【感想・ネタバレ】古都(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

京都の呉服問屋の娘である千重子は、幼馴染の大学生、真一と平安神宮へ花見に出かける。夕暮れ時、彼女はある秘密を明かすが、真一は本気にしなかった。やがて夏の祇園祭の夜、千重子は自分とそっくりな娘と出会う。あなたは、いったい誰? 運命の歯車が回りはじめた……。京都の伝統ある行事や街並み、移ろう季節を背景に、日本人の魂の底に潜む原風景を流麗に描く。ノーベル文学賞対象作品。(解説・山本健吉、綿矢りさ)

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まだ10代の頃に読んだ古都。読書会の方に貸していただいて時を経て20年ぶりの再読。
20年経っても美しい話だった。
京都の祭りの賑やかさと反するように双子と彼女らを取り巻く青年たちの静かで熱い心情が描かれている。
捨てられた娘と、捨てられなかった故に山で両親を亡くしながらも強く生きた娘。
どちらの娘も遺伝子だろうか、それぞれに心根優しく芯のある美しい人だ。
苗子はきっと二度と戻らないのだろう。
美しくも寂しい最後だった。

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2025年09月16日

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川端康成の名前はもちろん知っていたけど、なんとなく難しそうだと勝手に思って読んだことが今までなかったが面白かった!異常な作品だと後書きに書いてあったけど他の本とは全然違う一冊なのかな。他のものもぜひ読んでみたいと思う。

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2024年09月28日

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定期的に京都が恋しくなった時に何度も読み返す名作。情景描写から人物描写まで、日本の美を凝縮した作品。

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2024年12月17日

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これぞ壺中天。
「読む京都」といった趣の作品。 
優しく細やかに、そしてそれぞれに悩みながら生きる登場人物たちを縦糸に織り込んで、京都の行事や祭、名所名物を描いている。 
いつか行った早朝の清水寺や桜の季節の南禅寺あたりを思い起こして、しみじみと読めた。
北山杉の界隈は行ったことがないけど、表現描写が美しい。

久々に癒やされる小説を読んだ気持ち。
本物の京都は、今やオーバーツーリズムで人に溢れすぎているから、もうこの小説のような風景は難しい。
そう思えば、壺のなかに封じられた昔の京都に出会える一作だと思える。

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2024年04月14日

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文学好きの友人に薦められた。

読み始めると止まらない。

すごく狭い空間で、限られた登場人物で、それでも気になる物語が進展していく。

味わいが深い。

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2023年10月16日

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【裏書】 京都の呉服問屋の娘である千重子は、幼馴染の大学生、真一と平安神宮へ花見に出かける。夕暮れ時、彼女はある秘密を明かすが、真一は本気にしなかった。やがて夏の祗園祭の夜、千重子は自分とそっくりな娘と出会う。あなたは、いったい誰?運命の歯車が回り始めた・・ 。京都の伝統ある行事や街並み、移ろう季節を背景に、日本人の魂の底に潜む原風景を流麗 に描く。ノーベル文学賞対象作品。

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2022年11月07日

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 令和四年五月に新装発行となった名作。一卵性双生児と思われる、生き別れた姉妹の奇跡的な出会いと、生まれ育った環境の違いから生じるそのお互いの心境や生き方について京都を舞台として見事なまでに描いている作品。
 祇園祭、葵祭、時代祭、北山杉、高雄の紅葉、鞍馬の竹伐り、南禅寺、京都植物園などなど他にも色々と京都の情景、風物を知ることができ、作品に深みを増すと同時に、この作品によって、さらに京都という都市自体が色彩を帯び、更なる歴史へと誘われる。
 作品全体を通しては、登場人物の京言葉で、円やかで優美さに包まれており、これが睡眠剤を飲み、文章の狂いがあるという作品かと疑われるほどに明晰さすらも感じる。
 また読みたい作品の一つである。
 綿矢りさが解説を書いているも、文章の有り様や生きた時代があまりに異なるため、何処か軽さが浮き上がり気味と感じられた。
 

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2022年10月16日

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 古都は主人公千重子の実家の庭のもみじの描写から始まるのだが、その描写が良い。まだ千重子に関する情報はほとんどないのだが、その古木は執拗に千重子を秤に描写される。
 幹は千重子の腰回りよりも太い。古びてあらい膚は、青く苔むしており、千重子の初々しいからだとくらべられるものではない。幹は、千重子の腰ほどのところで、少し右によじれ、千重子の頭より高いところで、右に大きく曲がっている。
 何なんでしょう?もうこの段階で千重子に心奪われている。身長は標準よりちょっと小柄。色白で痩せ型、頭も小さい。僕が勝手に妄想した千重子像ですが皆さんはどうでしょう?もみじの古木との対比だけで勝手に若くてしなやかな女性を思い描いてしまう。
 物語は四季の京都の情景や祭、お店や町家の描写に溢れ、その度に画像や位置を検索確認した。風情はないかもしれないが、便利だ。虫籠窓とか黒木鳥居、たる源の湯豆腐桶とか言われても全く判らない。ネットがない昔の人は大変だっただろう。
 しかしさすが京都、左阿弥、大市、湯葉半、ほとんどのお店が健在だ。竹伐り会など祭事に至っては動画まで確認出来た。もちろん実際に京都に行きたくなる。半世紀以上前の作品ながら、今なお現役の京都ガイドブックだ。
 物語ももちろん現代でも面白い。若者それぞれの決断をハラハラしながら読み進んだ。永遠の拗らせ童貞、川端康成翁の面目躍如だ。

