あらすじ
英語の達人をめざすなら、類義語との違い、構文や文脈、共起語などの知識に支えられた高い語彙力が不可欠だ。記憶や学習のしくみを考えれば、多読や多聴は語彙力向上には向かない。語彙全体をシステムとして考え、日本語と英語の違いを自分で探究するのが合理的な勉強法なのだ。オンラインのコーパスや辞書を利用する実践的方法を紹介。
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Posted by ブクログ
期待通りのクオリティで、さすが今井むつみ先生。
巷にあふれる聞くだけでとか、100フレーズだけでとか魅力的な喧伝に一家言モノ申してくれております。英語学習に対する幻想を打ち破って現実に引き戻される、それはそれでちょっと残念だが真理だからしょうがない。
「スキーマ」というキーワード。英語母語話者のスキーマを身体的に落とし込むという作業が、英語を本当の意味で使いこなすには必要である。
英語=日本語訳の一対一対応を暗記するのではなく、構文や共起表現まで自分で探索すること、それこそが本当の意味で語彙力を養うということだ。
SKELLコーパスで検索しながら読み進めたけど、似ている意味の単語が異なるニュアンス、主流の共起表現があるなど新しい気付きで脳汁ダクダク。面白いツールを知ることができた。
あとは、本書きっかけで映画の熟見は実践してみてる。字幕なしでもマルチモーダルな映像(とWikiのあらすじを読んでしまう)で、ストーリーは理解できる。2周目の日本語字幕を入れるだけで、意外と英単語が聞き取れるようになることに驚き。名作映画の視聴も増えていくし、一度で二度おいしい。
ファスト的に英語力を摂取したい人向けではない。
が、本当の英語力を身につけたい人はこの教えを心に留めておく必要があるかなと強く思う。地道にコツコツ英語母語話者のスキーマににじり寄っていこう。
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日本語と英語のスキーマのずれ、これに尽きるという話。そもそも世界の捉え方を日本語的に考えていることそれ自体を、英語的に変化させる必要がある。
これは全くその通りで、頭の中で日本語→英語の変換をついやってしまうが、これでは話せない。なぜならそのまま変換できないからだ。頭の中で世界をイメージして、それを英語で表現するというのが正しそうである。
そして、ただ英会話の練習をしても英語は上達しないということ。なぜなら英語のスキーマをもって、語彙や英語のシステムを頭の中に取り入れられていないから。
過去に2か月英語留学に行ったが、そこで感じたのはまさにこれだった。とりあえず喋ればいいということに違和感を感じて、後半、授業のコマ数を減らしてインプットにひたすら時間をあてることにした。そもそも非同期に、時間をかけても英語を正確に利用できないのに、英会話をひたすらやれば喋れるようになるなんて厳しいと思っていた。
今は英作文の練習をひたすらChatGPT相手に行っている。自分の中に上手く英語スキーマを取り入れることができてきたら、実際の英会話で「リアルタイムに慣れる」にフォーカスを当てて英語学習に取り組みたいと思う。
Posted by ブクログ
英語を学びたく、学ぶなら効率良くという考えのもと手に取った。脳科学の視点から「学ぶ」ことの仕組みが解説され、とても面白かった。スキーマという言葉はメンタルケア分野の方面で使われていることは知っていたが、「学ぶ」時にも影響があると本書で知り、奥が深いなと思ったし、自分が興味を持っている部分との繋がりも感じられて嬉しかった。
英語学習は進んでいないが、スキーマに注意して学ぶことは出来そうだ。
Posted by ブクログ
冒頭に案内があるように興味の高い章をピックアップして読む場合も無理なく読み進めることができる。コーパスの利用にはまだ無理があるレベルの読者も5章、6章をスキップして楽しめる。
奥の深い話しなので著者の関連図書も併せて読みたい
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多読多聴に行き詰まりを感じていた時に出会った本。
認知科学の視点による英語独習法。英語のスキームをいかに構築するか。そのためには語彙を増やす。動詞と前置詞をセットで覚える、文例ごと覚える、類義語の違いを意識する等。そして熟読熟見の勧めであった。
