■インターネットの大事な本質のひとつ
情報や物を小分けにして、離れていた物をつなげること。それによって、今までなかった情報の流れ、物の流れが起こり、そこに新たなビジネスが生まれる。
リクルートの圧倒的優位性をつくるトリプルループ
このリボン図は、相互ネットワーク効果に直結します。図L5の真ん中のループのように、企業の情報をまとまった数集めることができればユーザーが集まり、ユーザーが増えれば、さらに企業が集まってくるわけです。
しかし、紙の時代と違って、ネットの時代は、企業が提供する情報はコピーして編集するのが簡単なので、複数のマッチングサービスに対して情報を提供するのが苦になりません。そこで、複数のサービスを併用する企業をサポートするイネーブラーも登場します。予約枠の在庫管理のときと同じです。
一方、ユーザーは、選択肢を増やすために、最初から複数のサービスを利用すると考えるのが自然です。そうなると、相互ネットワーク効果の基本ループを回すだけでは、独占の構造はつくりにくくなってしまいます。
リクルートの真価は、ここに、さらに二つのループを追加することだと僕は思っています。それが「幅のループ」と「質のループ」です。
左下の「幅のループ」は、一定以上のユーザーが集まると、その隣接領域の企業まで引っ張ってきて、別の相互ネットワーク効果を回すことができることを指しています。
たとえば、結婚式場探しのために集まったユーザーに指輪やドレス企業をつなぐ、宿泊先を探すユーザーに、現地まで移動する飛行機や新幹線予約をつなぐ、といったことがあげられます。
このように隣接領域でも良質な企業とつなげて、まとめて提供していくことは、ユーザーにとっても魅力的です。ワンストップで、しかも一度の入力で手間暇かけずに自分に合った選択肢が提供されるからです。そのため、幅のループが回り出すと、ユーザーは別のサービスに浮気することなく、そのサービスを使うようになるため、基本ループが強化されます。
さらに大事なのは、右下の「質のループ」です。マッチングサービスには、ユーザーが何と何を迷い、結果的に何を選んだか、といった行動履歴がたまっていきます。これらのデータを分析すると、ユーザーが探しているのに提供企業が少ないニーズは何か、最近増えているニーズは何か、何の選択軸を強化すると価格が多少高くてもユーザーが選ぶのか、といった相場観や最新動向がわかります。こうした情報を企業に提供すれば、企業はユーザーに選ばれやすくなるため、そのマッチングサービスから離れられなくな
ります。
ユーザーにとっても、自分のニーズに合わせて先回りした提供企業から、よりニーズにマッチした選択ができるようになるため、サービスの使い勝手が向上します。結果として、ユーザーも、そのサービスを使わざるをえなくなるのです。
このように、量のループと質のループが回ると、提供企業にとっては「かえの効かない」サービスになるため、企業は喜んでお金を払ってくれるようになります。
事業を継続していくには、競争に負けない構造をつくることも大事ですが、収益力を高める仕組みをつくることも、同じように、大事になってきます。
もう一つ、タイミングを見極めるときに忘れてはいけないことは、ビジネスはC(ジ
費者)から始まって、B(企業)に移っていくということです。個人ユーザーのほうがリテラシーが高いし、身軽なので、新しいサービスが出てきたら、まずCが飛びつきます。Cである程度成功したら、次はBを取り込みにいくのですが、Bのユーザーはリテラシーが低い人が多いです。一般にCのユーザーよりもBの利用者のほうが年齢が高く、導入の意思決定をする偉い人はさらに年齢が高いからです。そのため、Bの利用者のリテラシーに合わせた「やさしい」サービスにすることが求められるだけでなく、1
Tに最も不慣れなBの意思決定者の不安や疑いを乗り越えるための「権威づけ」や、ほかの会社もみんな使っているという「主流感」を醸成することが大事になります。
そこで、B向けサービスの営業戦略としては、まず利用者と意思決定者の平均年齢が比較的若く、新しいサービスを導入することに積極的なベンチャーから普及をはかって主流感をつくり、その後、意思決定者の年齢が高い会社を落としにいくような工夫が必要です。
さらに、Bの意思決定者は、プラスが増えることを好むよりも、マイナスが増えることを嫌う傾向があります。そのため、Bではいったん契約したサービスを切り替えるスイッチングコストが高いことが多く、後発サービスがあとから入り込むのは相当むずかしい市場です(コロナの影響でオンライン会議ツールの「ズーム」が伸びた理由は、このスイッチングコストを徹底的になくしたところにあるのですが、それはまた別の機会
に)。
以上をまとめると、まずC向けのマスサービスが始まり、C向けのセグメントサービスが続いて、C向けのプラットフォームサービスが出てきて、Cに普及し切ってから、最後にB向けのサービスが登場する、という順番です。
日本でSaasが普及し始めたのが2019年からですから、スマホの影響がCに行き渡って、ようやくBへも及び始めたということです。さらに、スマホの世界は、オンラインサービスからリアルサービスへと移っていくので、2020年はリアルのB向けサービスが出てくるはずです。