江戸川乱歩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【この話が私の夢か私の一時的狂気の幻でなかったら、あの押絵と旅していた男こそ狂人であったに違いない。】
この冒頭が好きだ。何度も読んだ「押絵と旅する男」。主人公と押絵の男との不思議な列車の旅に、引き込まれて離れることが出来ない。
魚津へ蜃気楼を見に出掛けた「私」は、その帰りの汽車の中で、風呂敷に絵の額のようなものを包み大事そうに抱える男に出会った。老人ともいえるその男の荷物は、「奇妙」な程巧緻を極めた押絵だったのである。男の口から明かされる、その押絵に秘められたエピソード…。
愛することは、狂うことなのかもしれない。泉鏡花の「外科室」貴船伯爵夫人のように、江国香織の「神様のボート」