でも自分は英語のプロになる訳ではないから、正直ここまではやってられない。第一、楽しくないと続けられない。
先に述べた通り、動詞+前置詞、名詞の冠詞、用例に着目したい。類義語辞典の活用も考えていきたい。
Posted by ブクログ
自然な英語を書くには日本語の名詞のことを忘れて、文全体で何を伝えたいのかを考えることがとても重要
そのためにはまず動詞を考えるべき
(日本語字幕と英語字幕の比較などで気づける)
また読みたい
Posted by ブクログ
著者は認知科学等を専門としている慶応大学の先生。スキーマという概念の説明が中心で、外国語を身に付けるにはその外国語のスキーマを身に付ける必要があるという主張。そのためにはある単語を適切に使うためにはその単語と一緒に使われる単語を理解する、リスニングに力をいれるよりある分野の記事や論文を読んでその分野のスキーマを強化することに力を入れる、等のアドバイス。このあたりChatGPTなどのLLMが単語の関係を学習して流ちょうな言葉を使いこなすこととも関連して説得力を感じた。
後半は具体例の解説が豊富(あまりちゃんと読んでない)。
Posted by ブクログ
英語学習よりも、記憶とその定着について考えるきっかけになった。言語化することについても考える。言語化できない、なのにわかると言う現象をスキーマのおかげだと言っているところがわかりやすかった。
今井むつみさんは実験のイラストがいちいち可愛い。このイラストをちょっと楽しみにしている自分がいる。ワードチョイスも絶妙で、真剣な実験と相まってユニークだ。
Posted by ブクログ
比較的高度な英語を正確に操るためには英語として自然な語選択を身に付けることが必要である。どのような場合にどのような単語を選ぶか、名詞は可算なのか不可算なのかなどのように、母語として育てば自然と身に付くが、そうでない場合には意識にすら登らない、そういった言語独特の知識の体系のことを「スキーマ」と本書では呼んでいる。「英語スキーマ」を身に付けるための独習法が本書の主眼である。
もちろん、基礎的な構文、語順、文法は理解していることが前提である。そういう意味では完全な「独習法」ではなく、「中学・高校英語を履修したうえでさらに上達するための独習法」という感じかな。
当然受け身的な学習法でできるわけはなく、単語の海に潜って泳ぎ回るような積極的な探求が必要となる。
Posted by ブクログ
社会人として英語をやり直しつつ本書を読んだが、本書で繰り返されている「語彙が大事」というのは実感あるし納得しかなかった。4技能を同時に育てるなんて無理だろうと以前から感じていたので、我が意を得たりという気分になった。
Posted by ブクログ
英語力を実用レベルに時間をかけてでも引き上げたい人向けの本だと思います。
多読や多聴は効率が悪いこと、英語と日本語を結びつけた暗記ではなく英語での概念を刷り込む、コーパスの形成が必要だとの主張は、実際に英語学習し実用機会もある身として、そうだろうなという実感があります。スピーキングを伸ばしていくにはライティングからというのは目から鱗で、早速実践しようと思います。
Posted by ブクログ
英語の学習法の本ではあるが、「1週間でペラペラ!」みたいな底の浅い本とは根本的に違う。
作者は認知科学や発達心理学の研究者なので、子供が母語を習得する仕組みをベースに、大人が第二言語を習得するための方法を教えてくれる。
日本人が英語を簡単に習得できないのは、認知心理学用語でいうところの「スキーマ」=知識の枠組みが、英語と日本語で異なるからだという。
例えば、英語話者は1歳半頃までには、名詞の意味よりも先に、名詞の前にaがつくかtheがつくか、複数形か否かという形態の違いに気付き、「可算・不可算」のスキーマを手に入れるらしい。しかし日本語では、名詞にその区別はないから、名詞による可算・不可算の違いに注意を向ける「訓練がされていない」のだ。
「『聞き流すだけで英語が自然と口から出る』という英語教材の広告をよく見るが、人間の認知の仕組みに全く反している」とか、個人的にスッキリする説明も多い。
大人が効率的に英語を学ぶ方法をエビデンスベースで知りたい人にも、英語学習をテーマに人の認知の仕組みを知りたい人にも、オススメ。
