川端康成のレビュー一覧

  • 小公子(新潮文庫)
    読後にほっこりとしたいい気分が残る作品だった。親切な行い、心根の優しさの重要性を、セドリックを通して学ぶことの出来る、子供だけならず大人にも良書。
  • 伊豆の踊子
    深い精神性があるのがわかりました。
    とはいえ、十分に理解できたとは言えません。
    内容の咀嚼も難しく、感想もうまく言葉にできません。
    いずれ再読したいと思いました。

    エンタメ小説のように楽しめる作品ではありませんが、こういった純文学に触れることで得られる読書体験も大切だと気づきました。
  • 掌の小説
    『十六歳の日記』(当時の筆記を、数年後編集したもの)に始まって、生涯生み出された掌編は、今昔物語の伝統を継ぎ川端文学の本流である。
     時には残酷な、一瞬に人生を縮約した琥珀のような芳香感。決断に迷った男は、夢で「来世の妻を見せてあげましょう」と雀を見せられ
  • 雪国
    非現実と現実の狭間のような世界を持っていて好き。駒子の言葉には強い生命力とか弱い女の部分とが入り交じっていて、何とも人間臭くて惹かれた。
  • 雪国
    古典的な書き方でないとこのような繊細さは表せないと思う。
    雪国の寒さや寂しさが、女性の温もりや滑らかさを際立たせていて、その中にある光を頼り、縋り、不安定ながらも身を預けたくなる。

    彼女らが傍にいない時の心の穴が空いたような気持ちが、とても心細くて不安でたまらなくなる。
    いないと寂しいくせに、いる...続きを読む
  • 雪国
    1968年10月17日、川端康成のノーベル文学賞受賞が決定(文豪今日は何の日? より)
    ってことで『雪国』を。
    ざっくりとしか…というより、ラストを知らなかった自分に気付く 笑

    まず読み終えて思ったのは、私ごときの持ち得る語彙ではレビューを表現しきれないということ。
    確かに強く受け取ったこの気持ち...続きを読む
  • 眠れる美女
    「生」も「正」も「性」も超越してしまった。生命も正義も道徳も美も、すべては尊いのだろう。それでも、全てを取り払いむき出しにされた、性(さが)は、ヒトと言わずケモノと言わず、老人も赤子も男も女も等しい気がする。愚かでちっぽけでおぞましくも美しい。行き着く先は全て平等で、白骨をみても、男か女かくらいしか...続きを読む
  • 雪国
    大傑作
    鏡を使うなどの視覚描写の巧みさは言わずもがな、
    台詞における引き算の美学も大好き。

    さながら極寒で無機質な雪国が魅せる自然の美しさのよう、過酷な状況で逞しく生きる女たち。

    男に熱があまりないのが、よい比較になっている。

    主要な4名の具体的な描写があるわけではないが、関係性や台詞や行動で...続きを読む
  • 雪国
    「駒子の愛情は彼に向けられたものであるにもかかわらず、それを美しい徒労であるかのように思う彼自身の虚しさがあって、けれども反ってそれにつれて、駒子の生きようとしている命が裸の肌のように触れて来もするのだった。彼は駒子を哀れみながら、自らを哀れんだ。」

    「そう言って、気のゆるみか、少し濡れた目で彼を...続きを読む
  • 雪国
    ある意味びっくりしました。自分自身も寒い場所にいるような、物語の中に存在しているような感覚さえありました。文豪ってすごいなぁ
  • 古都

    川端康成のミニマルさを端的に表した大好きな一冊。
    京都という舞台で、京都の史跡や文化に彩られながら、生き別れた姉妹の出会いを淡々と描写する。彼女たちの関係性の、描かれない部分が本当に美しい。
    最後はひっそりと都の中に消えていく様な読後感で、表題も相まり一つの到達を感じさせる作品。
  • 雪国

    書き出しがあまりにも有名な本作。
    平易な文に見えて、説明が不足しており(敢えてしていない)実はかなり難解。
    初期の川端康成はこの簡素さと取っ付きづらさが魅力。
    作者の女性に対する繊細で残酷な視点がありありと分かる重要な一作。
  • 千羽鶴
    近年現代の流行作家の面白さ巧みさに興味があった中で
    ふと文豪と呼ばれる川端作品を手に取り
    その作品の魅力を一気に読み終えた
    力量の高さはどこにあるのか
    言葉の選び方 表現の深さを今更私ごときが言うべきではないが
    やはり素晴らしい
    作品名「千羽鶴」は女性の持っていた風呂敷に描かれた模様
    ただそれだけな...続きを読む
  • 山の音
     そこはかとなく漂う老いと死の予感を、行間から立ち昇らせる文章。「悲しい」ものをただ「悲しい」と書かれても「ああそうですか」となり、野暮ったくて仕方ないですし、過剰に難解であったり、くどくど書かれても想像を働かせる余地がなくなって困ります。
     その点、簡素な文で、心情や情景を掬い上げる著者の筆運びは...続きを読む
  • 少年(新潮文庫)
    「私は本年五十歳に達し、これを記念する心も含めて、全集を刊行することになった。」(P5)ことをきっかけに旧稿をまとめて見て自身の過去を追憶。

    小学六年の綴方が凄すぎて(川端本人は「自分のこと自分の言葉を一つも書いていない。」(P18)とは言うものの)級友たちはどう感じていたんだろうか。

    清野との...続きを読む
  • 小公子(新潮文庫)
    小野不由美さんが帯を書いていて買ったけど、買ってよかったと思えた本。主人公のセドリックが可愛い、心が綺麗、癒やされる。元気がない時、やさぐれてる時にもまた読みたい。苦しくなる場面がほぼないので安心して読める。
  • 女であること
    分厚くてとても読む気にならなかったけれど、落ち着いてやっと読めました。
    妙子と有田の、愛を考えるシーンがとても印象的で、家族愛や夫婦愛を自身の体験に重ねて読むことができてとても感銘を受けました。愛は誰しもが与えられて育っているのにそれに気づかなく、生きてしまうもの、愛は無償に誰しもが与える事が出来る...続きを読む
  • 雪国
    印象的に繰り返される”徒労”という言葉。人の生き方を徒労だと下してしまうことほど残酷なことはないが、冷たく澄んだ島村の視点にほんのわずかに宿る情が、その言葉を美しくする。

    男女の満たされない情の物語を基盤にしつつ、世の中を孤独に見つめる島村から見える雪国の世界。トンネルを抜けてこちら側へ戻ってくる...続きを読む
  • 山の音
    大した出来事は起こらないのにずっと読めてしまう文章。情景が頭の中で細部まで再現される。川端康成は天才だな。
  • 山の音

    個人的康成ナンバーワン。
    過度な描写を省きに省いたミニマルの極地。
    風景・心理・説明できない情緒が流れまくる。作者がよく使う短く区切った掌編名も良い。
    根底にあるのは男尊女卑だが、ただ作品の持つ良さのみを評価したい。