古内一絵のレビュー一覧
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ネタバレマカン・マランシリーズの次に手に取った古内一絵の本『東京ハイダウェイ』。マカン・マランシリーズの時にも思ったが、古内一絵の短編はキャラクターが紋切り型ではなく、しっかり練り込まれていて、それを軸に物語が展開するので読み応えがある。あっという仕掛けや大きな事件がなくても、主人公が抱えている事情を知っていくだけでも面白くてページをめくる手が進む。ひとつひとつは長くないのに、こんなふうに丁寧に作り込まれた物語に触れると、読書をしていてよかったなあ、という気持ちになる。
好きなのは『星空のキャッチボール』と『眺めのよい部屋』。
『星空のキャッチボール』は堅実な仕事を積み重ねていく桐人が主人公。ひどい不眠症に悩まされているが、同僚の女性が通うプラネタリウムで昼休みを過ごすことによって、不眠症の原因だった亡き父への思いに気づく。読後、じわりとあたたかい気持ちが胸に広がった。小説を読むことの醍醐味、人と関わることの醍醐味、それを静かに噛みしめて元気が湧いてきた。 -
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今までのマカンマランシリーズの多くの登場人物が何らかの形で出てきて成長してたり、シリーズ外の、アフタヌーンティーが出てくるあのホテルの話が出たり、楽しく読めた。
台湾にもぜひ行ってみたいけど、美味しそうだけでなく、台湾の歴史など考えさせられる部分もあった。
「日々、世界中で悲しいことややりきれないことが起きている。地球を取り巻く環境も年々厳しくなるが、私たちは、この日常を簡単にあきらめるわけにはいかない。自棄になったり、無気力になったり、声が大きいだけの流れに安易に取り込まれたりしてはいけない。」
その通りだと思う。
一歩一歩、自分の道を歩いて行こう。 -
Posted by ブクログ
大好きなマカン・マランシリーズの番外編。
「さよならの夜食カフェ」でもうシャールさんに会うことないんだと思ってたから、番外編でもまたシャールさんに会えて、本当に嬉しい。
番外編の舞台は台湾。
シャールさんが滞在中のところに妹分?のジャダとマカン・マランの常連でライターのさくらが2泊3日で訪れる。
台湾のお料理が何でも美味しいことは、言わずもがな。
でも、文章にしても美味しさが伝わってくるのは、さすが。
台湾に行ったことのない私でも、お料理の美味しさだけでなく、物語の中に出て来る情景も目に浮かぶようで、とても情緒的な4編だった。
もちろん、今は友好国である台湾も日本には嫌な記憶もあるし、そういう面に出ない歴史もきちんと伝えてくれるのが、誠実なシャールさんに反映される作者さんの人柄を感じる。
シャールさんと同年代の自分には、エピローグでシャールさんと常連で同級生の柳田との会話がさらに心に刺さった。
私たち、これからはゆっくり下山を楽しめばいいんじゃないかしら
そして
一番つまらないのは、なになにしなければ、なになにでなければって、幸せを限定してしまうことだと思うわ
実際にはそんなこと全然ない。幸せって、そんなせせこましいものではないのよ。もっとおおらかで、深いの。だからほんの少しでも充分なのよ
この2つのシャールさんの言葉に、何かに怯えて、何かに焦ってる自分が救われた。
今は同じ場所で立ち止まってるだけで、それこそ「なになにしなければ」状態だったから、この言葉が心を救ってくれたのだと思う。
本編も良かったけど、エピローグで気づいたら、涙が溢れた。
また、いつかシャールさんに会いたい… -
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仕事で心が荒んだ時、疲れた時に、この物語に没頭すると自然と心が回復してきて、頭の中のもやもやが洗われる。読み進めるうちに、自分を大切にして日々健やかに生活していこう、と思い直させてくれる。
シャールさんの提供するまかない、登場する料理の描写にはなぜか自炊意欲をかき立てられる感じがして、自分も丁寧に生活したいなと思わせてくれる。
例えばシャールさんがいつも淹れてくれるお茶があるのだが、「湯気と共にシナモンとジンジャーの香りがふわりと立ち昇る、ハーブとスパイスの効果で夏はほてりが引き、冬は体が温まる…」みたいな丁寧な描写で表現されるので、私もちょっと作ってみようかな、飲んでみたいなぁみたいな気持ちになる。食べ物、食材の描写が素敵で癒される。
元エリートサラリーマンであり、社会に揉まれた経験や紆余曲折を乗り越えたのだろう、今はドラァグクイーンとなったシャールさんだからこそ、発する言葉に説得力があって温かく、心に染みるなと思った。登場する常連さんとお針子さんたち、シャールさんの関係性にはクスッと笑える場面も多く、心が和む。次の巻も読むのが楽しみ。 -
Posted by ブクログ
様々な悩みを抱えたお客さんが訪れるカフェ「マカン・マラン」。一人一人と真摯に向き合い、丁寧に接する店主・シャールの姿が印象的だった。相手に合わせて出される飲み物や料理には温かさが宿り、それ以上に、人との出会いや縁の尊さを感じさせてくれる。シャールがかける一言一言には重みと優しさ、そして温かさがあり、お客さんだけでなく読者自身も救われるような言葉に何度も出会えた。
様々な過去を背負った人々が登場する中で、シャール自身もまた、決して平坦ではない過去を持っているのかもしれない、とふと感じさせられる。だからこそ、相手の気持ちに寄り添えるのだろう。マカン・マランは、人の心の拠り所になるような場所であり、自分自身も辛いときにはこの本のページへと戻ってきたいと思わせてくれる一冊。続編もぜひ読んでみたい。