Posted by ブクログ
心理学者今井むつみ氏による英語の学習方法に関する新書。単語や文法、構文などが並ぶ一般的な学習書ではなく、もっと根本的に学ぶということを認知心理学的アプローチから解説しています。非常に簡潔な文章で読みやすいのですが、内容が濃縮されていて理解するのが大変でした。実践しないと本書の内容をきちんと消化できないです。本書で述べられている内容はきちんと理解できれば英語だけでなく、どんなものにでも応用可能だと思います。
Posted by ブクログ
英語を使いこなすためにはどうしたらいいか。
そのキモは、「スキーマ」の違いを意識し、英語のそれを身につけることにある。
本書の骨子は、きっとこういうこと。
「スキーマ」は、『学びとは何か』にもあったような気がする。
ある事柄について、身体化された知識の枠組みということらしい。
この間読んだ、大西泰斗先生の本の、英語話者の感覚、イメージを理解することが大切という話にも通じるところがある。
特に個別的な議論では似ていると感じたことも多い。
例えば、英語の動詞の意味が文型や前置詞をある程度規定していくというところなど。
が、本書はそうした知識の枠組みを自分でどう発見するかを主題にしていることだ。
この動詞は、この形容詞はこういう用法ですよ、と解説するのではない。
今井先生は、そういうことは教えてもらっても身につかず、したがって使いこなせない、という。
その意味では、大変志が高く、ハードルも高い「英語独習法」である。
では、どうやってスキーマを発見していくかというと、コーパスを使いこなすことによる。
コーパスで、次のようなものを調べるといいらしい。
・使われる構文
・共起する単語は何か
・単語の頻度
・使用される文脈(フォーマルか)
・その語の多義の構造
・その語の属する概念ネットワーク
そのためのツールとして、SkELLやWordNet、英次郎Proなどが紹介されていた。
(ただ、これらのツールを使いこなすのが大変そうだな、という思いがよぎる。)
そして、スキーマのずれを意識しながら、アウトプットの練習を重ねることで、次第に自然な表現が身についていくとされていた。
本書には、一般的によく語られる語学学習の「常識」を覆していく面白さもある。
その一つが多読、多聴。
すればするほどよいというイメージがある。
それがそうでもないらしい。
本書では、語学学習の最初は集中的に、語彙と基本的な文法を身につけること、そしてその後は語彙を育てていくことが重要とされていた。
たしかに、語彙学習には限りがない。
が、外国語をある程度読み、英英辞書などが読めるようになれば、自分で推測しながら読むことができる。
こうして、語彙が育っていくという。
その語彙を記憶に残していくには、しっかり注意を向ける必要があり、そのためには熟読が必要だというのだ。
いろいろと考えさせられる一冊だった。
Posted by ブクログ
言語の学習過程などを研究する認知科学の専門家が、日本語話者と英語話者とで異なっている世界の見方(スキーマ)を地道に理解していくことが、自然な英語を身につけるための方法であると説く。自分が若い頃から意識していたことと同じようなポイントが挙げられており、スムーズに違和感なく読めた。
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英語の習得のために、多くの人が自身に合った合理的、効率的なアプローチを模索しているものと思います。そして、日本語を使用するときに意識していない思考の縛りに英語での理解が邪魔をされていることも確かにあると、今回改めて認識しました。その縛りからの解放を意識して英語習得に取り組めるようなヒントをもらえる伝道書。トレーニングのためのツールの紹介やステップアップの道筋も示されてあり、親切丁寧なつくりと感じました。
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語彙を一番先に充実させろという本。
英単語のオンラインツールを使わない人は5章と6章を飛ばしていい。
オンラインツールの説明が多すぎて、そこは使う気がない自分にとっては邪魔だった。
Posted by ブクログ
