川端康成のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
2025年2月の1ヶ月を新潟の南魚沼で過ごしたので、この機会にと思って読んだ。冒頭の一節しか知らなかったが、川端康成の描く雪国の描写が、南魚沼での生活を思い出させた。雪というものの神秘とそれに対する畏怖は、東京の雪のイメージとは大きく違う。雪国に生きた作者による雪の描写は繊細かつ日本的で、凝り固まった語彙を柔らかく解きほぐして新たな空気を送り込んでくれる。堀江敏幸による「寒さを共有すること」の解説を読んで、ヴァレリーやマラルメの言葉を引きつつ、最後の「空中で水平だった」という一節によってすべてを表現する美しさに感銘を受けた。この繊細な文章に対して私はまだまだ読みが甘いので、今後何度も読み返した
-
Posted by ブクログ
読書は娯楽。なので教科書で名を知った作家さんには手を出さずにいました。将棋にはまったときに、河口俊彦「一局の将棋一回の人生」を読み、そこにこの川端康成「名人」が紹介されております。
いつか読んでみようと思ってから30年経ってます。我ながらよく覚えていたなと感心します。
囲碁の知識はないですが、名人と七段の引退戦に惹き込まれました。囲碁の中身は分からずとも一手にかける棋士の凄みが淡々と書かれています。
明治ー昭和初期の時代背景があり、現代とはまるで別の世のようです。
あとがき解説を読み、この作品が作者の人生に於いても重い意味のある作品であったのではと思います。
川端康成という人物への興味が深 -
Posted by ブクログ
一面では純文学の典型的な「読みづらさ」を抱えた作品であり、普通の文章を読むように話の筋やら趣旨やらを探していたら読み進めがたい。そこの点の折り合いについて、解説にあった「現象から省略という手法によって、美の頂上を抽出する」という表現がしっくり来た。
島村と駒子の挙動を逐一記録したプロットがまずはじめに存在し、その中から「美の頂上」を抽出して出来上がったものが小説『雪国』である。ぼく自身、わざわざ自分の中でそう観念することで、ようやく抽象さに辻褄を合わせて読み進めることができた。そうだからこそ、全体としてどういう話だったかについては語りがたく、個々の描写の妙ばかりが思い出されるのだろう。
描 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
で有名な川端康成の「雪国」を読んでみました!
最後突然火事になって突然物語が終わるんです。
本当に唐突なおしまい。
新潮文庫の素晴らしい配慮なのか、
解説やあとがきがすごーーーく長くて、
「まだページたくさんあるし、火事になって一悶着起きるんだろうな」と思って気を抜いて読んでいたら唐突に終わったのでハッとしました。
読み終わった直後は正直意味がわからなかった!
でもあとから解説を調べて、
再び読み直してみるとゾクゾク。
徐々に背景がわかってくる作品なので、
最初らへんは「よくわからないけど物語が進んでいく」感じだから、読み落としがかなりあって -
Posted by ブクログ
小学生で読んだ時、いくら間接的とはいえまさか文豪が情交を描くとは思っていなかったため、「この指が君を一番覚えていたよ」のところで何を言っているのか全く分からず、読み始め早々に紆余曲折した表現で理解不能とレッテルを貼り読み進めず。それから20年程経ち、高半旅館へ宿泊した際に雪国の映画を見た。映画にしてしまうと内容はとてもくだらない。駒子の甲高い声と言動に苛立ちを覚えるシーンさえある。ただ、高半旅館に宿泊し、映画を見てから本を読むという2段階を経ると懐かしい気持ちと共に全てがリンクする。
本で読むからこその表現の美しさと豊かさが感じ取れ、どう生きたらこの表現ができるのかと不思議に思う。お気に入りの