【感想・ネタバレ】痛みの道標のレビュー

あらすじ

戦後70年、命の重さを問う渾身の人間賛歌。

ブラック企業に追い詰められ多額の借金を背負った達希(27歳)は発作的に飛び降り自殺を図り、15年前に死んだ祖父の霊に助けられる。祖父は生前心残りの「人探し」を一緒にすることを条件に隠し財産で借金の肩代わりを提案。そこから祖父の霊とのボルネオへの旅が始まる。
そこで出会ったのは、個性豊かな人々と悲惨な戦争の記憶。将校でも戦闘機乗りでもない大多数を占めた一般兵士の彼らの戦死とは、飢えや伝染病で命を落とす悲惨なものだった。
やがて一行は赤道の街に到着。そこには、この旅に祖父が託した本当の目的が隠されていた。今まで決して口にすることのなかった、「知られざる謀略事件」とは・・・・。そして、そこに隠された、祖父の過去にまつわる真実とは・・・・・。

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Posted by ブクログ

戦後70年と言うこの年に出版する意義のある作品だと思います。私の大好きなよみがえりを題材にした作品とのことで、わくわくしながら読みました。多額の借金をした達希が自殺するそこへ死んだはずの祖父が助けるなんていい設定ではないですか、それも生前心残りの人探しをいっしょにするなんて!戦時中兵士のために農作物を作る任務があったことを初めて知りました。ああ会えて良かった。意識を取り戻して良かった。ラストは感動の嵐です。自殺した主人公達希が最後死んでしまうかとドキドキものでした。生きてて良かった。

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2025年10月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

青年が労働に蝕まれ、追い詰められた結果ビルから飛び降りたが、昔に死んだはずの祖父が幽霊となり現れ、命を救われたというベタすぎる設定に驚きもしたが、読み進めば読むほど深くなる話。
話は戦争の話。

ここに書かれた戦争の話は、沖縄、広島、長崎などの国内の悲惨ではなく、インドネシアでの話。
戦線を拡大していきオランダを打ち払った日本だが、やがて連合軍に玉砕されるまで。

連合軍の接近による焦りや動揺からか、現地人による抗日を捏造し、現地人を大規模迫害したのは紛れもなく日本人だった。
そして次第に雲行きが怪しくなり、やがて突破され続ける戦況のなか、玉砕されている事実すら知らされぬまま、島に見捨てられた多くの日本兵は、連合軍による艦隊砲撃(それも半裸で日光浴をしながらの片手間の事務作業的な攻撃)により、命を奪われていった。

これは過去の話ではないと思った。
現代の話だ。
国も、組織も、守ってはくれない。
誰も自分を守ってはくれない。

いつのまにか被害者になることもあれば、いつのまにか加害者にされることもある世の中、居場所に甘んじてはいけないし、そこから目を逸らしてはいけないと思った。
己の信念と感覚だけが正義だと思う。
そこから逃げてはいけない。

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2025年06月07日

Posted by ブクログ

古内さんの本ということで、あらすじも知らずに買った本でしたが、思っていた方向とだいぶ異なる出だしに戸惑いました。それでも読み進めるうちに話に引き込まれ、一気に読みました。重みを伴った、でも古内さんらしい小説らしい小説でした。

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2023年01月03日

Posted by ブクログ

古内さんがこんな小説を書くなんて。
第二次世界大戦中のボルネオ島の話なので、びっくり。
いい年になった自分が何も知らなかったのが
恥ずかしいです。

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2019年03月14日

Posted by ブクログ

ブラック企業での仕事に疲れ、ビルから飛び降りた達希を救ったのは15年前に亡くなった祖父勉の幽霊だった。
祖父に頼まれ人探しをすることになった達希が向かったのは第二次世界大戦の戦地ボルネオ島。そこで知る悲劇と祖父勉の過去。