その英単語がどのような文脈で使われるのが正しいのか、ネイティブにとっては自明の、そして学習者にとっては大変習得が難しい問題を地道に身に着けていくことが英語上級者への道である、ということが解説されている本でした。
後半のネット上のコーパスや辞書を利用する実践的方法をちゃんとやりながら読めばとても役にたつと思います。
練習問題の答えは最後に書かれています。
私はざっと最後まで読むことを優先したので(言い訳)、ネット上のサイトは活用してませんが。。
必要となったとき、というよりそういったサイトで遊ぶように色々やってみることが、少しづつ英語を身につけていく細い道なのでしょう。
Posted by ブクログ
認知科学の示唆から導かれた英語の勉強方法。単に数多く英語に触れるにではなく、単語のニュアンスの違いを認識することで記憶に留めるという方法。万人がやるとは思えないだけに上達を実感できない人には活路を見出せるかも。2025.3.15
Posted by ブクログ
赤ちゃんの時にたくさんの英語に触れさせれば英語が流暢になるのか?
私の周りの子持ちの友達は、幼児期から英語のアニメを見せている人も多い。
rとlの聞き分けは生後10ヶ月くらいまでは聴き分けでき、その後不必要とされ衰えていく。
この聴き分け能力を残すために
1歳未満のうちに、ネイティブ話者と対面で遊ぶ必要があるとのことだ。
ビデオやオンラインなどの遠隔では効果が見込めないというのは驚きだった。
人間は必要なスキルを残し、不要なスキルは忘れていく。
英語学習においても、子供のうちから
英語を覚える必要性を肌で感じなければならないのだと知った。
そして、その後もその必要性を強く感じていなければ、英語を使いこなすレベルまで到達するのは難しいのだなぁと感じた。
Posted by ブクログ
英語のドラマなど見る時、まず字幕なしでどの程度理解できるかを知り、日本語字幕で見て、聞き取れない所を英語字幕で見るのがオススメ。
日本語で意味が分かってからの方が、単語を聞き取ることに脳のリソースを使えるから。
自分の持っている語彙力の範囲で基本的な単語を駆使して英文を作る練習が必要。知っている単語でなんとか言いたいことを表現する工夫。言いたいこと全体を英語の発想で英語に置き換える習慣。
まずは語彙を増やす。語彙がなければアウトプットの練習をしても意味がない。
英語のアウトプットはスピーキングとライティング。ライティングに重きを置いて練習するのが良い。
英語スキーマはライティングで作れる。
スピーキング、ライディングの時は注意を向けながら数をこなし、自分の感覚で掴むこと。
ライティングが自由にできるようになれば、短期間の集中的な練習で上達する。
長期的には感覚学習の方が記憶の保存良く、深い知識が得られる。英語学習に完成はない。完璧を求めず楽しみながら続けること。
Posted by ブクログ
英語学習への新しいアプローチ。
例えば、日本語の「は」「が」という助詞を使い分ける際、文法的な法則よりも、なんとなく違和感を覚えるとかしっくりとくるなど文脈によって言語化できない暗黙の知識(スキーマ)を英語学習にも有効活用してゆくのが本書の目的。
英語の多読、多聴だけでは(使える)語彙は増えない。また、可算・不可算名詞、前置詞など日本人が苦手なものは本書で紹介される(無料)オンラインツールを活用するのが近道。
例えば、
・instinct(本能)とintuition(直感)の使い分け
・learnは主体性の少ない学び、studyは自分で学ぶ
などなんとなく曖昧に使っていた言葉の輪郭がはっきり見えてくる。
筆者は慶応大環境情報学部教授、本書はその授業テキストとして執筆される。これを受講した学生は一生モノの英語学習能力をゲットでき幸せです。
Posted by ブクログ
中上級向けである。
p.15に「仕事の場でアウトプットができるレベル、すなわち自分の考えを的確・効果的に表現し、相手に伝えられるレベルの英語力を目指す人」が対象とある。
TOEICなら800以上、英検なら準一級以上を目指す人向け、ということになる。
(もっともそれ以下のレベルなら、英語そのものより、AIや自動翻訳の活用法の習熟に時間と労力を使った方がいいかもしれない。)
映画を「熟見」するリスニング学習法はおおいに共感。
楽しそうだし、力がつきそう。
ただ、「スピーキングの前にライティングを」はどうだろう?
