村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ喪失と再生。村上作品におけるその通奏低音が、今回は「影」との離別と再統合として表現されていたように思われる。実らぬ恋に打ちのめされ、生涯を通じて結ばれなかった相手を思うあまりその事実に足を取られてしまって、以降は真に生きられているかわからぬような、どこか魂の抜けたような心持ちで暮らすようになる。『国境の南、太陽の西』でも語られたそういう哀切な感情を抱えて生きることを本作では幻想的な筆で描き出していく。そういう意味では、未練という感情は決して過小評価できないことを教えてくれる。
この作品には納得のできない部分もある。イエローサブマリンの少年が現世に居場所を見つけられないというのは最たる点だ。彼の家族の懸命な努力も描きつつそれを突き放すようなところがあり、それでもこの世ならざる場所に彼の居場所を設けたことでそれを一種の救いとして描き出したのであろうが、人の未練が生み出したリンボのような場所にしか彼がいられないというのはやはり悲劇のように私には感じられた。また、軽快な日常場面はいつもの村上節を愉しめる一方で、幻想的な「街」の描写はずっとどこか冗長で退屈だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレある日別の世界に迷い込んだ男女二人を軸にして話が展開していく
かわなてんごは塾講師をしながら小説を書いている
ある日ふかえりという少女の「空気さなぎ」という名の小説を改稿して、それからさきがけというなの宗教団体絡みに巻き込まれる
その宗教団体は「空気さなぎ」に出てきたリトルピープルという古来から存在しその都度別の名を人間に付けられる怪異のようなものが、ふかえりの父親を預言者として運営している
その秘密を小説という形で世の中に出してしまった為、その勢力からの警告を何度か受ける
それと同時に、かわなけんごと小学生の頃に毒親絡みで親近感をおたがいにもちつつ、1度だけ手を握った関係にあるヒロインの青豆もさきがけにかかわっていく
彼女はスポーツクラブで働いていて、そこの個人客である夫人とレイパーへの怒りという共通点で意気投合した
それからDV被害者を匿う婦人の活動を、暗殺者になることによって支援する
そのターゲットにふかえりの父が選ばれた
青豆は暗殺に成功するも、教団から目の敵にされた
それから概念的なやりとりがうんやかんやとあって、最終的に他のキャラクターはフェードアウトし、てんごと青豆はまたもう1つ別の世界戦へと飛ぶことができましたとさ、おしまい
というはなし
可もなく不可もなく
脳死で読める
現代小説の、ストーリーの一貫性や、伏線、遊びのない技術的小説とはちがい、遊びがとても多い
考え事をしながら料理をしたり、深夜に万年筆で小説を書いたり、筋トレの手順までしっかりと書いたり、他ではあまり描かれず排除されるような生活の細かい部分が描かれてるのが好きだな
キャラクターも個性にとんでいるし、イキイキとしているのはそういう細部を描くところにもあるんだろう
これで村上春樹の長編は全部読み終わったらしく少し寂しい
この本に関してはいつかうしかわの部分だけ取り出してもう一度読みたい -
Posted by ブクログ
ネタバレとりあえず最後まで読んだが、あれらの謎の回収は?という放心的な気持ちになった。
特にジョニー・ウォーカーという恐るるべき存在、最後の得体の知れない敵の存在、森の世界、etc…
全てが回収されずに終わってしまったため、純粋にストーリーを追ってた側からしたら少し残念だった。
しかし、本質はストーリーそのものではないんだろうと思う。田村カフカくんの「家出」から始まり、冒険譚が進む中での人間としての成長が見届けられる点や、あるいはナカタさんのユーモラスさが星野青年の人生を変えるなどの運命的な出逢いをテーマとしているのかもしれない。
細やかなテーマが散りばめられている点については、一旦本筋のストーリーを掴んだ上で改めて読み直し、深掘りしていきたい。
世界観としては、猫が話したり人が石に話しかけたりしている点が摩訶不思議で面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ珍しく小説の(フィクションとして)形式ではなく、実際に会った相手のお話を聞き、それを春樹が脚色をして物語に仕立てあげるといった方式をとっている作品である。
それぞれ己の理想像があり、それを理想像として掲げ、そこに向かって走っていくというのが一種の人生であるのだが、そんな物にきっと意味はなく、それは永遠に回り続けるメリーゴーランドのようである。そんな他人の人生のお話を聞いてみようではないか、無意味で無気力な物語を通じて自分を批評し直そうではないかそういった意味が込められている作品のような気がする。
お気に入りは『プールサイド』そして『ハンティング・ナイフ』である。
人生を50m水泳に例えるのであれば、折り返し地点が存在する。では、その折り返し地点をどこにどのように定めていくかというお話である。
二分割なら自分のためにという部分と他人のためにという部分、2つに分かれるのではないだろうか。その価値観は人それぞれであるが、折り返しを単純な半分というものではなく、自分でセッティングしてみるのも悪くはない。
ハンティングナイフはこれといって同じの概要は難しいのであるが、春樹と出かけ先で会った車椅子少年との会話がなんとも不思議で記憶に残るものである。最後、車椅子少年の夢のお話になる。理解はできないが、ある部分の傷から自分が消えてなくなってしまうそんな儚さを感じた次第である。 -
Posted by ブクログ
語られる物語は歔欷でもなければ希望を持つとかそういった類いのものでもない。他の作品からも分かるように全部がそうとは違うけど、カポーティは隠鬱な書き手だった。ひとりで悩んでしまう様子や人間の愚かな部分を描かれていく。しかし彼のイノセンスと呼ばれる無垢な人物は際立って味がいい
草の竪琴
5人が打ち明ける秘密の数々がイノセンスで、それを共有することで絆という深みが生まれてきている、また一方で人の深さを打ち明けることは負担にもなりうると捕捉される。そこに更にカポーティによる美しい表現が加わり酔えた。終盤、ドリーがラジオでフットボールを聴くシーンがある判事がルールを教える、それを拒むのだ。知る楽しみも知らない愉しみも大切にするドリーらしい「選択」をするのがよかった
最後のドアを閉めろ
ウィルターはいろいろあってアンナと巡り合う、彼は自分の愚かさを知った上での相談をするが物事は見かけ通りなんてことは何一つないのだと言われる
経験は円環。周り回って自分に襲いかかる物語
ミリアム
夫人と不思議な少女ミリアムと会う。彼女は存在しない存在のように描かれ、夫人を付き纏うように幻覚を見ているかのように描かれていた
夜の樹
大学生ケイが電車で変な夫婦に会う。物語は孤独の中 不安を誘っていく
好きなフレーズ引用
妻は私の腕の中で死んだ。最後に私は尋ねた。君は幸福か アイリーン?僕は君を幸福にできただろうか?幸福 幸福 幸福というのが彼女の最後の言葉だった。何とでもとれる。彼女の答えが果たしてイエスだったのか それともただの質問の反復だったのか 私には知るべくもない。もし私に彼女という人間がわかっていたなら その答えは自ずと理解できるはずだ。
しかし夢を見ない人間とは 汗もかかない人間のようなものだ。そういう人間はどんどん毒を内側に溜め込んでいくことになるのさ