江戸川乱歩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【この話が私の夢か私の一時的狂気の幻でなかったら、あの押絵と旅していた男こそ狂人であったに違いない。】
この冒頭が好きだ。何度も読んだ「押絵と旅する男」。主人公と押絵の男との不思議な列車の旅に、引き込まれて離れることが出来ない。
魚津へ蜃気楼を見に出掛けた「私」は、その帰りの汽車の中で、風呂敷に絵の額のようなものを包み大事そうに抱える男に出会った。老人ともいえるその男の荷物は、「奇妙」な程巧緻を極めた押絵だったのである。男の口から明かされる、その押絵に秘められたエピソード…。
愛することは、狂うことなのかもしれない。泉鏡花の「外科室」貴船伯爵夫人のように、江国香織の「神様のボート」葉子のように。実際、押絵の中の「兄」は明らかに狂っていた。愛して、愛して、どうしようもない程愛して…そして狂っていく。
「狂気」と「異界」の観念が遺憾なく描かれた傑作です。 -
Posted by ブクログ
鳥肌モノの本能的にゾワゾワする描写が満載で、今まで読んだ明智シリーズの作品では上位の位置付け。
特に青木が「君は本当に品川四郎なんだろうね」と尋ねるシーンや、社長令嬢が襲われるシーンは恐ろしい…。
明智が登場してからは単なる探偵小説になってしまったような気がして少し残念。
何なら明智の関係ない怪奇小説として、青木と品川の心情の変化を追っていた方が面白い作品になったのでは。
堅物の品川が、自分と寸分違わぬ見た目の人間が快楽に溺れているのを見て想像を強いられたであろう もう一つの人生の可能性。
猟奇趣味の果てに普通の幸せを失って初めて妻の大切さに気づく青木の皮肉。
この辺りの対比が素晴らしかったので、最終的に陰謀についての話がメインになってしまったのが残念。
全体的には面白かった。