山口周のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
**武器になる哲学/山口周**
哲学の本ではあるが、教養として学ぶのではなく判断の道具として使えるよう整理されている一冊。並行して読んでいた他の本とも次々につながり、読みながら気づきが立体的になっていく感覚があった。
印象に残ったのは、まず「自由とは自分で選択して決定すること」という定義。一方で自己実現は他者との差異によって成り立つとも書かれており、自分で考えて決めたつもりでも、その基準は周囲を参照している。本当の意味で周りに全く流されないということはない、という指摘にはハッとさせられた。
もうひとつ強く響いたのは、努力が報われる=評価されるという前提で生きると危険だという話。努力は必要だし大事だが、報われると考えていると、報われなかった時に組織を恨む思考になってしまう。成果になるかどうかは環境が決めることであり、だからこそ自分がどこに身を置くかが最も重要で、自分で納得して取り組むことに意味がある。公平な評価がかえって差を生むという逆説とも合わせて読むと、努力の意味づけを自分の中で完結させておく必要性がよくわかる。
未来は予測できないという点も実務的だった。過去に専門家が立てた予測は見事に外れている。だから予測しようとするより「未来をどうしたいのか」という意志の観点で考えるべきだという。VUCAの時代には根拠が揃うのを待たず、根拠なく動くことが成長につながるという話とも一直線でつながる。
自然淘汰の考えに基づけば、環境の変化によって人は変わる。逆に言えば、環境を意識的に変えていくことで適応力が上がるということでもある。思考停止した人が悪事をするという指摘も、考えることを放棄する怖さを改めて突きつけてくる。
全体を通して、自分の外に基準や報酬を預けないこと。ただし完全に独立した自己などないことも認めた上で、参照する他者と身を置く環境は自分で選ぶこと。そこに集約される一冊だった。
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**自分に合う教訓3つ**
**① 努力の報酬は自分の中で完結させる**
努力が報われる=評価されるという前提を持つと、報われなかった時に組織を恨む思考になる。成果になるかどうかは環境が決めること。自分でできることを増やすことを目的にすれば、評価は結果としてついてくるかどうかの話になる。昇進を考える上でも、部下に何を渡すかを考える上でも効く。
**② 未来は予測できないから「どうしたいか」で決める**
予測精度を上げようとするより、意志を持って動く方が実効的。根拠が揃うのを待っていたら動けない。目的は進めながら見出せばいい。
**③ 環境は自分で選ぶ**
成果も、人の変化も、環境に大きく左右される。だからこそ身を置く場所と参照する他者を意識的に選択する。これは異動や昇進の判断にも、日々どんな情報を取り入れるかにも当てはまる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ
今後はスキルと呼ばれてきたものの多くを生成AIが担う。
人間に残された知的センスはセンスへ集約されていく
仕事は結果責任を伴う→人間
作業は結果責任を伴わない→ AI
人と会って話す、人を見るということは、センスを磨くための基本中の基本
思考の五悪 怒り 恨み 妬み 悔やみ 悩み
情報のストック これは面白いな、人に話したいな
考える→対象を理解する
理解→物事の構造や因果を捉える新しい枠組みやフレームが自分の中に同時にできあがる、つまり自分自身が変容して、従前の自分とは同じでいられない
意外だけど、納得感がある ハッとしてグッと
仮説が先、AIが後
自分の中で、対話を起こすことがアウトプットの原動力になる
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Posted by ブクログ
・AI登場後の知的生産上の差別化の源泉は、「1.アジェンダの設定」「2.仮説の構築」。正解を出すよりも、問いの質の差になる。
・現在の世界は「正しさ」そのものが断片化している。様々な「正しさ」が存在し、普遍的な規範を存在しなくなってきている。
・「問を立てる力」「前提を疑う力」は、経営課題の整理に直結する。ビジネスパーソンには「複数の視点を獲得することが重要であり、それこそが人文知(リベラルアーツ)である。
・産業では過剰供給されると何がおこるかというと、ボトルネックが隣の工程に移動する。いま過剰供給されているのはAIの能力。
・いまボトルネックとなっているのは、「おもしろい問を立てる能力」「出した解を実行する能力」。「正解を出せる人」を相変わらず求めているが、それはもはやボトルネックではない。
・ホモサピエンスは、基本的に儀式をしないと集団での合意形成ができない。そのコンセンサスを得るために、ものすごいコストを人類はかけてきた。昔は占い儀式であり、今はコンサルフィー。それができる人が、その社会で最も高い報酬を得ている。 -
Posted by ブクログ
山口周さんと深井龍之介さんの対談本。なのでもし音声で聞けるならそれが一番読み(聴き)やすいように思う。2人の声と顔を思い浮かべながら読んだ。
歴史って過去のことだから、それを学ぶのはどれほど大事なことなのか、学生時代はまるで理解してなかったし、大人になった今も取り立てて歴史についての知識を深められていない自分を恥じた。歴史を知ることで、未来の予測ができる。深井龍之介さんはすごいと思う。
リベラルアーツを学ぶことの大切さも改めて知ることができて、良かった。アメリカの大学では最初の2年くらいはリベラルアーツをみっちり勉強することが多い理由につながった。 -
Posted by ブクログ
「理系こそが正義」と思い込んでいた自分が、なぜ今ビジネスの現場で文系知の価値を確信しているのか。
ソフトウェア開発の最前線でAIと向き合う中で見えてきた、「人文知という名の無意識の筋トレ」の必然性を言語化してくれた一冊。
昔は「理系でなければキャリアに役立たない」と考え、生まれ変わるなら、あるいは自分の子どもには理系に進んでほしいとすら思っていた。
しかし、法学や経営学といった文系分野を学び、ソフトウェア開発・販売企業でビジネス職(POなど)を務める今、強く感じることがある。
それは、「開発職をはじめとする理系人材だけでは、進むべき方向性を描き、意思決定を下すことはできない」ということだ。
本書は、その違和感に対するひとつの明確な答えを提示してくれた。
正解や常識が絶えず揺らぎ、無数に分岐する現代において、画一的な基準や規範だけで物事を判断することはできないし、すべきでもない。
コンテキストや関係性、関係者の意思を汲み取ったとしても、絶対の正解など存在しない。
だからこそ最後は、「好き」「やりたい」「こうあるべきだ」という個人の主観や美意識が判断の軸になる。
最近は業務でAIと対話する機会が増えたが、AIに対して「正誤」を指摘することはほとんどない。
むしろ「なんとなく違和感がある」「美しくない」「別の視点から捉えるとこうではないか」といった指摘が大半を占める。
これは正解を知っているからではなく、これまで思考し蓄積してきた文脈を、無意識のうちに総動員して判断しているからだ。
哲学や歴史を学ぶ意義は、まさにこの「無意識の筋トレ」にある。
直線的にすぐ目に見える成果へ結びつくわけではなく、じっくりと時間がかかる。
だが、だからこそ長期的なリソースを投下する価値があるのだという本書の主張に、深く膝を打った。
新書らしい手軽さがあり、ポッドキャストや動画でも触れられるトピックという側面はあるものの、日々の実務実感と知見がクリアに結びつく本だった。