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2022年07月29日

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原田マハの異邦人のお手本にした本ということで読んだ。たしかに、京都の季節の移ろいとともに物語が進んでいくこと、京都の自然や文化の美しさ、生き別れた姉妹、というところで共通する。
京ことばが今よりも強くて、親子、姉妹の愛情が美しくて、おとぎ話を読んでいるかのよう。色んな京都の自然の美しさの描写があったけど、北山の杉が一番見たいなと思った。

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2022年07月03日

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読み終わってから再度はじめから読み返すと尚良い。
綺麗な言葉やストーリーの数々が睡眠薬の裏にあったと思うと、信じられないし、その事実がこの作品をさらに儚くて美しくしていると感じた。
解説も後書きもすごく良かった。
京都に行きたくなる。

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2022年06月05日

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登場人物の心情や考えの描写の奥行きが深く、リアルで、実在の人物とも思えてくる。睡眠薬の乱用による複雑な意識の中書かれたものとは思えない。それなのに、解説にもあったが、さらさらとした読み心地があるのもすごい。
はじめての川端康成だったが、解説で「題材そのものが異常」とされていた眠れる美女や、片腕も読んでみたい。

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2025年08月09日

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ネタバレ

四季折々の神社仏閣や伝統的なお祭り、西陣織や北山杉など古都の風情がたっぷりに描かれている。はんなりした京言葉も優しく響く。古き良き京都…なんとまぁ美しいのだろう。
複雑な生い立ちを抱えた千重子と苗子。祇園祭の夜に運命の出会いを果たし、双子であるお互いの存在を知る事となる。捨てられた子と捨てられなかった子。育ての親だが裕福に育てられた千重子と実の親だが早くに死に別れ、貧しく働くしかなかった苗子。
どちらが幸せだったのだろうか。
初めて枕を並べ一晩を過ごすが、姉妹一緒の時間はそう長くは無かった…。
千重子の幸せを願い、邪魔にならないように身を引く苗子が奥ゆかしい。その気持ちを理解し見送るしかなかった千重子もまた、純粋である。泣けた。
物語の中盤、北山で雷雨に会い、苗子が千重子に被さり守るシーンが劇的で印象深い。お互いの温もりを感じ、胎児の頃を想像させ、双子の姉妹である事を実感する大切な場面だ。千重子の可愛さ、苗子の強さが伺い知れる。

誰もが人を思いやる。相手の幸せを願い身を引く事ができる。昔の日本人はこうだったんだろうなぁ。現代の私達が無くしつつある古き良き日本を思い出させてくれる美しい物語。
川端康成の凄さを改めて体感できた。
川端康成の小説を読むのは、「伊豆の踊り子」「雪国」に続いて3作目。なかなか理解できなかったが、3作目にしてようやくその素晴らしさが少しでも実感できて良かった。
この本を持って京都に行きたくなった。

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2024年10月05日

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ネタバレ

双子の姉妹の話だと聞いて読みたくなった。初めての川端康成である。思っていたより読みやすかった。京の人に校正してもらったという京言葉は本当に美しく感じた。舞子さんが使っているイメージが強いが、一般の人でもこんな雅な言葉遣いだったんだなぁ。四季折々の京の描写があり行きたくなった。北山杉の森に行きたい。
苗子が千恵子を好きすぎて可愛い。尊い姉妹愛。
苗子千恵子、秀男、大問屋の兄弟の五角関係だと思うのだが、終わり方が良くも悪くもスパッと中途半端に終わるのでとても気になる。最後に姉妹2人の夜で終わらせたのはいいと思う。物語の完結が目的ではなく、京という箱庭の中で行き合う人々の物語…かな?

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2023年10月26日

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一文一文、一行一行が美麗で気持ち良し。
睡眠薬で頭がイカれた狂人が書いたものとは思えない程である。
著者本人が認める「私の異常な所産」意外なにものでもない。
読後は甚だ清涼感に包まれ、暖かさが胸に宿っている。
京言葉に少々難儀はするものの、双子の出会いから織り成す四季折々の情景は美しく描写され、京都民への羨望がでてくる。天才のセンスっておそろしい。

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2023年10月25日

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美しい京都の街並みが静謐な文章によって描かれており、実際に旅をしているかのようだった。
始めは京言葉に慣れず読みにくく感じたが、途中から全く気にならなくなり、むしろ京言葉に親しみを感じるようになる。

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2023年09月25日

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景色は花の描写が多く、読みながら想像するのが楽しかった。ストーリーは昔の話なので今読むと逆に新鮮でした。
川端康成の他の本も読んでみたいです。

