あらすじ
私たちは、ことばを通して世界を見たり、ものごとを考えたりする。では、異なる言語を話す日本人と外国人では、認識や思考のあり方は異なるのだろうか。「前・後・左・右」のない言語の位置表現、ことばの獲得が子どもの思考に与える影響など、興味深い調査・実験の成果をふんだんに紹介しながら、認知心理学の立場から語る。(カラー口絵2頁)
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Posted by ブクログ
私がこの本を手に取ったのは、言語によって単語の語順が違ったり、日本語はしばし主語が省略されるが英語はされないなどと知り、それって思考にも影響するのかな?と疑問に思ったからです。
この本の中には、色の名前、物の名前、動作、方向などの「語」の言語感の普遍性や違いが述べられており、私が想像してた「文」の違いが思考に及ぼす影響というのは出てきませんでした。
そもそも語レベルの違いってそんなにないでしょうと当初思っておりましたがこんなにもあるのか、、!と驚き、新たな学びが得られました。
思考との関係性についても様々な研究を例に説得力のある説明がなされており、言語と思考の結びつきを(私なりに少しは)理解できるようになったかと思います。
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思考は言語に影響されることは重々わかっていたつもりだったが、影響されやすいカテゴリーがあることがわかった。位置関係の理解は言語を大いに使うため、失語症者は苦労することが容易に想像がついた。
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ここ最近読んだ言語学関連の本でいちばん面白かった。
言語が思考に影響を及ぼす例として、「文法的性」があげられているが、確かにそうかもしれないと思う。
私は大学時代に文法的性をもつ言語を学んでいた際に単数形、複数形以上によく分からない概念だし、ネイティブの人はどういう感覚を持っているのだろうと疑問に感じていた。
しかし、この文法的性と私たち日本人が使う助数詞は、ものを文法で決められたカテゴリーに分類している点で同じという説明を読んで考えが変わった。
私たちが助数詞に対して持っているなんとなくのイメージや無意識下の使い分けを、ネイティブの人たちは文法的性に対してしていると考えるとすごく腑に落ちた。
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面白すぎる。言語で世の中は区切られている!(と自分は感じたが、言語に拘らず普遍的に通ずる概念もある、と本書では書かれていた。)左右がない世界、色が2種類しかない世界、10進法ではない世界は私には信じられないが、それで成り立っている社会が実際に存在することに衝撃を受けた。こんなに面白い本を1000円(自分は借りたので0円)で読んでいいのだろうか…。申し訳ないのでせめて自費で購入しようと思う。
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ゆる言語学ラジオを聴いて興味を持ち手に取った今井むつみ先生本。ラジオ内で語られていた内容がちょくちょく出てきて、相乗効果で楽しめた。
言語によって認識の仕方や思考に影響が出るという話は、非常に興味深い。言語によって世界にそれまで無かった線を引く、ってこととかすごく腑に落ちる。いやー、おもしろいわ。高校生がこれ読んだら言語心理学とか認知科学とかの道に進みたいって思ったりするんじゃなかろうか。文系学問もおもしろいなって改めて思えた1冊。
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今井むつみさんの本はこれで3冊目ですが、この本は分けてもインパクトが大きいものでした。言葉を通じて世界を見たり、ものごとを考えるのですが、言葉が違うと、認識、思考のありようが違うのか、それにより相互理解はできないのかといった問題に認知心理学の成果を踏まえて分け入っていきます。外国語を学ぶことで認識の多様性への気づきといった思考の変容が得られるとか、言語が異なっても相互に分かり合えるとか、ある意味、感動的な知見の連続でした。
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これは面白い。最初のうちは「それって必ずしも因果関係と言えないんじゃ?」とモヤモヤしたが、中盤に入って著者の専門分野である子供の言語習得のテーマになると俄然説得力が増して本質を掴むことができる。結論だけを見れば当たり前のことしか書かれていないが、それに至るまでの道筋が良く考えられていて自然と腑に落ちるようになっているのはさすが。
Posted by ブクログ
他言語に習熟しようと数ヶ月続けている英会話に、やや停滞期を感じる原因を探っていたとき、この本に出会う。
