今井むつみのレビュー一覧
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コミュニケーションの齟齬が生まれる原因を正しく理解することを促す本。
人は事実を自分のスキーマ(枠組み)を通して認識することから、自分にとっての重要性と相手にとっての重要性が異なることや、印象が変わることが起きるのは当然である。
また、記憶を保持するためにも忘れることや、無意識なバイアスによって判断する可能性が十分にあると正しく認識することが意思疎通をはかるうえで、大切である。
日本人のようなハイコンテキストの文化で育った者にとって、他国に居住した際、どこまでが共有すべきコンテキストなのか(相手と比べてコンテキストの認識が違うのか)は分かりにくく、それによって意思疎通に齟齬が生まれることがあ -
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読前は、教科の学力や例えば国語では、読む、書く、話す、聞くのように独立した領域があるのが学力のイメージで、何処かに重点を当てて指導にあたると考えていた。読後、基礎学力とは何か?という本書のテーマを考えた。本書の中で教科の内容を「生きた知識」として使うために必要な能力は、実行機能、作業記憶機能、視点変更能力、推論能力、メタ認知能力が必要である。(P10)
これらを複合的に育てる視点を授業作りで持つには、一度達人テストを解いてみたいと,思った。またこのテストを活用して、授業作りの視点に生かすことは分析する時間はかかるが、必要なことだと感じた。
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職場に何回説明しても噛み合わない人がいて読んでみた。まさに、だった。
ものすごく簡単にまとめると「人それぞれモノの捉え方(スキーマ)は違うから相手の立場に立って考えよう」ってことなんだけど、その困った職場の人は自分のスキーマしか見えていないのだ。
こちらも相手の立場や前提知識、常識、大事にしているものを想像して歩み寄った説明をすることが必要だが、頭の中を丸っと見れるわけではないので、完璧にすることは難しい。説明される側にも人それぞれモノの捉え方が違うということを知ってもらいお互いが歩み寄り合うことが、この問題には必要だと非常に感じた。
その他にも、記憶やバイアスなど認識が人によってズレてしま -
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言葉の習得、数字や記号の理解について、すごく丁寧に解説されていて面白い。
大人が社会で教養を身につけるには、、というような流れを想像していたけれどそんなことはなく、
子育ての前に一読しておきたいと思うような本だった。
とはいえ子供の教育だけでなく、日常のいろんな未知のことについて学ぶ場面でアブダクション推論とブートストラッピングはキーワードになりそうだし、
その一例としてAIの活用への問題提起がされている。
安易なAIの利用、デジタル教材化をして満足するのではなくて、うまく付き合っていけるように、人間らしく思考し続けられるように、必要な学ぶ力を意識して育てていきたい。 -
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子どもがどうやって言葉を学ぶかについて。
言葉の音と意味の両面で「似ているもの」を見つけることで音と意味のまとまりを見つけていく。その似ているもののグループをカテゴリーと呼ぶ。
子供は最初に聞いた言葉を固有名詞としては認識せず、一般名詞として認識する。そうやってカテゴリーを見つけていく。
なんとなく言語の仕組みとして分かっていたことでもあるが、実際の実験の話など具体的な例を出しつつ説明してくれるのでとてもわかりやすかった。
ヘレンケラーが指文字で言葉を覚えた話や、子供が犬・豚・首輪の写真をみて、犬と首輪を同じグループに入れる話など。逆に、大人が持っているカテゴリーの偏りに気付かされる。 -
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ネタバレタイトル+今アツい著者ということでメルカリで購入+読破。
懇談でも「うちの子、文章題が苦手で…」という声はよく聞く。全体的に話や出てくる言葉が難しいと感じる部分もあった(今井むつみ先生の本は基本そんな感じする)が、納得・共感できる部分も多くあった。
つまずきの原因として挙がっている中で、特に共感したのは、原因7「問題を読んで解くこと」に対する認識。この説明の中で、何のために算数を学ぶのか分かっていない、学習性無力感という言葉が出てくるが、自分なりに言い換えると、
算数のテストなんて適当に答えといたら良い(というか、丁寧に見直しまでしなくて良い)
という子どもの思いが主原因だという点である。 -
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副題の『ことばはどう生まれ、進化してきたか』というフレーズに惹かれて手にとった。
安定の中公新書なので、まあまあ外れはないだろうという読みはかなり当たっていた。
『はじめに』のところで『記号接地』なる見慣れない語があり、これを起点とした言語の解説かとおもいきや、第一章でもちだされたのは『オノマトペ』……私は『オノマトペ』に関して割と否定的な圧を受けて育った世代だ。作文で『オノマトペ』を使うと減点されるおそれを経験した。(それなのに、宮沢賢治の作品が教科書に載っているし出題もされるので……えらい矛盾している)少なくとも、『オノマトペ』を多用した作文を書けば周囲にバカにされたものである。そんな訳で -
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「プレイフル・ラーニング」という考え方と、その事例の紹介がよかった。遊びの中で「記号接地」や「生きた知識」の習得が可能なことを説明している。
学生時代の「受験勉強」の影響で、私はどうも「学び = 苦行」という知識観をみにつけてしまっているようだ。大人になってから学ぶ楽しさを実感する機会は増えたものの、自らに苦行のような学び方を強制してしまうことも多い(そして続かなくて自己嫌悪する)。
「効率性」を求めるための学びを一度やめてみよう。まずは今の知識観を「学びは遊び」に修正することを目標にして、学び方に工夫を凝らしてみようか。長い目でみれば、これが自分の生活を真に充実させるこに繋がるように思っ -
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「算数文章題が解けない子どもたち――ことば・思考の力と学力不振」を読んで、今井さんに俄然興味を持った私は、この本を手にしました。
上記の本は、認知科学の知見から、学習に躓く原因を事細かく分析していました。初めて知ることの連続で、学びの多い本でしたが、どうやって学力を伸ばしていくのかには、ほとんど触れられていませんでした。よって、本書には具体的な方策が語られることを期待していました。
具体的な提案がなされていたのは後半の一部だったので、少し残念でしたが、授業作りのヒントを得ることができました。
●プレイフル・ラーニング
遊びを通して学ぶこと。人間は遊びから学ぶ。なぜか?遊びは楽しいから -
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普段、知識をどのように使っているかは、意識することはないが、知識を使うとはどういうことで、どのような能力が必要なのかの説明が、とても興味深かった。
実行機能、作業記憶能力、視点変更能力(他者視点取得能力)、推論能力、メタ認知能力などの認知能力が必要だとのこと。
実行機能・・・必要な情報にのみ注意を向け、不必要な情報への注意を抑制したり、注意を指示に応じて柔軟にシフトさせたりする能力、いわば注意をコントロールする認知機能。
作業記憶能力・・・作業記憶の容量や効率性の個人差は生まれつきの要因よりは、訓練による効果が圧倒的に大きいとされる。
視点変更能力(他者視点取得能力)・・・学力の前 -
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乳児期は言語を学ぶというとんでもない力を有しているのに、どうして小学生になると学びが苦手になるのか。子どもたちのテスト解答例を通して、いかに数の概念自体が理解されないまま子どもが勉強している状況かを紹介し、記号接地の重要性が書れている。
学力喪失を嘆くのではなく、今何が不足していて何が必要なのか書かれているのがよかった。
中でも直感的で非論理的なシステム1と呼ばれる思考と、批判的で論理的なシステム2の思考の説明が面白かった。
基本人はシステム1で生きているが、学力高層位はシステム2を発動させやすい。システム2を発動できないと、誤った知識や自分のスキーマを修正できず、学力につながる思考力はシス