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2023年06月08日

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川端康成文学忌 1899.6.14 ー1972.4.15
川端忌 又は 康成忌

川端康成が、京都の風景・伝統行事・四季折々の木花を美しく描き、京都弁を文字で読めます。(京都弁に関しては、手が加えられているとのこと)
生き別れとなり、全く別の人生をたどった双子の姉妹の出会と別れの物語。
捨て子だが、大切に育てられ呉服問屋の一人娘となった千恵子。親元に残されたが、早くに両親を亡くし家も失い山仕事で生計を立てる姉・苗子。
二人は、祇園祭で偶然に出会う。二人は心通じ互いの幸せを願う。姉苗子は、自分の境遇が妹の幸せに影を落とすことを恐れて、一人山に戻っていく。
メインのストーリーは、姉妹の互いを思いやる心象ですが、着物産業の変化衰退が呉服問屋を家業とする千恵子の家庭事情を変えようとしていました。古都に寄せる波です。お嬢様として育てられた千恵子に、家業の経営を指南する若者が現れて、彼女がこれから変わるだろうと思わせるところです。貧しくても清らかに働き生きる姉は、おっとりと豊かに暮らしてきた妹に、違う生き方も見せたのかもしれません。
執筆時、睡眠薬を多用されていたことは有名ですが、古都は文書がシンプルでとても読みやすい小説だと思います。

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2023年04月16日

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"もみじの古木の幹に、すみれの花が開いたのを、千重子は見つけた。
「ああ、今年も咲いた。」と、千重子は春のやさしさに出会った。

シンプルで美しい書き出しですね。
京都の四季、自然の美しさ、祭りを背景にストーリーが進んでいきます。
セリフが全て京都弁なのも味があります。
京都を訪れる前に読んでおくと、いいかなと思います。

川端康成は、この美しい文章の作品を
睡眠薬を常飲しており、自分でも何を書いたのかよく憶えていないと自身のあとがきに記しています。
天才は凄いな!

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2023年03月09日

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川端康成の本は初めて読んだけど、想像してたより読みやすかった!

京都の風景、行事の描写が本当に美しくてその空気感に引き込まれた。性格が悪い人も出てこなくてとても気持ちよく読めた。

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2023年03月06日

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たゆやかで美しき日本語。
後半「幻」にこだわるシーンがあったのは
川端康成が当時ゆめうつつであったからだろうか。

近くにいる。
されど、交わることはない2人。

それもまた美しいのである。

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2022年11月29日

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京都を舞台にしたゆったりしているが、厳しい現実を知って生きてきた双子の姉妹。お互いの存在を知ってからの相手に対する愛情が伝わってきた。その後、どういう人生を歩んで行くのだろうか?助け合って幸せに生きて行くだろう。

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2025年08月18日

Posted by ブクログ

 最初は京都弁の読み方に手間取ったとこはあるけど読み進めていくうちになんとかなってきた。
 内容も面白くて京都の描き方も魅力的だったし、様々な登場人物の絡み合いも良かった。終わり方はこれが文学というものなんだなと思いました。

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2025年07月16日

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なかなか時代的な感覚として難しかったけど、綿谷女史の解説が分かりやすかったおかげですとんと落ちた。
登場人物たちの心の動きと四季折々の京の様子、現代の京都と重なるところと違うところのギャップも味わえて、面白い作品だと思う。

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2024年07月12日

Posted by ブクログ

初めての川端康成。
冒頭のもみじの木の幹に一尺ほど離れて2つのくぼみがあり、それぞれのくぼみに毎春すみれが咲く。近いようで交わることのないように見えるすみれが、千重子と苗子を表しているのだろう。
そのあとに描写される亀壺のなかで一生を終える鈴虫たち。この亀壺も盆地の京都という本作の舞台を指しているのだろうなと思った。
『古都』というタイトルの通り、京都の有名な寺社やお店、年中行事がふんだんに作中で描かれる。京都の地理に詳しくない人でも楽しめると思うが、詳しい人はより楽しめるはず。伝統的な建物の中に、今も残る北山の植物園が京都にとって新しい場所として出てきてスパイスを効かせているような感じだった。
千重子と苗子の性格や人柄の違いが明瞭に書き分けられていて、その対照的な人物像が印象的だった。

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2023年10月31日

Posted by ブクログ

美しくもままならない姉妹愛、親子愛。双子のくだりが出てきたところからページを捲る手が止まらなかった。

親子愛、姉妹愛の爽やかな美しさを描いている。身分の違いのままならなさを、身分が高い側の千重子の側から描いているのも面白い。京言葉が新鮮だけど、印象深くて頭の中でつい同じ言葉を使ってしまう。

背景となる京の四季がメインテーマのようにも思えるくらい色んな姿が描かれている。杉山は3回描かれるが、どれも違った姿で、情景が浮かび上がってくるようで素晴らしい。

太吉郎の盆栽と日本論は面白かった。

身分違いとなってしまった双子の行く末がなんとなくわかってしまうんだけど、それでも先が気になって読むのがとても楽しみだった。

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2023年05月13日

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