【感想・ネタバレ】十六夜荘ノートのレビュー

あらすじ

英国でこの世を去った大伯母・玉青から、高級住宅街にある屋敷「十六夜荘」を遺された雄哉。思わぬ遺産に飛びつくが、大伯母は面識のない自分に、なぜこの屋敷を託したのか? 遺産を受け取るため、親族の中で異端視されていた大伯母について調べるうちに、「十六夜荘」にこめられた大伯母の想いと、そして「遺産」の真の姿を知ることになり――。誰も信じず仕事だけをしてきた雄哉に託された「想い」とは――? 文庫化を望む声多数! 古内一絵の人気作が登場!

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 英国で亡くなった、会ったこともない大伯母・玉青から、高級住宅街にある「十六夜荘」という洋館を遺産として相続することになった雄哉。32歳という若さで管理職となるほど有能な彼は、この屋敷を売却しようと考え、十六夜荘を訪れる。そこに下宿する4人の住人たちと出逢い、また、大伯母の過去を知ることで、尖っていた彼が変わっていく。

 そんな雄哉が生きる現代と、大伯母が生きた戦前から戦後、の二つの時代が交錯する物語。

 玉青は元華族なのだけど、その生き様がなんとも清々しい。そして海軍省軍人の兄・一鶴の人物像が素晴らしい。雄哉よりもこの2人に心引かれた。

 この物語の一つのテーマは「遺産」。「十六夜荘」という建物であり、それが立つ土地=もの。でも、やがて、雄哉が受け取るものは「もの」だけではないことに、彼自身が気づく(読者もまた)。

 雄哉は幼い頃に母親を亡くし、ちょうどその頃、父親の転勤が決まり、父親は雄哉を両親に預けることにした。それ故、雄哉自身、母親の記憶がほとんどなく、家族の愛情にも乏しい人生を生きてきたと思っていた。

 でも、ラスト、遺されていたアルバムに、楽しげな様子の雄哉の祖母と母親がいて、母親の膝に幼子がいる写真、大伯母に抱かれた幼子の写真を見つける。その幼子は雄哉。

 そして、「大伯母、祖母、母の3人から、自分に遺産が手渡されようとしているのを感じた」雄哉。(このくだりは泣いた)

 雄哉は大伯母のことも母親のことも覚えていなかった。常に自分を中心にそう考えていた。けれど、逆の考え方がある。大伯母は自分を覚えていてくれた。自分自身に記憶はなくても、母の短かった人生に、3年分の記憶を残すことが出来た。

 遺産、それはモノだけではない。人の想い、生き様、繋がり、その人が歩んだ歴史もまた「遺産」。

 古内一絵さんの紡ぐ物語、好きです。

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2025年08月13日

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ブックファーストのイチオシ本として手に取りました。
その時の縁に感謝するほど良い本でした。玉青さんが素敵すぎます。

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2025年02月28日

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ここ最近読んだ本の中で1番感性にぶっ刺さった気がした。離れに集まっていた先人たちがむごく、理不尽な世の中でも、彼らの輪の中心に灯る何かを希望として支え合い、お互いを必要とし、暗い世の中にも光を見出し生き抜いた日々が、時代を超えて1人の末裔を大きく変えたその繋がりの力にとても感銘を受けた。 そこに込められた想いが人を大きく変えるということも戯言では無いのだなと感じた。

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2024年09月13日

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本屋さんにて【絶対読得】のポップを見て、手に取った一冊。読み終わった今、本当に読んでよかった。大好きな作品になりました。

人も月も満ち欠けがあるのが自然。欠けている時も大事な時期。

玉青は戦時前から戦後にかけての壮絶な時代を、世の中の価値観や権力が好きで自分がない不気味な人々に流されず、確かな自分を持って生き抜いた。おそらく描かれていない時代もさまざまな満ち欠けを経て生き抜いたのだ。そして玉青の確かな自分を支えたのは、共に過ごした周りの人や、離れでの思い出なのだろう。

情報が溢れて、様々な意見を発信しやすく、その意見に流されやすい今の時代において、確かな自分を持ち、大切にしたいもの、やりたいことを見失わずに生きていきたいと思った。