「言語を学ぶことの大半は、その言語の話者グループの考え方とか文化を学ぶこと」と考えていて、まさにそれが難しい日々が続いていたが、まさにそんな考え方を述べた本だった。
私が期待していたのはどちらかというと社会・文化的要素と言語のつながりだったが、「心理・認知」という視点から言葉を分解するもので、当初の期待を超えて、とても面白かった。
実験の内容の説明もわかりやすくかった。
言語による世界の切り分け方は非常に多用で、魅力的だと思った。また、多様性の中にも、何らかの秩序とか、ヒトが母語に染まる前に示す反応に見られる普遍性も神秘的に感じられた。
言葉が世界を広める一方で、思考を狭めてしまっているのではという気持ちにもなった。日本語は外国語に劣るというような考えはよく無いけど、外国語にしかない概念を知ってたら世の中もっと色鮮やかに楽しく見えたんじゃ無いだろうかとも思ったりする。(うまく組み合わせて学べたらいいのにね)
最後の章の、他言語を学ぶことの意味=「母語を通した認識だけが唯一の認識ではなく、同じもの、同じ事象を複数の枠組みから捉えることが可能であるという認識を持てる」という点に後押しを受け、また英語の勉強に戻る日々です。
Posted by ブクログ
言語はどのように思考に寄与するのか、「言語が異なれば、認識する世界は異なる」とするウォーフ仮説に対して、現代の知識を用いて再検証と疑問提起を行った本。
為末大のTwitterで紹介されていて手に取ったが、これまたいい本だった。
言語による世界の切り分け方、認識の違い、言語間を超えた普遍性、それらを踏まえた上でヒトは言語を介してどのように発達するかを書いていくのだけど、一連を通して言語がヒトの認識にもたらすものを示唆する内容になっている。
ヒトが生物の中で支配者になりえたのは、言語による記録を開発することで一世代間での擬似的な進化を獲得したことによるという認識は持っていたけども、この本を読んで言語を用いて表現される関係性を抽象化し応用することが出来るからだなという認識を新たに得た。
結論としてはウォーフ仮説を概ね認める内容なのだけど、現代人はそれを認識した上で他言語を習得することで、あらたな視点を獲得することが出来る。それを応用させることで急速に発展したのではないか、と考えた。
研究で他分野の人の質問を受けて、視界が開けるような感覚に近いのではないか。
そしてやはり、ヒトは言語を基礎として思考を積んでいき、さらには応用することが出来る生物である。
普段から一言一句のディテールに気を払い、対面する相手に伝えようと言葉を紡ぐことは、実は自己像を構築する行為なのだという認識が強まった。
外に出すことで内を知れるのは面白い。
Posted by ブクログ
とても面白い!言語に関わる人は読んだ方がいい。全体的には,言葉が認知世界を切り分けるという話.母語に依存する言葉によるモノや情報のカテゴライズ方法によって,区別を知覚はできていても認識できないとか,記憶にずれが生じるとか興味深かった.
Posted by ブクログ
異なる言語の話者は世界を異なる仕方で見ているのだろうか?この問いかけに答えようとしたものだ。世界は目で見えているものそのもだろうか?それとも、言葉で切り分けたものだろうか?結論的には、どちらかに決めつけられないものだ。言語によって物のカテゴライズの範囲は変わってくる。しかし、言語に普遍的に共通でカテゴライズされるものもある。赤ん坊を被験者とした実験は面白い。言葉のしゃべれない赤ん坊ではあるが、その興味がどちらにあるのかをよく考えられた実験で比較する。
Posted by ブクログ
言語によって表現の仕方やカテゴリー分けが違うということは、外国語を学んだり、外国人と接っしたりする人には、実は大きな問題なのだなぁということが分かった。
大変勉強になった。
Posted by ブクログ
【星:4.0】
ことば思考にどのように影響するのか、ことばがないと思考できないのか、違う言語話者は理解し合うことが可能なのか、などなどことばと思考の関係を、様々な調査結果から解き明かそうと試みる。
例えば、ひとえに「オレンジ色」といっても、日本語話者と英語話者で認識が異なる、前後左右ということばを持たない言語があり、そのような言語話者の思考はどのようなものか、などなど。
言語の思考に対する役割の大きさ、言語によってことばの表す内容に違いがあることなど学びが多い本であった。
ただ、調査結果はふんだんに書かれているのだが、「ことばと思考の関係はつまるところどうなんだ」、という根幹部分については「多様であり一刀両断に語ることはできない」といった形で、読後にモヤモヤ感が残る。
Posted by ブクログ
思考に言葉は必要か。語彙力が豊富な人間ほど、思考は深いのか。
考えさせられるテーマだ。思考には必ずしも言葉はいらないというのが私の考えで、物忘れしたときに漠然としたイメージで思考する事はあり得ない話ではない。寧ろ、緻密な文章やなど頭の中では構築せず、正確な語彙も無視して、感情を想起しながら考える事が普通だ。
