近藤史恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
商店街にある小さなフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台にした連作短編集。カウンター越しに交わされる何気ない会話やお客様の仕草から、三舟シェフが小さな謎を解いていく。
一話完結でテンポよく読めるのに、どの話も温かく、登場人物たちが少しずつ幸せになっていくのが心地いい。悲しい結末が一つもなく、読み終えるたびにこちらまで優しい気持ちに包まれる。
料理やワインの描写も絶品で、まるで店の扉を開けた瞬間に漂う香りまで感じられるよう。特に三舟シェフの作るヴァン・ショーは、読んでいるだけで身体まで温まりそうだ。
7編のなかでは「割り切れないチョコレート」が印象的。人の心の揺れを繊細に描いたやわらかい