あらすじ
ようこそ、心休まる「隠れ家」へ。
東京・虎ノ門の企業に勤める桐人は、念願のマーケティング部に配属されるも、同期の直也と仕事の向き合い方で対立し、息苦しい日々を送っていた。
直也に「真面目な働き方」を馬鹿にされた日の昼休み、普段は無口な同僚の璃子が軽快に歩いているのを見かけた彼は、彼女の後ろ姿を追いかける。
辿り着いた先には、美しい星空が描かれたポスターがあり――「星空のキャッチボール」
桐人と直也の上司にあたるマネージャー職として、中途で採用された恵理子。
しかし、人事のトラブルに翻弄され続けた彼女は、ある日会社へ向かう途中の乗換駅で列車を降りることをやめ、出社せずにそのまま終着駅へと向かう。
駅を降りて当てもなく歩くこと数分、見知らぬとんがり屋根の建物を見つけ、ガラスの扉をくぐると――「森の箱舟」
……ほか、ホッと一息つきたいあなたに届ける、都会に生きる人々が抱える心の傷と再生を描いた6つの物語。
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六話の短編、それぞれの登場人物が少しずつ被っている。
タイギシンが一番好きだったな。自分に自信を持てない少年がボクシングで道を見出す話。パンチを打つ音が聞こえてくるかのような鮮やかさで良かった。
他も、会社なり学校なりで味わう閉塞感をどうにかやり過ごす感じで少し救われたように思う。
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みんな、色々悩みはあるけど、悩みながらも
頑張って進んで行くお話で面白かった。同僚の嫌な奴の心の中も知りたかったな。なんで自信満々に人を蹴落としていけるのか…バチが当たっても、全然気にせずに復活しているのがびっくりした。
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『東京ハイダウェイ』を読んで、身近な場所がたくさん登場することに驚きました。
みなと科学館は通っている整形外科のすぐ近くにあるし、東京国立近代美術館は普段からその横を走っているのに、これまで足を踏み入れたことはありませんでした。ほんと、新しい発見につながりました。
読後、さっそく夢の島を訪れて第五福竜丸展示館を観てきました。土曜日にもかかわらず、公園は暑さのせいか人が少なく、展示館も植物園も静かで落ち着いた雰囲気でした。「隠れ家」のようにひっそりと佇む場所に、自分だけの時間を持てた気がします。
この作品の中には、思わずドキッとする言葉がいくつもありました。
「自分が生きている世界は、理不尽で、汚くて、惨い。」
「期待すれば裏切られる。頑張れば挫折する。努力すれば損をする。流れに逆らえば孤立する。」
生きていく中で辛いことは避けられません。それでも、今の若い世代は守られていて、恵まれた環境にいると感じることが多いです。けれど、心の中ではそれを「当たり前」と認めることに、どこか抵抗もあります。
そんなとき、ふと戦争のあった時代を思い浮かべます。あの頃に比べれば、私自身も守られている。社会は少しずつ改善され、より生きやすい方向に進んでいるのだと改めて気づかされました。人は楽を求める存在だからこそ、社会もまた「楽な場所」へと形を変えていくのでしょうね。
/_/ あらすじ _/_/_/_/_/
連作短編集です。
悩みを持った主人公たちが、悩み、もがき、前へ進んでいきます。
それぞれのハイダウェイ
矢作桐人
みなと科学館 プラネタリウム
米川恵理子
ゆめのしま
大森圭太
ボクシングジム
植田久乃
東京国立近代美術館
瀬名光彦
しながわ水族館
神林璃子
上野恩賜公園
/_/ 主な登場人物 _/_/_/
矢作桐人 やはぎきりと
寺嶋直也 桐人同期、できる男
米川恵理子 マネージャー、46歳
米川雅彦 夫
米川優斗 長男、小3
米川健斗 次男、小2
神林璃子 システムチーム、桐人同期
伊藤友花 30代、美人、派遣、退職
植田久乃 恵理子友達、同級生、カフェ店長
大森智子 恵理子友達、同級生
大森圭太 ボクシングジムはじめる、いじめられっこ
小野寺康 いじめっこ、いじめられっこ
堂本清美 ボクシングジムトレーナー
瀬名光彦 恵理子の会社に中途入社、久乃の店の常連
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古内さんの本を他のもの読んでみたい!
