古内一絵のレビュー一覧
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騎手学校で優等生だった瑞穂は、卒業後、地方の緑川調教師の下に配属が決まるが、そこのスタッフは過去に問題を起こしたことのある人や年輩で行き先のない人ばかりで、"藻屑の漂流先"と言われている厩舎だった。
そんな厩舎ゆえ、馬にも恵まれず、競馬で勝つどころか、スタッフの間でも投げやりな感じが蔓延していたが、中央競馬に出る馬の併せ馬として、虐待を受けるに近い状態にあったフィッシュアイズを引き受けることにしてから、流れが変わる。
フィッシュアイズの桜花賞レース出場を目指し、厩舎の筆頭、光司やフィッシュ担当厩務員の誠を始め、スタッフが一丸となってフィッシュアイズを育てる。
桜花賞出場を -
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ネタバレ軍隊、体育会系、ブラック企業…。どうしてこういうものを尊がる、ありがたがる傾向があるんだろうか?俺も若いころ、そんな気があったことは否めないのでエラそうなことは言えないけど。
根性論は人に押し付けるものではなく、自分の中で密かに燃やすものであって、人には技術や工夫を情報共有すればそれで十分だと思うのだが…
閑話休題。
押し付けの根性論やヤマト魂やらが生んできた不幸を、もっと真摯に見直して、もう二度とこの手の失敗を繰り返さないようにしないといけない。
この本は、その再発防止に大きな力となってくれるように思う。なんだか物騒な世の中になってきているからこそ、気を付けておきたいことが、この本には -
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祖父が経験した戦争を通して、とんでもない状況に耐えられず命を断とうとした孫が、もう一度立ち直るまでのお話。
霊が見えたり、ファンタジーっぽさは否めませんが、
不思議とスッと入ってきます。
戦争についての描写(特に心理描写)が詳しくて、痛いほど良くわかるからかもしれません。
自分の命は己だけのものではない。祖父が一生懸命生き抜いてくれたおかげでもあるんだということに気づき、前を向く主人公の生き様がかっこよかった。
同時に、ちょっと目線を変えたり、世界が広がったりすると、意外とちっぽけに思えたりもするんだよなーと。
「ヒビが入っても、潰れても、心はきっと、何度でも生まれ変わる。」 -
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1943年に起きたポンティアナック事件を題材にした小説。一種の反戦小説、ファンタジー小説、主人公の成長を描く教養小説の要素もあるが、何よりもエンターテイメントとして良く出来ている。週末、一気読みした。
主人公はブラック企業に勤める27才の平凡な青年。借金に苦しみ、発作的に飛び降り自殺を図るが、15年前に死んだ祖父の霊に助けられる。祖父は生前心残りの「人探し」を一緒にすることを条件に隠し財産で借金の肩代わりを提案。そこから祖父の霊とのボルネオへの旅が始まる。
祖父は戦時中、軍の命令で農業に携わっていた。そこで出会ったのは、個性豊かな人々と悲惨な戦争の現実だ。
戦争は、祖父から大切なものを奪った -
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戦争は絶対に美化されてはいけないと思う。
どんな戦争だってきっともっともな理由をつけられて
正当化されて始まったのに違いないのだから。
第二次世界大戦の末期のボルネオ島。
そこで起きた正視できないほどの悲惨な出来事。
亡くなった祖父の死んでも死にきれないほどの心残りを晴らすため、
孫の達希はボルネオ島への旅に出ます。
達希とて、日々を安穏と過ごしている訳ではなく
現代を生きる彼にも死にたくなるほど辛いことがあるわけで・・・
それでも戦争の狂気の中で必死で生きようとしていた
祖父たちの思いを知った後は
逃げ出さず日々闘っていくことを決意するのです。
自分の命はつないでくれた誰かがいてくれたか -
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二冊続けて戦争を描いた本を読んだ。
ひとくくりに太平洋戦争と言ってもあまりに知らないことが多くて愕然となる。先に読んだ「世界の果ての子供たち」で舞台となった満州については見聞きする機会も少なくはない。だが、この本で描かれるボルネオで繰り広げられた悲劇については全く知らなかった。なんと、太平洋戦争末期では最大規模の上陸戦もあったという。
この本の主人公はブラック企業に勤める達希。その達希が亡くなった祖父、勉の願いをかなえるためにボルネオに行くことになる。勉にはどうしても会いたい一人の女性がいたのだった。
達希のおかれた現代を織り交ぜつつ、祖父の過ごした戦時下のボルネオの様子をリアルに浮かび上が -
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「おおまかな合意っていうのはね、たとえ完全に満足できなくても、とりあえずみんなが受け入れられる合意のこと。それは、少数派を切り捨てる多数決とはまったく違う概念なの」
「そこには、全てが思い通りになる勝者もいないかわりに、なに一つ受け入れられずに取り残されてしまう敗者もいないということなのね」
オードリー・タン(とは明記されていないが)の発言が、「すてきなこと」として紹介されていて、嬉しくなってしまう。
私は多数派こそ正義という考え方が怖い。民主主義とは、多数決のことではない。相手を打ち負かそうとするのではなく、落としどころを見つけようとする成熟した社会であって欲しいのだ。
しかし、世界を飛び回