直ぶっ飛んでいて驚きました。また、ジャンルはSFですが、まるで良質なミステリー小説を読んでいるようで、とても楽しむことができました。以下あらすじ。
主人公のレイグル・ガムは、新聞の懸賞クイズ〈火星人はどこへ?〉で2年間勝ち続けているチャンピオン。彼は、他の人が外に働きに出かけているときに、一日中懸賞の研究と回答に費やす日々を送っていました。そのような暮らしを続けているうちに、ときどき自分が見ている世界に違 -
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ジョン・タウランドの『流れよ、わが涙』(涙のパヴァーヌ)をタイトルに持つ本作。作中にも触れられていて、ディックはクラシック音楽が好きなんですね。
ある朝、男が目を覚ましたら誰も自分を覚えていない…国家データバンクからも記録が消失した”存在しない男”になっていた。男の名は、ジェイスン・タヴァナー。一般人ならいざ知らず、彼は歌手であり司会も務める、三千万人の視聴者に愛されるマルチタレント。誰もが知っているはずなのに、かつての愛人まで知らないと言う。そして、管理社会であるこの世界で必須のIDカード(身分証明書)も無い…あるのは大量の現金だけだった。
彼は、何が起きているのか確かめるためにも、偽造 -
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電気羊だけがディックじゃない!と思わせる一作。
1964年発刊。その30年後の1994年の火星が舞台。そこには人類が植民していますが、まだ社会基盤が脆弱なために水不足に悩まされていたり、闇取引が横行している世界。他に、人類と共通の祖先である原住民のブリークマンがいたり、ある種の精神疾患を持つ人間は未来を見る事ができるという設定がされています。
これを書いている現在、1994年からちょうど30年経っていますが、いまだに火星に人類が足跡を残していないのが面白いですね。
あらすじは、修理屋を営むミスター・イーのもと、雇われているジャック・ボーレンは、依頼のあるままにヘリコプターで飛び馳せる毎日 -
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2024年になっても新鮮な読み心地と生々しい迫力を備えている。時代を超えて読み継がれるとともに、実現可能な時代になりつつあることの恐怖も沸き起こる短編集。以下は個々の作品の備忘録
・トータルリコール
経験の記憶を販売する会社で記憶の植え付け施術失敗と思いきや、政府の要人というか機密を持っている重要参考人的な立場だった人の話。映画も見てみたい
・地球防衛軍
人類が始めた戦争を、人類が作ったAIで代理戦争をさせるも人間より遥か上の知能を持ったAIによって管理下に置かれていたことに気が付く愚かな人間の話。
・訪問者
核戦争後、人間が住めなくなった地球で生き延びるために細々と息をしている様を描 -
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いやいや、表題作「変種第二号」が傑作過ぎ。久々にやられましたわ。これだからディック読みはやめられないのよ。
「戦争」をテーマとした作品をまとめた、日本オリジナル短編集。戦争テーマと言ってもかなり広義に捉えられていて、収録作はそれなりにバリエーションがあって読み応えがあります。(ただし、本邦初訳らしい「戦利船」だけは取扱注意!ディックにしては珍しい、超絶バカSFです(笑))
数多くの短編を書き残したディック作品の中でも屈指の傑作と言っても良い「変種第二号」は、ディックが永遠のテーマとしていた「人間と人間じゃないものの境界は何か?」という問題意識をストレートに表現しつつ、サスペンスフルな一級の