と思い 読ませていただきました。
古内さんのファンになりました。
どの話もわかるーー!となりました笑
見えないところでみんな色々抱えて
戸惑いながら頑張ってる。
私も毎日不安なこともたくさんあるけど
がんばろっと思えました。
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古内さんは3作目。大衆小説で読みやすい。承認欲求とか、多様性とか、現代らしいテーマだった。
哲学の本でも読んだけど、現代人は孤独を感じやすくて、関わりを持つために承認されたいのかな、って感じた。自分と社会を結びつけたいという欲求。
東京は1人でも楽しい場所っていうのは本当にそうです、大共感。でもきっと心の裡は寂しいのだろう。だから承認欲求モンスターが多いのかもしれない。。
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「ハイダウェイ」とはどういう意味だろうと調べたら、隠れ家・秘密の場所ということだった。この本出てくるそれぞれの主人公はハイダウェイを見つけて気持ちをリセットさせていつもの雑踏に紛れた空間へと戻っていく。でもハイダウェイがあるから頑張れる。そして、前向きに次のステップを踏める。とても素敵なお話ばかりでした。
Posted by ブクログ
めっちゃ好きな系統のお話でした。
主人公の異なる6話の連作短編。
40代女性管理職の世間からのラベリングに苦しむ「森の箱舟」
同じく40代女性、あえて1人を選択しているのに都合の良いラベリングに辟易している「眺めのよい部屋」
この二つが特に好きで、この二つに共感している時点で自分も大なり小なりそんなところがあるんでしょう。
あと、ジェリーフィッシュは抗わない、50代の男性がハラスメントに立ち向かうお話も面白かった。
この作品の良いのは最後にちゃんと前に向くところ。
息苦しさに共感すると同時にちゃんと息を吐ける結末が良かったです
2025.7.27
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既に懐かしいコロナ禍。当時のIT企業で働く人々が、それぞれの隠れ家で癒されながら日々奮闘する物語。著者の描き出す世界観がとても好きだが、今作は特別良かった。お昼休みに無料で観れるプラネタリウムなんて私も行きたい。東京はストレスが多く溜まりそうだが、その分癒されスポットも充実していて羨ましい。いじめられている少年がボクシングを始めて心身ともに成長する物語が1番スカッとするが、桐人、米川MG、璃子の章が好み。働いているとどうにもならないことの方が多いが、本書のように息詰まったら少し逃げて隠れ家で癒されるといった息抜きも取り入れたい。
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色々な事にぶつかりながら生きている人達が、ふと現実から離れて逃げ込める場所がある。
一つの会社を舞台にそこで働く人達や関係する人達の連作。
心の切ない部分に触れられながらも、そこから立ちあがろうとする人達の気持ちが心地よい。
矢作桐人君、良いねぇ〜
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惑いの星に住む人間たちの、まっすぐさ、誠実さ、愚かさ、強さ…どれもが感じられる。まさに人間という生物が抱えるものは不完全であり完全な人間はいない。
初めて古内一絵さんの小説を読んだけど、これは心の抗不安薬だ。
心休まる場所が誰しもには必要であり、それを意識しているかいないかは、わからない。
私も誰かの不安に触れて、共に歩めるような人間になりたいと思えた。
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2024年出版。283ページ。「ハイダウェイ」はhideaway で、隠れ家。Eコマース会社の関連人物で物語が繋がっていく...。評価は「4」にしたけど、正直を言えば微妙。この作家さんの作風なのだろうけど、エンディングで持ち上げる為に、設定展開の段階でかなりドロドロと落とす。纏めて読み進める時間が無い時に、落ちた所で中断すると、読んでいる此方までメンタルが辛くなってしまう...。本作は各エピソードでのエンドの持ち上げが大きい気がする。その分だけドロドロもキツイ。「感動的に読めた」人は高く評価するだろうと思う。重いのはもうイイよ...と感じている人には薦めない。
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一人一人の物語に引き込まれて一気に読みました。
少し前に母を亡くしたばかりなので、久乃さんの「眺めのよい部屋」は危なかったです。途中「こんなの聞いてないよ〜」と目の奥が熱くなって、久乃さんを囲む周りの人達の優しさにもウルっと来てしまいました。
国立近代美術館にも今度行ってみようと思います。
品川水族館や夢の島の植物園など馴染みのある場所も登場するのでまた立ち寄りたくなりました。
Posted by ブクログ
東京で社会の波に揉まれながらも生きる人達のお話。
世の中って、色々素敵な部分もあるけれど、それと同じくらい苦しくて汚い部分もある。ただ、人って、ついその綺麗な部分にしか目を向けないよな〜と。
ただ、その苦しい部分と一緒に生きようとする人にももっと向き合いたくなるような、少し活力が湧いてくるような気がします。
Posted by ブクログ
都会で生きづらさを感じながら働く人たちのハイダウェイ"隠れ家"とはどんな所だろう?
