フィリップ・K・ディックのレビュー一覧
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これまで読んだフィリップ・K・ディック作品とは少し毛色が違うものが多かったような印象を受けます。
「妖精の王」はファンタジー要素が強く、珍しくしっかりとハッピーエンド!
「欠陥ビーバー」はビーバーが主人公の作品だし、「父さんもどき」は子供たちが主人公(私の頭の中ではスタンドバイミー的な雰囲気でした。いや、内容は全く違いますが)です。
ほかはいつものPKD作品ぽい、不思議な終わり方やディストピア的作品です。
個人的には「宇宙の死者」が面白かった。
「フォスター、お前はもう死んでいるぞ」は命を金で買う的な時代。主人公はいささか過敏というか過激な気もするが、周りの状況と自分の置かれた環境を考えるとああいう気持ちになってしまうのも分かる。
「人間以前」は誰が人間であるということを決めるのか?というひとつの問いが示されている。内容的に中絶問題の関係者から抗議もあったようですが…。
ところであの終わりはどういうことなんでしょうかね。 -
Posted by ブクログ
なんか話が複雑で追いかけるのがしんどかった。フレッドとアークターが混じっていくとことか、カウンセリングの場面とか、何がおきてるかさっぱりわかんなかった。
後半のどんでん返しはなかなかショッキングでよかった。中盤がだれていて読み続けるのがしんどかったけど、終盤のあたりは展開が早くてテンポがよかった。
ドナの悲しみが深くうかがえるし、上司の気遣いもまた同様に悲しい。
そして、ラストシーンは本当に鮮やかだったなー。青い花、混濁した意識の中でふと思い出したともだち、誰なのか具体的にはもうわからなくなってしまったけど覚えている。フレッドとしてのかりそめの生活が、実は彼にとっては本物だったという。 -
Posted by ブクログ
デッィクに慣れてきたのかそれともそういう本なのか、いつになく話の筋がすっきり見える本だった。そのぶんグラグラ感は少なかったけど夢中で読んだ。やっぱりディック面白い!自分がある日存在しない世界に飛んでしまった男の物語。冒頭プルーストのくだりでにやり/人間何が起こるかわからないし理屈通りには動かない/<日常>にいる限り人は共通ルールに則っているが<日常の外>の存在はルール通りにはならない/悲しみは私と失ったものをつなげてくれるもの/恐怖は憎悪や嫉妬より始末が悪い/たまたま目に留まっただけで完全な白紙に歯戻せない理不尽/Mr.バックマンが死んだのは2017年
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久しぶりのSF小説(といっても1ヶ月ぶりだが…)、そして久しぶりのディック作品(といっても4ヶ月ぶりだが…)ということもあって、期待以上に楽しめた本書は、ディック曰く「クズ」みたいな作品とのこと。「後半はまあまあだけど」とフォローをいれるものの、「前半はまるで読めた代物じゃない」と述べるように、ディックは本書にあまりよい思いを抱いていないようですね。その辺りは、訳者あとがきでの大森氏による推察を参照されたし。ちなみに本書は大森氏が初めて翻訳したディック作品とのことで、なんだか訳者あとがきから、大森氏の本書への愛着が感じられますね。
さて、ディックの長編によく感じる「ちくはぐ感」は本書でも相変わらず。気になったのは、登場人物のひとりのフェブス。最初は自分本位の塊として際立ったキャラであったにもかかわらず、途中から扱いに困ってしまったのでは?と思うぐらい物語からフェードアウト(最後らへんでお情け程度で役目を与えられましたが…)。その他にも「青い頭虫人間」やらヴィンセント(彼は終盤で重要な役割に変貌しましたが)などなど、なんだか、あっちいったりこっちいったりな展開でした。ただ、この展開がダメなのかと問われると決してそうではなくて、このちぐはぐ感こそがディック長編の面白さだったりするんですよね。いつもながら不思議に思うところ。 -
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正確に書くと3.5かな。
ハヤカワ文庫が相変わらず嫌いなんだけども買ってしまった。
どうしてサイズ合わせないかな。
これはずっとぶつぶつ言い続けてやる。
ツイッターでも書いてやる。
久しぶりのディック。
最近はこういう完全なるエンターテイメントのものは再読ばかりで
新しいものは仕入れていなかった。
試験が終わって一息つきたい目的で
純粋なる楽しみとして購入。
作品はディックの長編一作目ということで選択(一説には三作目)。
この文庫版には表紙にわざわざ
「PKD's First Published Novel」
と記載してある。
短編はNovelじゃないのか(実際中編以上らしい)。
表紙ついでに書くと、
「Solar Lottery」
という原題が書かれていて、邦題に?と思ったら、
放題はイギリス版のタイトル
「World of Chance」を元にしているんだそうだ(後書きより)。
何故イギリス版から邦題が?
