村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ夜における時間感覚や人間の表裏の存在を一冊にまとめている作品だと感じた。
伝えたいことを一人の人物が語るのではなく、メタファーを混ぜつつ複数人の言葉や行動で読み手に語りかけてくる作品構造は村上春樹らしい作品であったと感じた。
想像の余地が大きく残されており、お姉さんがどうして長い眠りについているのかを妹と周りの関係や客観的視点から読み取っていく工程がこの本の主な軸となっており、おもしろい。夜の不気味さを感じながらゆっくり読んでいくことで、社会にある光と闇を感じながら読むことができ、是非とも1日が終わりかける夜の時間から読み始めることをおすすめしたい。 -
Posted by ブクログ
最初の2巻はAudibleで、最後の1巻は本で。
『ノルウェイの森』が面白かったので、調子に乗って挑戦したら、いまいち面白さが分からず...。
おそらく本書の世界観が村上春樹の長編においてはスタンダードなはず。世界観は唯一無二で、癖になるのは分かるが、私は『ノルウェイの森』の方が好きだなあ。。。もし『ノルウェイの森』と似た作風の村上春樹の作品があったら教えてください。読みます。(次、挑戦するのはいつになることやら。やれやれ。)
最近、本作品のテーマである「悪」について、考えることの必要性を感じさせられている。今後、戦争が増えることが予測されるので、暴力や戦争といった明確な「悪」の発生要因やその内実について目を逸らさず考えることは重要だと思う。
お恥ずかしながら、自分は今の今まで平和ボケをしていて、本作の「悪」に触れても、正直どこか他人事だった。だから、この本のレビューも放置していたし、現時点でも、考えは驚くほど深められなかった。しかし、ここ1~2週間ぐらいでイランの情勢がどんどん変わる中で、(表面的に)平和な歴史の終焉と新たな歴史の変化の渦中にいることを自覚し始めたので、もっと誠実に向き合う必要があるのだと感じている。
感想 ネタバレ
本作では、「一般市民である主人公視点で悪役の意図が曖昧である」ように描かれているところが特徴だと思った。本作の現代パートで悪の象徴とされているのは、綿谷ノボルだと思う。綿谷ノボルが主人公やマルタを攻撃した真意は明かされていない。この得体の知れなさ、理不尽さ、が村上春樹の描き出す「悪」の特徴だと思う。また、僕や週刊誌視点で語られるので、綿谷ノボルの真意が読者にもわからないような構造になっている。これは中々巧妙な仕掛けだ。
この得体のしれない巨大な悪に対して、市民は無力であることも描かれている。中盤で、主人公は明らかな不正や悪の存在はわかるが、何をすればいいのかが分からない、なすすべがない、待つしかないといった状況に置かれた。また、笠原メイも、主人公にエールを送りつつ、敗北を確信している。社会の大きな動きに対しては、個人がいかに無力であるかを痛感させられる。過去パートになると、その無力さは虚無感を超えて、恐怖、絶望へと変わる。本当に戦争はしたくない、と強く思わされる。
本作の中で提示されている「悪」への立ち向かい方は、実践が難しい。そもそも文学から実践的な学びを得ようという態度が間違っているのだが。ただ、村上春樹が提示した「井戸にこもる」ソリューションは大変興味深い。家にこもってじっくりとモノを考え、世界と向き合い、文を紡ぐ作家らしいソリューションだなと思う。井戸は、深く物事を考える場として機能するだけでなく、人々が過去に経験した痛みや苦しみを追体験する場としても機能している。
ここに実はヒントと希望があるんじゃないかなと、思っている。 -
Posted by ブクログ
「エレベーターはきわめて緩慢な速度で上昇をつづけていた。おそらくエレベーターは上昇していたのだろうと私は思う。しかし正確なところはわからない。(中略)あるいはそれは下降していたのかもしれないし、あるいはそれは何もしていなかったのかもしれない。」
というとても村上春樹的な読者に悶々としたものを残すような曖昧で煮え切らない表現から始まる。
