堂場瞬一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ【325冊目】「荒野の刑事」に続く、警察大河小説の2作目。
筆者の堂場瞬一は元々読売新聞の記者で、今は古巣の依頼も受けて小説の書き方講座みたいなこともしているらしいです。それに関連したインタビューが先日読売新聞の夕刊に載っていました。曰く、ミステリーにおいて新たなトリックや意外な犯人を描くのはもう難しいと。意外な犯人と銘打つものは、たいてい味方に反人がいて、多くの場合警察官だったりすると。
そんなインタビューを読んだばかりだったので、本書をミステリーとして読んだときには消化不良感が残りました。事件が完全解決しない、という警察小説としては珍しい結末は、凡庸な小説を書きたくない筆者としての辻褄合わせだったのかもしれません。
ただ、警察大河として読んだとき、戦後の社会の変化や、警察組織の変容をよく描いているなと思います。とはいえ、その変容の中身として主に描かれるのは、2人いる主人公のうちの一人である海老沢が所属する公安警察側で、もう一人の高峰が所属する刑事警察が単純に描かれすぎているとも思いました。戦後になり、刑事警察に主に起こったのは手法の変容だったのに対し、公安警察に起こったのは看板の架け替え、敗戦による否定と共産主義台頭による肯定など大きな変容だったため、小説の題材にしやすいという事情もあるのかもしれません。
さて、これを「大河小説」として読んだとき、本作の白眉はやはりラスト、海老沢と高峰が別々の道を歩むことを決め、訣別するシーンでしょう。実際、本当に組織内でのそんな対立があり得るのかなあ?と勘繰ってしまいますが、1995年の國松警察庁長官狙撃事件で噂される公安部と刑事部の捜査方針をめぐる對立などを聞いていると、そんなもんなのかなとも思ったり。営業と製造・開発の対立みたいなもので、哲学の違いは並行線のままなのかもしれないですね。
いずれにせよ、かつては親友だった2人が訣別するのは、自分の経験に照らしても寂しくて、ドラマチックでした。
果たして、この2人の道は3作目で再び交わるのでしょうか…(交わらないと作品にならないのですが笑 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【320冊目】堂場瞬一さんの作品は「震える牛」しか読んだことがなく、硬い空気感で進むのかなぁと思っていた。
もちろん時代背景や事件は悲惨で、主人公のひとりである海老沢に降りかかる不幸もまた辛いのだけど、全編を通してどこかエネルギーに溢れていて前向きであり、苦もなくスッと読めた。
それは、高峰のまっすぐな正義感と、戦火や組織の理不尽さにやられても立ち上がる強さのおかげだろう。節子との淡い恋模様も清涼剤として読みやすさに貢献している。
それにしても、戦争中に死体はたくさん出ただろうし、実際にはどさくさに紛れて埋もれてしまった殺人事件もたくさんあったのだろうな。とかく戦争中の警察といえば本書にも登場する思想警察たる特高を思い浮かべるけど、いわゆる高峰のような殺人刑事や泥棒刑事はどこまで仕事ができていたんだろうな。そんなことに思いを至らせてくれる作品だった。
あと、海老沢のような警視庁保安課の検閲官と作家の関係性について考えたこともないし、戦争中に警察の評判を目一杯傷付けた特高所属の警察官が戦後どんな目にあったのかも気にしたことがなかった。実際には海老沢のように公安警察に戻った者も多いんだろうけど。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ事件が繋がり解明されていく瞬間は気持ちが良いが、犯人が馬鹿で残念。10年間もいろいろな犯罪に手を染めながらも逃げ隠れできていたのであろう犯人が、こんなにあっけらかんと暴行事件で逮捕されるとは腑に落ちない。もっと手強い相手であって欲しかった。
また複数の事件が複雑に絡まっているのかと思いきや、ひとつひとつの事件の動機やストーリーが思ったより浅く残念。ヤクの売り専で口塞ぎのためだったり、強盗目的だったりと物足りなさを感じた。ここまで長編にするならば、犯人たちのキャラをもっと際立たせ、事件の動機や繋がりをもっと深めて欲しかった。
コーヒーの話はなんだか余韻を残してドラマチックな雰囲気を醸し出せているが、果たして必要だったのか、、、?なんだか消化不良が残る最後だった。