まだまだ知らない戦争の悲劇は沢山あるのだと思い知らされました。
知らないことばかりで、途中何度も検索しながら進める読書となりましたが、出会って良かった。

現代とその時代をつなぐための設定がうまいなと思います。
違和感なく読み進めることが出来ました。

二度と繰り返してはいけない悲劇。
多くの人が知り、読み継がれる必要のある本だと思います。
素晴らしい本でした。

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2017年08月20日

Posted by ブクログ

マカン・マランからのこの作品は度肝を抜かれる。
単に「不幸な」ということではない。事実である過去と、事実である現在。
もちろん、戦争の前では、わたしたちが何を語ろうとどうにもなることはないのだけれど、ただ、いつの時代もやるせない逃げ場のないことは起きるのだ。
この著者は、ただただすごい。そしてただすごいだけではない。

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2016年02月14日

Posted by ブクログ

不思議なお話でした
リアルな話がちょっと変わる
リアルで辛いところもあって・・・
どう消化しようかと思っている

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2025年03月28日

Posted by ブクログ

ブラック企業での挫折から命を絶とうとしていた達希を救ったのは、亡くなった祖父だった
祖父の戦争体験、いないはずの祖父が見える自分とボルネオで出会った雪音
戦時中を生き抜いた人たちから命が繋がっていることを改めて感じるよい本だった

マカンラマンとは全く違う作風なんだけど、真一郎は出てきそうな気がした

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2025年02月05日

Posted by ブクログ

 会社に追い詰められ、多額の借金を背負い、騙されて会社の不正経理の責任を押しつけられそうになり、自殺するところを祖父・勉の幽霊に救われた達希。その祖父が頼みを聞いてくれたら、祖父の隠し口座のありかを教えてやると言う。
 祖父の頼みとは、人探しをすること。ボルネオ島サマリンダにいるであろう石野紀代子という女性を探し出すこと。
 そして、達希と祖父の幽霊との旅が始まる。

 その旅と並行して、戦時中に祖父がボルネオ島で従軍した時の出来事が描写される。それは本当に悲惨なもの。
 上司の命令に納得がいかなくても、部下は従わざるを得ない事が多々ある。特に戦時中、軍隊ともなれば上司の命令は絶対だっただろう。
 自分の意に反して、自分が取った行動の結果に達希は、戦後もその責任を感じる。生きているときは何もできないままでいた。やり残したことがある。だから、どうしても石野紀代子に伝えたいこと、渡さねばならないものがある。

 そんな祖父の思い、達希の思いに、ラストは涙が止まらなかった。

「自分の命は、己だけのものではない。
・・・・・・
今ここに生きている自分は、脈々と受け継がれてきた人々の命の先端だ。眼の前の世界を切り開き、未だ見えぬゴールに胸の襷を運ぶことを、簡単に諦めていいはずがない。」

 達希が言うように、自分の命は自分のものだけではない。その命は受け継がれてきたものであり、次へとつないでいくもの。だから、自分で勝手にけりを付けるのはよくないし、ましてや誰かが力尽くで奪ってはいけない。

 そんな世の中にいつかなるのだろうか。誰の命もが、同じく大切にされる世の中が。たどり着けないように思えるかもしれないけれど、諦めていいはずがない。
 
「けれど、土砂降りの雨や暴風の後に、こんなに美しい現象をもたらすのが自然の摂理なら、自分は今、それを学ぶことを試されているのかもしれない。」

 何を学んでいるのか、学ぶのか。私たちは問われているのだと改めて思った。
 
 いいお話だった。読んでよかった。

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2024年11月03日

Posted by ブクログ

ブラックな会社で追い詰められて、自殺を図った達希は、祖父の幽霊に救われて、祖父が戦時中従軍したボルネオに人探しに行く。戦時下その地で何があったのか、時に沿って丁寧に描かれます。温かな交流をしていた現地の人々に対して、部隊の上層部の身勝手な方針に変更により暴力で向かうなど読むのが辛くなる展開。占領した地で何があったのか、あまり知らされていないけど実際にあったこと。
2章からは良かったんだけど、1章が現実離れした展開で辟易してしまったのが残念。

