フィリップ・K・ディックのレビュー一覧
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死者は墓から蘇り、生者は若返って子宮へ回帰する。そんな時間逆転現象が起こった「逆まわりの世界」が舞台。死者の再生と売却を請け負うセバスチャンは、ユーディ教の始祖ピークを掘り出したことをきっかけに、ピークをめぐる様々な派閥の抗争に巻き込まれ…
死者は蘇り、生者は子宮に帰る?なんというトンデモ設定。面白いのはこのトンデモ設定を実生活にまで落とし込んでいるところ。例えば、本来、生者は食物を食べて消化しますが、この世界では生者は食物を胃袋から皿に戻します。あるいは、子宮に帰る生者のためにあえてセックスをしたりと、なんだか因果関係がめちゃくちゃ。だけでなく、蘇った死者の売却権は発掘者に帰属したりと、こ -
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ネタバレ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
人間と認められるのは12歳以上、12歳未満の子供は人間と認められず、狩り立てられてしまう……衝撃のディストピアを描いた表題作を、新訳で収録。長篇『ユービック』と同一設定の中篇「宇宙の死者」、ディック短篇の代表作として知られる現実崩壊SF「地図にない町」(新訳)、侵略SF「父さんもどき」、書籍初収録作「不法侵入者」、晩年の異色作「シビュラの目」ほか、幻想系/子供テーマSF全12篇を収録する傑作選。
[収録作品]
地図にない街
妖精の王
この卑しい地上に
欠陥ビーバー
不法侵入者
宇宙の死者
父さんもどき
新世代
ナニー
フォスター、お前はもう死んでるぞ
人間 -
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1962年、第二次世界大戦に勝利した日本とドイツはアメリカを分割占領され、太平洋側は日本の統治下に置かれた。日本統治の影響で中国由来の『易経』が普及し、日本人アメリカ人を問わず多くの人が易により物事を判断するようになっている。さらには「第二次大戦に連合国側が勝っていたら」という内容の小説が評判を呼んでいた。
アメリカ古美術商のロバート・チルダン、通商代表団の田上信輔、贋作工場で働くフランク・フリンク、フランクの元妻・ジュリアナ、プラスチック産業のビジネスをするバイネス、イタリア人トラック運転手のジョーなど、さまざまな人の物語が交互に進み、そこにドイツ政府の思惑も交錯する。
もし第二次大戦で -
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わかったようなわかんないような
不思議な読後感なのですが
読んでいるときは妙におもしろい。
久しぶりに読んだけど
そういえばディックって私にとっては
そういう作家だったっけ。
日本とドイツが第二次大戦に勝った
架空の世界が舞台なのですが
日本人の田上が主要な役どころで
これが今読んでも「あ、なんか日本人」
思考回路とか、ちょっとした行動とか。
すごいな、ディック御大(笑)
敗戦国となったアメリカで
新しい製品作りに取り組むフリンクや
少しずつプライドを取り戻していく
田上御用達の骨董品店長チルダンの姿が
現実日本の戦後復興期に踏ん張った
人々の写し身のように思えた。 -
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ネタバレ“彼はめざめた——そして火星を恋い、その峡谷を想った。一歩一歩、足を踏みしめてその谷間を歩くのは、どんな気分のものだろう。意識がはっきりしてくるにつれ、しだいしだいに大きくその夢はふくれあがっていった。その夢、その憧憬。自分をとりかこんでいるその世界の存在さえ、実感できるような心地がした。(『トータル・リコール』より、p.9)”
ハマっていると言うほどでもないが、ここ数ヶ月ディックをよく読んでいる気がする。短編集初収録の3篇を含む、全10篇を収録。
表題作『トータル・リコール』が良かった。火星に行くことに憧れる会社員クウェールは、ある日リコール社を訪れる。夢が到底叶いそうにないことを悟り -
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ネタバレフィリップ・K・ディックを読むのはこの本がはじめて。ディックと言えば『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の思弁系SFのイメージがあったけれど、この短編集には、軽いユーモアSFや超能力を題材とした正統派のSFが主に収められている。『パーキー・パットの日々』と表題作『変数人間』が印象に残った。