優しい色合いの表紙に惹かれ手にしたが、人物が鮮明に描かれているので読みやすかった。
語り手が入れ替わる六つの連作短編の中で良かったのは「森の箱舟」。「眺めのよい部屋」には泣かされてしまった。
中堅イーコマース「パラウェイ」に新卒入社した矢作桐人。倉庫勤務から念願の本社マーケティング部へ異動するが、同期の直也から仕事のやり方を馬鹿にされる。昼休みになると出かける神林璃子の後を追った桐人が見たものは…
「星空のキャッチボール」
二児の母、米川恵理子はマーケティング部のマネージャーになり6年。契約更新の面談で、正社員を希望する伊藤友花から「米川さんはいいですね。なんでも手に入れられた世代で」と言われ…
「森の箱舟」
一話の中に「非正規雇用」「ハラスメント」「仕事と子育ての両立」など働く女性の問題が次々と出てくる。職場で、家庭で女性に求められる"役割"のなんと多いことか!
二人目を帝王切開で産んだ恵理子に対する義母の言葉「やっぱり高齢出産だったから、普通に産めなかったのかしら」は、あまりに酷い!
夫の雅彦が「あのさ、お母さん」と恵理子を呼ぶ無神経さにもモヤモヤした。
東京夢の島公園の熱帯植物館には行ったことがある。元漁船で、アメリカの水爆実験により被ばくした第五福龍丸を見たことも思い出した。会社を初めてサボった日に大きな船を見上げる恵理子の気持ちになって読むことが出来た。
新型コロナで臨時休校してから2年半。
学校は二学期から通常授業に踏み切る。
先輩からいじめを受ける高一の大森圭太はボクシングを習い始めるが…
「タイギシン」
「眺めのよい部屋」の途中から涙が溢れ止まらなくなった。東京国立近代美術館4階に置かれた椅子に座り、小雨に濡れる東京の街並みをじっと眺める母と娘の姿が見えるようだった。
「ジェリーフィッシュは抗わない」
「惑いの星」で、再び神林璃子と矢作桐人が登場するが、二人のこれからがどうなっていくのか、応援したいと思った。都会の中で知らない者どうしが少しずつ繋がっていく。そんなきっかけになる心の"隠れ家"を私も訪れてみたい。
Posted by ブクログ
虎ノ門にあるイーコマースの会社で働く人たちにつながる人々の物語。短編が6作品だが、全てがどこかつながっている構成です。
この小説を読んで、僕もお昼休みは会社の外の公園など隠れ家的なところでほっと一息入れて、日頃のストレスとバランスをとっていたことを思い出しました。
物語の舞台は実際にあるところです。今度会社帰りに港区立みなと科学館のプラネタリウムに寄って、登場人物たちと同じ空間を体験しようかな。
Posted by ブクログ
人手不足の世の中にであるにも関わらず20代で既婚の女だとなかなか雇われないとか、子育てしながら仕事を頑張っている人に対して「これだからワーママは」なんていうのもよく聞くフレーズではあるけれど、これも一種のセクハラにあたったり読んでて共感できる部分が多かった。
一人一人何に悩んでるかなんて本人じゃないと分からない。
Posted by ブクログ
インターネット上でショピングモールを運営する会社で働く人々と、その人達に関連がある人々の連作集。
あまり要領が良くない桐人、同期の何事にも要領が良く、上司に取り入るのも上手い直也とは対照的。
昼休みにやはり同期の璃子が会社の近くのプラネタリウムに入っていくのを見かける。
そして桐人も同じようにプラネタリウムで昼休みを過ごすことになる。
二人とも社内ではちょっと孤立しがちだが、淡々と自分の仕事をこなしている。
桐人は亡くなった父とのことで葛藤を抱えているし、璃子も子どもの頃の出来事から精神的に不安定なところがある。
この作品の底には様々なハラスメントが流れている。
ハラスメントに潰される人、ハラスメントの渦巻く社会で上手くかわしながら、自分の役割を演じて渡っていく人、様々だ。
声の小さい者はどうしても不利、声を上げたものがのし上がっていく。
そんな構図は昔も今も変わらないのかもしれない。
桐人と璃子、心の中のわだかまりを一つ乗り越えたのかもしれない。
