あらすじ
ようこそ、心休まる「隠れ家」へ。
東京・虎ノ門の企業に勤める桐人は、念願のマーケティング部に配属されるも、同期の直也と仕事の向き合い方で対立し、息苦しい日々を送っていた。
直也に「真面目な働き方」を馬鹿にされた日の昼休み、普段は無口な同僚の璃子が軽快に歩いているのを見かけた彼は、彼女の後ろ姿を追いかける。
辿り着いた先には、美しい星空が描かれたポスターがあり――「星空のキャッチボール」
桐人と直也の上司にあたるマネージャー職として、中途で採用された恵理子。
しかし、人事のトラブルに翻弄され続けた彼女は、ある日会社へ向かう途中の乗換駅で列車を降りることをやめ、出社せずにそのまま終着駅へと向かう。
駅を降りて当てもなく歩くこと数分、見知らぬとんがり屋根の建物を見つけ、ガラスの扉をくぐると――「森の箱舟」
……ほか、ホッと一息つきたいあなたに届ける、都会に生きる人々が抱える心の傷と再生を描いた6つの物語。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
東京にもいいところがあるかもしれない、
と、私は人が多いところが嫌いだから東京で働くのを避けてきたところがあるけれど、
この本は東京の都心でも、自分の空間を見つけ出して、自分のペースでいられる時間を隠れ家のように見出していた人たちが描かれています。
この本は職場や学校といった社会に焦点が当てられていて、
かなり身近な文脈でありつつ、少し現実の中の逃避を描くファンタジックなところが小説として楽しめる。
各章ではいろいろな社会的、家庭的役割を担う人物に焦点が当てられていて、
みんなどうにかつながっているんだけれど、
他人のことなんて、ほんの少ししか分かっていない、し、
分からない、と思う。
矢作桐人、
米川恵理子、
大森圭太、
植田久乃、
瀬名光彦、
神林凛子。
別に実際にいるわけではないんだけれど、
わたしの中にそれぞれが部分部分で存在しているような、
だからこそ、まったく架空の人物についても真剣に考えてしまったり。
そして多くの人にとってそんな無名の一人ひとりが、東京や他のいろいろな都会で生きて、知らぬ間に関わり合っては離れて、存在しているんだなーと。
仕事でもやり始めるとやり切らずにはいられない矢作桐人の真面目さとか、厳格不機嫌だった父に対する許せなさとか、
たくさんの役割を担う知人を横目に、恋愛感情とも無縁に自分の生き方を生きて「自分はのっぺりとした素顔をさらし続けている」植田久乃が、実は自分は何物にもなれない、と気にしてたり、それで親に強めに当たったりするところとか、
キャリアにおいても粛々と流れに従って今に至る瀬名光彦の、社会の矛盾を知って都合よく知らぬふりをしてきたところとか、
はなんだか自分と重なる部分があり。