覚えた表現をとりあえず実践で使ってみて小さな成功体験を重ねる、あるいは失敗してもそのフィードバックを得る方が、「スキーマ」の獲得を加速しないか?
繰り返すが、中上級者が時間をかけて取り組めば効果がありそうな「独習法」だ。
始める前に付録の「探究」の英文を読んで、ついていけるレベルかどうか判断した方がいい。
Posted by ブクログ
⚫︎感想
語学は自分で納得しながら、じっくり取り組む。
大人になってからでも、いつからでも語学は伸びることを改めて実感できる。具体的な例も挙げながら、知らなかった所だけ拾って知識として入れられる
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
英語の達人をめざすなら、類義語との違い、構文や文脈、共起語などの知識に支えられた高い語彙力が不可欠だ。記憶や学習のしくみを考えれば、多読や多聴は語彙力向上には向かない。語彙全体をシステムとして考え、日本語と英語の違いを自分で探究するのが合理的な勉強法なのだ。オンラインのコーパスや辞書を利用する実践的方法を紹介。
■目次
はじめに
第1章 認知のしくみから学習法を見直そう
第2章 「知っている」と「使える」は別
第3章 氷山の水面下の知識
第4章 日本語と英語のスキーマのズレ
第5章 コーパスによる英語スキーマ探索法 基本篇
第6章 コーパスによる英語スキーマ探索法 上級篇
第7章 多聴では伸びないリスニングの力
第8章 語彙を育てる熟読・熟見法
第9章 スピーキングとライティングの力をつける
[ちょっと寄り道] フィンランド人が英語に堪能な理由
第10章 大人になってからでも遅すぎない
探究実践篇
【探究1】 動詞の使い分け(1)──主語・目的語に注目
【探究2】 動詞の使い分け(2)──修飾語・並列語に注目
【探究3】 動詞の使い分け(3)──認識を表現する
【探究4】 動詞の使い分け(4)──提案を表現する
【探究5】 修飾語を選ぶ──頻度に注目
【探究6】 抽象名詞の使い分け──共起する動詞と修飾語に注目
【探究7】 前置詞を選ぶ──前置詞+名詞の連語に注目
【探究8】 抽象名詞の可算・不可算
本書で紹介したオンラインツール
Posted by ブクログ
書名は誤解を生むでしょうね〜。一般的な英語学習者がこの書名から期待する内容ではないですからね〜。
「外国語学習研究の手引き」とでもしておいた方が良かったのでは?と思ってしまいます。
とは言え、外国語学習の本質に触れていることに間違いはなく、ある程度のレベルに達した学習者が自らの学びを体系的に理解するという役割としては優れた手引き書だと思います。
Posted by ブクログ
認知科学の観点から、英語の学びかたについて解説をおこなっている本です。
本書が対象としている読者については、「本書は主に、仕事の場でアウトプットできるレベル、すなわち自分の考えを的確・効果的に表現し、相手に伝えられるレベルの英語力を目指す人に向けて書かれている」と述べられています。
著者は、日本語と英語のあいだでことばを正しく用いるためのスキーマが異なっているために、正しい英語の運用がむずかしいことを説明します。そして、英語を正しく運用するためには、それぞれの語彙の具体的な運用にかんする深い理解が必要であると主張します。そのうえで、そうした語彙にまつわるスキーマを学ぶために役立つ、インターネット上で利用できるコーパスを紹介しています。
著者は、マーク・ピーターセンの『日本人の英語』(岩波新書)を名著であるとしながらも、そこで例としてとりあげられているような「日本人英語あるある」を、ただ個々の具体的な知識として読んだだけでは、英語の語彙にまつわるスキーマの深い理解がただちに得られるわけではないといい、読者がみずからコーパスの検討をおこなって、ことばの正しい運用方法を知ることを重視しています。本書の巻末の「探究実践篇」は、そのトレーニングとして有益だと感じました。