も謎だが同じ英語でタイトル変えるのも謎だ。
アメリカ版のタイトルもディックがつけたものは却下され
出版社がつけたらしいので、
やっぱり出版社の意志は大きいのかな。
くじによって権力者や階級が選ばれるという
ザ・ディックなディストピア設定。
物語進行と状況描写のために複数の主人公視点があるのも
ディックらしい。
安定のディックらしさなので、
それを求める人には良いと思う。
ディックを多数読んでいて、
意外性や刺激を求めたい人には違うかも。
しかし、
この物語は希望がある終わり方だったけれど、
ディックの闇は選ばれし者とその他という二極化にあるんだな、
と感じずにはいられない。
まあそこが好きなんだけど。 -
Posted by ブクログ
ネタバレTVスターがトラブルで手術室に運び込まれ,目が覚めると世界中の誰も自分を覚えていないし,データバンクに彼の存在を示す記録が何も残っていない,,,という,ディックお得意の「現実と非現実の違いって何?」というお話し.
と聞くと極めてSFチックなのだが,ただし,実は設定はそれほど重要ではなく,読んでみると中身はボネガットか,ジョンアーヴィングか,という感じ.
ディックの作品の例に漏れず,グダグダになっているところもあるし,TVスターは主人公ですらなくなってしまうし,そもそもはじめに述べたトラブルの理屈もサッパリわからないのだが,近しい人を失う喪失の痛みを書いた話です.
おそらく25年ぶりぐらいの再読だが,当時はこの良さが理解できなかったことを,今は恥ずかしく思う. -
Posted by ブクログ
久しぶりのF.K.ディック。短編集。
しかもPSYCHO-PASSを読んだ後での「シビュラの目」はなかなか運命的な出会いと言わざるをえない。
「地図にない町」は三崎亜記を彷彿とさせるテーマ。地図にない町に住んでいるという乗客から、世界の境目が次第に揺らいでゆく。
「新世代」「ナニー」のような、ロボットを用いたシニカルなSFも面白い。
子供の教育を完全にロボットに任せ、それが最善と信じて疑わない社会。そんなバカな、と当時の読者が思った以上にはリアルに近付いている。
またタイトル「人間以前」も衝撃的。
人口増加率をゼロにするためにとられた積極策。それが12歳以下の魂のない子供を「人間以前」と見なし、不必要の烙印を押された者は、収容所で殺されてしまうというもの。
このストーリーが非常に恐ろしいのだが、「人間以前」と「どう判断するのか?」という線引きへの問いかけは我々の喉元に突き付けられる。
ディックの発想、ユニークさ、ヤバすぎる。
一冊を終えると、また次に、と手を出したくなるからまた厄介である。
そして、もう次に買う作品は決めている。 -
Posted by ブクログ
表題作が興味深いのだが、巻末収録短編のタイトルが「シビュラの目」である…
私はSFを完全に誤解していたなぁ、だから手を出さなかったんだろう、SFは全てにおいて「無機質なもの」と思い込んでいた。人間の在り方も科学的に進んでしまう事で精査され、人間味が薄れ、設定の奇抜さを楽しむもんだと思い込んでた。設定の奇抜さで競う、と言うのはBLにもある側面だ。
収録作の『ナニー』に差し掛かっているが、ほぼ球体のアンドロイド家政婦ロボットの話。旧式は新式と対決すると、性能の差、と言う絶対値を打ち破る事は出来ない。人間の様に「火事場のクソ力」なんてものはスペックになければ出すことが出来ない。旧式のロボットは修理するより買い換えた方が安いと言うのに何故人間は「修理してでも直してくれ」と思ってしまうのか。機械が機能として行った事でしかないのに、それにたいして感情を生み出してしまうのか。機械を通して人間が人間であるが故の人間味を表現できるのがSFと言うジャンルかもしれん。