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日本を代表する名探偵の一人、明智小五郎がはじめて登場した「D坂の殺人事件」。退廃的な空気が漂う大正9年9月初旬、〈私〉はD坂にある白梅軒という喫茶点で明智小五郎と知り合った。偶然、向かいの古本屋で発生した殺人事件。二人は第一発見者となる。犯人は、明智小五郎なのか――「幽霊」「黒手組」「心理試験」「屋根裏の散歩者」も収録。事件発生順に並べた画期的なコレクション全12巻! 配信開始!!(解説/皆川博子 クロニクル/平山雄一)
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Posted by ブクログ
明智小五郎を探偵とした短編集を作中事件発生順に並べ替えたシリーズです。巻末の解説で、どうやって作中事件の日時を推察したかが書かれています。これがまさに探偵のお仕事のようで、本編も解説も楽しめます(^o^) 一巻の明智小五郎はまだ素人探偵の25歳くらいの「青年」。絣の着物を着て、もじゃもじゃの髪の毛...続きを読むをくしゃくしゃにかき回す癖がある。だんだん明智小五郎が大人というか有名というかダンディー(?)になって洋服着用になり、この着物にくしゃくしゃ頭の人懐っこい探偵は金田一耕助に引き継がれましたね。明智小五郎が推理において大切にするのは人間の心理としています。 最初の事件『D坂』以前の明智小五郎の生い立ちなどは不明です。登場時にはいわゆる「高等遊民」として趣味で複雑な事件を探して捜査をしているので、それなりの資産はあるのか、彼を気に入って援助している人がいるのか。あとこの頃って学校卒業してもすぐに就職しない人もそれなりにいたんですかね、あくまでも著名人とかほんの登場人物ではこのような無職だけど問題なく暮らしている人を見かけるし。 『D坂の殺人事件』(1920年・大正9年9月) 明智小五郎登場のお話。 語り手は最近明智小五郎という人物と知り合いになる。お互いに推理小説が好きで気が合った。 ある日二人は、D坂の古本屋の女房の死体を発見する。二人はそれぞれ独自に推理してみることにした。そして語り手は、明智小五郎こそが犯人という結論にたどり着き…。 ==まだ若くて怪しげな風体の明智小五郎。探偵小説としてはSM設定必要なのか、まあこれがないと江戸川乱歩らしくないからいいのか 笑 『幽霊』(1920年または1921年 秋〜冬) 実業家で一財産を築いた平田氏には敵も多い。その中で一番しつこかったのが辻堂という老人だ。だがその辻堂が最近死んだ。心のなかで喝采をあげる平田氏。 しかし死んだ辻堂から手紙が届いた。「おれは怨霊となって貴様をやっつける」その日から辻堂の影が平田氏の近くをうろつくようになる。写真に映り込み、行く先々に現れる辻堂に、平田氏はすっかり神経衰弱になる。 保養のため海岸地の旅館で過ごすことにした。だがここにも辻堂が現われる。必死に逃げ出す平田氏は、明智小五郎という青年と知り合いになる。 ==明智小五郎はまだ青年で素人探偵。話術が巧みで口の固い平田氏からスラスラと情報を引き出してしまう。 「解決しましたよ」でぷっつり終わっちゃうんだが、その後の処遇はどうなったんだろう。 『黒手組』(1921年12月) 黒手組というのは最近東京を騒がせている賊徒の一団の呼び名。その黒手組が、ある資産家の娘の富美子を誘拐して身代金を奪ったという。この資産家の親戚が『D坂』の語り手だったので、明智小五郎に捜査を依頼したのだ。 明智小五郎は、数日前に富美子に届いた女友達から来た手紙に興味を示し…。 ==暗号解読もの。 事件も物語もさっぱりした感じだった。殺人もSMもないし 笑 『心理試験』(1922年11月〜12月) 貧乏学生の吹屋清太郎は、下宿家主の老婆が溜め込んだ金を盗むために殺人を思い詰める。吹屋は勉強家で秀才でうぬぼれ心があり大胆な性質で…。自分のような才能が金のために埋もれてよいものか。絶対に自分が犯人だと発覚しない殺人強盗を計画しなければ。 綿密な計画のうえ吹屋は老婆を殺して金を奪う。 殺人事件の担当予審判事笠森氏は素人心理学者だった。そこで吹屋を含む関係者に心理試験を受けさせることにした。 その心理試験にもしっかり準備をして望んだ吹屋だが、明智小五郎の目は誤魔化せない。 ==『D坂』から数年後、明智小五郎は世間に認められる探偵になっている。犯罪方法も解決方法もよくできてると思う。 『屋根裏の散歩者』(1923年または22年 春) 明智小五郎が出てくるのが後半のためか、前半は変態心理丸出し 笑 郷田三郎は何一つ長続きして楽しく思えるものがない。勉学も仕事も長く続かない。遊びにも片っ端から手を出してすぐに飽きる。たまたま素人探偵明智小五郎と知り合ったことから「誰にも知られない犯罪」に異様に興味を持った。最初は尾行の真似事や変装をしていた三郎は、ついに秘密の楽しみを持つに至る。下宿屋の押入れから天井裏に上がれることを発見したのだ。三郎は夜な夜な天井裏を這い回り、隙間から他の下宿人の様子を隙間見する。しかしただ屋根裏を散歩するだけの行為には飽きてきて、人知れず殺人を行いたいという気持ちに囚われるのだった。