最後にキャプションパネルで明かされる、離れで共に過ごした若き画学生たちの行く末には胸が締め付けられた。彼らの情熱や生きた証が現代の人々に届いたのは、玉青が必死に守り抜いたからこそだ。失われた記憶は、違った形で甦り、伝播する。

はあ、また時間をおいて再読したい。

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2024年08月14日

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2024年47冊目
古内一絵さん/十六夜荘ノート
エリート社員の転落と再生を描く現在と、
彼に遺産を残した大叔母が生きた戦前〜戦後が立ち替わる物語。

「遺産」とは、「価値観」とは何なのか?
心に刺さる言葉が多く、久しぶりにカフェ読書しながら目頭が熱くなりました

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2024年06月16日

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ネタバレ

『百年の子』を読んでからこれを読んだら、過去と現在を交互に描いて、主人公が(読者が)知らなかったことを読み解いていく方式が同じだった。
雄哉が生きる現代と、玉青の生きる昭和、戦争の時代がフラッシュバックしながら、物語が進む。
雄哉が疑問に思っていることや、困っていることが、玉青の時代にスイッチされると理解できるようになっているので、混乱することはない。

もちろん、物語の素晴らしさがその手法によって損なわれることはない。古内さんならではの、魅力あふれる個性的な人たちが次々と現れて、ドラマを作っていく。
以下、ネタバレあり。注意。


玉青と雄哉が出会うこともなければ、雄哉が玉青の人生を知ることもないまま、物語のラストで意外な人物が現れる。
安心した。この人物が大叔母のことを知る限り雄哉に語ってくれるだろうから。
安易に恋愛で幕引きしたりしないところ、雄哉の人生を決めつけない終わり方にも好感が持てた。

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2024年02月13日

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力作ですね!
現代青年の雄哉は 仕事バリバリ人間
無駄は嫌い 出世と仕事だけの人

そこに東京の一等地 十六夜荘が 大叔母によって譲られる

面識もない人 と思う

そこから雄哉が会社を辞める
周りで働いている人たちの気持ちを理解するゆとりもなかった。

現代の生活と
大叔母の玉青が生きた 戦中戦後の世界が交互に描かれる

会社を辞め 自分が認められている存在だ という
プライドは なくなっていく。

十六夜荘に住む人たちは超個性的で 雄哉には理解できなかった。

自分のプライドがなくなっていく分 十六夜荘の人たちを受け入れることができるようになっていく。

玉青さんの生き方はかっこいい

最後に ひとりで生きてきた気になっていた雄哉が
実は 愛されていたんだ と気がつく

ドラマになっても映画になっても よさそうな本です。

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2023年06月03日

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歴史のつながりと人のつながり。見えなかったものが、見えるとき、そのぬくもりを感じることがある。知らないことは、悪くないが、知ることで前に進める。過去の人とのつながりは確かにある。

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2022年08月31日

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どんどん話に引き込まれていき、何度か涙しそうになる場面もありました。
英国で独りこの世を去った大叔母からの突然の遺産。
話は大叔母・玉青さんの生きていた戦時と遺産をうけた雄哉さんを行き来しながら進められていくが上手くリンクしていて違和感がない。
人というのはすごく身勝手で残酷でもあり、暖かく支え支えられながら笑い合える存在でもありすごく複雑。考えさせられます。
今の自分にとって必要な言葉が散りばめられている素敵な本でした。
大叔母の玉青さんの生き方がとにかく素敵です。

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2025年05月26日

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良かったです!知人の紹介で拝読しましたが、またまた良い作品を紹介してもらったと感謝です。内容としては、戦前から都内一等地に建つお屋敷「十六夜荘」、面識も記憶もほぼ無い今亡き大伯母から突然相続することになった主人公雄哉。とっととこんな物件は売ってしまおうと目論む雄哉ですが、十六夜荘はシェアハウスとなっている為、まずは住人を追い出す計画へ。しかしながら、それら住人達との出会いや、何故大伯母は自分へ相続させたのか、そもそも大伯母とはどんな人物だったのか、ここは一体どんな場所だったのか、まつわる謎を紐解いていく中で雄哉の気持ちにも変化が現れてきて、、という現代のお話と、、、戦前〜終戦までの間、十六夜荘で華族として生きている若き大伯母玉青とその兄、さらに共に生活をしている若き画家達のお話が交互に展開されていきます。遠い時代差で別々と思えるそれぞれの話しが、十六夜荘というひとつの屋敷を舞台に、いずれの物語も進むにつれ現代と戦争当時が何か徐々に交わる程に近づいていくようなそんな印象をもつ展開です。玉青が十六夜荘へかける想い、戦時下の惨劇、十六夜とは?それらの状況や気持ちが直接的ではないながら現代のひとりの若者の下へと受け継がれていく様子がなんとも良い感じに描かれていて秀逸だなと思いました。今のこの時代、様々問題があるにせよ、平和という括りとしては間違いはないわけで、人、土地、建物、想いも含め残されているもの全ては戦争当時の悲劇の上に成り立っており、あの時代があったから今があるんだという事を改めて痛感する次第です。何より主人公雄哉のように様々な気付きを経て成長していくことはとても大切な事だと思いました。

