斎藤環のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者は、まずいじめの被害がその後の人生全体に及ぶほど甚大となる可能性があることを述べた。そして、そのような状況にありながら日本の教育現場がいまだにいじめの対応を調査や加害者への指導で終始していることを指摘した。そして、被害者中心主義への転換を提案している。
読んでいて感じたのは、加害者や被害が発覚してからも上手く動けなかった大人たちに対する著者の憤りだった。たしかに、被害者が人生を壊されていく様子を長年にわたって見ていけば、こうした憤りを抱くのは極めて当然だと言える。しかし、その感情に左右されてしまっては元も子もないだろう。禁止されている懲罰を、教育的指導と言い換えてやってしまえばよいというのは乱暴ではないか。懲罰にあたることを教育的指導と言い換えてやっていることが教育現場の現状だとして、それは非難されるべきことであり、そこに加害者への懲罰も忍ばせてしまおうというのは断じて許されない。それを、本書で一貫して教育現場のことなかれ主義や見て見ぬふりを批判していた著者自身が言うというのは余りにも誠実さに欠けている。 -
Posted by ブクログ
【目次】
はじめに(斎藤環)
Ⅰ 傾聴/世界
第一信 斎藤環→坂口恭平様
恭平さんの方法論は,「とんでもない」
第二信 坂口→斎藤
死にたい人に死なない方法を伝えているわけではないんです
Ⅱ 治療/フィールドワーク
第三信 斎藤→坂口
どのくらい「技法」として意識していますか?
第四信 坂口→斎藤
苦しさや悩みには,10種類くらいのパターンしかありません
Ⅲ 脆弱さ/柔らかさ
第五信 斎藤→坂口
「活動処方療法」の効果を共同で研究してみたい
第六信 坂口→斎藤
今までの人生の中で一番マシだったことを聞いてみます
Ⅳ 自己愛/承認欲求
第七信 斎藤→坂口
相談者とともに欲望を作り出しているようにも見えます
第八信 坂口→斎藤
自分の欲望ってのが,実は一番,どこにもない答えなんですよね
Ⅴ 流れ/意欲
第九信 斎藤→坂口
「所有欲」について,どう考えていますか?
第十信 坂口→斎藤
創造するという行為が,至上の愛よりも強い喜びです
Ⅵ 悟り/変化
第十一信 斎藤→坂口
恭平さんの境地は,幸福であり究極の自由であるように思います
第十二信 坂口→斎藤
人々もまた幸福のことを知っていると僕は確かに感じています
おわりに(坂口恭平) -
Posted by ブクログ
ネタバレ斎藤環さんの勧めるオープンダイアローグにもともと関心があったが、たまたま本屋で見つけた本。
「自殺を減らす」はとても関心のあるテーマなのだけど、坂口恭平さんのことは、この本に出会うまで知らなかった。
環さんが恭平さんに提案して始まった文通の記録(まるで交換日記のようだ)
環さんの問いかけに対して、恭平さんは翌日すぐに返信、しかも一つ一つ丁寧に。
環さんの返信は1ヶ月くらいしてからなのだけど、こちらも恭平さんのことをレスペクトして丁寧に返信というやりとりがまず面白い。
そして内容
まず恭平さんに驚いた
・1日に多い時は100本の相談電話を受ける
・傾聴しないで、こちらから相手の良いところを探る
・本人が躁鬱病であったが、寝込んでも良くならないので、パステル画や畑仕事をすることにエレルギーを使うことで克服
・うつはエネルギーがない状態とよく言われるが、エネルギーがマイナス方向に向かっている状態だと考える
・絵や手紙を描(書)いている時に電話を受けて、電話が終わったらまた元の作業にもどっている、という切り替えがすごい
・絵だけでなく、4歳から作曲をしていた、早稲田大学で首席卒業したのちアルバイトしている
・作品(パステル画)を環さんがとても高く評価
・生き方が自由で飾らない、自分のことを文章で曝け出すことができる
相談者への対応は、相手への思いやりがある。でも頑張りすぎない
(自分が疲れたりしたら相手に理由を伝えてまた電話して と言って電話を切れる
本当に大変なだった時は、1ヶ月?電話を中断した)
いのっちの電話の一つの良さは、いつも恭平さんが電話を受けて対応していたこと