戦前に描かれたものと思えないほど文章が巧みで読みやすく面白い。 推理小説を読んで、犯人が誰かを考えながら読むのもいいが「心理試験」のような倒叙法で、犯人の心理を見るのも面白い。 松山さんの1920年代だからこそ描けたと言う論稿を踏まえるとより、深みにハマります。
収録作品「D坂の殺人事件」「幽霊」「黒手組」「心理試験」「屋根裏の散歩者」 少年探偵団シリーズはよく読んでいたが、果たして明智小五郎シリーズはどうだったか、と思いながら手に取った。科学的捜査や足を使って証拠を集めながら真実に辿り着くというよりは、アリバイや犯罪心理学から事件を紐解くのが明智小五郎流...続きを読むなのか、それほど頭を働かせずとも作品を楽しめる軽さが良い。
一度読んだ本を再読するという習慣がないのだけれど、学生時代に夢中になった乱歩作品の傑作選が文庫で出ていたので反射的に購入した。 再読って結構良いもんですね。 作品を新しい感覚で読み返すと記憶の中に定着していた物と一味違った切り口が発見できたり、記憶とは異なった感想が湧いてくる。 そして何より、かつて...続きを読む夢中になって読んでいた頃の自分とその時代が蘇ってくる。 これですね。 かつての自分と、その時使っていた時間を取り戻し、今の自分の目で見てやる。 屋根裏から覗く様に。 追記 「黒手組」の身代金が今だったらいくらくらいなのか気になって計算してみました。 時を作品発表の大正10年とした。 ●企業物価指数(戦前基準指数)というものを使った資料があった。それによると指数は 大正10年→1.296 平成29年(2017年)→687.8 687.8÷1.296=約530.7倍 これを1万円に当てはめると、約531万円となる。 作品では身代金1万円 探偵への礼金 2千円。 となっているので 身代金が現代で言えば約531万円、謝礼金 106万円。 身代金の割に謝礼金が多くはないだろうか? 身代金も、危険な犯罪の代償としては1,000万円くらい要求しそう。 さらに「心理試験」で殺害された老婆の隠し金が約1万円で531万円くらいだという事を考えるとやはり身代金要求額は安いなあ。 さらに追記すると 当時の大卒初任給が50円ほど。 令和のそれは20万円として4,000倍。 この比較で考えると 身代金1万円は4,000万円となってかなり高額になってしまうが現代の犯罪ドラマではありそうな金額に思える。 しかしその場合、探偵への謝礼金2千円が8百万円となってしまう。 初任給での比較ではにはファクターが必要なのだろうか?
D坂や心理試験、屋根裏は人気作だと思いますが、個人的には幽霊が面白かった!怖いなこれ。 あと、平山さんの年代記がすごくいい。時代背景がわかると味わいが深いなぁ。蕗屋にラスコーリニコフみを感じたのは正しかったのね。
明智小五郎クロニクル 乱歩が発表した順番ではなく、作品を読み込んで、実際にこれらの事件が発生した年月日を推定し、その年代順に並べた D坂の殺人事件 1920年9月 幽霊 1920(21?)年 秋~冬 黒手組 1921年12月 心理試験 1922年11月~12月 屋根裏の散歩者 1923(22?)年...続きを読む 春 シャーロッキアンの研究 「年代学」 シャーロック・ホームズが実在性人物だと見なして、ホームズ物語を楽しむファン 大正十三年(1924年)、「D坂の殺人事件」で探偵小説界に初めて登場した明智小五郎 棒縞の浴衣を着て、変に肩をふって歩く。 モジャモジャの髪の毛を引っかき回すのが癖で、いつも木綿の着物によれよれの兵児帯という姿は、戦後、金田一耕助に引き継がれる。 明智小五郎は、後に少年探偵団を率いて怪人二十面相を相手に大活躍する 12巻 ぼちぼち読破したい !!
何度でも読み返したくなる癖になる江戸川乱歩。「心理試験」での飄々としながらの鋭い切り口がたまらなく好き。
日本を代表する名探偵の活躍を年代順に並べたシリーズ第一弾。素人探偵と称して本に埋もれた部屋に住み犯罪や心理に異常に詳しくモジャモジャ頭でニコニコ顔の高等遊民という犯罪者みたいな危険な香りを漂わせてのデビュー。D坂の殺人事件、幽霊、心理試験、黒手組、屋根裏の散歩者を収録。
語り口も良いし、純粋に推理を楽しんでいる明智小五郎の人物像も良い。犯人に至っては、殺すつもりのなかった人もいれば、殺人を楽しみたい人もいて、実に魅力的な作品に仕上がっている。大正期の頽廃と浪漫、高等遊民たち。そんな時代の雰囲気が味わえる。
名探偵・明智小五郎の活躍を事件発生順に並べ、構成した事件簿。全12巻の第1巻。 全て既読の短編なのだが、再度、事件発生順に読んでみると、素人探偵として登場した変わり者の明智小五郎が次第に探偵としての地位を確立していく過程が読み取れて面白い。 短編の中の僅かな記述を手がかりに事件発生年月を特定し、...続きを読む並べ直す作業は、ある意味で江戸川乱歩への挑戦とも受け取れる。この辺りは巻末の平山雄一の『明智小五郎年代記1』に詳しく書かれている。 『D坂の殺人事件』『幽霊』『黒手組』『心理試験』『屋根裏の散歩者』の5編を収録。
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