今井むつみのレビュー一覧
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ネタバレ「学習においてなぜ身体性がなぜ大切なのか」という問いのヒントになるかと思い本書を手に取った。読み終えて振り返ると、答えは大きく2つに整理できると思われる。
ひとつは記号接地。抽象的な概念を生活や経験と結びつけ、実感を伴って理解することで、初めてその概念を自由に操作できるようになるという視点である。
もうひとつは熟達のあり方。熟達とは多様な状況にほぼ無意識に対応できる力であり、熟達するためには、言語的な学びだけでなく、身体化していく必要があるからだろう。
どちらも結局は「身体で学ぶこと」が、学びを柔軟に応用できる土台になる、という話なのかもしれない。
今井むつみさんの著作はこれまでも読んできたが、改めてその考え方の重要性を実感した。授業をつくる上でとても大事になる。 -
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言語を学ぶ、複数の言語を操れるとはどういうことか、いろいろ興味深い考察があった。
p19
「高齢者の場合、マルチリンガルであることは、アルツハイマー病やその他の認知症の発症を4年から6年遅らせ「認知予備能」(脳が認知症の状態になっていても、症状が出にくい状態のこと)を強化する」
p27
「全世界に暮らす人の過半数がバイリンガルかマルチンガルだ。(略)
ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南アメリカの多くの国では、生まれたときから複数の言語に触れながら育ち、さらに学校で、あるいは大人になってからも新しい言語を習う。ルクセンブルク、ノルウェー、エストニアでは、人口の90%以上がバイリンガルかマルチリンガルだ。ヨーロッパ全体で見ると、人工のおよそ3分の2が少なくとも2か国語を話し(欧州委員会の推計によると、3か国語以上を話すのは全人口の4分の1だ)、そしてカナダは人口の約半数がバイリンガルだ。」
母語ではない言語を使っているときのほうが倫理的な判断から資産の配分まで、合理的な意思決定ができるというのも面白い。
「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは正しいか」という倫理的な判断を問う「トロッコ問題」について尋ねると、母語で答える場合、5人を救うために1人を犠牲にするのは許されると答える人は20%、第二言語だと33%だという。第二言語のほうが倫理的になる。
p59「複数の言語を話す人の脳内では言語同士の連想ゲームがより活発に展開されることになる」
わたしは日本語の「楽器」という言葉しか知らないとき、それは音楽を奏でるものとしか結びつかなかったけど、instrumentという英語を知ってから、この言葉の持つ道具や医療道具という意味も連想されるようになった。
p62「英語で文章を書くときの私は、母語と結びついている偏見から自由になれる。男女の役割分担といった考え方にとらわれず、思想家、著述家、科学者になれる。」
わたしも英語でmy husband、your husband、your wifeなどと言うのは楽でいいなと思う。奥さんと呼ぶしかない日本語から自由になれるから。ご主人? 旦那さん? と迷ったりしなくてもいいから。
p118認知症のこと
「2つ以上の言語をつねに使い分けていると、脳内ではより多くの神経の通り道が形成される。加齢による脳そのものの衰えは避けられないが、普通よりもたくさんある神経の通り道が、その衰えを補う役割を果たしてくれるのだ。」
p171
「「外国語効果」とは、母語以外の言語を使うときのほうが理論的で冷静な判断ができるという現象だ。たとえば、5人の命を救うために1人の命を犠牲にするかといった倫理的なジレンマに直面したとき、外国語のほうが功利主義的に考える傾向がある。恐らくその理由は、外国語を使うと感情が抑制され、対象との間に心理的な距離を置くことができるからだろう。」
p236
「アメリカ人の子どもに外国語を教えないということは、教育システムに潜むより大きな問題の一部でもある。(略)ヨーロッパのほとんどの学校では、9歳までに最初の第二外国語を学び、その数年後までに第三外国語を学ぶことが義務化されている。」 -
