今井むつみのレビュー一覧
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初年次教育に携わるようになり、「学力とは何か」「なぜ分からないのか」に直面する機会が増えた。
本書はその疑問に認知科学の視点から丁寧に応えてくれる一冊。
具体的には「どうしてわからないのか?」という問いへの解像度が上がる。
『言語の本質』でも印象的だった「記号接地」という概念が、学習における「わかる」の本質を考える手がかりとして本書でも中心に扱われている。
また、生成AIの限界やハルシネーションの話も、人間の学びと対比する形で明快に解説されており、非常に興味深かった。
「時間」の概念につまずく娘のサポートにも役立つヒントがあり、教員としても親としても気づきをもらえた点がありがたい。
アク -
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認知科学に関する見慣れない語句が頻出.しかし、人間が言葉を覚えて駆使する過程が綿密に描写されており非常に楽しめた.記号接地という語句も児童が分数を理解できていない文脈で登場したが、面白い概念だと感じた.人工知能との関連も興味深い内容だった.「たつじんテスト」「時間どりじゃんけん」「時計カルタ」「分数のたつじんトランプ」など工夫された教材の紹介も良かった.p298にある‘’子どもが基本概念に自分で接地をし、アブダクションによって知識を拡張していくことができるなら、何から何まで直接教えてもらわなくても、自分で新たな知識を、それも「生きた知識」をつくっていける‘’が核心だと思った.
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ネタバレ教育の本質を改めて問い直す一冊でした。認知心理学の知見をもとに、「学力とは何か」「学びとはどうあるべきか」という根源的な問いに対して、明快かつ実践的な視点を提示しています。
本書の中で特に印象的だったのは、「すべての子どもに同じように効く普遍的な方法は存在しないし、存在するべきでもない」という言葉です。教育現場では、特定の実践方法に頼りがちですが、それらはあくまで手段の一つに過ぎません。教師には、目の前の子どもに合わせて方法を柔軟に調整する力が求められます。どんな教育技術であっても、誰かの言葉を鵜呑みにするのではなく、自分自身の判断でチューニングして活用することが大切だと感じました。
ま -
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運動能力と頭の良さは関係がないと思っていた考えを覆された。ある程度の筋力的な強さは頭を使わずに手に入れられるとしても、その先のアスリートの世界には構成主義的な学びが不可欠である。得た情報を反映させて試行錯誤を繰り返しながら自分の身体に新しい動きを取り入れていく試みは、学びそのものだと感じた。オノマトペや例えなど、言葉を使いながらイメージをつけることは、より直感的に理解することを促進する。
また、早く多く学ぶことが最適ではない、という内容が印象に残った。いまは図解した本やYouTubeで視覚的に表現した動画がたくさん出ているが、本来自分でやらなくてはいけないactive, constructi -
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期待通りのクオリティで、さすが今井むつみ先生。
巷にあふれる聞くだけでとか、100フレーズだけでとか魅力的な喧伝に一家言モノ申してくれております。英語学習に対する幻想を打ち破って現実に引き戻される、それはそれでちょっと残念だが真理だからしょうがない。
「スキーマ」というキーワード。英語母語話者のスキーマを身体的に落とし込むという作業が、英語を本当の意味で使いこなすには必要である。
英語=日本語訳の一対一対応を暗記するのではなく、構文や共起表現まで自分で探索すること、それこそが本当の意味で語彙力を養うということだ。
SKELLコーパスで検索しながら読み進めたけど、似ている意味の単語が異なる -
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外国語を学ぶのがそもそも好きな私にとってはスッと入ってきやすい内容だった。けれども抽象的なことばを語彙として増やしていくことで「思考力」も伸びていくというところが、子ども向けの本ながらも大人にも響く部分だった。
ことばを理解するときに点じゃなくて面で理解していくこと、似た言葉をセットで調べる、覚えることでさらに理解が深まるというのは外国語学習なら当たり前にできるのに、日本語だと途端にやっていないのはなぜだ?
アブダクション推論:仮説を立てたり違う分野の知識を組み合わせたりして目には見えない現象を推論すること(仮説だからもちろん答えは一つではなく、間違うことだってある)
ex)・Aではないか -
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日本語教師の試験に合格後、子どもを妊娠中に実習を受けたとき、先生に「子どもが話すようになったらメモをとっておくといいですよ」と言われました。実践してみたものの、初めての育児はあまり余裕もなく、メモもいつの間にかなくなってしまいました。それでも「アイスクリーム」を「アスミック」、「エレベーター」を「エベレーター」と言っていたことは覚えていて、確かにそれをいちいち直していたわけではないのにいつの間にか直っていたなあということも思い出しました。
「ことばの意味の範囲」についてもなるほど、と。
英語を学んだとき、単語一つにつき日本語訳一つで覚えてしまっていた(当時の単語テストのせいだと言いたいですが -
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日本語と英語のスキーマのずれ、これに尽きるという話。そもそも世界の捉え方を日本語的に考えていることそれ自体を、英語的に変化させる必要がある。
これは全くその通りで、頭の中で日本語→英語の変換をついやってしまうが、これでは話せない。なぜならそのまま変換できないからだ。頭の中で世界をイメージして、それを英語で表現するというのが正しそうである。
そして、ただ英会話の練習をしても英語は上達しないということ。なぜなら英語のスキーマをもって、語彙や英語のシステムを頭の中に取り入れられていないから。
過去に2か月英語留学に行ったが、そこで感じたのはまさにこれだった。とりあえず喋ればいいということに違和感を -
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ネタバレはじめに
学校の勉強はムダではありません
「考える力」つまり「思考力」を身につけること
「すべての科目で使うもの」はそれは「国語力」です
「ことばの力」と「思考力」で、問題を解決する
第1章あなたはことばを、どう覚えてきたか
・「自分で発見して考えて学ぶ」
第2章問題解決に必要な「推論の力」
・「ことばの力」は「考える力=思考力」と関わり合う
・知識を素早く取り出す力ー「情報処理能力」
・思考をコントロールする能力ー実行機能
・詰め込んだ知識も、取り出さなければ意味がない
・「考える力」というのは「知識を使って、推論し、問題を解決する力」
第3章学校で必要になる「ことばの力」
第4章A -
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為末さんと今井むつみさんという言語化の達人二人の対談。
非常にハイレベルな言語化能力を駆使して、かゆいところに手が届くような表現で、上達に関することなど様々なことを説明してくれている。
基本的な概念が接地していることが大切。それさえできていれば、具体的なイメージを離れて抽象的な操作が自然とできるようになる。
逆に設置していないと「記号から記号へ漂流してしまう」事になるのだ。
上記はとても納得がいく。一つ一つの具体的なレベルでしか理解できていない人は、他に類推して考えることができないので、複数の経験を積んでも、一向にその人の中で積み上がりが起こらない。
言葉が身体につながっていることはとて