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2024年10月27日

Posted by ブクログ

初めての作家さん。「マカン・マラン」シリーズでお名前を知ったのだが、本作は、戦争に真正面から向き合った力作。読後に読んだ作品紹介によると、取材と執筆に多大な時間と労力が注がれたとのこと。作品からは、その作者の真摯な想いがよく伝わってきた。
私も、あの戦争をくぐり抜けた祖母や父の話を聞いておけば良かった、聞いておくべきだったと、読み終わって最初にそう思った。永遠に失われてしまった記憶。次代へつなぐことができなかった記憶。とても惜しまれる。

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2024年09月28日

Posted by ブクログ

昨日は終戦記念日。たった76年前のこと。
今の私たちと同じように生きて、家族や大事な人を想い、不安や苦しみを抱えたり、決してかけはなれたところにいるわけじゃないと改めて考えた。
私の祖父も若い頃戦争で南洋に行った。亡くなった今はもう話を聞くこともできない、この作品を読み、祖父のことを思った。

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2021年08月16日

Posted by ブクログ

プロローグ、読み直してその意味がわかった。
読み始めて、何故と思う世界に連れて行かれた。
プロローグのことは忘れていたので。
この作家はすごい。
読者を思いもしない世界に連れていってくれる。
また、ここまでこの時代について書けるとは。
最後まで読んで、痛みのことがわかったが、道標については。
まだまだ読み方が不足している。

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2021年01月17日

Posted by ブクログ

祖父が経験した戦争を通して、とんでもない状況に耐えられず命を断とうとした孫が、もう一度立ち直るまでのお話。

霊が見えたり、ファンタジーっぽさは否めませんが、
不思議とスッと入ってきます。

戦争についての描写(特に心理描写)が詳しくて、痛いほど良くわかるからかもしれません。


自分の命は己だけのものではない。祖父が一生懸命生き抜いてくれたおかげでもあるんだということに気づき、前を向く主人公の生き様がかっこよかった。

同時に、ちょっと目線を変えたり、世界が広がったりすると、意外とちっぽけに思えたりもするんだよなーと。




「ヒビが入っても、潰れても、心はきっと、何度でも生まれ変わる。」

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2018年10月17日

Posted by ブクログ

大好きな本のひとつになりました。
不思議な物語の始まりから
太平洋戦争での 東南アジアでの様子
現地での様子
ついつい 涙してしまいました。
といいつつ 感動はするけど 何も行動できない自分がだらしないと思いつつ 現状維持で進んでしまってます。
ただ 管理する側で無く 実務を淡々とこなす現場を大事にする
日本 世界になることを 望みます。
どうして 政治家が 先生って言われる?
どうして 官僚が高給を受け取る?

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2018年10月14日

Posted by ブクログ

古内さんの本は読みやすくて、心に響く。私たちの祖父は、どうやって戦争の時代を過ごしてきたのか…は、私も考えることが多い。戦争を扱った小説やテレビは、たくさん見てきたが、それが祖父母と結びつかない。戦争を体験した人は、語らないけど、一人ひとりに苦しく辛い物語があるのだと思う。

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2018年02月17日

Posted by ブクログ

素晴らしい一冊でした。目に見えない者を持ってくるのに賛否はあるのかもしれませんが、私はとても深く感じるものがありました。戦争は誰をも幸せにはしない。その戦争は現代を生きる人達の心にもあるんだと。壮絶、凄惨…経験に差はあるだろうけど心に残る傷はその時その時残る重さとして変わらない。昔の人が偉いとか、今は幸せな時代だとかそんなのはどうでも良くて、「今」を生きる人達の戦いはその人の物だし、大問題なんだと思います。勉さんから、いや、その前から脈々と受け継がれる命。大切にして欲しいと思います。勉さん、良かったね…♪