旧式は新式に勝てない、と言うスペック差を凌駕しトム・フィールズ家のナニー(ロボット)は新式と闘って勝ち、自身もボロボロになってしまった訳だが、トムは新型に買い換えた方が安いと散々言われても愛着のあるロボットを修理に出すがトム自身はなぜ自分の家のナニーが壊れかけているのかの本当の理由を知るのは後になってからだが、旧式なのに新式に勝てたのがナニー自身に(家を守らねば)を言う使命感があったのか、と思い、その部分で私の好きなアンドロイドものじゃねぇか、となったのだが、その辺はスルーの着地点だった(笑)俺ん家のナニーを傷つけたやつは許せない、これは俺の家のナニーなのだ、だからおいそれと新品と取り換えるなんて出来ない、と言う気持ちは「役に立ってくれる機械」に対する愛着なのだが、その愛着が高じるとこういう結末になる訳だ…人間って愚かで可愛い生き物だと言う事もSFには書いてあるなぁ。
ホラーありSFありダーク・ファンタジーあり、実にバラエティ豊かな短編集だ。『宇宙の死者』を読んでるんだが、死んでからも「半生期」が残っていて冷凍保存された遺体にプラグを繋いで精神活動が呼び出せるとか、設定が面白い。
「新世代」、無論SFであるが、子供の成長に悪影響を及ぼすのは幼少期の環境・親との関係であるとされ、生まれた直後から教育機関で子供は育てる人間には接触させず、アンドロイドが子供の成長に携わる。9歳になるまで絶対に親は子供と接触してはならない、会う時は許可申請、そして開拓者精神でたたき上げで生きて来た主人公が子供の初めて会った後、子供は親(つまり生身の人間)が実験動物と同じ匂いがする、と言う…どちらが幸せなんだろう…ディック自身、親がきちんと愛情を注ぎ親の責務として子供を育てない人間がいると言う現実に対し憤りを抱いているからこう言う作品を書いたんじゃなかろうかと思うが、人間が人間に触れないで人間として育つ筈がなかろう、と思うよ。 -
Posted by ブクログ
意外にも良心的な結末にちょっとビックリ(…ハッピーエンドですよね?)。
先日読んだ「発狂した宇宙」と並び多元宇宙の金字塔と評される本書です。どちらも現実と異なる世界に迷い込み、四苦八苦するという点では同じですが、「発狂した宇宙」における多元宇宙が無限にある宇宙のひとつだとすると、こちらは極端な考え方をする誰かの意識(しかも複数)に迷い込みます。また、「発狂した宇宙」で訪れる宇宙がSFオタクの空想ものだとすると、こちらは現実の主義主張の地続きの異世界が舞台。だから甲乙つくわけではありませんが、楽観的に読み進められた発狂した宇宙に対し、不安と疑心がつきまとう本書でした。
読み終わって改めて思うことは、ディックの作品ってやっかいだなぁということ。大雑把に物語を掴むことはできるのですが、細かなところで「なんでこんな展開?」と思うことが多くて、腑に落ちない。表面の物語に隠れたメッセージの存在を察知するのですが、どうも要領を得ない。まぁ単に読解力がないと言われればそこまでですが、やっかいだなぁと思うことしばしば。短編は解りやすいんですけどね。とはいえ、こんな悶々とすることも含めて、ディックの作品に漂う魅力は間違いなくて、だから周期的に彼の作品を読みたくなるんですねぇ。 -
Posted by ブクログ
何でこのタイトルにしたんだろう?
確かに火星だし、目的はタイムスリップなのだが、あくまでも副次的な要素でしかないように思う。
まず第一に、全然火星らしくないw
火星的な火星ではなく、完全にもう一つのアメリカ(西部開拓時代の)。
地球からの移民だから当たり前と言えば当たり前かもしれないが、
彼らの関心・心配事はごく普通の(地球上と何ら変わらない)ことばかり。
原住民である火星人も、完全にネイティブアメリカンである。
とにかく、SF小説的な火星では全く無い世界観が描かれている。
そしてメインテーマは自閉症の子の内世界と他者の現実の混濁。
現実の現実性を否定するディックの世界観はやはり秀逸である。
クライマックスの捉え方を色々考えてみるのもまた一興だと思う。