あらすじ
「女の子を起こそうとなさらないで下さいませよ。どんなに起こそうとなさっても、決して目をさましませんから……」老いを感じ始めた六十七歳の江口が通された部屋には、深紅のビロードのカーテンがかかり、布団の中では、若く美しい娘が裸のまま眠っていた。江口が娘に触れ、布団に入ろうとすると――。「片腕」「散りぬるを」を併録。(解説・浅田次郎)※三島由紀夫による解説は収録しておりません。
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Posted by ブクログ
眠れる美女、片腕、散りぬるをの三編を収録。
眠れる美女は、感情を持たない異性、そしてコミュニケーションを断たれた関係という奇妙な設定によって、人間の奥底に眠る感情を強くノックされるような物語だった。
片腕は、正直なところ、少し理解の及ばない世界だった。
それでも不思議と読む手が止まることはなく、苦もなくページを捲ることができた。よほど自分は川端作品と相性が良いのだろう、と改めて思わされた一冊。
Posted by ブクログ
小説なので何を書いても良いとはいえ、3篇のどれもなかなかに背徳的で反社会的な要素に満ちている。
「眠れる美女」は情景を想像すると絵面の気持ち悪さが先に立ち、細かな描写が入ってこない。「片腕」にも共通するが、あまり抑揚のない話であり、どこで終わっても良さそうなのに結末だけが突出しているようにみえてしまう。
「散りぬるを」は事件に題材を借りたフィクションなのだが、被害者が実在する以上、今だと何かと物議を醸すことになりそうだ。「狂気による犯罪のほうが正気の犯罪よりも悪である」等の認識は通常の法理を突き抜けているが、今もこうした理由のよくわからない事件は度々起り、真実や動機も結局は裁判の作文の中で片付けられてしまうことに対して、小説家として別の立場を示したのだろうか。