恩田陸のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
夏流城(かなしろ)での林間学校に参加した光彦と三人の少年を迎えたのは、首を折られた四本のひまわりだった。
不穏な空気が漂う中、光彦は茂みの奥に鎌を持って立つ誰かの影を目撃する。
閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼をつのらせる卑劣な事件が続き…、彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。
「七月に流れる花」と同時期に城の反対側にいた少年たちのお話です。
「七月に~」を先に読まないと楽しめないので、読む順番を間違えないように冒頭に書いておいてほしいです。
事前情報を持たずに読む方も多いと思うので、そういう配慮は必要なのでは…。
「七月~」では解明されなかった謎もこちらでは明らかになったので、セットで読むことをお薦めします。
通奏低音のように流れる不穏な雰囲気は「七月~」と同じですが、前作が何となくリリカルなひと夏の寓話めいていたのに対し、こちらは冒険譚のような、少し戦闘的な感じ。
やはり少年と少女の違いでしょうか。
それにしても、同じ状況を描いている話なのに、登場人物の置かれた立場によって話の表情が変わるのが面白かった!
見る方向や立場によって全く別の様相が現れていくので、読んでいて飽きなかったです。
最後、通過儀礼を経て大人に近づいた彼らの後姿は頼もしく、眩しい。
この本でミステリーランドのレーベルも完結となるそうですが、少年少女がその時代を卒業していくという、レーベルとしても最後にふさわしいお話になってました。 -
Posted by ブクログ
館に関する謎のアンソロジー。
自分だけが知っているらしい館。
隔離された島にある学校。
神社という隔離された空間。
逆行すると噂される宿泊施設。
雪に閉ざされた館。
高速バスで交通事故にあった人達が避難した場所。
もうわけが分からなくなってきたのは、修学旅行。
話の運び方に、不思議な状態にのめりこみましたが
驚きの結末。
これは教えられたという事?
気が付いたという事??
落ち…というか、人物に対しての驚きは雪の館。
断言されてしまうと、人間の脳はそれでインプットされ
考える事を止めてしまう、というのは確かなようです。
完全に騙されました。 -
Posted by ブクログ
夏流(かなし)に転校してきたミチル。
転校が六月という中途半端な時期だったのと内向的な性格のため、友達が出来ないまま夏休みを迎えたが、彼女のもとに奇妙な「林間学校」への招待状が届く。
呼ばれた子どもは必ず行かなければならないという夏の城で、ミチルと5人の少女たちは不思議な夏休みを過ごすことになる…。
講談社のミステリーランドシリーズの配本なので子ども向けの小説ですが、往年の恩田陸の味付けがなされた、ザ・恩田ワールドなお話でした。
物語を包むノスタルジックで不穏な空気、謎を煽りまくる思わせぶりな演出、静謐で賢い主人公が直面する物悲しい真実。
まさに「恩田さんのいつものやつ」、久しぶりに読んだ気がするわ~!
作品の冒頭、全身緑色の謎の「みどりおとこ」が現れ主人公に迫るところから物語はスタートします。
夏の城に集められた少女たちは、水路に流れる花を観察し記録する、鐘が3回鳴ったらお地蔵様の所に集まる、などの妙なルールを課せられ、隔離された共同生活を送ることになります。
何も知らされていないミチルと同じ視線で読者は物語を進んでいくので、ミチルの不安が直に伝わってきてドキドキさせられました。
稲穂の海の中で停まった列車から飛び降りる場面や水路に流れる花の情景が醸し出す美しくも儚い雰囲気がより物語を謎めいた混乱に導き、最後はどうなるんだろうとページを繰る手が止まりませんでした。
ラストは、子どもには容赦が無くシニカルな方向へ。
何かを失ったけど、同時に何かを得た少女たちの姿が清廉で切ない、印象的なラストでした。 -
Posted by ブクログ
東京を舞台にした戯曲<エピタフ東京>を書きあぐねている筆者は、吸血鬼だとなのる男と出会う。
東京のあちこちを舞台に、というか題材にしているのだけど、どうも田舎者にはぴんとこない。
多分、空気感がわからないからなんだろう。
例えば、熱帯を舞台に、ってなれば、あのむっとするような暑い空気をいやでも感じる。が、東京にそういう特徴があるかといえば、ない。それをあえて文章化しようとしているのだけど…。
東京の当たり前が、当たり前すぎて、それが当たり前じゃないのにはわからない。
まぁ、わからないなってところが伝わってくるのは、文章力の確かさなんだろう。
東京に限らず、世界中どこだって過去の死者の上に街はある。
ただ、それに寄り添っているか押さえつけているかで、東京は後者のように感じだ。
そのエネルギーが歪みを生んでいるような。
だから、吸血鬼がいる。
と、まるで恩田陸の目くらましをくらった気分なのだ。
中の戯曲もそんな感じだったし、だまし絵の階段みたいな小説だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレオールスターキャストと称されるだけあって、主人公が最早主人公じゃないくらい各キャラクターに焦点が当てられ、主観がめまぐるしく変わっていく。
そうすることで各キャラに愛着が湧いてくるし、全員死なずにいてほしいとさえ思えてしまう。
ただ、読み進める内に「これ残りのページで完結するの?」という疑問がわき始め、終対決の読み応えを期待していただけに、読んでも読んでもたどり着かないジレンマを感じてしまった。
やや消化不良なのは恩田さんの作品にありがちだけど、途中までスケールが大きかっただけに尻すぼみ感が否めない。
あとは余計なお世話だけど実邦と葛城がいい感じになるといいなという邪な願望が…w -
Posted by ブクログ
6月に夏流に転校してきたミチル。中途半端な時期の転校なのでなかなか友達を見つけられず。そんな中、ある鏡を見ていたら、中の世界に「みどりおとこ」を見つけた。実際の世界でも逃げだすが、クラスの子に会い、安全を確認する。しかし、呼ばれた子どもは必ず行かなければならないという夏の城―夏流城での林間学校への招待状が鞄に残されていた。謎だらけの城で参加した六人とともに暮らすが、ここにも不思議があり…。
異国のような世界、恩田さんはこういう不思議さを出すのがうまいなあと思う。そして、「みどりおとこ」とか花の謎、すっと引き込まれました。その世界に自然に浸れた。短いし気軽に楽しめた。『8月は〜』も続けて読みたい。