これに対し、本書を読んで考え直させられた。三つある。深い思考には言葉は必要だという事。相手の思考に作用するために、言葉が必要なのだという事。しかし、時に言葉が思考を制限し、誘導してしまうという事。
ー 隣接する二つのカテゴリーの境界にある刺激を、二つのカテゴリーの中間の曖昧な刺激として知覚するのではなく、はっきりとどちらかのカテゴリーのメンバーとみなすことを、心理学では「カテゴリー知覚」(あるいは「範疇知覚」)という。
英語を母語とするアメリカ人の見せた判断の偏りは、まさにそのカテゴリー知覚なのである。つまり、ことばを持たないと、実在するモノの実態を知覚できなくなるのではなく、ことばがあると、モノの認識をことばのカテゴリーのほうに引っ張る、あるいは歪ませていまうということがこの実験からわかったのである。
曖昧なものを曖昧なままで解釈できず、近似の言葉に寄せてしまう。怒りとも言えないが、怒りという言葉に寄せて峻別してしまう、など。これは何となくわかる。このことにより、言葉が思考を規定してしまうというのだ。こうした定義づけに関しては、次の話も面白かった。
ー rice(米)とlice(しらみ)の区別ができない。私たち日本人の耳にとって、この二つの語は同じように聞こえるが、生まれたばかりの赤ちゃんには、この違いがはっきりと聞き取れる。しかし、この聞き分け能力は一歳の誕生日ころまでに失われてしまう。つまり赤ちゃんは、最初はそれぞれの言語でつくる音のカテゴリーというものは明確に持たないが、生まれてから自分の母語にさらされ、そればかりを聞くうちに、母語の音のカテゴリーを学習し、音に関しての母語特有のカテゴリー知覚をつくり上げるのである。
ー 赤ちゃんは・・・イヌとアヒルの見た目の違いに注意を向けず、「一個」と考えてしまうようだ。それが、「イヌ」とか「アヒル」ということばを知るようになると、二つのおもちゃが「違うモノ」であるとはっきり認識するようになるのである。
実は、まだ「アヒル」、「イヌ」ということばを知らない赤ちゃんに、「見て、アヒルだよ」「見て、イヌだよ」と言いながら、さっきのように、一つのついたての後ろからイヌとアヒルが出たり入ったりする実験をすると、「アヒル」「イヌ」ということば自体を知らなくても、二つのことばが言われたという事実から、モノが二つあることを期待することもわかった。つまり、モノの見た目よりもことばが同じか違うかを頼りに、赤ちゃんは、時空間上に同時には存在しないモノが、同一のモノなのか、それとも二つの違うモノなのかを決めているようなのである。
文字を覚えるまで、子供の外国語の発音は完ぺきだった。文字を覚えて、その読み方につられて、カタカナ英語になってしまう、という事を経験した。人間は、慣れ親しんだ経験に極力、認知を振り分けることで脳を省エネ化しようとするらしい。そのことが、言葉が複雑な思考を促すようで、時に制約ともなるようだ。言葉を用いて思考するという事は変えられないのだから、語彙は豊富な方が良い、というのが結論だ。
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人間が世界を認識し、学習し、思考を広げていくことに対して、
言語がどんな役割を持っていて、どのように認識を助けているのか、
場合によってはどのように認識をゆがめているのか。
専門的な内容ながら、平易な言葉でわかりやすく説明されています。
目に見えない思考というものを、どのように定量化、可視化するのか。
多くの実験の方法も紹介されていて研究者の工夫も垣間見れました。
Posted by ブクログ
「英語独習法」に続く、今井先生2冊目。
「英語〜」はタイトルの通り、英語と日本語の違いを軸に、言語感覚と認知のつながり、言語の違いによる認知の違いを教えてくれた。
この本はもっと幅広く、英語ドイツ語フランス語ロシア語中国語、更にはイヌイット語、ゴドベリ語(どこよ?)、グーグ・イミディル語(ゆる言語学ラジオで言ってたやつだ!)まで、様々な言語の様々な差異を通して、サピア=ウォーフ仮説を検証する。
イヌイット語では、雪の種類に応じて20以上の独立した単語があるとか。
数の数え方の影響で、一般的にアジア圏のこどもは欧米のこどもより小さいうちに計算ができるようになるとか。
そういうトリビアな雑学だけでも結構楽しい。
個人的に1番面白かったのは、空間認知能力にも、複数の情報を組み合わせて推論することにも、言語が影響していて、だから、「色」情報と「相対位置」情報をヒントに宝探しをさせる実験(たとえば『黒い壁に向かって左側の角』)で、言語野を機能させなくする(ヘッドホンから聞こえてくる文章をどんどん復唱させながら宝探しをさせる)と、成功率が低下するという話。
この実験を考えたのがまず、すごいと思う。
言語がいかに認知に影響するか、人間の言語習得プロセスの面白さ、そして、世界の広さに驚かされる。
Posted by ブクログ
