古内一絵のレビュー一覧
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著者自身の祖父と父にまつわる実話を基にした小説とのことだが、それもあってなんだかNHKの「ファミリーヒストリー」みたいなテイスト。
章によって、一人称が息子→母→父…と入れ替わっていくが、それによって家族の有り様が多面的に立ち現れてくる。
昭和39年から過去を振り返る序章と終章は、単行本のために書き下ろされたもののようだが、これが加わることで時間的な深みが増す効果を生んでいる。
「ファミリーヒストリー」を視てもいつも思うけど、自分よりも二世代ほど前のこの時代、現代よりも世の中がずっと不確実で、どの家族も社会状況に翻弄されながら生きていたのだと思い知らされる。
主人公の家族に限らず、どの家族 -
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競馬界はよくわからないけれど、
なんとなく華やかなイメージがありました。
けれど、リアルに書かれた本だけあり
実際にはやはり、どの業界にもあるドロドロした、しがらみや妬みの方が多くマスコミに踊らされたり、馬が辛い目にあったり
少し辛い気持ちになってしまう場面もありました。
この物語は、数少ない女ジョッキーが少しづつ心も技術も成長していく物語です。
卒業して地方の厩舎でジョッキーとして雇われた瑞穂は、
少しづついろいろな傷をもつ
厩舎のスタッフたちとぶつかりながらもみんなで厩舎のピンチを回避するため奮闘する物語です
そこで出会った運命の馬
フィッシュアイとの心のやりとりは本当に素晴らしく、みんな -
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理路整然と仕事をこなし、冷徹と思われるほど冷静沈着な雄哉は、あまり面識のないいい噂を聞いたことのなかった大伯母の遺産として一等地に建つ老朽化したシェアハウスを相続する。
当然、売っぱらおうと住人たちに立ち退きを迫る。その住人たちも、噂の大伯母のように変わった人達で‥。
読みながら最初から雄哉が住人たちや大伯母の色んな話に影響されて人柄が変わってその屋敷を売らないんだろうなと予想がついてしまう展開。
「本当の遺産」の章から色々と明らかになる戦後の混乱を生き抜いた大伯母の本当の姿。
混乱を生き抜いた凛とした姿の玉青や、本当にいい人物だったんだろうなと描かれている玉の兄の一鶴など感銘を受 -
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今、朝ドラ「虎に翼」を夢中になってみているけれど、まさに同じ時代の東京を舞台にしたお話で、「虎に翼」に出てくる浮浪児や町の様子を思い浮かべながら読んだ。
私は40年ほど宝塚を観ていて、学生時代に劇場でバイトをしていたこともあり、菊田一夫作品には馴染みがある。「放浪記」は何度も観たけれど、何度観ても森光子さんたちの演技も含めとても良いな、名作だなと思えたし、「ダル・レークの恋」や「霧深きエルベのほとり」は再演を観て素晴らしい作品だと思った。最近の脚本・演出家の作品はストーリーありきで登場人物たちの人間性が深堀りされていないものが多いと感じるけれど、菊田一夫作品は登場人物たちがちゃんと活きていて、 -
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装丁とタイトルに惹かれて手に取った一冊。
誕生日を題材とした連作短編集。誕生日というとキラキラした甘いお話がメインかと思ったらそうではなかった。主人公たちは誕生日にまつわる少しビターで切ない思い出を抱えている。
色んな葛藤を経て、みんな最後は自分の気持ちに区切りをつけて前へ進もうとする姿が印象的だった。
特に「刻の花びら」は自分と重ねて涙がポロポロ溢れてしまった。
3.11やコロナ禍の話もあって、その時に誕生日を迎える人が少なからず葛藤や苦悩を抱えたりしているのかもしれないと言うことにも初めて気付かされた。
皆が平等に迎える一日であってもそこには一人一人違った物語があるのだ。 -
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この本では、令和、平成、昭和のような世代間のギャップや、男女の価値観の違いが生む軋轢が描かれえている。
「女性は子供を生むべきだ」
「女性なら仕事よりも育児を優先するべきだ」
「男は仕事をして家庭を支えるべきだ」
「美人で料理ができるのに結婚しないのは良くない」
「ゆとり世代」
などなど。
この本は、「仕事」が1つのテーマになっている。
上記に述べたような価値観の違いが、「仕事」という要素が入ってくることによってより顕著になってくる。
最近は、「女は仕事をせずに家庭に入るべきだ」のような価値観が薄れてきてはいる気がするが、まだその片鱗は残っているように感じられる。
「自分は自由浮遊惑 -
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☆3.5
古内一絵さんの作品は「マカン・マラン」シリーズや、「銀色のマーメイド」など心温まる作品が多いイメージだったので、今作を書店で見掛けて購入させて頂きました。
帯にも「日常を忘れて、おくつろぎください」と記載されていたので、心温まる作品かと思っていたのですが…こ、こ、怖かったです( ˊ•̥ ̯ •̥`)
表紙のイラストやタイトルの文字の字体から、何となくミステリアスな作品なのかなぁとは予想はしていたのですが、やはり全然くつろげませんでした…。
猫が好きで、以前から猫が登場する作品は気になってよく読むので、今作でも猫がたくさん登場してくれたのは嬉しかったです❁