今井むつみのレビュー一覧
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現代っ子の学力は喪失しているのか?
著者は大人たちが子どもたちの学ぶ力(=学力)を喪失させているのではと疑問を持つ。著者らが考案、実施した「たつじんテスト」の結果を元に、知識の獲得とそれを活用できるようになるために必要なことは何かと迫る。
前著「言語の本質」でも語られた「アブダクション推論」「記号の接地問題」。生きた知識の獲得には自分の身体で世界を探索が重要だと説く。大人から正しい知識を教えられるだけでなく、子どもたちが自分でやってみる、試してみる、そういう環境なり状況が学ぶ力を引き出すために必要になるのだが…そういう場が以前より失われているのかもしれない。 -
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『きょう、ゴリラをうえたよ』!!
衝撃的なタイトルを見て思わず手に取り、目次を繰って本文に当たりました。果たしてゴリラさんは大人しく植えさせてくれたのかしら?
と、心配して見たら、植えたのは「パンジー」でした(122ページ)。
はて? なぜに「パンジー」から「ゴリラ」に?
「ゴリラ」発言をしたのは、4歳の男の子でした。
幼稚園で「パンジー」を植えて、
→「なんとなくチンパンジーみたいな名前」と記憶し、
→家に帰って思い出せなくなり、
→「なんか大きいサルみたいな名前だった!」と思い当たり、
→「ゴリラをうえたよ!」となったのでした。
カワイイですね♡
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ことばの音と対象の対応付けが自然に分かると何がもたらされるか?これを何度か経験すると「単語には意味がある」という洞察を赤ちゃんが得ることができる。
日本語にはオノマトペが多いが、英語に少ないのは英語には「歩く」や「走る」といった様態を細かく区別した動詞が140以上あるから。ambleのんびり歩くtiptoe抜き足差し足で歩くstrollぶらぶら歩く等オノマトペ+歩くになることが多い。
【アブダクション推論】子供はある足がかりがあれば、そこから学習を始め、知識を作っていく。その時子供がしている事は、「教えてもらったことの暗記」とは全く異なる。今持っている資源を駆使して、知識を蓄える。同時に学 -
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「できるようになる」ということについて言葉・言語の専門家である今井むつみさんと、アスリートという身体の学びの専門家である為末さんの対談書。身体の学びには言葉が、言葉をはじめ学問的な学びには身体がそれぞれどのように関わっているのか、お互いの専門領域や経験を踏まえた解説、比喩、そして問いかけが絶妙なバランスで知的刺激が大変心地良い対談でした。為末さんの『熟達論』も続けて読むつもりですが、私が考えたいのは「コンサルティングなどの組織支援、組織開発等を適切にできるようになる・育成する」であり(アスリート的な文脈とは異なる仕方だが)身体もことばも両方使う職種なので、本書の横断的な視点が重要なのかなと思う
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3歳になった長男が最近嘘をついたり空気を読んだりと、言葉はつたないのにハイコンテクストな会話をするようになったこともあり、手に取ってみた。
80個のほっこりする子どもの言い間違いとともに、言語の本質、母語習得の為に子どもが無意識に行っている推論についての解説が添えられている一冊。
言語習得は単なる大人の真似ではなく、高度な推論によって行われており、可愛い言い間違いもその誤りから起こるものだと知ると、ひとつひとつの言い間違いを愛おしく思える。
一説には男性の方が子どものレベルに合わせず難しい単語を平気で使う為、父親とのコミュニケーションが多い子どもの方が言語発達が早いというようなこともある -
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子どもの言い間違い、言語学的な見地から見るとこういうことだったのねー、という事例が集められている本です。見開き2ページで左はイラスト、右はエピソードとコメントの構成なので気楽にサラッと読めます。
一般の人にも分かるようにするためか、言語学の専門用語みたいなものはコメントにはほとんど出てきません。しかし、言語学の専門家が書いた本だからか、書店では言語学のコーナーに並んでいたりします(私は都内某大型書店の店頭で購入時、本の所在が分からず、書店の検索機を使ったら言語学の分類で陳列されていました)。内容は子育て界隈に刺さると思うので、育児関係の本の近くにも置いてもらった方がいいなぁと思ったりしました。 -
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【星:4.0】
ことば思考にどのように影響するのか、ことばがないと思考できないのか、違う言語話者は理解し合うことが可能なのか、などなどことばと思考の関係を、様々な調査結果から解き明かそうと試みる。
例えば、ひとえに「オレンジ色」といっても、日本語話者と英語話者で認識が異なる、前後左右ということばを持たない言語があり、そのような言語話者の思考はどのようなものか、などなど。
言語の思考に対する役割の大きさ、言語によってことばの表す内容に違いがあることなど学びが多い本であった。
ただ、調査結果はふんだんに書かれているのだが、「ことばと思考の関係はつまるところどうなんだ」、という根幹部分について -
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単語を暗記してもことば力は育たない。
丸暗記しただけの私のかつての勉強がまさしくそう。
自分で考えて覚えたことが応用も効くのもたしかに。
生きたことばを子どもに身につけてほしい。
子どもがことばをどう覚えていくかの仕組みも面白かった。
そして、9歳の壁で出てきた抽象的な概念について、低学年の息子はだからまだ具体ばかりなのだと納得。
大人でも、具体と抽象の行き来ができなくて、理解が乏しいひとにたまに出会うんだけど、、もしかしたらこの壁をひきづったままなのかな。。
ことばを育てる方法はどれも参考にしたい。
すきなことにとことん付き合う…は、なかなかできてない。忙しいからあとでね、をしていた -
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為末さんの実践経験に基づく疑問を、今井さんが学問的に表現していく。対談形式は読みやすくわかりやすい。
人的資本と言われ、人財に注目が集まる昨今。わかる、熟練するということはどういうことで、そこを目指すためには何をどうすればよいのか、考えている組織が多いと思います。この本、とても示唆的です。
リスキリングとして、野放図に雑多な動画コンテンツを揃える。これはだめだと確信しました。役割期待と目指すべき到達点を明示し、必要となるスキルを可視化し一覧性を高める。一方で、情報が多くなりすぎないようスキルは絞る。実践を前提として。実践は、復習要素も入れて段階的に高度化していき、目指すべき水準まで様々に経験さ -
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ネタバレ学力不振=問題演習の不足という単純な話ではない。
「理解力不足」という状態を、より具体的に細かくどのステップでつまずいているのか、分析が秀逸。
「生きた知識」であることの4要件:
(1)システムの一部となっていること
(2)身体の一部になっていること
(3)絶えず修正され、アップデートされること
(4)自分の理解の程度が過大評価されておらず、自分は何がわかっていないかがわかっていること。
問題解決のパーツはできていても、複雑な問題を解けない子には、認知的な負荷を軽減できるような方法を自ら状況に合わせて見出せるようになるための支援をすると有効。
テストの点数だけを見るのではなく、解決に至る