フィリップ・K・ディックのレビュー一覧
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創元SF文庫から山形浩生さんの訳、「暗闇のスキャナー」の邦題で出ていた"The Scanner Darkly"を、浅倉久志さんが新訳したのがこのスキャナー・ダークリー。
内容に関しては、ディック後期の傑作ということもあり、色々なところに書かれているので、僕は翻訳の違いに関して感じた事を。
ハヤカワやサンリオの浅倉久志訳でディックの作品に親しんでいた僕は、山形訳の暗闇のスキャナーの翻訳は言葉が少しシャープ過ぎる感じもしていたけれど、今回浅倉訳が出て、改めて読み比べてみると、登場人物のボブ・アークターが壊れてしまった後なんかは、山形さんの訳の方がしっくり来て、アークターが人 -
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「私は惑星になるつもりだ」
死ぬまでに一度は言ってみたいセリフ…の一つに仲間入りしました。
最近仕事のことで脳内ごちゃごちゃなのもあり全く読書に身が入らない毎日。
その状況でディックを読み始めるのもどうかと思いながら、序盤頑張って頑張って読み進め、、、
しかし3分の1くらいまでくると、キマシタ。モード入りました。
なんだなんだ??と一文一文に翻弄されているうちに瞬く間にディック感覚に包み込まれ、気がつけば半分を過ぎ、残りの厚みを見て「えええもうすぐ終わっちゃうの?いやだ!!!」
なんて考えていたらあっという間に終わりました。
全部読んだ後の感想としては
いや、なんだこれ。。。
結局どこか -
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Posted by ブクログ
ディストピアSF小説の金字塔
映画『ブレードランナー』の原作。
有名すぎて読んでないという類のやつ。
映画はめっちゃ好きで何度見たっていい。2049の方も何度見てもいい。
翻訳なので読むのに苦労するかと思ったが、特別そういうことはなかった。
認識をずっと問われている。
人間とはなにか。コーヒーを飲むから人間なのか。酒に酔うのがそうか。動物を愛する心があるのがか。それとも金銭的価値を見出すのが人間か。
最序盤、妻との生活が陰鬱な雰囲気から始まる。
妻が人間なのかも疑う。彼女は宗教にハマり、閉じこもりがちだった。
それがずっと通底に流れてる。
いろんなことが同時進行に起きる。
動物病院で働く -
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Posted by ブクログ
ネタバレ読み終えて、改めてタイトルがいいなと思った。人間とアンドロイドの境界線は何なのか?これから加速していくAI社会にも通ずる哲学的問いがあったように思う。
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【個人メモ・感想】
SFが苦手な理由として、設定が独特過ぎて世界観に入っていけないというのがある。この作品も最初そうだったが、登場人物などの固有名詞をメモすることで徐々に世界観が分かってきて読み進めることができた。次に読み進めにくい本に出会ったときは、このメモしまくり方式でいこう。
例えばアンドロイドが次のアンドロイドを生み出すという流れが確立され、次第にアンドロイドが増殖されてゆけば、外形的にはそれはもう生命なのではないか -
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【高い城の男】 フィリップ・K・ディック 著
第二次世界大戦は、日本・ドイツの枢軸国が勝利。日本が統治する米国カリフォルニア州での生活風景を描きながら、「第二次世界大戦は米英が勝った」というSF小説を書く「高い城」に住む男の物語も書き綴るというSF小説(ややこしい)。「現実と虚構との微妙なバランスを緻密な構成と迫真の筆致で書きあげた、1963年度ヒューゴー賞受賞の最高傑作」という売り文句にやられて読破しました。
少々ネタバレになりますが、ヒトラーはその後、精神疾患となりボルマン党官房長官が後を継ぐも、その後亡くなり、「え~!」と思う人物がドイツ首相に就任。これによって、「え~!」と思う -
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むかし、中二病真っ盛りだった頃に読もうとしたものの難しくて挫折した一冊。ひとまず読み通すことができ、やり残した宿題を片付けられた気分です。
