千早茜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
誰もが知るおとぎ話をモチーフにした7つの現代物語。
「迷子のきまり」はヘンゼルとグレーテルを下敷きにする。
おとぎ話は残酷なものも多かった。
だいぶ前に、本当は残酷だったおとぎ話、のような書籍が流行ったことがあった。
それを思い出させる、なんだか嫌な感じのする物語だった。
私はとっくの昔に大人になって、世界は綺麗事だけでは成り立ってはいないことも、
汚くて卑しくて目を背けたいことが多いことも知っている。
だから、そのうちの一つ、児童買春があることもわかっている。
だけど、小さな命を産んで育てる身としては到底許し難いし、理解もしたくない。
もし我が子が被害者になったら、私は自身の自由も立場も、全てを捨てたって構わないから加害者に報いを受けさせようとするだろう。
一方で、子供を邪魔にする物語の中の母親の気持ちもわかる。
男性に依存はしなくとも、この子達がいなかったら、とありもしない成功した人生を思い浮かべたことも一度のみならず、あるのだ。
そんな自分の心の二面性をまざまざと突きつけられる物語は読んでいて苦しい。
だから最後の物語の、「アマリリス」には救われるような思いだった。
何かを信じて待つのも、自ら動き出すのも、どちらも選択肢としてはありで、それが一概に幸不幸を決めるものではないことも。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ好きな作家さんの短編集。短編集は物語の世界に入りにくくて元々あまり得意ではないんだけど、人形がテーマになっているものが多くて気になって読んだ。
個人的に印象に残ったのは、時計職人が戦争で大切な人を亡くし、それから人型の時計(だけど人を殺す)を作るという『ロゼット』、幼い頃に本を通じて仲良くなった男女がすれ違いその思い出で今を生きる『モンデンキント』かなぁ。
他にも記憶を食べる『スヴニール』とか世界観が気になる『ビースト』も良かった。
いろいろな世界、時代で描かれている作品で、どれかは響く作品があるのは短編集の良いところ。逆に、読みにくい作品があるのも事実。面白いんだけど、どういうことだったんだろう…?という作品もあった。
-
Posted by ブクログ
千早さんの西洋童話の現代的な新解釈により、童話の内容を身近な出来事として自身の想像の範疇に置き換えることができ、童話の「裏の意味」を考えさせられた。あとがきで、千早さんは「西洋童話にはうまく馴染めなかった」と記されているが、私も小さい頃、童話の世界観に対して心躍らせられながらも若干の恐ろしさを感じていたような記憶があり、なんとなく共感できる部分があった。今振り返ってみると、それは、キラキラしたベールを纏う「教訓性」や「勧善懲悪」への気づきや違和感のような感情だったのかもしれないと思った。本作は、その辺りをうまく掬い取っており、人間のドロドロとした恐ろしさ、醜さ、それらの背景となる社会問題がより顕著に感じられる内容になっていると思う。一部の童話をはじめ、民話や伝承の「裏の意味」を紐解くと当時の社会の構造や問題が浮き彫りになるのかと面白く感じられ、民俗学系の本を読んでみたいなと思った。
-
Posted by ブクログ
ネタバレまいまい
野良猫みたいな女
葛月。暗闇で光る蝸牛を飼っている。女医。
筒井武生
役所勤めの地方公務員。介護保険料の収納、還付係に配属。
田村
二十代前半。
武生の姉
短大の時に妊娠して学生結婚をした。親と同居して赤ん坊を母親に預けて、産んですぐにばりばり働き出した。
蒼馬
武生の姉の息子。小学五年生。
ゆらゆらと
田村
自分の部屋が嫌い。是が非でもあとしたい男と会う前、華奈子を思い出す。フリーター。
華奈子
芸能人のようなものすごい美人というわけじゃないけど、周りに漂う甘い空気は完璧。
からまる
地方公務員。福祉介護課。係長。筒井の上司。
妻
同じ会社の違う部署の人と浮気をしていた。
高遠
堤防で会った女子高生。
あししげく
武生の姉
十九歳で妊娠。短大の時に週三回ほどスナックでバイト。客と寝ている。
蒼馬
武生の姉の息子。
村上
四十代半ば。
ママ
武生の姉がバイトしているスナックのママ。
篠田
スナックの客。
ほしつぶ
華奈子
蒼真の家庭教師のお姉さん。
蒼真
金魚を殺してしまった。
武生
斎藤マキ
蒼真のクラスメイト。幼なじみ。飼育係。
内田
蒼真の担任。
大野
飼育係。
おじいさん
蒼真が海で出会う。酸素吸入ボンベをしている。星の砂をくれた。
うみのはな
華奈子
フラメンコを習っている。
田村
根っからの男好き。
フラメンコの先生
恵
蒼真の母。
ひかりを
大原誠一郎
酸素吸入ボンベを携帯している痩身の老人。
葛月
循環器内科医。
西城
葛月と同期の呼吸器内科医。
-
Posted by ブクログ
人が何を食べているか知るのが好きだ。とても個人的な事をこっそり覗いてる気がするエッセイ。
著者は食べものに並々ならぬこだわりがあり、その一つ一つを知るのも楽しい。
ただいま食事中、というエッセイで同じ人がいたとは!と感激した。リニューアル前のクウネルという雑誌で私が一番好きだったのがただいま食事中というコーナー。いろんな人の1ヶ月の食事が写真付きで簡単な日記風に載っている。この雑誌が大好きで、バックナンバーは全巻揃えているのも一緒だし、このコーナーは何度も読み返しているのも一緒。雑誌に載るからと飾っているわけでもなく、たんたんと日々の食事が掲載されていて、素敵な生活を送っていそうな人でも忙しい時は菓子パン一個、とか、とても偏食でほぼ食べられるものがないような人もいたりして、食事に正解はないんだなという気持ちになる。
違う誰かの生活を知る事はちょっとしたガス抜きになる、と著者は書いているが、そういうガス抜きを求めて食のエッセイを読んだり誰かの食事をTwitterで見たりしているんだなと妙に腑に落ちた。
この著者のエッセイ、他のもぜひ読みたい! -
Posted by ブクログ
【2024年92冊目】
嘘のつけない腹話術師、赤を纏った最下層の気高き女、記憶を食べる私、理の中で生きる少女、破滅を愛する男の子など、ここではないどこかを描いた12の物語。そっと寄り添うような青いリボンが宝石のような世界にあなたを導くことでしょう。
千早茜さんが紡ぐ美しい物語と言葉の数々を余すことなく味わいたいならこの本では、と思うほどの満足度でした。異なる世界で描かれる12の物語は、ページをめくる度にため息の出るような美しさや儚さをもたらしてくれました。
大好きな作家さんなので贔屓めで見てしまうところはあると思うのですが、やはり一文一文が本当に煌めいていて、これぞ千早茜ワールドと唸りました。
挿絵がまたおどろおどろしかったり、残酷な美しさがあったりして、良かったです。