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2025年04月05日

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とてもドラマチックな物語。1人の青年の成長と再生の物語でもあり、玉青さんの生きた過酷な時代を描くことで、戦争、人種、性別、現代にも通ずる問題を提起して散りばめていてすばらかった。玉青さんのように、戦後過酷な時代を強いられた没落華族の人々が実際にいたらしいので、そこももっと詳しく深掘りしたくなった。

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2025年01月04日

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先月末ロンドンで亡くなった大伯母笠原玉青から、都内一等地にある赤い三角屋根の屋敷「十六夜荘」を遺された雄哉。
雄哉は、親戚からは生涯独身の変わり者と噂されていた、ほとんど面識のない大伯母について調べるために、現在シェアハウスとして使われている「十六夜荘」を訪れ、奇妙な住人4人と関わるようになる。

雄哉が「十六夜荘」の過去を探る現在と、玉青がこの屋敷で家族と、離れのアトリエに集まる画家たちとともに過ごした昭和初期の戦中の頃のことが交互に書かれていて、二つの時代が一つに重なっていくような壮大さを感じさせられます。

屋敷に集まる個性的な人たち、芸術に情熱を燃やす若者たちが、戦争というすさんだ時代にもいたということが瑞々しく感じられ、戦争に翻弄され、身の程知らずと言われようとも凛とした玉青の生きざまが、本当に素晴らしい。

大伯母玉青の家族に対する深い想いと守り抜いたもの、積み上げてきた暮らしという温もりを、後に遺された者は大切にしていきたい。
過去を知らされることによって、自分が今生きていることを充分に嚙みしめられるのではないかと思います。

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2024年12月01日

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ネタバレ

前進することだけを考えてきた雄哉が、初めて挫折を味わったことで見えてきた、過去に与えられてきた、いろいろなもの。
戦争という苛酷な状況の中、自らを「身の程知らず」と評した玉青が決して失わず、手放さなかったもの。
まるで目の前で展開されているかのように鮮やかに描かれていた。

戦中~戦後の、目を逸らしたくなるような光景は、その時代に生きた人の弱さや傲慢さをまざまざとつきつけられる。
自分が知っている知識と合わせて考えれば、たしかにそうだったのだろう。でも、そうならざるを得ない状況にあったのも想像にかたくない。
その中で自分の信念を持ち続けられたひとは少なかったと多くはなかったと思う。
兄の一鶴や若き画家たちと生きて再会できるんじゃないかと期待する気持ちもあったけれど、戦争の中ではそれこそファンタジーだ。

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2024年11月16日

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歴史物が苦手なので、あまり読み進まないシーンもありましたが、十六夜荘にまつわるストーリーや、たくさんの人の愛がそこにあってとても感動しました。

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2024年10月02日

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元華族である大叔母の遺産として、古い洋館を相続することになったエリート社員の雄哉。
華族だった大叔母の玉青と館に集っていた画家や作家たちが、華やかに過ごす昭和13年から戦後の激動まで、ちょっとした大河ドラマのよう。この時代に華僑と呼ばれた人たちの複雑な変遷もあり、読後感は思いの外重厚でした。
現代の雄哉の章が、ありがちな感じで邪魔に思えたのが残念。

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2024年09月22日

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失恋後26作品目
「満ち欠けがあるのが自然なのよ。人も国も社会も仕事も、恋愛もね。」
月の満ち欠けと雄哉と玉青の2人の物語。時代に翻弄された玉青さんのカッコいいこと!すごいなぁ。読みやすいし、時代背景も知れるし、繋がっていく感じがとても良かった。いい読後感。