『パーキー・パットの日々』
“父親がつぶやいた。「あのオークランドの連中。あのゲーム、あの特別な人形、それがあの連中になにかを教えたんだよ。コニーは成長しなくちゃならない。それで、あの連中も彼女と一緒に成長するしかなくなったんだ。ピノールのまぐれものは、そのことをまなばなかった。パーキー・パットから -
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歴史改変系SF小説。
日本とドイツが戦争に勝ってアメリカを統治している世界、そんな世界で流行っている小説は『イナゴ身重く横たわる』という、連合国側が勝利したらと言う歴史改変小説だったりする。
登場人物が、歴史上の人物だったりオリジナルだったり、国籍人種も多様で何回も読み返さないといけなくて時間がかかってしまった。
真偽
これがテーマなのだと思う。本物と見分けがつかない贋作。歴史という付加価値の曖昧さ。小説と現実。偽名の政治家と暗殺者。
歴史を失った国で生まれた新たな芸術と、歴史ある占い易が、本来あるはずだった歴史を垣間見せるというのが面白い。
一方、読み終わった時に「え、これで終わっちゃう -
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ネタバレアベンゼンは『易経』を使って小説『イナゴ身重く横たわる』を書いていた。ジュリアナが「なぜその本を書いたか、我々はその本から何を学ぶべきか」という問いを立てて易を行うと、「真実」という回答を得る。ジュリアナは、本に書かれていることが真実であるというメッセージとして受け取る。これが、本作の幕切れ直前、結論のような位置に置かれているシーンだ。
ここから読者は何を読み取ればいいのだろうか?
(a)彼らの世界で起こった出来事は真実ではないということか? それとも、(b)これからドイツ帝国の崩壊や、日本への水爆投下が起こり、プロセスこそ違えど、最終的には本に書かれた世界と同じような結果にたどり着くという -
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ネタバレ第二次世界大戦が枢軸国側の勝利で終わったという世界。
日本やドイツに統治されている米国。
ドイツが統治する地域では禁書となっているという小説が、それ以外の地域では話題になってヒットしている。内容は、第二次大戦が連合国側の勝利で終わった世界を描いたもの。
登場人物の多くが自らの進むべき道を「易経」で占っている。
本作は1962年に執筆されているが、この時代には易経が流行っていたのだろうか…。1978年に出版された『宇宙船とカヌー』でも、ジョージ・ダイソンが旅の出立をいつにするか易経で占うべきかなぁ、なんて言うくだりがあった。
この世界で売れているという小説の作者も、ストーリーの展開を易経で -
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飽きることなく(一気に、とまではいかないにしても)読み進められる。かなり読みづらいんだけど、不思議なことに。
二部終盤辺りから凄く面白くなって、そこから加速度的に面白くなるのに、膨らみ切らずに終わってしまったような印象を受ける。いつも思うけど、ディックと自分の関心は別のところにあるんだろうな。ストーリよりもむしろ、葛藤とか、アイデンティティクライシスみたいなところに、凄く神経を割いている気がする。
あとは、人物の考えや、話の方向性がころころ変わったり、事実と虚偽が同列に並べてあって分かりづらい。いつものことと言えば、そうかも知れないけど。
また今回は更に、単語の説明も少ないと感じた。作 -
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第二次世界大戦で枢軸国側が勝利した世界を舞台にした小説。そしてその小説世界には、もしも連合国側が勝利していたらという世界を描いた「イナゴ身重く横たわる」という珍妙なタイトルの小説がある。そしてどうやらその「イナゴ・・・」の世界は、連合国が勝利しているものの、いまこの「高い城の男」を読んでいる私の住む世界とも少々様子が違うようだ。
もしかしたらこの「イナゴ・・・」の世界には枢軸国勝利の別の小説があり、その世界には連合国勝利の別の小説があり、そんな小説世界が果てしなく続いているのかもしれない。だとすると私が生きているこの世界も小説の一部で、その小説は枢軸国が勝利した世界で読まれており、さらにその世