SFをほとんど通ってきていない(アルジャーノン、harmony、映画『her』くらい)ので、いつもと違って感想もむつかしい。ただ、本書で述べられている”人間とアンドロイドを分かつのは感情移入できるか否か”というのが面白かったですね〜。
もちろんアンドロイドだって、パターンを学習させればそれらしい行動はできるんだと思う。ただ、そこにどうしてもちぐはぐさが生まれてしまう。
人・ものへの親切や思いやり……そうしたものが、今のところは人間を人間たらしめているので -
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ネタバレ環境汚染が進み、灰の雨が舞い生物が生きられなくなってきている地球。動物や虫までもが命を失い、ほとんどが人口物と化しているため命ある動物の希少価値もかなり高くなっている。そんな中、アンドロイド狩りのリックは火星から逃げてきたアンドロイド狩りをおこなうが、アンドロイドの製作技術も発展しており、もはや人間とアンドロイドの区別をつけるのも難しいほど。
最終、アンドロイドと人間の境界線とは何かわからなくなり、リックにとっても何が正しいのかもわからなくなる。。
私はあとがきのフィリップ・K・ディックが「人間とアンドロイドの境界線とは”親切心である”」と語っている言葉がとても好きで、この物語でディックが伝 -
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「有を名TVのMC・歌手で3000万人の視聴者を持つ男」が目覚めたら薄汚いモーテルにいた。誰も自分を知らず、政府のIDバンクにもデータがない「名無し」になる、というサスペンスフルで思わず読みたくなる導入から始まる。が、そこから主人公と女たちの会話に重点が置かれて愛と別れが語られ文学的な味がする作品となる。後半ではもう一人の主人公である警察署長に視点が移ってしまい当初の緊迫した謎や展開はどこかにいってしまう。
個々のエピソードは素晴らしいが全体としてみると序盤の期待が外れてしまうため残念がところがある。はじめから愛と別れをテーマにした文学作品だと思えばいいのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
話しの設定は面白いのですが、構成に難ありといった感じ。そのあたりのことは、あとがきに著者の言葉が掲載されていますが、個人的には充分楽しめました。
あらすじ:
2004年、世界は東西両陣営に分かれた冷戦下にありました。その両陣営共に、武器開発は超次元空間に意識を浮遊させ、トランス状態になって独創的な殺戮兵器をスケッチすることにより、アイデアを得る方法が取られていた。その職種は、兵器ファッション・デザイナーと言われ、西側はラーズ・パウダードライ、東側はリロ・トプチェフが担っていた。しかし、これらのアイデアを反映した兵器は、新兵器のデモンストレーションと称して、実際のことのようにドラマ仕立ての映像 -
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ディックらしい虚実を取り混ぜたストーリー展開や、面白くて笑える場面も多々あって、とても楽しめました。
しかしながら、ストーリーにいろんな要素を詰め込み過ぎなため、読み終えた後に、その後が気になる人が何人かいて少しモヤモヤした気分が残りましたけどね。
あらすじ:
21世紀も半ば過ぎ、世界は二極化されていた。その一方であるヨーロッパ・アメリカ合衆国(USEA)では、ファースト・レディの地位が大統領より高い母権制をとっており、彼女(ニコル・ティポドー)は絶大な権力を持っていた。ある日、マクファーソン法が施行され、一人の精神分析医を除いて診断が禁止され、精神疾患はすべて薬剤治療とするように決まって -
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Posted by ブクログ
“父親は壺なおし(ポット・ヒーラー)だった。そして彼も、壺なおしを仕事にしている。”と、印象的な書き出しではじまる原題もそのままズバリ『Galactic Pot-Healer』。
映画スターウォーズ顔負けの多種多様な宇宙人がでてくる、彼独特の虚構世界を描いたSF小説でしたが、タイトル同様にディック特有の笑える箇所も多くて読みやすい作品。ディック好きなら読んで損はないと思います。
あらすじ:
腕利きの陶器修復職人であるジョー・ファーンライトは、荒廃した管理社会と化した地球で7か月も仕事の依頼がない失業状態にありました。陶器はプラスチック製に取って代わられ、父から受け継いだ職人技を振うこともでき