長らく一人でやってきたけど、一緒にやる仲間をつくってこれから始まるところでこれからどうなるかも興味深い
とにかく恭平さんについて驚くことがたくさんあった。
環さんが多くのことを知っていることも発見
宗教やマインドフルネスのこと(精神科医としては関心がある分野なのだろうけど)、そして映画や美術にも詳しい。
で、マインドフルネスは、その起源は「悟り」でビジネスでの成功とは無縁(逆方向)なはずなのに、ビジネスで重宝されていることに矛盾がある、というのは面白かった。 -
Posted by ブクログ
猫と人間の関係を社会学の観点から理論的・実証的に研究する「猫社会学」のスタートアップとして、5つの論考と1つの特別対談を収録。具体的には、猫の可愛さの理由、猫カフェでの猫たちと客・客同士の関係性、猫島に人が訪れる理由、漫画に登場する猫、猫と人が作り出す相互行為秩序といったテーマが取り上げられている。
猫と人との関係を様々な社会学的な理論や手法で分析・考察していて、なかなか興味深い内容だった。特に、猫の可愛さ・魅力を質的統合法により抽出する「第1章 猫はなぜ可愛いのか?」、「サザエさん」全話の読込みにより「猫の家族化」の変遷の分析する「第4章 猫から見た「サザエさん」―猫が「家族」の一員になったのはいつか?」が面白かった。猫好きの妻との良い話のネタにもなった。
本書を通じて、社会学の研究手法についても勉強になった。ただ、サンプル数が少なく、かつ、無作為抽出ともいえない事例研究が多く、一部の代表性のない事例から過度に一般化しているようにも思え、前から思うところはあったが、社会学は学問としてちょっと雑なところがあるのではないかということを再認識した。 -
Posted by ブクログ
「猫は、猫であるということ自体が可愛く、見た目も鳴き声もすべてが可愛く、可愛くないところが一つもない」
猫を学問、とりわけ社会学の俎上に載せて考えた一冊。
というと少々身構えてしまうが、そこまで学問学問しているわけではなく、猫好きが学者だとこうなる、のように楽しめる。
猫カフェについて研究したり、サザエさん全話(7,000話以上)を読み解いたりと、アプローチは様々だが、結局のところ共通するのは、「猫はすごい」ということ。
猫の何がそこまで人を惹きつけるのかという部分も度々言及されており、犬との相違点や、普段何気なく考えていることが明文化され、あらためて気付かされる。 -
Posted by ブクログ
往復書簡(文通?)なのだけど坂口さんのターンの文章量がすごくて笑う。こういった形式だからこそ、坂口さんの思想にのめり込みすぎず読めてちょうどいいかも。単体での著書に比べると、さらに客観的な視点でそれを感じ取ることができるイメージ。坂口さんの文章の魅力はピュアさにあると思う。そのピュアすぎる思想に引くときもあるので、貞操観念が強い人には勧められません。
「今、やれると思ったことは必ず今、やれるのです。今、やるための準備が整っていないのではなく、やれると思ったときに、本当は全てやれるのです。」
「何事も怖いのではなく、めんどくさかったんですね。めんどくさいということを抜けていくと、色々面白いことが広がっていきます。」 -
Posted by ブクログ
文筆だけでなく、絵画や音楽、電話相談など多彩な活動をしている坂口さんと、精神科医である斎藤さんの往復書簡です。
坂口さんのユニークな活動ぶりに対する斎藤さんの質問に、坂口さんが回答します。
坂口さんの言葉に「あらゆる欲望を超える、それよりも至上の意欲を見つけること。その時、人間は流れそのものになるのではないか」とありましたが、この言葉に坂口さんの人生が集約されているように感じました。
斎藤さんは悟りに近いと言っていますが、万物流転する中で変化に対応し、流れに棹さすことなく柔軟に生きる。毎日発見と創造と言うプロセスを粛々と続けていく。それが後悔のない人生に繋がっているような気がしました。
坂口さんの活動は坂口さんにしかできないことですが、生きていく上でのスタンスのようなものは、普遍性があるのではないかと、興味深かったです。