中山七里のレビュー一覧
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中山七里の岬洋介シリーズは本作品で9作目。実に息の長いシリーズとなった。そして満を持してようやくチャイコフスキーが出て来たものの、やはりウクライナ戦争を意識する話になってしまった。しょうがないとは言え、チャイコフスキーはウクライナとロシアの綱引きに使われてしまう。政治が音楽に与える影響は計り知れないが、その政治による弾圧が直接、ある意味間接的に素晴らしい作品を生み出す一因となるのはまさに皮肉とも言える。戦争だけでなく作曲家への様々なストレスにより、作曲家が精神的を病んでしまう事例は昔から多い。ただ、心神の喪失と引き換えに名曲が生まれ、言わば命を削って作曲された曲目を我々はもっと敬意をもって感謝
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御子柴シリーズは未読なので御子柴の登場にこれが噂の!と思ったけど、なんか感じ悪いキャラクター?
犬飼刑事はキャラクターに強い印象がなく、今回もあんまり。
そもそもパラスポーツの方に重きを置いている感じがして、途中事件のことを完全に忘れてたくらいミステリーの要素は少なめで、しかも想像がついてしまう結末だった。
トップアスリートだった沙良が、脚を失った絶望やパラスポーツに感じる落差には、リアリティがあって悲しい気持ちになった。
義足をつけて走れた時の臨場感と疾走感の描写が
素晴らしくて、何度も走る場面が出てくるのに全くくどくなかった。
早苗の義足と比べてずるいのでは?という点と、パラスポーツに挑戦 -
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ネタバレ三陸の魚を専門に扱う魚屋さんでランチしたあと読んだ一冊。宮城県警3部作の最後。
中山さんが講演会で「このシリーズは被災してない自分が書いていいのかと思っていて、自分から今回で終わりにしてほしいとお願いした」ようなことを言っていた。そう言いたくなる気持ちが少し分かるような作品。
ミステリーとしてどうかよりも、被災した人たちの置かれた状況や心情がひたすら心に残る。
被災地が舞台だからか、シリーズ通して、殺した人・殺された人よりもっと悪い人というか存在がいる気がしてちょっとモヤモヤする。
制度って、こぼれる部分もあるし完璧じゃないけど、外に出てしまえば「大いなるもの」と同等のパワーを持つんだなと改 -
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「夜がどれほど暗くても」主人公の雑誌記者志賀倫成が放り込まれるコロナ禍の混乱。
自ら感染の危険に曝されながら、増え続ける入院患者に絶望しつつ治療に尽力する医療関係者と、デマに洗脳され医療現場を襲撃するカルト集団。
反ワクチンを掲げるカルト団体の代表者が、病院襲撃時に薬剤を注射されて死亡する。
今となっては記憶も定かでないが、デルタ株が蔓延しつつあった当時は感染者、犠牲者が増え続け、ワクチンや治療薬にも手が届かず、社会全体が大きく混乱していた時期で、そうでなければ本書の舞台とはなり得なかった。
連載終了から出版まで2年の間が空いているのには何か理由があるのだろうか。
デルタ株全盛の当時 -
Posted by ブクログ
公安物は刑事物と違って、秘密主義過ぎて重い。同僚同士も秘密だし、家族にも内緒。
その秘密主義の中でもエリートの公安刑事が突然左遷扱いになる。本人も分からないので、読む方も分からずストレスになってくる。それが息子がテロリストで捕まってしまったことから展開が変わってくる。過激な報道、それを受けての一般人からの誹謗中傷。気持ちが益々重くなってくる。
テロ対応の公安刑事がテロに傾注する家族を持つ。どのように展開するのか、はたまたどんでん返しは如何に。何となく息子の言動がハッキリしないところから違った方向へ。
仕事ではエリートだった刑事が家庭では何も把握していなかったことが露呈する。最後は落ち着くところ