古内一絵のレビュー一覧
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古内さんの著書は初でした。
現代に生きる元華族のお屋敷を大叔母から遺産として譲り受けた主人公雄哉と、大叔母の玉青が生きた戦時中出来事、2人の人生を交互に描いた物語。
どうして面識もない自分に、必死に守ってきたお屋敷を遺産として残したのかを、超合理主義な雄哉は調べていくが、そのうちに玉青の人生にも興味がわいてくる。
理不尽的に辞めさせられた仕事、社会の名声という背後立がないと離れていく女性、無職になり今の十六夜荘の状況を考え屋敷を解体し土地を売る手続きに入る予定が、十六夜荘の住人達との交流の中で自身で自覚するほど気持ちが変わり始めていく。
玉青の生き方と覚悟がどれほどものか。
「私は身の程知らずだ。時代の波に阻まれて、自分の人生を全うできなかった人たちの窓になる。生きて新しい時代を見る。なにより、自分自身のために。」
大叔母の覚悟を知った雄哉ができることは、このお屋敷を残すことだった。
戦時中は人類みな不幸になるだけの時代だ。東京が焼け野原から心機一転し全てを作り変えていく中で、一つのお屋敷をそのまま遺すということはどれほど大変なことかがわかった。
十六夜は欠けていく月。でも欠けていくから、また満ちていくその繰り返し。
誰も信用できない雄哉が、誰かと繋がっているという前向きな暖かな気持ちになったことが読んでいて嬉しかった。
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Posted by ブクログ
紅茶が好きなので、紅茶が出てくる小説が読みたくて。SNSでこちらの小説が紹介されていたので手に取りました。
主人公の涼音は祖父から「お菓子はご褒美。だらしない気持ちで食べてはいけない」と言われて育ちます。
アフタヌーンティーに心惹かれ、アフタヌーンティーブームの先駆けともいえる「桜山ホテル」に入社し、入社8年目で念願かなってアフタヌーンティーチームへ異動します。しかし、なかなか想像していた通りにはいかず…時にスタッフとぶつかりながらも最高のアフタヌーンティーを作るために奮闘する物語です。
広大な庭園を持つ「桜山ホテル」をホテル椿山荘のイメージで読んでいたのですが、巻末に取材協力先として椿山荘の名前があって、やっぱり!と嬉しくなりました。
主人公の涼音は正社員と契約社員の待遇の差に無頓着だったり、シェフパティシエが隠している秘密を無邪気に本人に聞いたり、ちょっと無神経すぎるな…と思いましたが、後に反省し前向きに仕事を頑張っていきます。
大事件があったりする訳ではないし、スタッフ同士の対立も引きずることはなく、基本的に嫌な人が出てこない温かい成長物語でした。 -
Posted by ブクログ
恋と食のある10の風景
小説新潮掲載作品から編まれた、
人気作家陣による〈恋〉と〈食〉をテーマにしたアンソロジー。
顔ぶれはなかなか豪華。
「わたしたちは平穏」 一穂ミチ
平穏なふりをする平穏が好きなふたり。
波風を立てず、壊さない距離を選び続ける関係性が、食卓の静けさとともに描かれる。
元妻の生霊だか怨霊だかの存在だって平穏
「ワタシノミカタ」 古内一絵
シングルマザーの漫画家と、その息子。
忙しさと不安を抱えるふたりのもとに現れたのは、救世主のような若いイケメンアシスタント。
外見だけでなく、心までイケメン。
仕事にも生活にも、さりげなく手を差し伸べる存在は、ふたりにとって確かに“味方”。
エッセイ
「初恋と食事」 田辺智加
お笑い方面の方みたい。
「ヴァンパイヤの朝食」 君嶋彼方
君嶋彼方は、まだそれほど作品数が多くない作家さん。今ならあなたもコンプリート可。
最新作は予約中。
本作も含めて、やっぱり君嶋さんの小説が好きだと再確認する一編。なんていうか、優しくて強い感じのストーリーが多いんでは、と思う。
※BL作品のため、内容には触れず。
(結局そこかーい)
「くちうつし」 錦見映理子
自分の生家へ移り住み、ほどなくして
夫を階段転落で亡くした。
愛しさと寂しさ、そして引っ越してきたことへの後悔が入り混じり、日々は空虚に過ぎていく。
そんな時知り合った美容師の女性。
どこか現実と異界の境が曖昧になる感触は、
『異人たちとの夏』を思い出させる短編だった。
掌編
「ゆかりとバターのパスタ」 山本ゆり
料理コラムニストの掌編。
飾らない文章と、華やかで手軽なレシピで知られ、ブログが人気だという。
料理が好きで、しかも上手。勝てない。
「白と悪党」 奥田亜希子
読んでも読んでも、初読みの作家が現れる。
読書の楽しさは、たぶんこういうところにもある。
落ち着いた文章で、とても読みやすい。
短編でも無理がなく、世界にすっと入れる感触があった。
長編も、そのうちに。
「SUMMER STREAMER」 尾形まりこ
コピーライターで、そちら方面での受賞も多い作家。本作の主人公は、夫を突然亡くした、やや高齢の女性。
引きこもりがちな生活の中で、大谷翔平の魅力に惹き込まれ、やがてアメリカへ試合を観に行く決断をする。
かつての昭和主婦世代は、
仕事を持たず家庭にいた人も多く、
趣味にお金や時間を使うことを どこか「いけないこと」「自分には許されないこと」と
感じていた人も少なくなかったと思う。
残された時間は自由。
ただし、詐欺には気をつけて。
「夏のカレー」 原田ひ香
婚約までしていた彼女が、
実家の倒産をきっかけに失踪し、連絡が取れなくなる。
その後、人生の節目ごとに
すれ違うように再会するふたり。
会うたびに、彼女の立場や暮らしは変わっていく。
けれど、カレーの味だけは変わらない。
昭和の途中までは、
夜逃げという言葉が現実にあった記憶。
変わり続ける人生と、
変わらない味。
エッセイ
「恩讐の彼方のトマトサラダ」 山田詠美
山田詠美さんの こういうタイトルのセンスが好き