江戸川乱歩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ語りと仕掛けが巧みな良質サイコホラーだった。江戸川乱歩ってほんとすごい。
「赤い部屋」で夜な夜な催されている、怪しげな会員制倶楽部。新入会員のT氏は、そこで自分が犯してきた罪を飄々と告白していく。
〈この場合可哀想な老人を殺したものは果して何人でしょうか。〉
いわゆる、未必の故意。(大好きなテーマ!)
まるで悪戯でも仕掛ける子供のようにつぎつぎと繰り返された、死神のようなサイコパス男による99の所業。そして100番目の殺人。すべて作り話ですよ、と種明かしはされたけれど、誰がそれを信じられるだろう?
一体どこまでが本当で、どこからが嘘なのか。
〈「赤い部屋」の中には、どこの隅を探して見ても、最早や、夢も幻も、影さえ止めていないのだった。〉 -
Posted by ブクログ
ミステリ小説において、「トリック」は最も注目される、華やかなポイントだと思う。
日本の推理作家の元祖とも言える江戸川乱歩先生は、(主に外国の)ミステリ小説を読みながら、出てくるトリックをつぶさにメモしていったという。800件を超すトリックを蒐集したというのだから、驚きである。それを分類したのは尊敬しかない。
「やむなくネタバレ注意」のただし書きあり。それは仕方がないだろう。
昔の外国の推理小説のトリックは、ずいぶん大胆で、レトロなロマンを感じる。
トリックに関しての文章は、重複した記述も多い。あちこちに載せたエッセイを全部集めてくるとこういう事が起きがちだ。
「トリック」の分類だけでなく、「動機」にもさまざまなものがある。犯罪心理の分析も面白い。探偵小説や、犯罪捜査の歴史にも迫る。
後半は本格的な研究書の感が増してくるにつれ、読むのが難しい部分もあった。
中国の裁判の記録は、興味深い。実験をしてみて容疑者のウソをあばいた例は、現在でもドラマにできそう。
「指紋」が各自固有なものという研究発表がされると、それがすかさず推理小説に使われる、その後に実際の警察の捜査に取り入れられることになる。
乱歩先生は、トリックはすでに書き尽くされており、新しいトリックが案出される余地はない、と書かれていたけれど科学は日々進化し、使えなくなるトリックも出てくるけれど、新しい文明の利器が登場したり、社会情勢が変わったりすることで、そこに新たなトリックとしての利用法が考え出されているのでは?
新しいミステリ小説は続々と生み出されています。「動機」や「犯罪心理」も繊細に描くことで、娯楽要素ももちろん、社会的な問題も絡めて、傑作が生まれています。
それでも「トリック」にこだわる乱歩先生にかかると、現代のミステリ小説もいろいろとダメ出しされてしまうのかな?
「資料」の部分にある、中島河太郎・山村正夫の両氏による『トリック分類表』は、乱歩先生の記述の部分とは違ってエッセイ的要素もなく、小説の人間関係も分からず、ただ「手口」だけが延々と書かれていて、読むのはかなりつらい。
小説で読みたい!!!
・・・と思ったら巻末資料にネタ元の小説のリストが載っていました。
このようなトリック集を読んだすれっからしの読者がいたとして、今読んでいる推理小説の謎解きには、あのトリックが当てはまるのではないか?!
などという使い方をしても面白いのではないかと思う。 -
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズの一冊。
複雑な気持ちになる。話自体はもう何度目かわからないくらい読んでいる。やはり傑作だ。で、今回は初めてイラストつきで読んだ。そこで思ったことは、乙女の本棚シリーズに入っていることで、イラストつきの「押絵と旅する男」に出会うことの意味である。イラストで固定されたイメージで読むことになってしまい、イラストなしで初めて読む経験が奪われてしまうことになる。それは不幸なような気がするのだ。しかし、一方で、乙女の本棚シリーズに入っていなかったら、この作品とは出会わなかったことも考えられる。それもまた不幸なことだ。これは、イラストなしで読むことができた優越感から出た感想なのかな。乙女の本棚シリーズの功罪といえばいいか。もう少し考えてみたい問題だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ江戸川乱歩さんの作品を読むのは3作目。
今回は、向かい合ったビルとビルの谷間が作り出す怪しさに加え、月光のまやかしも加わり、じとっと気持ちの悪い雰囲気を感じながら読みました。
自分もこの真夜中のビルに寝泊まりしているかのような気持ちで、変に落ち着かない気持ちになります。
向かいのビルに現れる目羅医師は、こちらのビルに住む者に似せたマネキンを用意し、窓の外でマネキンの首を吊る。そうすると、こちらで見ていた本人はどうしてもマネキンの真似をしたくなって首を吊って亡くなってしまう。目羅医師の策略にまんまと引っかかり命を落とす物が後をたたない。しかし、そんな時、そのことに気がついたこちらのビルに住む男が、目羅医師に同様の仕掛けを施す。目羅医師はビルの谷間へと落ちてしまった。この話を月夜の不忍池のほとりで乱歩に打ち明ける怪しい男…。
最初から最後までジメジメとした気持ちの悪いストーリーでした。
今日も本の中に引き込まれました。
ありがとうございました。
-
Posted by ブクログ
ネタバレあまり読んだことのない作家の作品も、このシリーズなら読めるんだよね。
それはさておき、確かに、こんな恋はたまに物語のネタになるし、神話にもある、何なら現実にもあるかもしれない。一人(ふたり?)で完結するなら好きにして、と思うだけだけど、この話の語り手みたいに巻き込まれた人間にしてみたら…。昔ならなおのこと。いっそ、彼女に夫への愛が無ければ幾分か楽だったろうにね。それはそれでプライドが傷つくかもしれないけど。
オチが気になってサクサク読んだ。びっくりもせず、どこかで「(やっぱり)このオチかぁ」と納得したところはある。でも別にガッカリしたわけではなく、すとん、と腑に落ちた。ただ、語り手の彼女はこの後どうしたのか気にはなる。
いやしかし、昔の技術ってある意味現代とは比べ物にならないところがあるからなぁ。洋の東西を問わず、人形は怖い。