古内一絵のレビュー一覧
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ネタバレ軍隊、体育会系、ブラック企業…。どうしてこういうものを尊がる、ありがたがる傾向があるんだろうか?俺も若いころ、そんな気があったことは否めないのでエラそうなことは言えないけど。
根性論は人に押し付けるものではなく、自分の中で密かに燃やすものであって、人には技術や工夫を情報共有すればそれで十分だと思うのだが…
閑話休題。
押し付けの根性論やヤマト魂やらが生んできた不幸を、もっと真摯に見直して、もう二度とこの手の失敗を繰り返さないようにしないといけない。
この本は、その再発防止に大きな力となってくれるように思う。なんだか物騒な世の中になってきているからこそ、気を付けておきたいことが、この本には書いてある。
小説としては、ちょっと荒っぽさが目立つところもあったが、テーマの力で読ませられた。 -
Posted by ブクログ
祖父が経験した戦争を通して、とんでもない状況に耐えられず命を断とうとした孫が、もう一度立ち直るまでのお話。
霊が見えたり、ファンタジーっぽさは否めませんが、
不思議とスッと入ってきます。
戦争についての描写(特に心理描写)が詳しくて、痛いほど良くわかるからかもしれません。
自分の命は己だけのものではない。祖父が一生懸命生き抜いてくれたおかげでもあるんだということに気づき、前を向く主人公の生き様がかっこよかった。
同時に、ちょっと目線を変えたり、世界が広がったりすると、意外とちっぽけに思えたりもするんだよなーと。
「ヒビが入っても、潰れても、心はきっと、何度でも生まれ変わる。」 -
Posted by ブクログ
1943年に起きたポンティアナック事件を題材にした小説。一種の反戦小説、ファンタジー小説、主人公の成長を描く教養小説の要素もあるが、何よりもエンターテイメントとして良く出来ている。週末、一気読みした。
主人公はブラック企業に勤める27才の平凡な青年。借金に苦しみ、発作的に飛び降り自殺を図るが、15年前に死んだ祖父の霊に助けられる。祖父は生前心残りの「人探し」を一緒にすることを条件に隠し財産で借金の肩代わりを提案。そこから祖父の霊とのボルネオへの旅が始まる。
祖父は戦時中、軍の命令で農業に携わっていた。そこで出会ったのは、個性豊かな人々と悲惨な戦争の現実だ。
戦争は、祖父から大切なものを奪った。そして、祖父の「人探し」の秘密がだんだんと明らかになってゆく。
本の表紙絵は卵と赤道をイメージしたもの。赤道直下では、うまく置くと卵を直立させられるという。主人公は、赤道直下の街、ポンティアナックにある赤道記念塔で卵を立たせ、観光客の喝采を浴びる。主人公の再生をイメージさせるシーンだ。
ポンティアナックには一度行った。好きな街で、街の描写を読んでいたら、また行きたくなってきた。戦時中の住民の様子も含め、著者が綿密な取材を行ったことが、推察できる。
日本軍と現代のブラック企業という腐敗した組織の中で、祖父も主人公も、それぞれ必死に再生しようとする。主人公への感情移入がしやすい展開であり、「読んで良かった」感が得られる。
お勧めの★4つ。 -
Posted by ブクログ
戦争は絶対に美化されてはいけないと思う。
どんな戦争だってきっともっともな理由をつけられて
正当化されて始まったのに違いないのだから。
第二次世界大戦の末期のボルネオ島。
そこで起きた正視できないほどの悲惨な出来事。
亡くなった祖父の死んでも死にきれないほどの心残りを晴らすため、
孫の達希はボルネオ島への旅に出ます。
達希とて、日々を安穏と過ごしている訳ではなく
現代を生きる彼にも死にたくなるほど辛いことがあるわけで・・・
それでも戦争の狂気の中で必死で生きようとしていた
祖父たちの思いを知った後は
逃げ出さず日々闘っていくことを決意するのです。
自分の命はつないでくれた誰かがいてくれたから
今ここにあるのだものね。 -
Posted by ブクログ
二冊続けて戦争を描いた本を読んだ。
ひとくくりに太平洋戦争と言ってもあまりに知らないことが多くて愕然となる。先に読んだ「世界の果ての子供たち」で舞台となった満州については見聞きする機会も少なくはない。だが、この本で描かれるボルネオで繰り広げられた悲劇については全く知らなかった。なんと、太平洋戦争末期では最大規模の上陸戦もあったという。
この本の主人公はブラック企業に勤める達希。その達希が亡くなった祖父、勉の願いをかなえるためにボルネオに行くことになる。勉にはどうしても会いたい一人の女性がいたのだった。
達希のおかれた現代を織り交ぜつつ、祖父の過ごした戦時下のボルネオの様子をリアルに浮かび上がらせていく。
日本の占領軍がとった残忍な行動や上陸戦で生き延びた兵士の過酷さなど、読むのが辛くなることもしばしば。しかし、実際の戦いはこんなもんじゃなかったのだろう。
わずか3作目にしてここまで重いテーマを扱った作者の熱意に感服する。この本を読まなければボルネオの戦いも知らないままだっただろう。
物語の設定が私は苦手だったのと、最後ちょっと力みすぎかなとも思うので★4つにしました。 -
Posted by ブクログ
前作『最高のアフタヌーンティーの作り方』の洗練された雰囲気を保ちつつ、同姓婚や別姓などの問題もテーマの本書。
25年以上前に私も涼音と同じように別姓できないかと悩んだことを思い出した。
いくつかレビューを読んでみたら、このテーマに嫌悪感を抱く人も多いようで、ほんとに色々な考え方の人がいるのだなぁと驚く。
私は職場での旧姓使用を今でも続けているけれど、高齢の方から子どもが可哀想だからやめろと言われることは度々あった。そこで傷つくタイプの人はそんなことはしないので、私も図太かったのだろう。
我が子達は私が旧姓で働いていることを知っているけれど、「なんでわざわざそんな面倒くさいことしてんの?」という感じ。
涼音は、悩んだ末誰の許可もいらない、誰にも迷惑はかけないということでパートナーシップ制度を選ぶという結論を出したわけだけれど、その前提として達也との話し合いが何度も繰り返されたことが素晴らしいなと思う。
結局、私は一人で悩んで一人で決めたわけで…
悩んだプロセスも結論も、涼音と私では似ているようで全く違う。
パートナーとどれだけ話し合いができるか、というのは、その相手とのそれからの人生を大きく左右する肝なのだと思う。
私自身はもう新たに結婚することはないけれど、子ども達が結婚に悩んでいたら、少しはアドバイスできるかもしれないな。
さて、最高のウェディングケーキとは?
私自身は、手作りの結婚式だったから、お菓子作りが得意な友人達にケーキや引き出物のクッキーを焼いてもらった。
今思えば、なんと贅沢なことだったのだろう。
それこそ本書にも負けないくらいの、最高のウェディングケーキだった。
やはり、ケーキやお菓子には人の心が宿るからこそ、最高の味わいになるのだ。
最後に…
印象的だった、祖父滋の言葉。
「幸せってのはな、なるものじゃなくて、味わうもんじゃねえのか」