地味であっても新しい組織に貢献してほしい。
そしてもう一人、私が気になったのは、不登校気味の高校生の圭太。
好きなファンタジーノベルの女戦士ヴァルキリーのような女性を街で見かけて付いて行き、ボクシングを始めることになる。何でもいいけどやる気になった圭太を応援したい。家に籠もってなんかいないで外に出よう!って若者にいいたい。
クラゲの話と惑星の話も面白かった。
Posted by ブクログ
東京にもいいところがあるかもしれない、
と、私は人が多いところが嫌いだから東京で働くのを避けてきたところがあるけれど、
この本は東京の都心でも、自分の空間を見つけ出して、自分のペースでいられる時間を隠れ家のように見出していた人たちが描かれています。
この本は職場や学校といった社会に焦点が当てられていて、
かなり身近な文脈でありつつ、少し現実の中の逃避を描くファンタジックなところが小説として楽しめる。
各章ではいろいろな社会的、家庭的役割を担う人物に焦点が当てられていて、
みんなどうにかつながっているんだけれど、
他人のことなんて、ほんの少ししか分かっていない、し、
分からない、と思う。
矢作桐人、
米川恵理子、
大森圭太、
植田久乃、
瀬名光彦、
神林凛子。
別に実際にいるわけではないんだけれど、
わたしの中にそれぞれが部分部分で存在しているような、
だからこそ、まったく架空の人物についても真剣に考えてしまったり。
そして多くの人にとってそんな無名の一人ひとりが、東京や他のいろいろな都会で生きて、知らぬ間に関わり合っては離れて、存在しているんだなーと。
仕事でもやり始めるとやり切らずにはいられない矢作桐人の真面目さとか、厳格不機嫌だった父に対する許せなさとか、
たくさんの役割を担う知人を横目に、恋愛感情とも無縁に自分の生き方を生きて「自分はのっぺりとした素顔をさらし続けている」植田久乃が、実は自分は何物にもなれない、と気にしてたり、それで親に強めに当たったりするところとか、
キャリアにおいても粛々と流れに従って今に至る瀬名光彦の、社会の矛盾を知って都合よく知らぬふりをしてきたところとか、
はなんだか自分と重なる部分があり。
Posted by ブクログ
それぞれの隠れ家、コロナ禍の日常の中で、ままならないことが多い私たちには必要なものなんだなーと思う。
劇的に良くなってハッピーエンドではなく、少しずつ前向きになろうとする日常の暖かくなるところがいい。
Posted by ブクログ
東京の中心地にある中堅eコマース会社を中心に繰り広げられる連作短編ヒューマンドラマ。各話で主人公が異なる、群像劇の体裁で描かれる。
◇
アラームの鋭い電子音で矢作桐人は目が覚めた。アラームをとめても頭はまだぼんやりしている。それでも自分が汗まみれであることに気がつき、桐人はシャワーを浴びようとふらふら立ち上がった。睡眠不足なのは明らかだ。
梅雨明けから連日の猛暑日と熱帯夜が続いている。熱中症予防のため、夜中もエアコンの使用が推奨されているが、桐人はどうしてもつけっぱなしにしておけない。
桐人が育った家は裕福でなかったことと、極度の倹約家だった父親の影響で、エアコンにかかる電気代が勿体なく思えてしまうからだ。
「どの道、たいして寝られないんだしな」
シャワーを浴びながら桐人は、半ば自棄のように独りごちた。
桐人はひどく寝つきが悪い。ベッドに入っても数時間は眠れず、寝られても1時間ごとに眼が覚めたりする。
学生時代から続く睡眠障害。その原因がどこにあるのかわからない。ありていに言えばストレスだろうが、ストレスのない人間なんてこの世にはいないだろう。
そんなことをとりとめもなく考えつつ身支度を調えた桐人は、いつものゼリー飲料を胃の中に流し込み、マスクをして部屋を出た。
虎ノ門ヒルズ駅まで1度の乗り継ぎを含み電車で約40分。そこに桐人が勤務する中堅電子商取引企業パラウェイはある。 ( 第1話「星空のキャッチボール」) ※全6話。
* * * * *
「eコマース」とは「電子商取引」のことで、インターネット上で行われる物やサービスの取り引きのことです。