ただ、著者は認知意味論についてひろいの知識をもっており、コーパスから語彙のスキーマを発見するにさいしてそのような著者自身のスキーマが利用されていることもたしかであり、そうした知識をもたない読者にはかなりハードルの高い学習法だと感じました。
Posted by ブクログ
言語の習得には、各言語、文化に起因するスキーマの習得が必須であり、特に簡単ではないよ。
子供の言語習得を研究する筆者。
いやまさにその通りだろう。その上で、どうやって学習するのがいいのか提案してくれる。
前半の理屈のところは共感したが、特段今、英語を習得しようと思ってはいないので、後半の具体的なところはすっ飛ばし。
逆に言えば、実際習得しようとしてる人には、とても有効ではないか。薄い本なのに。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 認知のしくみから学習法を見直そう
第2章 「知っている」と「使える」は別
第3章 氷山の水面下の知識
第4章 日本語と英語のスキーマのズレ
第5章 コーパスによる英語スキーマ探索法
第6章 コーパスによる英語スキーマ探索法上級編
第7章 多聴では伸びないリスニングの力
第8章 語彙を育てる熟読・熟見法
第9章 スピーキングとライティングの力をつける
第10章 大人になってからでも遅すぎない
付録 探究実践篇
<内容>
英語の「独習法」だが、これだけで独習法がみにつくわけではない。ただ、オンラインの辞書やSkELL、COCAなどの英単語の例文をあげるツールなどを駆使しつつ、結論は、まず語彙を身につけ、あとはそのジャンルの例文を多く読み、定冠詞や前置詞などを感覚的にマスターしていくしかない、ということ。
Posted by ブクログ
認知心理学におけるエビデンスとセットになっているというよりも,個人的経験が綴られている印象。この本でないと明記されていないというのは「スキーマ」という捉え方くらいで,他の本はそのスキーマで示されていることを,スキーマと呼ばずに説明しているのではないだろうか。外出を控えた中で家で英語学習でもというコロナ禍に出版されたことがそれなりに売れた背景があるのかもしれない。
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「わかりやすく教えれば,教えた内容が学び手の脳に移植されて定着する」という考えは幻想であることは認知心理学の常識なのである。(p.3)
たとえば料理教室に通って料理を学ぶ人はたくさんいるが,プロの料理人になりたい人は,そもそも,町の普通の料理教室には行かず,自分の目指す料理人のもとで厳しい修業を重ね,腕を磨く必要があるだろう。家で普通にごはんが作れるようになりたいというのと,料理のプロになりたいのでは,学び(修業)に対する覚悟も,方法も,時間やお金のかけかたも,まったく違うのである。(p.9)
英語は動作の様態の情報を主動詞で表し,移動の方向は動詞以外(前置詞)で表現する。(p.65)
もう一つ大事なことは,聞き取りが苦手だと思ったらマルチモーダルな状況ーーつまり,音声以外に視覚情報もあり,内容についてのヒントを与えてくれる映像メディアを練習に使うことである。(p.140)
なんといっても語彙力をつけることがリスニング力向上には欠かせないし,マルチモーダルな情報を使って英語の聞き取りに慣れてきてから音だけの媒体の聞き取り練習をしたほうが,学習の認知メカニズムの観点からはずっと理にかなっている。(p.141)