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AIの時代に何を学ぶべきか、それは「思考力」である。
思考力を鍛えるためにどの科目を学ぶべきか、それは「国語」である。
なぜなら、国語はすべての科目を学ぶのに必要となるからであり、ことばを知っていると、思考が楽になるからである。
そのことを、私たちがどのようにして母国語を学んできたか、子どもたちの「アブダクション」を見てゆくことで明らかにしてくれる。
いわゆる『ヤングアダルト』と呼ばれるジャンルであり、新書に比べるとかなり易しく書かれており、正直物足りない。
しかし、このような本を読むと、今井先生ほどの知性が、中高生に対してどのように語るか、言い換えれば、中高生の知性をどのレベルに設定しているかを学ぶことができる。そして、自分が子どもや部下に語るときのヒントを得ることができる。
小学校高学年から中学生に読んでほしい本。
あと、小さい子をもつお母さんにも。
以下、少しだけ抜粋。
【はじめに】
では、思考力を使って問題解決ができる「名探偵」になるために、私たちは何を学べばいあのでしょうか。(略)正解は、国語です。
「なぜ国語?」
確かにそう思う気持ちもわかります。
数学や英語のほうがなんとなく、問題解決の役に立ちそうですよね。でも、私たちは何を学ぶにも「ことば」を使います。「ことばの力」がなくては、数学の問題もうまく解くことはできません。ちなみに、みなさんが数学の文章問題が苦手なのは、「数学の理解ではなく、問題文の理解が不十分だから」ということが調査で明らかになっています。
「すべての科目で使うもの」。それが国語で身につける「ことばの力」なのです。
p88
グローバルな社会になり、世界的に問題になっているのが「母語でも第二言語でも思考できない子ども」の増加です。(略)
日常会話が何か国語でできても、それだけで深い思考はできません。一つの言語で構わないので、抽象的なことばを操ることができるようにすることが大切です。
もしみなさんが、日本で育ち日本語を母語としているのであれば、日本語で抽象的な概念を扱い、思考を深めることができるまでしっかりと国語の勉強をすることです。外国語は、国語の能力の伸びに寄りそうように伸びていきます。小さい頃から英語を習っていなくても、まったく心配ありません。 -
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ネタバレゆる言語学ラジオの水野さん著、今井むつみ先生監修の子どもの言い間違いが集められている本。ほっこりしながらも、解説により日本語の面白さを感じさせてくれる。
自分の知っている数少ない言葉の活用を適用している間違いも多くて、改めて子どもの言語習得能力の高さと、この時期にしか得られない可愛さを大事にしたいと感じた。
▼なるほどと思った言い間違い
・パパ、いらなかったよ
居るを使いたいところ、要ると同じ活用をしてしまった
ゐゐゐるゐるゐれゐよ と らりりるれれの違い…懐かしい
・しんぱくない?
寒い、眠いのような形容詞の否定「〜くない」を適用した
・64の前は65
“前”を過去、ひとつ小さい数ととるか、前進のイメージの前ととるかの違い
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読前は、教科の学力や例えば国語では、読む、書く、話す、聞くのように独立した領域があるのが学力のイメージで、何処かに重点を当てて指導にあたると考えていた。読後、基礎学力とは何か?という本書のテーマを考えた。本書の中で教科の内容を「生きた知識」として使うために必要な能力は、実行機能、作業記憶機能、視点変更能力、推論能力、メタ認知能力が必要である。(P10)
これらを複合的に育てる視点を授業作りで持つには、一度達人テストを解いてみたいと,思った。またこのテストを活用して、授業作りの視点に生かすことは分析する時間はかかるが、必要なことだと感じた。
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子どもがどうやって言葉を学ぶかについて。
言葉の音と意味の両面で「似ているもの」を見つけることで音と意味のまとまりを見つけていく。その似ているもののグループをカテゴリーと呼ぶ。
子供は最初に聞いた言葉を固有名詞としては認識せず、一般名詞として認識する。そうやってカテゴリーを見つけていく。
