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Posted by ブクログ
明智小五郎の活躍を事件発生順に並べた画期的なコレクションの第3巻。
この作品を境に、これまでのミステリー寄りの作品から一転し、大衆寄りの作品に変貌したようだ。昔、ポプラ社の『少年探偵江戸川乱歩全集』に収録された同作を読んだ記憶があるが、読み返してみると少年でも理解出来るものの、少年向けの作品というよりも、大人向けの作品であったことが解る。
残虐で凄惨な連続殺人を繰り返す蜘蛛男。冒頭から、この奇っ怪な事件で探偵役を務めるのは畔柳博士と助手の野崎、波越警部であり、明智小五郎は登場しないのかと少しやきもきする。残りページが3分の1になり、明智小五郎がようやく登場する。そこからの二転三転、怒濤の展開の面白さ。そして、意外な犯人の正体とは…
巻末には平山雄一の『明智小五郎年代記 3』が収録させており、本作が上梓された時代の背景などが紹介されている。万城目学の解説も面白い。
Posted by ブクログ
明智小五郎シリーズ三作目。
前作『一寸法師』の路線を引き継ぎながら、さらにエンタメに吹り切って、探偵小説というより怪奇冒険小説という趣の作品。今回でもエキゾチックな白い詰襟シャツを着たオシャレな明智だが活躍シーンとしては変装に次ぐ変装ぐらいで(後の多羅尾伴内の原型だろうか)、結構やらかし気味なのはご愛嬌か…
蜘蛛男要素どこだよ、とか根幹のトリックについてもアレ過ぎて警察の無能感が浮き彫りになってツッコミどころも満載だが、関東大震災直後の東京の迷宮じみた混沌の表われとも取れる。また犯人についてもいわゆる「意外な犯人」タイプではあるが、それよりも明智シリーズに見るような探偵と犯人の二重性の象徴としての意味合いの方が重要だろう。
個人的には昭和初期の日本映画界の雰囲気を感じ取れるのは面白く感じた。
Posted by ブクログ
明智小五郎の関わった事件を発生順に並べたシリーズです。
『蜘蛛男』事件は1928年6月16日〜11月4日の出来事です。明智小五郎は前の事件解決後に「シナから印度のほうに旅をしてもう三年になる」(孫悟空か!)ため、出番は終わりの方になったと辻褄が合うようです。
なお、明智小五郎不在の三年の間に日本は大正から昭和に代わっています。明智小五郎が日本にいないときに日本に重大な出来事あるよね。(江戸川乱歩が執筆どころでないのか)
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貸事務所に入った「稲垣」と名乗る美術商。だが読者には、仮名・稲垣の怪しい行動、そして彼の異常性、周到な犯罪の用意とが示される。
そのころ東京では異様な女性死体が相次ぎ見つかった。彫刻に塗り込められたバラバラの身体、水族館の水槽に投げ込まれた人魚のような死体。過去の事件をさらうと、行方不明の女性たちの中にも同一犯の可能性が考えられた。新聞は女性を狙い、無惨に殺し、死体を晒す「青ひげ」による犯罪者の恐怖と、警察の無為を責め立てる。
警視庁捜査課で警視庁随一の名探偵といわれる名物男の波越警部(褒め過ぎじゃない!?)は、無二の話し相手である犯罪学者で素人探偵の畔柳博士に協力を依頼する。
表題の「蜘蛛男」は、この物語の主人公である犯人が残忍酷薄で薄気味悪いことからの呼び名である。(女性を狙って殺すことから「青ひげ」とも呼ばれる。)
そして「副主人公は俊敏なる素人探偵」…と書いているので、明智小五郎だと思ったら、明智小五郎は前の事件解決後の外遊中のため、蜘蛛男の相手をするのは素人探偵の畔柳(くろやなぎ)友助博士だった。この畔柳博士、警察や法曹界からも信頼される民間犯罪学者だが、義足で人間嫌い、犯罪が起こらないときは引きこもりという人。助手には探偵に憧れる野崎青年がいる。
この物語が「明智小五郎事件簿」に収録されていなければ、この物語には明智は出てこず、江戸川乱歩は明智小五郎以外にも名探偵を作りたかったんだろうなあと考えてたところ。
さて。
「蜘蛛男」が次の犠牲者に選んだのは、大人気女優の富士洋子だった。そして畔柳博士に挑戦状までよこした。富士洋子を巡り、「蜘蛛男」と、警察・畔柳博士・助手野崎青年の出し抜き合いとなる。
読者に向けては「蜘蛛男」の狙いが明かされる。彼は生まれついての本物の悪党、本物の偏執的猟奇趣味の持ち主だった。好みの女性を選び、その死体を絢爛豪華なパノラマとして保存したいと思っているのだった。
ここの犯罪性、異様性、変態性、エロチックな雰囲気の迫力は、さすがの江戸川乱歩!
そしてついに明智小五郎が帰国し、捜査に参加するのだった。
※※※以下、ほぼネタバレしています※※※
この物語が「明智小五郎事件簿」に入っているということで犯人を察することができてしまいます。そうでなくても犯人は分かりやすいんですよ。
序盤の事件で犯人が「仮名・稲垣」だったころは犯罪に対してかなり実質的な準備をしているんです。身元を隠す、犯罪の形跡を隠す反面、自分の頭の良さを見せびらかす劇場性も、異様な人物でありながらも納得できるんです。
それが富士洋子を狙ってからは、鍵のかかった部屋に手紙を置くとか、追い詰められても消え失せるとか、なんというか魔術師っぽくなったところが不自然なんですよ。なんでこんな魔術師犯罪者になったんだを考えたらそりゃーあの人物が犯人だとしか考えられないわけで。しかしそうなると「挑戦状とか出したらどっちかが失敗するじゃん。この犯人何がしたいんだ?」と思えてしまう(-_-?
小説の形式としては雑誌連載だったので、毎回見せ場があるのはいいけれど、長編小説で読むと、不思議・取り逃がし・不思議・取り逃がし、繰り返すのでさすがに「また逃がしたのか!さっさと捕まえろ!」と思ってしまう。。
小説としては、女性を怖がらせ、死体を飾るような変態描写はかなりの迫力です。でもそれが探偵小説となると、魔術的なトリックがちょっとコミカルだったり、毎回逃げられて「捜査人のまぬけーー」となってしまうのがなんとも気の毒というか(^_^;) それをさっぴいても面白いんですけどね。
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