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私がやってるレズのハイキングコミュニティ、普通に友達作りの場として機能するというのが表向きメインではあるんだけど、こういう風な1回外に出る事が出来なくなってしまった女性達の外に出るきっかけになるような場所になったらいいなと思ってる。だから参加料とかは取らない方針にしてる。私自身が自分のセクシャリティーの悩みで一時期仕事も学業も出来なくなって半年ぐらいではあるけど引きこもりになってしまった時に、私の知り合いの男の子が私のセクシャリティーを理解した上で私を色んな場所に連れ出してくれた事がきっかけで社会復帰出来た事があって、その時本当にありがたかったなと感じたから私も誰かのそういう役割になりたいなと思ってこのコミュニティを維持してる。
林恭子
高校2年生で不登校になり、以来30代まで断続的にひきこもって過ごす。2012年から当事者活動を開始。全国で「ひきこもり女子会」を主催する他、メディアや講演を通して、ひきこもりについて当事者の立場から伝えている。現在、一般社団法人ひきこもりUX会議代表理事。他、新ひきこもりについて考える会世話人、東京都ひきこもりに係る支援協議会委員等を歴任。編著に『いまこそ語ろう、それぞれのひきこもり』 (日本評論社)、共著に『ひきこもり白書2021』(ひきこもりUX会議)などがある。
コロナ禍で良くなったこととしては、ひきこもっていることを「批判されない気がする」がもっとも多く四一・一%、次いで「マスクをしていても浮かなくなった」が三三・二%だった(図表1‐12)。この数字からは、多くの当事者が普段から人目を気にし、ひきこもっていることに自責の念を感じていることがうかがえる。また、マスクをすることは自身の見た目へのコンプレックスや対人不安の防衛手段として機能し、感染防止策とはちがった心理的安心感につながっていると思われる。
また、「男性に苦手意識がある」と答えた人は六四・三%だった。女性だけの居場所である「ひきこもり女子会」へのニーズが高いことにも納得がいく。参加者からは、「相談の窓口の人が男性だと行くことができない」「男性がいる居場所には参加できない」という声もあがっており、支援において女性が相談しやすい配慮が必要だということがわかる。「対人関係に漠然とした恐怖感がある」人は八七・五%に上ったが、一方で「人と交流したいと思う」人も七六・六%いて、不安を抱えながらも人とのつながりを求めている。
多くの女性たちはギリギリの状態でひきこもりUX女子会にたどり着くが、その後他の居場所や相談窓口に行ったり、就労やボランティアなどにつながる人も少なくない。なかには自らひきこもり女子会を立ち上げたり、結婚、出産する人などもいて、その行動力にこちらが驚くこともしばしばだ。人は「ひとりではない」と思えることで力が湧き、強い自己否定や孤立感から抜け出せれば、特別な支援がなくとも自ら動き出すのだということを目の当たりにしている。
それはやはり「ひとりではなかった」と感じられることが大きいと思う。私もそうだったが、ひきこもりの人の多くは「こんなバカなことをしている人は他にいない」「自分ほどダメな人間はいない」と思い、気持ちを理解されずに孤立している。女子会では、同じように思っている人や、似たような経験をした人と出会え、語り、共感を得られる。「ひとりではない」「わかってもらえた」という体験は非常に大きく、たった一度の経験でひきこもり状態から抜け出す人もいる。
ひきこもりUX女子会では参加者にアンケートの記載をお願いしている。参加者の声をいくつかご紹介したい。
・外に出る大きなきっかけを貰いました。人と会うため、自分自身の手入れをしっかりしようと思えました。女性だけの集まりはとても珍しく、本当にありがたいです。
・しんどいのは自分だけではないと、リアルに感じられた事。・ずっと一人で悩んでいたけれど、参加をすることで仲間と出会い、自分は一人じゃないんだと思った。気持ちが前向きになった。
費用面でのメリットも大きい。UX会議主催で女子会を開催する際は、会場となる、主に公共施設を借りることになるが、無料で借りられるところはほとんどない。そのため参加者から「参加費」を取らざるを得ず、通常三〇〇円を設定している。だが参加者からは「高い」という声があがる。「女子会」の参加者は九割以上が無職で収入がない。その彼女たちが会場まで交通費をかけ、さらに三〇〇円を支払うというのは大きな負担になるのだ。また、私たちメンバーもボランティアで運営する他なく、継続していくには負担となってくる。自治体と連携すれば開催に要する費用を最小限に抑えることができ、参加費を無料にすることができる。
連携の支援者側のメリットとしては、当事者に出会えることが挙げられる。女子会で全国を廻っていてよく当事者から聞くのは、「うちのところには何もない。相談窓口も当事者会も、まして女子会なんてない」という声だ。ところが女子会に見学、参加した自治体や支援団体の人からは、「窓口はあるんです、居場所もあります。でも誰も来ないんです」という声が上がる。情報が届いていない、また当事者にとって参加になにかしらのハードルがあるなどが考えられるが、いずれにしろ互いに出会えていないのが現状だ。
一方で外出自粛が続くなか、「やはりリアルで人と会いたい」という人も増えてきているのを感じる。私自身、オンラインでは雑談がしづらく、また言葉以外の情報が得にくいせいか場の空気を感じ取ることができずとても疲れる。今後、リアルとオンラインの双方の居場所や支援が広がり、選べるようになると良いと思う。
一時間ほど話した後、一人で帰れるかしらと心配したが、「こころのはな」のスタッフの方が駅まで一緒に行ってくれるとのことで、その日は帰っていった。 数カ月後、再び「こころのはな」での女子会に参加した彼女が驚くことを言った。「……仕事に就きました」 聞くと、前回の女子会のあと、彼女が好きで得意とする裁縫の地元サークルに参加したところ、すんなりと受け入れてもらえたとのこと。さらに、たまたま見つけた服飾関係の仕事に就いたという。しかも面接でひきこもっていたことも伝えた上で採用されたのだという。机を囲み話をしていた参加者や私も含め、あまりに早い展開に全員が「えーっ!」と声を上げ驚いた。そして二〇一九年、人生の伴侶を見つけた彼女は、現在は主婦として家族を支えながら、名古屋での女子会にも引き続き参加してくれている。
さらにいえば、「居場所」は必ずしもひきこもりに限定する必要はない。趣味や習い事の場が「居場所」になることもあるだろう。実際にギター教室の先生との出会いがひきこもりから抜け出すきっかけになったという人もいる。本来「居場所」とは作るというより、いつの間にかそこが「居場所」になっていたという性質のものでもある。否定されずに受け入れられ、安心して居られる場であれば、それは誰にとっても居心地の良い場ではないだろうか。
ひきこもり状態にある人の背景として生活に困窮している人も少なくないため、無料や安価な参加費(二〇〇~三〇〇円程度)で参加できるものが望ましい。参加費をできるだけ抑えることで、生活困窮状態にある人や、収入のない当事者も参加しやすくなる。一方、継続的な活動には運営団体として健全に成り立つことも必要条件だが、安価な参加費だけで運営していくのは非常に難しい。そのため、行政との連携や助成金の活用が重要になってくる。