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2017年02月28日

Posted by ブクログ

1943年に起きたポンティアナック事件を題材にした小説。一種の反戦小説、ファンタジー小説、主人公の成長を描く教養小説の要素もあるが、何よりもエンターテイメントとして良く出来ている。週末、一気読みした。

主人公はブラック企業に勤める27才の平凡な青年。借金に苦しみ、発作的に飛び降り自殺を図るが、15年前に死んだ祖父の霊に助けられる。祖父は生前心残りの「人探し」を一緒にすることを条件に隠し財産で借金の肩代わりを提案。そこから祖父の霊とのボルネオへの旅が始まる。
祖父は戦時中、軍の命令で農業に携わっていた。そこで出会ったのは、個性豊かな人々と悲惨な戦争の現実だ。
戦争は、祖父から大切なものを奪った。そして、祖父の「人探し」の秘密がだんだんと明らかになってゆく。

本の表紙絵は卵と赤道をイメージしたもの。赤道直下では、うまく置くと卵を直立させられるという。主人公は、赤道直下の街、ポンティアナックにある赤道記念塔で卵を立たせ、観光客の喝采を浴びる。主人公の再生をイメージさせるシーンだ。

ポンティアナックには一度行った。好きな街で、街の描写を読んでいたら、また行きたくなってきた。戦時中の住民の様子も含め、著者が綿密な取材を行ったことが、推察できる。

日本軍と現代のブラック企業という腐敗した組織の中で、祖父も主人公も、それぞれ必死に再生しようとする。主人公への感情移入がしやすい展開であり、「読んで良かった」感が得られる。
お勧めの★4つ。

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2016年07月16日

Posted by ブクログ

戦争は絶対に美化されてはいけないと思う。
どんな戦争だってきっともっともな理由をつけられて
正当化されて始まったのに違いないのだから。

第二次世界大戦の末期のボルネオ島。
そこで起きた正視できないほどの悲惨な出来事。
亡くなった祖父の死んでも死にきれないほどの心残りを晴らすため、
孫の達希はボルネオ島への旅に出ます。

達希とて、日々を安穏と過ごしている訳ではなく
現代を生きる彼にも死にたくなるほど辛いことがあるわけで・・・
それでも戦争の狂気の中で必死で生きようとしていた
祖父たちの思いを知った後は
逃げ出さず日々闘っていくことを決意するのです。
自分の命はつないでくれた誰かがいてくれたから
今ここにあるのだものね。

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2016年03月07日

Posted by ブクログ

二冊続けて戦争を描いた本を読んだ。
ひとくくりに太平洋戦争と言ってもあまりに知らないことが多くて愕然となる。先に読んだ「世界の果ての子供たち」で舞台となった満州については見聞きする機会も少なくはない。だが、この本で描かれるボルネオで繰り広げられた悲劇については全く知らなかった。なんと、太平洋戦争末期では最大規模の上陸戦もあったという。

この本の主人公はブラック企業に勤める達希。その達希が亡くなった祖父、勉の願いをかなえるためにボルネオに行くことになる。勉にはどうしても会いたい一人の女性がいたのだった。
達希のおかれた現代を織り交ぜつつ、祖父の過ごした戦時下のボルネオの様子をリアルに浮かび上がらせていく。

日本の占領軍がとった残忍な行動や上陸戦で生き延びた兵士の過酷さなど、読むのが辛くなることもしばしば。しかし、実際の戦いはこんなもんじゃなかったのだろう。
わずか3作目にしてここまで重いテーマを扱った作者の熱意に感服する。この本を読まなければボルネオの戦いも知らないままだっただろう。

物語の設定が私は苦手だったのと、最後ちょっと力みすぎかなとも思うので★4つにしました。

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2015年08月28日

Posted by ブクログ

戦争の話と知らずに読み始めたのでよけいに、戦地の凄惨な描写が衝撃的だった。戦争に関わった人々の無念さは計り知れない。

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2022年04月05日

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