なんとなく言語の仕組みとして分かっていたことでもあるが、実際の実験の話など具体的な例を出しつつ説明してくれるのでとてもわかりやすかった。
ヘレンケラーが指文字で言葉を覚えた話や、子供が犬・豚・首輪の写真をみて、犬と首輪を同じグループに入れる話など。逆に、大人が持っているカテゴリーの偏りに気付かされる。 -
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ネタバレタイトル+今アツい著者ということでメルカリで購入+読破。
懇談でも「うちの子、文章題が苦手で…」という声はよく聞く。全体的に話や出てくる言葉が難しいと感じる部分もあった(今井むつみ先生の本は基本そんな感じする)が、納得・共感できる部分も多くあった。
つまずきの原因として挙がっている中で、特に共感したのは、原因7「問題を読んで解くこと」に対する認識。この説明の中で、何のために算数を学ぶのか分かっていない、学習性無力感という言葉が出てくるが、自分なりに言い換えると、
算数のテストなんて適当に答えといたら良い(というか、丁寧に見直しまでしなくて良い)
という子どもの思いが主原因だという点である。
著者は、本人のやる気の問題…といったものではなく、「1年生から学習を続ける中で、抽象的な算数の概念と自分のスキーマがぶつかって混乱する=つまずく」としている。
しかし、自分としては、やる気が低いと言い換えても良いのではないかと感じる。
それは子どもが悪いという単純な話では決してなく、そこまでやる気を高める環境を設定できなかった教師にも課題があるという認識のもとで言っている。
やる気を高めるということは、わかる・できるということに直結している。
わかる・できるから、丁寧に取り組む。
ここは教師として常に意識しておきたい。
イメージ化が苦手な子に対する支援、学力は単純にテストだけで測ることはできない、簡単なものばかり取り組むと誤ったスキーマを作ってしまう…
この辺りも印象に残った。まぁ、読んでよかった。
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普段、知識をどのように使っているかは、意識することはないが、知識を使うとはどういうことで、どのような能力が必要なのかの説明が、とても興味深かった。
実行機能、作業記憶能力、視点変更能力(他者視点取得能力)、推論能力、メタ認知能力などの認知能力が必要だとのこと。
実行機能・・・必要な情報にのみ注意を向け、不必要な情報への注意を抑制したり、注意を指示に応じて柔軟にシフトさせたりする能力、いわば注意をコントロールする認知機能。
作業記憶能力・・・作業記憶の容量や効率性の個人差は生まれつきの要因よりは、訓練による効果が圧倒的に大きいとされる。
視点変更能力(他者視点取得能力)・・・学力の前提となる基盤能力の中で必須であるが、子どもが身につけるのにとても苦労する力。
推論能力・・・教えられた情報が学び手の中で「知識」になるかどうかは推論にかかっているといっても過言ではない。
メタ認知能力・・・自分をちょっと離れたところから俯瞰的に眺め、自分の知識や行動を客観的に認知する能力。テストで解答後に見直しをするようにいくら指導されても、メタ認知が働かなければ、自分の答えの誤りに気づくことはできない。
子どもたちがどういったつまずきがあるか、その原因は何かを、膨大なデータをもとに、入念に分析されていたので、多くの知見が得られた。しかし、その解決策は、残念ながら書かれていなかったので、他の今井さんの本を読んでみたい。 -
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「できるようになる」ということについて言葉・言語の専門家である今井むつみさんと、アスリートという身体の学びの専門家である為末さんの対談書。身体の学びには言葉が、言葉をはじめ学問的な学びには身体がそれぞれどのように関わっているのか、お互いの専門領域や経験を踏まえた解説、比喩、そして問いかけが絶妙なバランスで知的刺激が大変心地良い対談でした。為末さんの『熟達論』も続けて読むつもりですが、私が考えたいのは「コンサルティングなどの組織支援、組織開発等を適切にできるようになる・育成する」であり(アスリート的な文脈とは異なる仕方だが)身体もことばも両方使う職種なので、本書の横断的な視点が重要なのかなと思う。『熟達論』が終わったらもう一度戻ってこよう。