川端康成のレビュー一覧
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染みた。切なさなのか、それとも別の何かなのか分からないが、確かに心に染み渡った。
読み進めるうちに、私の頭の中には北山杉のまっすぐな情景が浮かんでいた。序盤では、北山杉のように真っすぐで、親の言いなりに生きる娘なのだろうかと想像していたが、そこに描かれていたのは、静かでありながら力強く生きる女性だった。
登場人物たちの心情は痛いほどに伝わってきて、日本人特有の感情の機微が丁寧に表現されている。良いか悪いかは別として、こうした心情は少しずつ失われつつあるのかもしれない。そう思うと、この物語そのものが、まさに「古都」のように感じられた。
伊豆、雪国、古都と読み進めてきて、古都が一番好みかも! -
Posted by ブクログ
ネタバレ「伊豆の踊子」は行間と空白に満ちていて、自分で埋めていくのがたまらなく心地よい。静かで、切なくて、胸が締めつけられる美しさ。一方、「死体紹介人」は……え、同じ人が書いたの!
死体を運ぶ話がこんなに不気味でいて、ページをめくる手が止まらないってどういうこと!この振れ幅が異常。
”美の極致に達したから次はわざと壊す”みたいな挑戦をずっと繰り返していたんだろうな、と震えた。
自らのスタイルを破壊し続けることでしか到達できない境地がここにある。
さすがノーベル賞……ただただ恐れ入る。正直、意味が掴みきれないところも多かったけど、それでも不思議と苦にならず、夢のなかを漂っているような読書体験だった。
巻 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編集がたくさん。
掌におさまるような小さな短編、という意味でのタイトルだけれども、掌なんかに収まらない光が溢れてくるような日本語の美しさに魅了された。
気に入ったものを残しておきたいと思う。
『木の上』
子ども目線の独特の雰囲気、大きな世界の中のちっぽけな世界で、でもここなら安心だと強く生きる描写が素敵。
『日向』
なんともいじらしい。
夕陽に照らされる人物が浮かんできて、その尊さに胸がきゅっとなった。
(夜一緒に過ごすようになるのだから)顔も見なれるわ、というセリフがとっても刺さった。
『ざくろ』
出征していく男子と偶然の間接キス。ざくろの実にその歯形を見つけて自分も齧る描写が細やか