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2024年09月12日

Posted by ブクログ

万人にウケるかというとそうではないかもしれない。

ただ、最後の数ページ、あぁ、この本を読んできた時間はここに繋がるんだなと。

本を閉じたあと、目をつぶって登場人物の一生を思い出し、じんわり。
自分の生き方を見つめ直したいと思いました。

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2024年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ほとんど面識がないと言っても良い元華族の大伯母から、古い屋敷を相続する。大崎雄哉は受け継いだ資産を売却しようとするが、登記簿に謎の名前を発見する。十六夜荘とな作られた古い屋敷に今集う人たちと、大伯母がまだ家族であった頃に集った人たちの物語が交錯する。

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2024年06月15日

Posted by ブクログ

英国で亡くなった大叔母から、古い屋敷「十六夜荘」を相続した雄哉。彼にとって、ほとんど会ったことがない大叔母が何故遺産を残したのかは謎でした。除け者にされていた大叔母の意図を解明すべく、雄哉は彼女の過去を探り始めます。

その過程で、十六夜荘への深い愛情と大叔母の生き様に触れることになります。物語は、雄哉が現代で生活する中で展開される現在と、大叔母が生きた戦前・中・後の時代とが交互に語られます。

特に、大叔母が経験した戦時中のエピソードは心を揺さぶります。過去と現代を比較し、「やりたいことに無制限にチャレンジできる現代」の価値を新たに認識させられる一冊でした。また、雄哉が十六夜荘との関わりの中で悟った「他人の評価は移り変わるもの」という言葉は、雄哉の仕事への姿勢にも影響を与えました。


この本を手に取ったきっかけは、本屋さんで見つけた「埋もれてしまうには惜しい本」というポップアップでした。その言葉に惹かれ、読んでみて本当に良かったと感じています。

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2024年05月30日

Posted by ブクログ

十六夜荘というお屋敷を巡って
現代と昭和初期の第二次世界大戦あたりの時代が
交互に進められています。

本当の豊かさとは何なのか、人生とは生き方とは
などエリート人生まっしぐらの雄哉と
大伯母にあたる玉青の物語を通じていろいろ
考えさせられました。
戦後大混乱の中、家族を背負っていきぬいた
玉青さんや家族、仲間達
平等でもなく理不尽すぎる世の中に
押さえ込まれながらも温かさや、人としての尊厳を曲げず一歩一歩歩く姿に惹かれ
今現在
そこに住む奇妙だけれど、真っ直ぐに生きている住民達にいつしか心動かされ、雄哉も自分の心や
居場所を見つけていく
そんなお話です。

毎日毎日追われるように生きる人生だけど
一度しかない人生
たまには
空に向かって大きな深呼吸をしよう。
それだけでも幸せな気分になります。



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2023年04月24日

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バリバリと音がしそうな程に働く大崎雄哉は、大伯母「玉青」の遺産として、十六夜荘の相続人となる。十六夜荘には訳の分からない住人がいて、雄哉の記憶にない大伯母は、親戚から「変わり者」と評されている。

戦中の玉青の話と、現代の雄哉の話が交互に進む。
パワハラで仕事を失った雄哉は、相続のための手続きを進めるが、疎ましく思っていた十六夜荘の住人と関わるうち、亡き大伯母の想いを知る。

戦時中の軍人たちの振る舞い、戦後の食糧不足や混乱、ショックな表現も多かったけど、最後の小野寺教授の告白では涙が出たなぁ。
雄哉は仕事無くなって大変かもしれないけど、遺産だけではない大きなものを得たのでしょうね。

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2023年02月11日

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突然遠い親戚の遺産で、
都内の一等地が手に入るなんて…
なんて夢のような話。

赤字のシェアハウスとして使われているあたりから様子がおかしくなってきくる。
現代と戦時中が交互に進んでいくが、
個人的には戦時中の話の方が引き込まれて
現代に戻らなくていいのになあと思いつつ、
結構夢中で読んでいた。