桐人が勤めるパラウェイは、電子商取引を前提にネット上で総合ショッピングモールを運営するeコマース企業です。
こういった先進的な業務形態の会社は、さぞ風通しがよくて個人の裁量も認められているのだろうと思ったのですが、どうも見当違いでした。
やはりつまらぬハラスメントやライバル潰しがあり、快適な職場とは言い難い。採用する側はもっと人間性を見ないと!と憤慨しながら読みました。
全6話中4つの話の主人公がこのパラウェイの社員です。この作品の秀逸なところは、その4人を異なるタイプで設定している点にあると思います。
具体的に言うと、第1話の桐人と最終話の神林璃子は ( 処理能力に違いはあるものの ) 不器用な若者で、こういう弱肉強食的な世界での居心地の悪さは想像に難くありません。
でも、第2話の米川恵理子や第5話の瀬名光彦は相手や物事に柔軟に対応する器用さを持つミドルエイジで、どこでもうまくやれそうな人間に見えます。なのに閉塞感に押し潰されそうになっているのです。
残りの2話の主人公は、恵理子の学生時代の友人2人が絡みます。
第3話は大森智子という友人で、その息子の圭太が主人公です。圭太は、ひどいイジメに遭い、不登校になりかかっています。
第4話は、チェーンカフェの店長をしている植田久乃という友人です。
母子家庭で育った久乃は長崎に母を残して東京の大学に進学。そのまま東京で就職しました。
40歳を過ぎても独身で故郷にも帰ってこない久乃に、母からはいい相手を見つけて結婚しろ、孫の顔を見せてくれと矢の催促。
けれど、久乃には誰にも言えない事情があったのです。
職場であれ学校であれ家庭であれ、屈託を抱えたまま過ごすのはつらい。日常を象徴する場所では、日常生活で生まれた屈託から逃れることができないからです。
「ハイダウェイ」とは「隠れ家」とか「身を潜めることができる場所」という意味だそうです。それは日常を離れられる、言わば非日常を感じる場所を意味します。
ハイダウェイこそが、ささくれだった心を癒やし、気持ちを切り替えることのできる場所なのです。
その場所さえ見つけられれば、たとえ屈託の原因がすぐに根本から解決しなくても、明日を生きようという気持ちになれるのだと思いました。 ( 6人の中では、高校生の圭太が手に入れたハイダウェイが、もっともはやく困りごとから圭太を救ってくれそうなのもよかった。)
主人公たちはそれぞれ異なるタイプだと先述しましたが、共通点もあります。
それは6人とも善良であるという点です。
そんな人たちの抱える困難がなかなか重くて、各話前半は読むのが正直しんどかったのですが、後半でホッとひと息つける展開が何か却ってクセになりそうな作品でした。 ( こんな感想は変かな )
心や健康に余裕のある時にお読みになるのがいいと思います。
Posted by ブクログ
電子商取引企業パラウェイを中心にした連作短編
生き方、生きづらさ、不安を抱える人たちが自分の隠れ家=ハイダウェイを見つけて再生されていく物語
眺めの良い部屋が一番好き。
Posted by ブクログ
装丁の爽やかさに惹かれて読んでみました。
東京を知らない生粋の田舎者の私は、東京という都会には心休まる場所が『隠れて』存在していて、つまりは殆どの場所では心休まらないのかなと疑った解釈をしてしまいました(作者さん及び東京の方ごめんなさい)
Posted by ブクログ
ままならない世の中を生きる人々。みんなあがいて自分の場所を探している。ハイダウェイとは隠れ場所という意味。東京に住んでいる人の半数は地方出身者。心安らぐところを見つけて自分の機嫌は自分で取らければいけない。実在する場所ばかりのようなので訪れてみたい。
Posted by ブクログ
コロナ禍を思い出させる物語は今はまだ読むのがしんどくて、こちらもかなり苦しかった。
登場人物それぞれが抱えているものがこれまた今の社会で多くの問題となっている事柄で、重たい。
特に女性管理職の章が辛い。子供に言われたセリフがもう腹が立って仕方がない。これはもう夫に殺意すら湧く。よく許せたよなぁ。