私たちの思考は言語の枠組みの影響を受けている。だから異なる言語の話者同士は世界の認識や思考様式がまったく異なるのかもしれない、というある意味有名な仮説に対して最近の言語学がどこまでアプローチしているのかをわかりやすく解説する本。異言語間の差異と共通点だけでなく乳児幼児がどのように言語を習得していくのか、言語習得以前の認識のあり方に対して言語はどのように影響しているのかなど基本的な事柄を初心者向けに丁寧に解説していて良かった。さすが岩波新書と言うべきかとても新書らしい新書で安心して読めました。
Posted by ブクログ
"われわれは、生まれつき身につけた言語の規定する線にそって自然を分割する"
"世界が自分自身を分割し、名前をつけられるべく待っている"
先達のことばを引きつつ、ご自身の研究も紹介しながら、どうヒトは思考しているかを考えさせられる、良い本でした。
Posted by ブクログ
母国語が、ものの見方にいかに影響を与えるものであるか。衝撃的でした。一方で、異言語使用者間でも、共通する見方があるとのこと。非常に興味深いテーマでした。
Posted by ブクログ
英語独修法で、筆者の考えに興味を持ち、本書を手に取った。
言葉によって、人間の思考がどのような影響を受けているのか、その一端を理解する事が出来た。
言葉によって、思考が進み、色々な概念を作り上げる事ができ、それを伝える事が出来るようになる。
一方、言葉によって思考の方向性が制限を受ける事がある。
その事を意識しながら、自分の思考を進めたり、他の言語の人々とコミュニケーションしていこうと思う。
Posted by ブクログ
言葉によって思考は違うとも言えますし,
大きな違いはないとも言えます。
そもそも「言葉によって思考は違う。YesかNoか。」という問い自体が
いまはもはや意味のない問いになっており,
どこがどのように違って,どこがどのように共通しているのか,
そこを明らかにする必要があるところにまで来ているようです。
「ことば」について深く考えたことはなかったのですが,
じっくり,しっかり考えなければならないほどの奥深さを感じさせてもらいました。
人間にしか「ことば」がないことを踏まえると,人間を考えるときに「ことば」について考えることは切っても切り離せないものです。
少しずつ考えてみたいと思いました。
Posted by ブクログ
2020/8/25
言語に関する興味から手に取りました。
読み進めるのはけっこう大変…難解ではないですが。
しかし言語が認識にどのように影響を与えるのか?という疑問を持った私にとっては大変示唆に富む一冊でした。
今井さんの他の本も読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
本棚見ていただければご理解いただけると思うのですが、年明けから言葉と発達に関する本をたくさん読んできました。
いろいろ読み進めていくと、最終的に、今井むつみ氏の著書にたどり着く。
これが1冊目。
今まで全く知らなかった事柄がさまざまあり、自分の認識の幅がかなり広がった。
(それについては、後程記載)
一言。
読むのに、かなり骨が折れました。笑
仕事の合間に読み進めても、丸々2か月かかりました。
初めて読むのでしたら、
「親子で育てることば力と思考力」(筑摩書房)
をお勧めします。
とっても理解しやすいです。
Posted by ブクログ
動詞でも言語によりさまざまな使い方がある
持つ→抱く、持つ、にぎるなど
ウォーフ仮説=言語はその話者の世界観の形成に差異的に関与する
言葉により人は認識できている
言葉の違いによる認識の違いを理解すべき
Posted by ブクログ
使っている言葉(言語)が思考にどのような影響を与えるか、についての本。
非常に面白かった。人は意識している以上に言葉に縛られている。言葉として使われない物は、認識の対象にすら上らない(あるいは上りにくい)というのは、言葉について改めて考えさせられる。
それは意識下ではなく、無意識のレベルにまで作用しているというのは、なかなか怖いところだ。文化圏によって言葉が定義され、その言葉によって文化が強化されていく、というサイクルがあるのかもしれない。
言葉と言葉の相違は、もしかしたら最後まで人類の相互理解を妨げる、ということになるのかもしれない。
しかしながら、複数そんざいする言語でも共通性と呼べるものはあるわけだから、そこに何かしらのカギはあるのと言えるかもしれない。
言葉とか言葉遣いは重要、という以上に面白い内容だった。
Posted by ブクログ
実験結果をもとに、言葉と認知、言葉言語習得について書いてある。
言葉が認知にどのように影響するのかというのは、興味がある分野だったのだが、詳細に書かれた実験結果があまり頭に入ってこなかった。
Posted by ブクログ
言語が思考を決定するか、
異なる言語の話者が異なる思考をしているか、
というのをいろいろな角度から考察した本。
いろいろな実験結果から話を進めていく。
個々の実験の話はわかりやすいのだが、そこからの考察は私にはちょっと難しかった。