序盤から村上ワールドが全開だ。
近未来の現実世界と幻想世界での2つのストーリーが平行して進んでいくため、序盤は話が飲み込みづらいが終盤にかけてこの2つの世界に繋がりがあることが徐々に明らかになっていく。
SFやミステリー的な要素が盛り込まれているため、序盤は筋が読めないが、他の作品よりも分かりやすいかもしれない。 -
Posted by ブクログ
不思議な感覚になる
初の村上春樹。友人に勧められ、読んでみることに。全8作の短編集。最初は主人公はバラバラであると思っていたのだが、後半にかけておそらく同じ人物が主人公なのではないかなと考えた。
音楽に関する教養が出る作品だと思う。ほとんどの話にクラシックやジャズなどの作品が登場していた。知らないものばかりで、知識をつけなければと思った。
現代では使わないような(少なくとも若者層には伝わらないような)漢字を取り入れていたり、言い回しが難しいところに村上春樹みを感じた。
1番好きだった話は最後のもので、主人公の思考回路にとても共感を覚えた。しかし、1番謎めいていた話もそれである。純文学を感じた。
村上春樹の物語の進め方は思考を書くことなのだと知った。鉤括弧をよく用いるのは、漫画のようで読みやすかった。
1人旅の時に読みたい本 -
Posted by ブクログ
初めて読んだ村上春樹先生の作品。何年前に読んだか分からないくらい、すっかり忘れているので読み直し。
なんだかよく分からない不思議な雰囲気で進む。1984年の時代を背景に、実際の事象に関連して物語が進むのかと思いきや、微妙におかしな感じになっていく。
なので、どのように進んでいくのか検討もつかないところが面白いと思う。
登場人物は普通そうで普通じゃない。みんな優秀だけど、かなりアクが強い。これはお気に入りのキャラとか、言ってられないヤツだ。みんなが主張する。
一方で、雰囲気が上品で、流れが綺麗な文章。濃ゆい内容のところも、あまり疲れず読める気がする。
次の巻、楽しみというよりも、続きがどうなるのか、ただ気になってしまう感じが、今まで読んだ本と少し違うなと思う。
さあ、次読も。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人々が眠りにつき、世の中が静まり返る時間に起きていること。それだけでどこか美しさのようなものを感じた。静けさの中にある一人一人の感情は、昼間を生きる人たちよりも濃く、人生の色がより鮮明に感じられるように思えた。
物語は全体的に淡々としていて、読んでいると真っ白で何もない部屋の中に閉じ込められているような、不思議な感覚にもなった。
作中にはさまざまな音楽も登場し、実際に曲を聴きながら読み進めた。タイトルの「アフターダーク」は日没後、暗くなってからという意味で、ジャズの曲に由来していることもこの作品を通して初めて知った。
読んでいるあいだ、ずっと「よく分からない」という感覚が続いていたが、その中で印象に残ったのは「欲望」というもののさまざまな形だった。ジャズはもともと性的な意味合いを持つと言われているが、この作中でも性的な欲望に関する描写が印象に残った。それもまた、夜という時間の持つ雰囲気とどこか重なっているように感じた。
また、姉妹の関係も印象に残った。お互いに思うことがありながら、それを言葉にすることはなく、距離だけが少しずつ開いていく。それでもどこかで互いを想っているような、そんな関係が感じられた。私自身にも優秀な姉がいるので、どこか自分と重ねて読んでしまう部分もあった。
特に印象に残った言葉がある。
「人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくものなんやないのかな。その記憶が現実的に大事なものかどうかなんて、生命の維持にとっては別にどうでもええことみたい。」
どんな記憶も、人が折れずに生きていくための燃料になる。そんなふうに考えたことは今までなかった。自分を作り、自分を自分として存在させてくれる記憶は、自分を強くも弱くもさせる。とても大切なものなのだと感じた。