古内さんの作品はマカンマランなど読みましたが、
雰囲気は違うけど、伝えてくることは似ているような。他の作品も読んでみたい

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2022年11月02日

Posted by ブクログ

文章が好き ◯
作品全体の雰囲気が好き ◯
内容結末に納得がいった ◯
また読みたい ◯
その他

本当に自由に生きるための勇気。


「乙女チック」な内容かと、さらっと読み流すつもりが、後半予想外の展開。

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2022年06月14日

Posted by ブクログ

今、現在進行形でウクライナの戦争のニュースを見る時、この小説の80年前の第二次世界大戦中の日本での戦時の描写がすごく身近に感じていたたまれなくなりました。百年近く経っても戦争は似たような状況で、苦しむのは市井の民で、人間って愚かしいと、なんにも変わらない結果に胸が痛くなりました。

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2022年04月22日

Posted by ブクログ

面白いようなそうでもないような。

十六夜荘を残した戦時中の叔母の想いと、十六夜荘を相続した現在を生きる甥?の物語。

だんだん人の気持ちに寄り添える人になっていくところは良かったかな。

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2025年10月04日

Posted by ブクログ

 理路整然と仕事をこなし、冷徹と思われるほど冷静沈着な雄哉は、あまり面識のないいい噂を聞いたことのなかった大伯母の遺産として一等地に建つ老朽化したシェアハウスを相続する。
 当然、売っぱらおうと住人たちに立ち退きを迫る。その住人たちも、噂の大伯母のように変わった人達で‥。

 読みながら最初から雄哉が住人たちや大伯母の色んな話に影響されて人柄が変わってその屋敷を売らないんだろうなと予想がついてしまう展開。
 「本当の遺産」の章から色々と明らかになる戦後の混乱を生き抜いた大伯母の本当の姿。
 混乱を生き抜いた凛とした姿の玉青や、本当にいい人物だったんだろうなと描かれている玉の兄の一鶴など感銘を受けないわけではないが、ふと、玉青はボロい住人含めてのシェアハウスで雄哉に何を遺したかったのか、よくわからない。

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2024年07月17日

Posted by ブクログ

会ったこともない大叔母からの遺産相続。それは大叔母の記憶が詰まった十六夜荘だった。相続人の大崎雄哉は自分の目的のためなら、周囲の気持ちなど顧みない鼻持ちならない男だったが、ある事件をきっかけに自分の歪んだ考え方に気がついていく。そして大叔母がなぜ十六夜荘を大切にしていたのか、戦争の傷跡の中で大叔母はどう生きていたのか知ろうと思うようになる。戦争の悲惨さを物語として目の当たりにするから、とても辛い物語。目を背けてしまいたくなる。事実を知って戦争を行ってはいけないと改めて思う。

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2024年06月07日

Posted by ブクログ

戦時中や戦後の華僑の人たちの様子がよくわかる感じで書かれているなぁと思って読んでいたら、著者は中国語の翻訳者をされていたのですね〜。

人も月の満ち欠けと同じで、ずっと同じではいられなくて、欠けていく時期っていうのもとても大事なもんなんだなと。
欠けていく時期だからこそ気づけることもあって、人の評価を気にするのではなくて、自分にかけられた想いを感じていくというのが大事なんだなと思った。

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2023年08月05日

Posted by ブクログ

とても面白かった。中盤あたりから止められなくなりあっと言う間に読み切ってしまった。戦前、戦中、戦後、そして現代。みんなみんな、悩んで藻掻いて愛されて生きている。人も月と同じで、満ちてくときもあれば、欠けてくときもある。とても刺さった言葉だった3.7

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2023年06月05日

Posted by ブクログ

ある日突然、面識のない大叔母・玉青の遺言で、高級住宅街に建つ"十六夜荘"という屋敷の相続権があると知らされた主人公・雄哉。
しかし十六夜荘は現在、ほぼ利益など出ないシェアハウスとして運用されており、雄哉は住人たちを追い出そうとする。
一方、謎の大叔母・玉青の若かりし頃が、雄哉の生きる現在と交互に描かれる。
果たして、玉青が雄哉に十六夜荘を遺した真意とは?

華族に生まれ、戦中にあっても芯を失わず前を向く玉青には、気高さと強さを感じました。率直に凄いなと。
ただ、自分の祖父母らの第二次大戦の話をかつて聞いた身としては、やはり玉青の環境は一般人のそれとは違うよね……と感じ、なんだかなあと、もやっとした読後感になってしまいました。
古内さんの他の著作はとても好きなんですけどね。

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2022年07月17日

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